グリムロックは宇宙最強   作:オルペウス

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意外とデブデブ上がれ〜が好評で何よりです(笑)


支部長直々の依頼

 ドット秘書長と呼ばれた男は、片手の中指でクイッとメガネを押し上げると落ち着いた声音で京矢達に話しかけた。

 

「話は大体聞かせてもらいました。証人も大勢いる事ですし嘘はないのでしょうね。やり過ぎな気もしますが…。そこは、まぁ、死んでいませんし許容範囲としましょう。取り敢えず、レガニドが目を覚まし一応の話を聞くまではフューレンに滞在はしてもらうとして、身元証明と連絡先を伺っておきたいのですが―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――取り敢えず、今はそれで勘弁していただけませんか!!?」

 

 そう叫びながらドットは、もう、今はこれで譲渡してくださいと言う勢いで頭を下げて亮牙達、正確には目の前で呑気に茶を啜る亮牙に頭を下げた。

 

「そうだな、そのくらいの譲渡はしてやるか。あのデブは天罰というか神の仲間入りでもしたのかもしれねぇし、その男爵家も喜ぶだろうさ。にしてもやっぱり人間、話し合いが大切だな」

「いやいや亮牙、まるでこ◯亀の両さんみたいだったよ…」

 

 呑気にそう言う親友に呆れるしかないハジメであった。

 亮牙はドットとの交渉で、このトータスには名誉毀損など無いことに目をつけ、先程大声で町中に叫んだ内容を今回護衛依頼を受けたモットー率いるユンケル商会に伝えに行く、と脅しをかけた。

 

『フューレンの冒険者ギルドは犯罪組織との繋がりどころか、冒険者ギルド自体が犯罪組織の隠れ蓑と化している。そんな悪徳ギルドから雇った護衛など、道中でたちまち追い剥ぎに様変わりして、金品の強奪や連れの女を犯され、最悪の場合奴隷市に売り飛ばされたり命を奪われるかもしれない。そんな目に遭わされないよう、まだこの街に残っている前の街からの護衛を個人で雇わせよう。同業者達にもフューレンは危険だと広めて貰おう』

 

 レガニドとプームが恐喝・誘拐・殺人未遂の現行犯という事実、さらに周囲の様子からして二人が常習犯だった可能性が高すぎるために、話が広まればフューレン全体に大打撃をもたらす方向に話を進めていった亮牙に、ドットは完全に敗北したのであった。

 モットーが話に乗るかは分からないが、商人として信頼を重視しているだろうから、下手したら商業都市が二人の愚者達のせいで寂れさせかねない。

 ドットに同情しつつも、ハジメはステータスプレートを差し出した。

 

「連絡先なんですが、まだ滞在先が決まってないんで…。そっちで融通して頂けるならお互いに手間が省けると思うんですが?」

「君も抜け目ないですね…。ふむ、青ですか。向こうで伸びている彼は黒なんですがね…。そちらの方達のステータスプレートはどうしました?」

 

 そう言いながらドットは亮牙達四人に視線を向けた。

 

「ああ、俺達四人はステータスプレートは紛失しちまってな。高くつくだろうし、再発行はまだしてねえ」

「しかし、身元は明確にしてもらわないと。記録をとっておき、君達が頻繁にギルド内で問題を起こすようなら、加害者・被害者のどちらかに関係なくブラックリストに載せることになりますからね。よければギルドで立て替えますが?」

 

 どうやらどうあってもステータスプレートは必要になってくるらしい。そうなるといっそのこと、亮牙は見せてスラッグは作成した方がいいかもしれないのだが、ユエとシアの場合は隠蔽前の技能欄の固有魔法が表示され、見られてしまうだろう。それに今なら神代魔法もおまけされているから大騒ぎになってしまう。

 面倒な事になったなと、亮牙とハジメがお互いの顔を見合わせると、ユエが気づいたように話しかけてきた。

 

「…二人とも、手紙」

「手紙?ああ、キャサリンがくれたやつか…」

 

 彼女の一言に、二人はブルックの町でキャサリンから渡された手紙の事を思い出した。どういったものか分からないが、だめで元々、亮牙は懐からそれを取り出してドットに提出した。

 

