あと今更ですが、相変わらずアンチあります。ご注意下さい。
翌日、まだ日がしっかり登らず薄暗い頃、亮牙達五人はすっかり旅支度を終えて、「水妖精の宿」の直ぐ外にいた。
昨晩、愛子と話し合った後、亮牙は僅かながらも夕食時の喧嘩沙汰の迷惑料をオーナーのフォスに払った(足りなかったら愛子達に請求するよう告げた)が、当のフォスは人格者だったことから、亮牙が何故激怒したかも把握しており責めたりはしなかった。更に今朝は、極めて早い時間だと言うのに嫌な顔一つせず、移動しながら食べられるようにと朝食として海老チャーハンの握り飯が入った包みを渡してくれた。流石は高級宿、粋な計らいだと感心しながら、亮牙達は好意に甘えて感謝と共に受け取った。
朝靄が立ち込める中、五人はウルの町の北門に向かった。そこから北の山脈地帯に続く街道が伸びているのだ。馬で丸一日くらいだというから、シュタイフとアリオンで飛ばせば三、四時間くらいで着くだろう。
ウィル・クデタ達が、北の山脈地帯に調査に入り消息を絶ってから既に五日経っている。貴族の馬鹿息子はとっくに死んでるだろうし、冒険者達も生存は絶望的だと亮牙は考えていたが、万一ということもある。生きて帰せば、イルワの自分達に対する心象は限りなく良くなるだろうから、出来るだけ急いで捜索するつもりだ。幸いなことに天気は快晴、搜索にはもってこいの日だ。
幾つかの建物から人が活動し始める音が響く中、表通りを北に進み、やがて北門が見えてきた。ふと亮牙達は、その北門の傍に複数の人の気配を感じ目を細めた。特に動くわけでもなくたむろしているようだ。
朝靄をかきわけると待っていたのは…
「待ってましたよ、南雲君に灘君!」
愛子と生徒六人の姿だった。
「…何となく想像つくけど、何してんだろあの人達?」
「ほっとけハジメ。ガキと同じで構うとつけ上がる。無視しろ無視」
「聞こえてますよ!誰がガキですか⁉︎いい加減にしないと怒りますよ、灘君!」
「…朝っぱらから五月蝿ぇよ。何の用だ?」
無視して通り過ぎようとする亮牙達だったが、怒って噛みついてくる愛子にイラッとして、グルルルと唸りながら睨みつけた。一瞬、気圧されてビクッとする愛子だったが、毅然とした態度を取ると亮牙と正面から向き合った。ばらけて駄弁っていた優花達六人も彼女の傍に寄ってきた。
「私達も行きます。行方不明者の捜索ですよね?人数は多いほうがいいです」
「いらん、余計なお世話だ」
「な、何故ですか?人探しに行くのなら…」
「ピクニックじゃねえんだよ。足手纏いになるのが目に見えてる。寝言抜かすならさっさと宿に戻って二度寝してろ」
見れば、愛子達の背後には馬が人数分用意されていた。一瞬、こいつ等乗馬出来るのか?と疑問に思った亮牙とハジメだが、至極どうでもいいことなのでスルーした。乗れようが乗れまいが、どちらにしろ自分達の乗り物の速度に敵うはずがないのだ。
だが、亮牙の物言いにカチンと来たのか、愛ちゃん大好き娘、親衛隊の実質的リーダーである優花が食って掛かった。どうやら、昨日の亮牙の殺意や、それに対して自分達が晒した醜態や負い目を一時的に忘れるくらい愛ちゃん愛が強いらしい。しかし、それは自殺行為も同然だった。
「ちょっと、そんな言い方ないでしょ?灘と南雲が私達のことよく思ってないからって、愛ちゃん先生にまで当……ゲフッ!!?」
「「「「「「ッ!!?」」」」」」
優香の文句は続かなかった。一瞬で彼女の側まで間合いを詰めた亮牙が、容赦なく膝蹴りを彼女の腹に直撃させたのだ。一応相手が女だからと、彼なりに手加減したが、突然の容赦ない攻撃に愛子も他の五人もギョッとなり、優香はあまりの痛みに涙目になりながら、その場に崩れ落ちた。
だか亮牙はお構いなしと言わんばかりに、スルトを引き抜いた。
「二度と俺の目の前に現れるなって言ったよな?そんなに死にたきゃ殺してやるよ、寄生虫が」
