グリムロックは宇宙最強   作:オルペウス

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待たせたな、戻ってきたぞ!

待ちに待った第三章スタートです。

第二章て行ったヒロイン追加に関するアンケートの結果ですが、

1.爆乳駄竜のティオ→89
2.合法ロリの愛ちゃん→53
3.いっその事両方で→117
4.最初通りシアのみ→54

となりました。数多くの投票ありがとうございました。
よって、ヒロイン追加については、3の結果を取りたいと考えております。


双頭の侠客〜爆乳駄竜と合法ロリを添えて〜
さらばブルックの町


 紆余曲折を経て、晴れて恋人同士となった亮牙とシア。一夜を過ごした次の日、仲間達にこの事を明かすと、三人とも心の底から祝福してくれた。

 特にハジメとユエは、亮牙がシアを意識し始めていたのには気づいており、二人が交際する事になる未来は予測できていた。何よりオルクス大迷宮を攻略してからは、リーダーとしての責任感からか張り詰め気味だった亮牙に、心身ともに支えてくれるパートナーが出来た事が嬉しかった。

 だが、まだデリカシーをよく理解してないスラッグは、またも爆弾発言をかましていた。

 

「お前達、昨日早速交尾したのか?」

「デリカシーのないこと聞くんじゃねえっ!!!」

「痛ぇっ⁉︎殴ることないだろ‼︎」

 

 流石の亮牙もデリカシーぐらいは理解していたので、悪気はないとは言え恋人との情事について聞いてきたスラッグをぶん殴り、キレたスラッグが殴り返し、そのまま殴り合いの大喧嘩に発展した。この喧嘩は、シアが亮牙を宥め、スラッグをハジメとユエが抑えつけるまで暫く続いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ、あなた達の痴態、今日こそじっくりねっとり見せてもらうわ!」

 

 上弦の月が時折雲に隠れながらも健気に夜の闇を照らす。今もまた、風にさらわれた雲の上から顔を覗かせその輝きを魅せており、地上のとある建物を、もっと具体的に言えば、その建物の屋根からロープを垂らし、それにしがみつきながら何処かの特殊部隊員のように華麗な下降を見せる一人の少女を照らし出していた。

 彼女はスルスルと三階にある角部屋の窓まで降りると、そこで反転し、逆さまになりながら窓の上部よりそっと顔を覗かせた。

 

「この日のためにクリスタベルさんに教わったクライミング技術その他!まさかこんな場所にいるとは思うまい、ククク!さぁ、どんなアブノーマルなプレイをしているのか、ばっちり確認してあげる!」

 

 ハァハァと興奮したような気持ちの悪い荒い呼吸をしながら室内に目を凝らすこの少女の正体は、ブルックの町『マサカの宿』の看板娘ソーナだ。明るく元気で、ハキハキした喋りに、くるくると動き回る働き者、美人というわけではないが野に咲く一輪の花のように素朴な可愛さがある故、町の中にも彼女を狙っている独身男は結構いた。

 そんな彼女は現在、持てる技術の全てを駆使して、とある客室の『覗き』に全力を費やしていた。その表情はまさにエロオヤジのそれで、彼女に惚れている男連中が見れば一瞬で幻滅するであろう。

 

「くっ、やはり暗い。よく見えないわ。もう少し角度をずらし……ぐぇっ!!?」

 

 必死に覗こうとするソーナだが、突如として体に縛り付けていた命綱が上へと引っ張られた。思わず潰された蛙のような声を出す彼女だが、誰かに引っ張り上げられたと悟り、一瞬で滝のような汗を流しながらぎこちない動きで上を見上げると、屋上で命綱を片手で引き揚げながら、ゴミを見るような目で彼女を見下ろす亮牙がいた。

 

「ち、違うんですよお客様!これは、その、あの、そう!宿の定期点検です!ほら、夜中にちゃちゃっとやってしまえば、昼に補修しているところ見られずに済むじゃないですか。宿屋だからガタが来てると思われるのは、ね?」