「身分証明の代わりになるか分からんが、知り合いのギルド職員から、困ったらギルドのお偉いさんにこの手紙を渡せと助言されてな…」

「?知り合いのギルド職員ですか?…拝見します」

 

 最初は訝し気な様子だったドットだったが、渡された手紙を開いて内容を流し読みする内にギョッとした表情を浮かべた。

 そして、亮牙達五人の顔と手紙の間で視線を何度も彷徨わせながら手紙の内容を繰り返して読み込むと、手紙を折り畳んで丁寧に便箋に入れ直し、五人に視線を戻した。

 

「…この手紙が本当なら確かな身分証明になりますが、この手紙が差出人本人のものか私一人では少々判断が付きかねます。支部長に確認を取りますから少し別室で待っていてもらえますか?そうお時間は取らせません。10分、15分くらいで済みます」

「俺スラッグ、やっぱりキャサリン、只者じゃなかった…」

「だな…。まぁ、それくらいなら構わんぞ」

「職員に案内させます。では、後ほど」

 

 ドットは傍の職員を呼ぶと別室への案内を言付けて、手紙を持ったまま颯爽とギルドの奥へと消えていった。指名された職員に促され、亮牙達はそれに従い移動していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 亮牙達が応接室に案内されてからきっかり十分後、扉がノックされ、亮牙の返事から一拍置いて扉が開かれた。現れたのは先程のドット秘書長に加え、金髪をオールバックにした鋭い目付きの三十代後半くらいの男性だった。

 

「初めまして、冒険者ギルド、フューレン支部支部長イルワ・チャングだ。亮牙君、ハジメ君、スラッグ君、ユエ君、シア君、でいいかな?」

 

 簡潔な自己紹介の後、五人の名を確認がてらに呼び握手を求めるイルワ支部長に、亮牙達も握手を返しながら返事した。

 

「ああ、構わん。名前は手紙に書いてあったか?」

「その通りだ。先生からの手紙に書いてあったよ。随分と目をかけられている、というより注目されているようだね…。将来有望、ただしトラブル体質なので、出来れば目をかけてやって欲しいという旨の内容だったよ」

「確かにブルックではトラブル続きだったから、否定はできんな…。まぁそれは置いとくとして、肝心の身分証明の方はそれで問題ないようだな?」

「ああ、先生が問題のある人物ではないと書いているからね。あの人の人を見る目は確かだ。わざわざ手紙を持たせるほどだし、この手紙を以て君達の身分証明とさせてもらうよ」

 

 『先生』と呼んでいる様子から、キャサリンはイルワとかなり濃い付き合いがあるらしく、随分と信用があるようだ。彼女の手紙が役立ったことに感謝しつつ、亮牙の隣に座っているシアはキャサリンに特に懐いていたことから、その辺りの話が気になるようでおずおずとイルワに尋ねた。

 

「あの~、キャサリンさんって何者なのでしょう?」

「ん?本人から聞いてないのかい?彼女は、王都のギルド本部でギルドマスターの秘書長をしていたんだよ。その後、ギルド運営に関する教育係になってね。今、各町に派遣されている支部長の五、六割は先生の教え子なんだ。私もその一人で、彼女には頭が上がらなくてね。その美しさと人柄の良さから、当時は、僕らのマドンナ的存在、あるいは憧れのお姉さんのような存在だった。その後、結婚してブルックの町のギルド支部に転勤したんだよ。子供を育てるにも田舎の方がいいって言ってね。彼女の結婚発表は青天の霹靂でね。荒れたよ。ギルドどころか、王都が」

「はぁ~そんなにすごい人だったんですね~」

「…キャサリンすごい」

「俺スラッグ、キャサリンのサイン貰っとけりゃ良かったかな?」

「思いっきり中枢の人間だったとはね」

「だな、取り敢えず、問題ないならもう行っていいよな?」

「少し待ってくれるかい?」

 

 元々、身分証明のためだけに来たわけなので、用が終わった以上長居は無用だと亮牙が確認するが、イルワは瞳の奥を光らせると彼らを留まらせた。

 何となく嫌な予感がした亮牙達だが、イルワは隣に立っていたドットを促して一枚の依頼書を五人の前に差し出した。

 

「実は、君達の腕を見込んで、一つ依頼を受けて欲しいと思っている」

「「いやだ」」

 