そう言って優香にスルトを振り下ろそうとする亮牙。彼にとって彼女も他の五人も、自分を忌み嫌うのはどうでも良かったが、香織に構われると言う理由だけで光輝や檜山とグルになってハジメを虐げた、嫌悪の対象でしかなかった。昨晩情けをかけたのにもう調子に乗って喧嘩を売るとは、最早情けをかける必要はないだろう。
他の生徒達は優香を助けようと飛び出したかったが、亮牙が怖くて止めることすら出来なかった。対してシア達も、優香達が地球で亮牙とハジメを蔑んできた罪を知っていたことから、止めようとは思わなかった。特にハジメは亮牙が謂れのない罪を着せられ、更にあの誤爆を事故と片付けていたことを知り、流石に我慢の限界だった。
早朝から惨劇が始まろうとした瞬間、愛子が亮牙と優香の間に入り、必死に制止に入った。
「灘君、やり過ぎです!確かに園部さんの態度も褒められたものじゃなかったですが、男性が女性に手を上げるとは何事ですか!それに連れて行けない理由があるなら、もっとはっきり教えて下さい」
愛子の剣幕に亮牙ははぁと溜息を吐くと、スルトを振り下ろすのをやめた。流石に愛子の事は嫌っていなかったので、退きそうにもない彼女ごと斬り捨てるつもりはなかった。
それを見て生徒達は胸を撫で下ろすが、危うく殺されかけた優香自身は、その場にへたり込んだまま体を震わせ涙ぐんでいた。その姿に思わず生徒達はキッと亮牙を睨みつけるが、当の本人はどうでも良さそうだ。
「これはテーマパークで迷子を探すのとは訳が違うぞ。今から行くのはかなり山奥、それも肉食獣がわんさか暮らしている地帯だ。そこで冒険者達が行方不明になって五日経ってる。これだけ言っても、何があったか想像つかねぇか?」
それを聞き、愛子達は「うっ…」と怯んだ。どう考えても、魔物に襲われて壊滅した可能性が高過ぎる。それも食い殺されるという最悪の形でだ。
顔を青くする彼女達などお構いなしに、亮牙は話を続けた。
「行方不明者には貴族の馬鹿息子という素人が一人いたが、他の連中はソイツと親しかった冒険者ギルドの支部長が組ませただけあって、選りすぐりのプロだったのは明白だ。そんな連中が壊滅したって事は、相当厄介な奴が生息している可能性が高い。俺達五人はより厄介な場所で獰猛な奴らを仕留めてきた実績があるし、人の生死も沢山見てきたから、最悪食い散らかされた遺体を回収する覚悟も出来てる。対して、お前らはどうだ?」
そう言いながら冷めた目で見てくる亮牙に、愛子達は何も言えなかった。
優香達は愛子の護衛を買って出ながらも、戦争への参加を拒んでから碌に訓練もしてなかったし、ましてや人の死を見慣れたわけでもなかった。おまけに神の使徒と持ち上げられて日々振る舞われる美食の数々に、少し脂肪や贅肉が付いてきていた。優香の腹を蹴飛ばした時の感触から、亮牙はその事をすぐ見抜いていた。
愛子はそのチート能力から農地改革のため各地を訪れてきたが、はっきり言ってしまえば農作業の延長でしかなく、戦闘訓練など受けている筈もなかった。作物を荒らす害獣の駆除に協力したとしても所詮イナゴか雀レベル。大きさ・強さ共に象レベルの生き物を相手にした事などあるわけなかった。
そんな連中を連れて行ったところで、役に立つどころか足手纏いになるのは明白だ。捜索のペースについて行けなくなるだけでなく、飢えた魔物に怯えて右往左往し、食い殺された行方不明者の遺体など見たら阿鼻叫喚となってしまうに決まってる。
「それに馬なんかで行っても、却って馬を食いに肉食獣が寄ってくるぞ?」
「な、なら灘君達はどうやって移動するつもりなんですか?」
「馬なんか使わないに決まってるだろ…。ハジメ、頼む」
「あいよ」
そう言うとハジメは「宝物庫」からシュタイフとアリオンを取り出した。愛子達は、突然虚空から大型のバイクが二台も出現してギョッとなった。重厚なフォルムと異世界には似つかわしくない存在感に度肝を抜かれて、彼女達はマジマジと見つめたまま答えない。クラスの中でもバイク好きの相川は特に興奮した様子だ。