「なら店主から前もって客に連絡が来る筈だ。客が寝静まっている時間帯に連絡なしに補修なんてやれば、それこそ安眠妨害だとクレームが来て宿屋の評判が落ちるだろうが」

「うぐっ⁉︎そ、そ、それは…」

「毎度毎度覗きなんてやらかして、スラッグの言う通り反抗期つーか発情期迎えてんのか?」

「は、発情期!!?ちょっとお客さん、年頃の女の子を獣扱いするなんて、いくら何でも失礼だとは思わないんですか⁉︎」

「逆ギレ出来る立場か?このまま手を離して地面とキスするか、何処か遠くまで投げ飛ばされるか、どっちがいい?」

「ひぃー!!?ごめんなざぁ~い!命だけは〜!」

 

 真顔で恐ろしい事を言ってくる亮牙に、ソーナは空中でジタバタともがきながら悲鳴を上げ、必死に許しを請う。一般人の女の子に対するお仕置きにしては少々やりすぎなのではと思うかもしれないが、ライセン大迷宮から帰還した翌日から再び宿に泊まった夜から毎晩、あの手この手で覗きをされればいい加減、手加減の配慮も薄くなるというものだ。ちなみに、それでもこの宿を利用しているのは、飯が美味さを五人とも気に入っているからである。

 涙目で命乞いをするソーナに呆れて溜息を吐いた亮牙は、ふと下を見ると、片方の手で下を指差した。彼女が下を見ると、鬼がいた。満面の笑みだが、眼が笑っていない母親という鬼が。

 

「ひぃ!!?」

 

 ソーナが気がついたことに気がついたのだろうか、母親はゆっくり手を掲げると、地獄への誘いのようにおいでおいでをした。

 

「さて、お袋さんに頼んで尻叩き一万発ぐらいしてもらうか」

「いやぁああーーー!!!」

 

 そう言った亮牙に手繰り寄せられて一階まで連行されながら、ソーナは今までのお仕置きを思い出して悲鳴を上げた、きっと翌朝には、お尻をパンパンに腫らした涙目の彼女を見ることができるだろう。毎晩毎朝の出来事に流石の彼も溜息を吐かずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 亮牙はソーナを母親に引渡して宿の部屋に戻ると、そのままベッドにドサッと倒れ込んだ。

 

「おかえりなさいです」

 

 そんな彼に声を掛けたのは、もちろんシアだ。窓から差し込む月明かりだけが部屋の中を照らし、二人の姿を淡く浮かび上がらせる。対面のベッドの上で浅く腰掛けたシアは、ネグリジェだけという何とも扇情的な姿だ。その美貌と相まって、一枚の絵画として描かれたのなら、それが二流の書き手でも名作と謳われそうである。

 

「ただいま。全く、屋根から降りて来てまで客の情事を覗きたいって、異常にも程がある…。飯は美味いが、明日以降は別の宿に変えた方が良いかもな」

 

 呆れたような口調でそう話す亮牙に、シアはクスリと笑って立ち上がると彼のベッドに腰掛け、優しく頭を撫でた。

 

「きっと、私達の関係がソーナちゃんの女の子な部分に火を付けちゃったんですね。気になってしょうがないんですよ。可愛いじゃないですか」

「そうかぁ?昨日なんか、獲物を待ち伏せするワニみたいに湯船の底に張り込んでた始末だぞ…。こうもちょっかい掛けられるんじゃ、店主達に慰謝料要求しても良いぐらいだ」

「う~ん、確かに、宿の娘としてはマズイですよね…。一応、私達以外にはしてないようですが…」

 

 ソーナの奇行について雑談しながら、シアはそっと亮牙に体を寄せると、自然と伸びた手を彼の手と重ねて自分の胸元へと誘導した。彼女の表情は紅潮していて、これから起こることに緊張しているようだ。

 亮牙もそれに気づいたのか、握られたシアの手を優しく握り返し、照れ臭そうに答えた。

 

「それにだ」

「それに何ですぅ?」

「恋人のあられもない姿を面白半分で覗かれるのを許容出来るほど、俺は寛大じゃないんだ。肉食動物ってのは独占欲が強いんだ」

 

 それはそうだろう。恋人との情事を面白半分で覗き見されるのを許すような奴など、余程の変態ぐらいだ。特に亮牙は元ティラノサウルス、かつては妻を奪おうと縄張りに侵入した同族の雄と、よく争ったものだ。親友であるハジメやスラッグにも、シアのあられもない姿を見せたくはなかった。