 イルワが依頼を提案した瞬間、他人にこき使われるのは好きでない亮牙もスラッグもそう即答して席を立とうとし、ハジメ達も続こうとするが、続くイルワの言葉に思わず足を止めた。

 

「ふむ、取り敢えず話を聞いて貰えないかな?聞いてくれるなら、今回の件は不問とするのだが…」

「…つまり、話を聞かなければ正規の手続きを行い、聞いてくれるなら即座に開放か。大都市のギルド長だけあって、喰えん奴だ…」

「ドット君から聞いたが、ギルドを脅した君も大概だと思うけどね」

 

 別に手続きに関してはそういうものだと納得しているからいいのだが、面倒と思う所はある。それを合法的に回避できる、と言われると心の天秤は傾いてしまう。

 亮牙達はどうするべきか、と考え込むように顔をしかめた後、

 

「仕方ないよ亮牙。一応話だけは聞いてみない?」

「…それもそうだな。三人も構わんか?」

「ん、大丈夫」

「問題ないですぅ」

「俺スラッグ、めんどくさいけど仕方ない…」

 

 ハジメは依頼を受ければ解放されるというわけではないので、話だけでも聞こうと提案し、亮牙達も納得して席に座り直した。

 

「聞いてくれるようだね、ありがとう。さて、今回の依頼内容だが、そこに書いてある通り、行方不明者の捜索だ。北の山脈地帯の調査依頼を受けた冒険者一行が予定を過ぎても戻ってこなかったため、冒険者の一人の実家が捜索願を出した、というものだ」

 

 イルワの話を要約すると、つまりこういうことだ。

 最近、北の山脈地帯で魔物の群れを見たという目撃例が何件か寄せられ、ギルドに調査依頼がなされた。北の山脈地帯は、一つ山を超えるとほとんど未開の地域となっており、大迷宮の魔物程ではないがそれなりに強力な魔物が出没するので高ランクの冒険者がこれを引き受けた。ただ、この冒険者パーティーに本来のメンバー以外の人物がいささか強引に同行を申し込み、紆余曲折あって最終的に臨時パーティーを組むことになった。

 この飛び入りが、クデタ伯爵家の三男ウィル・クデタという人物らしい。クデタ伯爵は、家出同然に冒険者になると飛び出していった息子の動向を密かに追っていたそうなのだが、今回の調査依頼に出た後、息子に付けていた連絡員も消息が不明となり、これはただ事ではないと慌てて捜索願を出したそうだ。

 伯爵家からも捜索に乗り出す人員を派遣しているが手は多い方がいいと冒険者にも依頼を出したのだが、中々の実力者達が行方不明になった以上、下手な人員では二時被害になるだけだろう。そこで『黒』の冒険者を瞬殺しライセン大峡谷を余裕で探索出来る亮牙達に白羽の矢を立てたのだ。

 しかしハルツィナ樹海の魔物の素材は出したが、ライセン大峡谷については何も話してない筈だが…?亮牙とハジメが胡乱気に首を傾げていると、シアがおずおずと手を上げた。

 

「シア、まさか…?」

「え~と、つい話が弾みまして…。てへ?」

「…その様子じゃユエもだな?全く、お喋りは程々にしとかんか…」

 

 亮牙に叱られてユエとシアはしょんぼりと肩を落としてしまい、その様子を見ていたイルワは苦笑しながら話を続けた。

 

「生存は絶望的だが、可能性はゼロではない。伯爵は個人的にも友人でね、できる限り早く捜索したいと考えている。どうかな。今は君達しかいないんだ。引き受けてはもらえないだろうか?」

「そうは言っても、僕らも旅の目的地があるので…。この街も通り道だったから寄ってみただけなんです。流石に北の山脈地帯までは…」

「報酬は弾ませてもらうよ?依頼書の金額はもちろんだが、私からも色をつけよう。ギルドランクの昇格もする。君達の実力なら一気に『黒』にしてもいい」

「生憎、キャサリンのおかげで金には困ってない。冒険者としての地位も大して興味ないな」

「なら、今後、ギルド関連で揉め事が起きたときは私が直接、君達の後ろ盾になるというのはどうかな?フューレンのギルド支部長の後ろ盾だ、ギルド内でも相当の影響力はあると自負しているよ?君達は揉め事とは仲が良さそうだからね。悪くない報酬ではないかな?」