「分かったでしょ?こっちは馬なんかと移動速度は違う。使わせろって言われても、君達僕の事を散々無能だって嘲笑って、『南雲の作ったモンなんか使わねーよ』って言ってたじゃん。今更手のひら返して頼っても遅いからね」
「そう言うことだ。俺達はマサイのサファリガイドじゃねえんだ。足手纏いを大量に連れて行くつもりはない。分かったらさっさとどけ」
行方不明者の捜索は時間との勝負だと言うのに、その時間を大きく無駄にしたと感じながら、亮牙達は出発しようとした。
それでもなお愛子は食い下がった。彼女としては二つの理由から、是が非でも彼らに着いて行きたかった。
一つ目は昨日の話の続きだ。昨日、亮牙とハジメがした話は愛子としては決して無視できず、今後のためにももっと詳しく話を聞いておく必要があったのだ。
そして二つ目は行方不明になっている清水だ。周囲の人里では目撃情報がなかったが、人がいない北の山脈地帯に関しては、まだ碌な情報収集をしていなかったと思い当たり、亮牙達の人探しのついでに清水の手がかりも探そうと思ったのだ。
「灘君、南雲君。先生は先生として、どうしても君達からもっと詳しい話を聞かなければなりません。だから、きちんと話す時間を貰えるまでは離れませんし、逃げれば追いかけます。君達にとって、それは面倒なことではないですか?移動時間とか捜索の合間の時間で構いませんから、時間を貰えませんか?」
「脅したって無駄だ。大体そんな格好じゃ二分と持た…」
亮牙がそう一蹴しようとすると、愛子はいきなり服の袖を捲り上げ、シャツのボタンを外し、更にはスカートも動き易いようにと端のところを破いて腿を露にすると、これでどうですかと言わんばかりに無い胸を張った。
突然の奇行に優香達は「あ、愛ちゃん⁉︎」と顔を赤くしながら驚愕し、亮牙やハジメ達も当惑して呆気に取られた。
「………そりゃ何の真似だ?」
「これで準備万端です!文句はないですよね?」
そう自信満々に答える愛子に、最早呆れを通り越して一種の感心を覚えた亮牙。決意に光り輝く瞳を見る限り、これ以上の説得は時間の無駄、それこそ生存者の発見が遅れるだけだ。
この人は昔から変わらない。かつて自分が光輝達のせいで謂れのない罪を着せられた時も、自分自身他人の評価など気にしないのでどうでも良かったのに、「力になれなくてごめんなさい。でも、先生は灘君の味方ですから!」と、涙を流して頭を下げてきたほどだ。まあ、そう言った点は嫌いになれなかったから、育ての親や南雲家の皆ほどではないが、敬意を払うべき相手として好感を抱いていた。
大きく溜息を吐くと、亮牙は仲間達と視線を合わせた。ハジメも同じ気持ちなのか仕方ないといった表情で、ユエ・シア・スラッグはどんな決定をしても特に文句はなさそうだ。それを確認すると、彼は改めて愛子に向き直った。
「仕方ない。同行を認める。…だが、これだけははっきりさせとく。連れてくのはアンタ一人だけだ。そしてこのチームじゃ俺がリーダーだ。俺やハジメ達の指示に従わず勝手な行動をするようなら、姥捨山ならぬロリ捨山の刑に処してやるからな」
「分かりました。ってだから先生を卑猥な呼び方するのは止めなさい!」
亮牙が折れたことに喜色を浮かべ、むんっ!と無い胸を張る愛子だが、またロリッ娘呼ばわりされてうがー!と怒った。
そんな様子にハジメは苦笑しつつも、愛子を連れて行くなら大きい奴がいいなと、シュタイフとアリオンを宝物庫にしまった。代わりにビークルモードのパイロを取り出すと、ユエと共に先に運転席と助手席に乗り込んだ。
「俺スラッグ、グリムロックがこんなチビの言うこと聞くとは驚いた」
「彼女の事はある程度理解してるからな。教師として生徒のことには妥協出来ねえ性分なんだよ。これ以上の説得は無駄だ」
「ほぇ~、生徒さん想いのいい先生なのですねぇ~」