 一方、シアはそれを聞いてキュ〜ン♡となってしまった。惚れた男が自分の事を如何に想っているかを再認識したからだ。彼女は目をうっとりさせると、ネグリジェを脱ぎ捨てて自慢の巨乳を露わにすると、亮牙の顔に胸を押しつけるように抱きしめた。

 

「わぷっ⁉︎シ、シア////」

「もうっ、亮牙さんったら嬉しい事言ってくれるんですから〜♡ほ〜ら、御褒美のおっぱいですよぉ〜♡」

 

 そう言いながら彼女は、えいえい♡と亮牙の顔に乳房を押しつけ、俗に言う『ぱふぱふ』をお見舞いする。国民的人気RPGでお馴染みのあの技によって繰り出される極上の柔らかさに、流石の彼も瞬く間に理性を吹き飛ばされてしまった。

 亮牙は両手をシアのムッチリしたお尻に伸ばすと、すかさず鷲掴みにして激しく揉みしだいた。彼女が「あんっ♡」と思わず喘ぐと、そのまま寝っ転がる形で彼女を逆に仰向けに押し倒した。

 

「〜っ‼︎ごめんシア、我慢出来ん!」

「いや〜ん♡亮牙さんのエッチィ〜////」

 

 こうしてその夜も亮牙とシアは、思う存分愛を確かめ合うのであった。なお、その後もソーナの覗き癖は治ることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後、カランカランと音を立てて冒険者ギルド:ブルック支部の扉は開いた。入ってきたのは勿論、ここ数日ですっかり有名人となった亮牙一行だ。ギルド内のカフェには何時もの如く何組かの冒険者達が思い思いの時を過ごしており、彼らの姿に気がつくと片手を上げて挨拶してくる者もいた。男は相変わらずユエとシアに見蕩れ、ついでハジメや亮牙に羨望と嫉妬の視線を向けるが、そこには地球であったような陰湿なものはない。

 ブルックに滞在して一週間、その間にユエかシアを手に入れようと決闘騒ぎを起こした者は数知れず。スラッグの恐ろしい制裁に震え上がったものの、外堀を埋めるようにハジメや亮牙から攻略してやろうという輩がそれなりにいたのだ。

 もちろん、二人ともそんな面倒事をまともに受けるわけがなかった。最終的には「決闘しろ!」などと抜かした瞬間、大切な恋人を景品扱いして奪おうとしたとして、ハジメは非致死性のゴム弾を脳天目掛けて発砲したり、亮牙はラリアットやDDTやスープレックスといったプロレス技をお見舞いし、更にはスラッグまで面白がって混ざって来て、哀れな挑戦者達は地獄を見る事になった。

 そんなわけでブルックでは、亮牙・ハジメ・スラッグのトリオは有名であり一目置かれる存在なのである。ギルドでパーティー名の申請等していないのに『地獄の番犬』というパーティー名が浸透している程だ。

 

「おや、今日は五人一緒かい?」

 

 亮牙達がカウンターに近づくと、いつも通りキャサリンがおり、先に声をかけた。彼女の声音に意外さが含まれているのは、この一週間でギルドにやって来たのは大抵、男子三人組か女子二人組だからだ。

 

「ああ。明日にでも町を出るから、あんたには色々世話になったから挨拶に来たんだ。ついでに、目的地関連で依頼があれば受けようって事になってな」

 

 世話になったというのは、郊外での重力魔法の鍛錬や、ハジメの重力魔法と生成魔法の組み合わせのために、キャサリンの好意でギルドの一室を無償で借りていたことだ。

 

「そうかい、行っちまうのかい。そりゃあ、寂しくなるねぇ。あんた達が戻ってから賑やかで良かったんだけどねぇ~」

「勘弁してくれ。この町ときたらどいつもこいつも変態ばっかりで、相手するのが凄え疲れたんだぞ…」

 

 亮牙が苦々しい表情で愚痴をこぼすように語った内容は全て事実だ。ソーナは言わずもがな、クリスタベルは会う度に男性陣に肉食獣の如き視線を向け舌なめずりをしてくるので、何度寒気を感じたか分からなかった。

 また、ブルックの町には三大派閥が出来ており、日々しのぎを削っている。一つは「ユエちゃんに踏まれ隊」、もう一つは「シアちゃんの奴隷になり隊」最後が「お姉さまと姉妹になり隊」である。それぞれ、文字通りの願望を抱え、実現を果たした隊員数で優劣を競っているらしい。