「なあ、幾らそいつが友人の倅だからって、流石に贔屓し過ぎじゃないか?冒険者となった以上全て自己責任がルールだし、実家が貴族とはいえ跡取りとなる嫡男ってわけでもないだろ…」

 

 亮牙の疑問に、イルワが初めて表情を崩した。後悔を多分に含んだ表情だ。

 

「彼に、ウィルにあの依頼を薦めたのは私なんだ。調査依頼を引き受けたパーティーにも私が話を通した。異変の調査といっても、確かな実力のあるパーティーが一緒なら問題ないと思った。実害もまだ出ていなかったしね。ウィルは、貴族は肌に合わないと、昔から冒険者に憧れていてね…。だが、その資質はなかった。だから、優れた冒険者と一緒に、そこそこ危険な場所へ行って、悟って欲しかった。冒険者は無理だと。昔から私には懐いてくれていて…。だからこそ、今回の依頼で諦めさせたかったのに…」

 

 イルワの独白を聞きながら、亮牙は僅かに思案した。思っていた以上にイルワとウィルの繋がりは濃いらしく。すまし顔で話していたもののイルワの内心はまさに藁にもすがる思いなのだろう。生存の可能性は、時間が経てば経つほどゼロに近づいていく。無茶な報酬を提案したのも、彼が相当焦っている証拠だ。

 ハジメ達に視線を向けた後、亮牙はどうしたものかと目を閉じて思案し、四人も焦らずリーダーを見守った。

 

「…そこまで言うのなら、二つほど条件がある」

「条件?」

「ああ、そんなに難しいことじゃない。まず一つ、ユエ・シア・スラッグにステータスプレートを作り、そこに表記された内容について他言無用を確約すること。もう一つは、ギルド関連に関わらずお前の持つコネクションの全てを使って、俺達の要望に応え便宜を図ること。この二つだな」

「それはあまりに…」

「無理なら結構、この話は無しだ。もう行かせてもらうぞ」

 

 席を立とうとする亮牙に、イルワもドットも焦りと苦悩に表情を歪めた。一つ目の条件は特に問題ないが、二つ目に関しては実質、フューレンのギルド支部長が一人の冒険者の手足になるようなものだ。責任ある立場として、おいそれと許容することはできなかった。

 

「何を要求する気かな?」

「安心しろ、殺人許可証を寄越せとか無茶苦茶な要求じゃねえ…。ただ俺達は少々特異な存在でな、これから先、あのカルト教団共からほぼ確実に目をつけられると思うが、その時伝手があった方が便利だと思っただけだ。面倒事が起きた時に味方に、最悪中立の立場になってくれればいい。指名手配とかされても施設の利用を拒まないとかな…」

「指名手配されるのが確実なのかい?ふむ、個人的にも君達の秘密が気になって来たな。キャサリン先生が気に入っているくらいだから悪い人間ではないと思うが…。そう言えば、君とシア君とスラッグ君は怪力、ユエ君は見たこともない魔法を使い、ハジメ君はアーティファクトを使ったと報告があったな…。その辺りが君達の秘密か…。そして、それがいずれ教会に目を付けられる代物だと…。大して隠していないことからすれば、最初から事を構えるのは覚悟の上ということか…。そうなれば確かにどの町でも動きにくい…。故に便宜をと…」

 

 流石、大都市のギルド支部長、頭の回転は早い。イルワは暫く考え込んだ後、意を決したように亮牙に視線を合わせた。

 

「犯罪に加担するような倫理にもとる行為・要望には絶対に応えられない。君達が要望を伝える度に詳細を聞かせてもらい、私自身が判断する。だが、できる限り君達の味方になることは約束しよう…。これ以上は譲歩できない。どうかな?」

「ああ、交渉成立だ。報酬は依頼が達成されてからでいい。そのクソガキ自身か遺品あたりでも持って帰れば充分だろう?」

 

 亮牙としては、シア達のステータスプレートを手に入れるのが一番の目的だ。この世界では何かと提示を求められるステータスプレートは持っていない方が不自然であり、この先、町による度に言い訳するのは面倒なことこの上ないだろう。