スラッグとシアは、亮牙が折れたことに驚いたように話しかけた。そして彼の参ったと言わんばかりの態度に、愛子を見る目が少し変わり、若干の敬意が含まれたようだ。
だが、もう出発だと言うのに、今度は優香達六人が愛子と口論になっていた。急いでるって言ってるのに何やってんだ、と呆れつつも、亮牙はシアとスラッグに先にパイロに乗るよう促すと、愛子を呼びに近づいた。
「皆さん、灘君の言う通り時間がないんです!お願いですから、ここは大人しく街で待機してて下さい!」
「駄目ですよ!愛ちゃんだけで灘達なんかと一緒に行ったら、どんな目に遭わされるか…」
「大丈夫です!灘君達を信じて下さい…!」
「いーえ、あんな奴信用出来ません!だったら私達も着いて行きますから!」
愛子は清水を捜すためにも早く出発したかったのだが、優香達が断固として亮牙達に着いて行く事を認めず、挙げ句の果てには自分達も無理矢理にでも着いて行くと言い出したため、必死に説得を試みていた。
本当なら最初は愛子一人だけで、亮牙達より早く正門に行って待ち伏せするつもりだった。だが、そのために夜明け前に起きだして宿を出ようとしていたところを、トイレに行っていた優花に運悪く見つかってしまったのだ。旅装を整えて有り得ない時間に宿を出ようとする彼女を、愛ちゃん護衛隊のリーダーである優香は、誤魔化しは許さないと問い詰めた。結果、「平然と殺人をしようとする灘達なんかに愛ちゃんを任せる訳にはいかない!」と、優香が生徒全員をたたき起こし全員で搜索に加わることになったのである。
なお、デビッド達護衛騎士の四人は、亮牙達がいるとまた諍いを起こしそうなので置き手紙で留守番を指示しておいた。聞くかどうかはわからないが…。
改めて生徒達を説得する事が出来ない自分の不甲斐無さに泣きたくなる愛子だったが、ふとそこへ亮牙が滅茶苦茶不機嫌そうな顔をして近づいて来たかと思うと、昨晩と同様に殺意をむき出しにした。昨晩に比べると大分抑えてはいるが、七人とも堪らず顔を真っ青にして震え上がった。
「急いでるって言ってるだろ?いつまでも無駄話してるなら置いてくぞ。さっさと乗れ」
「は、はい!皆さん、すみませんがちゃんとお留守番してて下さいよ!」
苛立った様子の亮牙にそう言われ、このままじゃ本当に置いて行かれると悟った愛子は、優香達にそう告げると足早にパイロに乗り込んだ。
亮牙もふんと鼻を鳴らすとパイロに近づいて行くが、やはり護衛隊の六人は怯えながらも納得できない様子で、代表して優香が食って掛かった。
「ま、待ちなさい灘!アンタ達なんかに愛ちゃんは任せられない!私達も連れて行きなさいよ!」
だが、当の亮牙は首を後ろに振り向けると、心底軽蔑するような目で優香達に吐き捨てた。
「随分と必死だな、寄生虫ども。都合の良い宿主を失うのがそんなに嫌か?」
「なっ⁉︎さっきから何なのよ!私達のこと寄生虫呼ばわりして、何様のつもりよ!」
「俺様に決まってるだろ。大体、寄生虫を寄生虫と言って何が悪い?」
先程から自分達のことを寄生虫呼ばわりしてくる亮牙に我慢ならず、声を荒げて怒鳴る優香。他の五人も同じ気持ちなのか、殺気立った目で睨んでくるが、当の亮牙はどこ吹く風だ。
「大体お前ら全員、こんな所で何油売ってるんだよ?あの疫病神四天王に賛同して、魔人族を絶滅させる戦争に参戦するんだろ?戦争なんかに巻き込ませないよう、必死に制止する先生の手に唾を吐きかけてまでな」
「うっ、そ、それは…」
そう言われて優香達は言葉を詰まらせる。だが、亮牙は容赦なく続けた。
「大方、俺とハジメが墜落した件で、死ぬのが怖くなったんだろ。訓練の時は散々生き物を楽しそうに殺しまくってたくせに、自分が殺される側になったらそれか…。だから恥知らずにも先生に泣きついて、徴兵を拒んでもらった、違うか?」
亮牙のその問いかけに、優香達は何も答えられない。正に彼の言う通りだからだ。