 流石の亮牙達もあまりにぶっ飛んだネーミングと思考の集団にドン引きした。町中でいきなり土下座するとユエに向かって「踏んで下さい!」とか絶叫するのだから、無理もないだろう。シアに至ってはどういう思考過程を経てそんな結論に至ったのか理解不能だ。亜人族は被差別種族じゃなかったのかとか、お前らが奴隷になってどうするとかツッコミどころは満載だが、深く考えるのが嫌だったので出会えば即刻排除している。最後は女性のみで結成された集団で、ユエとシアに付き纏うか、亮牙・ハジメ・スラッグの排除行動が主だ。一度は、「お姉さまに寄生する害虫が!玉取ったらぁああー‼︎」とか叫びながらナイフを片手に突っ込んで来た少女もいたが、スラッグのぶちかましを喰らって町外れまで吹っ飛ばされた挙句、犬神家の如く大股を開いて地面にめり込むと言う醜態を晒していた。

 そんな出来事を思い出し顔をしかめる亮牙に、キャサリンは苦笑いだ。

 

「まぁまぁ、何だかんで活気があったのは事実さね。で、何処に行くんだい?」

「こっちは良くねえよ…。フューレンだ」

 

 そんな風に雑談しながらも、仕事はきっちりこなすキャサリンは早速、フューレン関連の依頼がないかを探し始めた。

 亮牙達の次の目的地は『グリューエン大砂漠』にある七大迷宮の一つ『グリューエン大火山』だ。その為、大陸の西に向かわなければならないのだが、その途中に『中立商業都市フューレン』があるので、大陸一の商業都市に一度は寄ってみようという話になったのである。なおグリューエン大火山の次の目的地は、大砂漠を超えた更に西にある海底に沈む大迷宮『メルジーネ海底遺跡』だ。

 

「う~ん、おや?ちょうどいいのがあるよ。商隊の護衛依頼だね。ちょうど空きが後二人分あるよ…。どうだい、受けるかい?」

 

 キャサリンにより差し出された依頼書を亮牙は受け取り、内容を確認した。確かに依頼内容は、商隊の護衛依頼のようだ。中規模な商隊のようで、十五人程の護衛を求めているらしい。ユエ・シア・スラッグは冒険者登録をしていないので、ハジメと亮牙の分でちょうどだ。

 

「連れを同伴するのは大丈夫なんですか?」

「ああ、問題ないよ。あんまり大人数だと苦情も出るだろうけど、荷物持ちを個人で雇ったり、奴隷を連れている冒険者もいるからね。まして、ユエちゃんもシアちゃんもスラッグ君も結構な実力者だ。二人分の料金でもう三人優秀な冒険者を雇えるようなもんだ。断る理由もないさね」

「成る程、お前らはどうする?」

 

 亮牙は少し逡巡し、意見を求めるように仲間達の方を振り返った。正直な話、配達系の任務でもあればハジメのアイアンフィスト等があるので、馬車の何倍も早くフューレンに着けると考えていた。わざわざ、護衛任務で他の者と足並みを揃えるのは手間と言えた。

 

「…急ぐ旅じゃない」

「そうですねぇ~、たまには他の冒険者方と一緒というのもいいかもしれません。ベテラン冒険者のノウハウというのもあるかもしれませんよ?」

「俺スラッグ、呑気な旅も良いと思う」

「だね、急いても仕方ないしたまにはいいんじゃない?」

「よし、じゃあキャサリン。この依頼を受けさせてもらうよ」

 

 ユエの言う通り、七大迷宮の攻略にはまだまだ時間がかかるだろう。急いて事を仕損じては元も子もないというし、シアの言うように冒険者独自のノウハウがあれば今後の旅でも何か役に立つことがあるかもしれない。

 

「あいよ。先方には伝えとくから、明日の朝一で正面門に行っとくれ」

「分かった」

 

 亮牙が依頼書を受け取るのを確認すると、キャサリンがユエとシアに目を向けた。

 

「あんた達も体に気をつけて元気でおやりよ?この子達に泣かされたら何時でも家においで。あたしがぶん殴ってやるからね」

「ん、お世話になった。ありがとう」

「はい、キャサリンさん。良くしてくれて有難うございました!」

 