 問題は、最初にステータスプレートを作成した者に騒がれないようにする方法だったが、イルワの存在がその問題を解決した。ただ、条件として口約束をしても、まだ信用はできない。いずれ自分達の特異性はばれるだろうが、積極的に手を回されるのは好ましくないので、ステータスプレートの作成を依頼完了後にした。どんな形であれ、心を苛む出来事に答えをもたらした自分達をイルワも悪いようにはしないだろうという打算だ。

 イルワも亮牙の意図は察しているらしく、苦笑いしつつも捜索依頼の引き受け手が見つかったことに安堵しているようだ。

 

「本当に君達の秘密が気になってきたが、それは依頼達成後の楽しみにしておこう。君の言う通り、どんな形であれウィル達の痕跡を見つけてもらいたい…。亮牙君、ハジメ君、ユエ君、シア君、スラッグ君、宜しく頼む」

 

 イルワは最後に真剣な眼差しで亮牙達を見つめた後、ゆっくり頭を下げた。大都市のギルド支部長が一冒険者に頭を下げるなど、そうそう出来ることではない。キャサリンの教え子というだけあって、人の良さがにじみ出ていた。

 そんな彼の様子を見て、亮牙達は立ち上がると気負いなく実に軽い調子で答えた。

 

「おう」

「ええ」

「ん」

「はいっ」

「俺スラッグ、分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、支度金や北の山脈地帯の麓にある湖畔の町への紹介状、件の冒険者達が引き受けた調査依頼の資料を受け取り、亮牙達は部屋を出て行った。閉まった扉を暫く見つめていたイルワは、「ふぅ~」と大きく息を吐いた。部屋にいる間、一言も話さなかったドットが気づかわしげにイルワに声をかけた。

 

「支部長、よかったのですか?あのような報酬を…」

「…ウィルの命がかかっている。彼ら以外に頼めるものはいなかった。仕方ないよ。それに、彼等に力を貸すか否かは私の判断でいいと彼等も承諾しただろう。問題ないさ。それより、彼らの秘密…」

「ステータスプレートに表示される『不都合』ですか…?」

「ふむ、ドット君。知っているかい?ハイリヒ王国の勇者一行は皆、とんでもないステータスらしいよ?」

 

 ドットは、イルワの突然の話に細めの目を見開いた。

 

「ッ!支部長は、彼らが召喚された者、『神の使徒』の一人であると?しかし、彼らはまるで教会と敵対するような口ぶりでしたし、勇者一行は聖教教会が管理しているでしょう?」

「ああ、その通りだよ。…でもね、およそ四ヶ月前、その内の二人がオルクスで亡くなったらしいんだよ。奈落の底に魔物と一緒に落ちたってね」

「…まさか、その者達が生きていたと?四ヶ月前と言えば、勇者一行もまだまだ未熟だったはずでしょう?オルクスの底がどうなっているのかは知りませんが、とても生き残るなんて…」

 

 ドットは信じられないと首を振りながら上司の推測を否定するも、当のイルワはどこか面白そうな表情で再び亮牙達が出て行った扉を見つめた。

 

「その内の一人は錬成師というありふれた天職でありながら異世界の武器を作り出し、もう一人は単身でベヒモスを仕留めたそうだ…」

「それは、しかし、やはり信じられません…。あのベヒモスを単身で仕留めたという事も含めて…」

「そうだね。…でも、もしそうなら、何故彼らは仲間と合流せず、旅なんてしているのだろうね?彼は一体、闇の底で何を見て、何を得たのだろうね?」

「何を、ですか…」

「ああ、何であれきっとそれは、教会と敵対することも辞さないという決意をさせるに足るものだ。それは取りも直さず、世界と敵対する覚悟があるということだよ」

「世界と…」

「私としては、そんな特異な人間とは是非とも繋がりを持っておきたいね。例え、彼が教会や王国から追われる身となっても、ね。もしかすると、先生もその辺りを察して、わざわざ手紙なんて持たせたのかもしれないよ」

「…支部長、どうか引き際は見誤らないで下さいよ?」

「もちろんだとも」

 

 スケールの大きな話に目眩を起こしそうになりながら、それでもドットは秘書長として上司への忠告は忘れなかった。しかし当のイルワは何かを深く考え込み、部下の忠告にも半ば上の空で返すのだった。

 

 

 

 

 




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