その事には薄々感づいていた亮牙だが、彼女達の様子からそれは確信に変わり、心底呆れ果てた。「死にかけたことで、死ぬのが怖くなった」なんて理由で拒めるようなものではないのが徴兵だ。国や時代によっては、そんな事を抜かせば容赦なく逮捕・死刑にされるだろう。
そもそも、最初の時点で愛子の制止を無視して光輝達に賛同した時点で、優香達には彼女に泣きつく資格などなかった。忌み嫌ってる亮牙やハジメが主張したからなんて言い訳は通用しない。最初に参戦に反対したのは愛子で、二人は彼女に賛同しただけなのだから。
「それで逃げるのに成功したはいいが、何かしないと周囲の目が厳しいし、勇者一行としてまた持て囃されたい。だから、また先生を利用しようって魂胆で護衛なんざ引き受けたんだろ?それに加え、先生があのレイシスト共に誑かされて、自分達を見捨てないよう見張るため、ってとこか?」
「「「「「「……」」」」」」
優香達は俯いたままだ。否定したくても、亮牙の一言一言が心にグサリと刺さり、何も言えないのだ。
彼の言った通り、護衛を引き受けたのは自分達の保身があったのは事実だ。臆病者と見下してくる檜山達を見返したかったし、王国や教会からの復帰を促す催促にはうんざりしていた。だが、愛子の護衛を引き受ければそんな煩わしい目には遭わないし、何より一緒に着いて行くだけで英雄としてチヤホヤされる。それに、四人とも残念なイケメンとは言えデビッド達はイケメンだ。独身の愛子を誑かし、自分達を再び参戦させようと唆すかもしれないという不安があった。
だが護衛とは、そんな生半可な気持ちで受けていい仕事じゃない。文字通り、いかなる場合にも我が身を盾にして護衛対象を守らなければならない危険な仕事なのだ。それこそ、自分の命を犠牲にしてでもだ。
しかし優香達からそんな覚悟は一切感じられなかった。何せ護衛を引き受けたくせに何一つ鍛えておらず、肝心な時には怯えているだけだ。おまけに昨晩、亮牙とハジメが愛子の部屋を訪ねた時も、誰一人として見張りにすらついていなかった。大方履いてたパンツでも洗って爆睡していたのだろうが、もし自分達が愛子によからぬ事をするつもりで来ていたら、どうなっていただろうか。
今にも泣き出しそうな優香達に対して、亮牙は冷酷に吐き捨てた。
「沈黙は肯定と受け取るぞ。要するにお前らは、自分の都合が悪くなる度にコロコロ縋り付く相手を変えて、其奴のゴマすって甘い汁を啜ってきたって訳だ。そんなクズ共を、寄生虫以外にどんな呼び方がある?」
亮牙にとって、愛子の善意に付け込んだ優香達は正に唾棄すべき連中だ。彼女達のやってる事は彼から言わせれば、血を吸うダニや腸内に潜む蟯虫が、宿主が死ぬ度に這い出して新たな宿主を探すのと同じだった。
愛子の事を少なくとも「強者」として認め、彼なりに慕っている亮牙としては、彼女の優しさに付け込む優香達「弱者」の所業をこれ以上黙って見ているつもりはなかった。
「はっきり言っとく。俺はお前らみたいに、テメェの保身のために人の善意に付け込むような卑怯者は大っ嫌いなんだよ。そんなクズ共を好き好んで連れてくつもりはねぇし、またフレンドリーファイアなんぞされたら堪らんからな」
そう言うと亮牙は最早話す事はないと、そのまま振り向きもせずに歩いて行き、パイロに乗り込んだ。
生徒達はただ黙って立ち尽くすだけで、女子に至っては泣き出してしまっていた。唯一、優香だけは涙目で何かを言い返そうとしたものの、声は出せなかった。
そんな彼女達を尻目に、パイロは山脈地帯に向けて走り出した。
今更ですが、優香ファンの皆様、申し訳ありません(>人<;)
二次創作ではヒロイン昇格している彼女ですが、個人的には原作でもあった的外れな文句とか言える立場かよ、って思ったりしたので、本作では他の護衛隊共々アンチとしました。
因みに愛ちゃんと主人公のやり取りは、『ジュラシック・ワールド』でザックとグレイを探しに行くときのオーウェンとクレアのオマージュのつもりです。
感想、評価お待ちしております。