 キャサリンの人情味あふれる言葉にユエとシアの頬も緩んだ。特にシアは嬉しそうだ。この町に来てからというもの自分が亜人族であるということを忘れそうになる。もちろん全員が全員、シアに対して友好的というわけではないが、それでもキャサリンを筆頭にソーナやクリスタベル、ちょっと引いてしまうがファンだという人達はシアを亜人族という点で差別的扱いをしなかった。土地柄かそれともそう言う人達が自然と流れ着く町なのか、それは分からないが、いずれにしろ彼女にとっては故郷の樹海に近いくらい温かい場所であった。

 

「あんた達もこんないい子達泣かせんじゃないよ?精一杯大事にしないと罰が当たるからね?」

「当たり前だ」

「言われなくても承知してますよ」

 

 キャサリンの言葉に苦笑いで返す亮牙とハジメに、彼女は一通の手紙を差し出した。

 

「これは?」

「あんた達、色々厄介なもの抱えてそうだからね。町の連中が迷惑かけた詫びのようなものだよ。他の町でギルドと揉めた時は、その手紙をお偉いさんに見せな。少しは役に立つかもしれないからね」

「…俺スラッグ、やっぱりアンタ、只者じゃないな?」

「おや、詮索はなしだよ? いい女に秘密はつきものさね」

「そうか、有り難く貰っとくよ」

「素直でよろしい!色々あるだろうけど、死なないようにね」

 

 謎多き、片田舎の町のギルド職員キャサリン。亮牙達は、そんな彼女の愛嬌のある魅力的な笑みと共に送り出された。

 その後彼らは、ユエとシアがどうしてもと言うのでクリスタベルの場所にも寄った。だが、町を出ると聞いた瞬間、クリスタベルは最後のチャンスとばかりにハジメに襲いかかる巨漢の化物と化し、恐怖のあまり振動破砕を使って葬ろうとするハジメを、他の四人が必死に止めるという衝撃的な出来事があったが、まあ、ここでは割愛しよう。

 マサカの宿でも、最後の晩と聞いたソーナが、遂には堂々と風呂場に乱入、そして部屋に突撃を敢行したことで、遂に亮牙の怒りが爆発し、彼女を縛り上げて宝物庫から取り出した大釜で釜茹での刑に処そうとした。何とか店主夫妻がお詫びとして今までの宿泊代を半額にする事で彼の怒りは鎮まったが、騒ぎの元凶のソーナは母親に本物の亀甲縛りをされて一晩中、宿の正面に吊るされることになった。何故彼女の母が亀甲縛りを知っていたのかという話も割愛である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、そんな面白おかしいブルックの町民達を思い出にしながら正面門にやって来た亮牙一行を迎えたのは、商隊のまとめ役と他の護衛依頼を受けた冒険者達だった。どうやら亮牙達が最後のようで、まとめ役らしき人物と14人の冒険者が、やって来た五人を見て一斉にざわついた。

 

「お、おい、まさかあの男子三人って『地獄の番犬』なのか⁉︎」

「マジかよ!嬉しさと恐怖が一緒くたに襲ってくるんですけど!」

「見ろよ、俺の手。さっきから震えが止まらないんだぜ?」

「いや、それはお前がアル中だからだろ?」

 

 ユエとシアの登場に喜びを顕にする者やら、手の震えを亮牙達のせいにして仲間にツッコミを入れられる者など様々な反応だ。五人とも呆れながら近寄ると、商隊のまとめ役らしき人物が声をかけた。

 

「君達が最後の護衛かね?」

「ああ、依頼書だ」

 

 亮牙が懐から取り出した依頼書を確認して、まとめ役の男は納得したように頷き、自己紹介を始めた。

 

「私の名はモットー・ユンケル。この商隊のリーダーをしている。君達のランクは未だ青だそうだが、キャサリンさんからは大変優秀な冒険者と聞いている。道中の護衛は期待させてもらうよ」

「もっとユンケル、か…。俺の育った地域に同じ名前の滋養強壮ドリンクがあるが、中々苦労してそうな名前だな…」

「ハハハ、まぁ大変だが慣れたものだよ」

「こっちも全員腕っぷしには自信があるから、期待は裏切らんさ。俺は亮牙。こっちは仲間のハジメ、ユエ、シア、スラッグだ」

「それは頼もしいな。…ところで、この兎人族、売るつもりはないかね?それなりの値段を付けさせてもらうが」

 

 モットーの視線が値踏みするようにシアを見た。兎人族で青みがかった白髪の超がつく美少女を目にして、商人の性として珍しい商品に口を出さずにはいられないのだろう。首輪から奴隷と判断し、即行で所有者たる亮牙に売買交渉を持ちかけるあたり、商人としての手腕が伺える。

 その視線を受けて、シアは「うっ」と嫌そうに唸ると亮牙の背後にそそっと隠れた。ユエやスラッグもモットーを見る視線が厳しくなる。だが、一般的な認識として樹海の外にいる亜人族は奴隷しかおらず、珍しい奴隷の売買交渉を申し出るのは商人として当たり前のことだ。モットーを責めることは出来ない。

 

「ほぉ、随分と懐かれていますな…。中々、大事にされているようだ。ならば、私の方もそれなりに勉強させてもらいますが、いかがです?」

「お断りだ」

 

 シアの様子を興味深そうに見ていたモットーが更に交渉を持ちかけるが、亮牙はそう即答し、シアは嬉しそうな顔になり、他の三人も微笑んだ。

 モットーも内心予測していたが、それでもシアが生み出すであろう利益は魅力的だったので、何か交渉材料はないかと会話を引き伸ばそうとした。だが、そんな意図も読んでいた亮牙は、揺るぎない意志を込めて答えた。

 

「彼女は首輪こそつけてるが、俺にとって大切な人だ。奪おうとする奴は、神だろうが容赦はせん。…もっとも、創造主の癖に亜人を差別する神が寄越せなどと抜かすとは到底思えんがな」

「そうですか、それなら仕方ありませんな。ここは引き下がりましょう。ですが、その気になったときは是非、我がユンケル商会をご贔屓に願いますよ。それと、もう間も無く出発です。護衛の詳細は、そちらのリーダーとお願いします」

 

 亮牙の発言は、下手をすれば聖教教会から異端の烙印を押されかねない、相当危険な爆弾発言だ。それ故に、モットーは亮牙がシアを手放すことはないと心底理解させられた。

 モットーがすごすごと商隊の方へ戻ると、周囲が再び騒ついた。

 

「すげぇ、女一人のために、あそこまで言うか…。痺れるぜ!」

「流石、地獄の番犬と言われるだけあるぜ。自分の女に手を出すやつには容赦しない…。ふっ、漢だぜ」

「いいわねぇ~、私も一度くらい言われてみたいわ」

「いや、お前、男だろ?誰が、そんなことッあ、すまん、謝るからっやめっアッー‼︎」

 

 護衛仲間の愉快な発言に、改めてブルックの町の人々はイカれてるな。亮牙がそんな事を思っていると、背中に何やらムニュッ♡と柔らかい感触を感じ、更に腕が背後から回され彼を抱きしめた。

 亮牙が肩越しに振り返ると、肩に顎を乗せたシアの顔が至近距離に見えた。その顔は真っ赤に染まっており、実に嬉しそうに緩んでいた。後ろでは、ハジメ達が呆れたように苦笑していた。

 

「全く、今の発言は割りと危なかったよ?」

「俺スラッグ、グリムロックも短気だなぁ」

「すまん、ついイラッとしてな…。てかスラッグ、お前には言われたくねぇ」

「ん、でも亮牙、カッコよかった」

「はいっ!亮牙さん、大好きですぅ〜!」

 

 恋人から「神にだって渡さない」と宣言され、シアはデレッデレだ。嬉しいものは嬉しいのだろう。亮牙も苦笑しつつ、愛おしそうに彼女の頭を撫で返した。

 早朝の正門前、多数の人間がいる中で、ハジメとユエのバカップルぶりをとやかく言えないくらいイチャつく亮牙とシア。その光景を、商隊の女性陣は生暖かい眼差しで、男性陣は死んだ魚のような眼差しで見つめるのであった。

 

 

 

 

 

 




スタジオシリーズの『ザ・ムービー』版グリムロックが欲し過ぎる!
あとサードパーティーではPlanetXのIDW版グリムロック「Cacus」も出るとか。

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