グリムロックは宇宙最強   作:オルペウス

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オリキャラとなるアストロトレインの参戦で、更に本作に関心を持って下さった読者の方々が増えて、嬉しい限りです!

やっぱりオリ展開は構想が大変でした(苦笑)
今回、とある原作キャラが酷い目に遭います。ご注意下さい。
最初はあのキャラ登場まで書こうかと思ったのですが、思ったより長くなったのでそれは次回に。

2/9 ラヴィッジの解説追加しました。


乱戦

 突如としてウルの町に襲来したディセプティコン兵・アストロトレイン。グリムロックやスラッグに匹敵する巨体から放たれる濃厚な殺気に、流石のハジメ達も息を飲んだ。跳ね飛ばされて壁に叩きつけられた亮牙は、漸く立ち上がると、忌々しげに睨みながらかつての仇敵に問いかけた。

 

「何でお前がここにいる⁉︎誰の差し金だ⁉︎」

「親切に答えてやると思ったか?」

 

 それに対してアストロトレインは鼻で笑うと、両肩からミサイルポッド「ターボコアディレイザー」を展開し、ウルの町目掛けて無数のミサイルを発射した。

 

「ッ⁉︎ユエッ!!!」

「んっ!!!」

 

 亮牙の叫びを聞いたユエはすかさず結界を張り、彼もグリムロックの姿に戻ると、自らの巨体を盾に立ち塞がった。

 

ドガガガガガガガガガッ!!!

 

「ググゥ!!?」

「「「亮牙(さん)!!?」」」

「グリムロック!!?」

「ご主人様!!?」

 

 身長25mもの巨体が盾となり、更に魔法の天才であるユエが結界を張った事もあって、ウルの町へのミサイルの直撃は防がれた。しかしそのために集中砲火を受けたグリムロックは、思わず片膝をついてしまった。

 

「クソッタレが!お返しだ!」

「喰らいやがれですぅ‼︎」

 

 大切な仲間を傷つけられて怒りに燃えるシアとハジメは、それぞれオルカンとガトリング式レールガン「メツェライ」をぶっ放した。これにはアストロトレインも目を見開き、攻撃を受けて少しふらつくが、それ程深刻なダメージとはならなかった。

 

「やるな人間。だが、その程度で俺は倒せん」

 

 彼はそう言うと、すかさず両腕から展開した「イオニックディスプレーサーブラスター」をハジメ達に向けて発射しようとする。

 だが、この隙に体勢を立て直したグリムロックは、そうはさせんと足下の地面を抉り取り、アストロトレイン目掛けて巨大な土の塊を投げ飛ばした。土塊が激突してアストロトレインが一瞬後退ると、グリムロックはその一瞬の隙を見逃さずビーストモードに変形し、最初の轢き逃げアタックへのお返しと言わんばかりに体当たりを喰らわせた。

 

「グゥッ、貴様ッ!」

「俺グリムロック、お前を町から引き離す‼︎」

 

 そのまま二体は取っ組み合いとなり、ウルの町から離れていく。道中、逃げ遅れた魔物達は容赦なく二体に踏み潰され、内臓や血を撒き散らしながら地面のシミとなっていくが、目の前の敵との戦いに集中している二人にはどうでも良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…スラッグ、彼奴を知ってるみたいだけど、何者なの?」

 

 一方、壁際に留まったハジメ達は、心配そうにグリムロックを見つめていた。ハジメはグリムロックに加勢するために今にも飛び出そうとするスラッグを宥めつつ、気になることを問い質した。

 

「彼奴の名前、アストロトレイン。メガトロナスの直属部隊、シーカーの一人。三つの姿に変わるトリプルチェンジャーの戦士…」

 

 そう苦々しげに告げるスラッグ。今はロボットモードとトレインモードしか披露してないが、アストロトレインには更にもう一つのオルトモードがある。かつての戦いでは、その三つの形態を自在に変えて攻撃を繰り出す彼に苦渋を飲まされたものだ。

 その言葉に、ハジメ達はより一層顔を顰める。スラッグの様子からして、相手は相当の実力者のようだ。しかし、ディセプティコンが人間と魔物を利用してまでこんな観光地を襲撃するとは、何を目論んでいるのだろう…?

 一方、初めて見るトランスフォーマー同士の戦いに、ティオは冷や汗を流していた。竜人族として500年以上生きてきた彼女であるが、その中で出会った存在では最強だと思っていた叔父と互角の力を持つ者達の、文字通り大地を揺るがす勢いの戦いに、今はただ目を奪われていた。

 

「わ、妾達もご主人様に加勢すべきでは…?」

「いや、スラッグ以外が援護しても、却って亮牙の足手纏いになる。取り敢えず僕らは予定通り、取りこぼした魔物達を相手にするべきだ…」

 

 彼女は自分達も加勢しようと提案するが、ハジメがそれに反対した。恐らくあの二人と互角に渡り合えるのはスラッグのみ。下手に自分達が加勢したところで、巻き添えを喰らい無残な死骸と成り果てた魔物達の二の舞になるだけだ。

 シアとユエも同意見のため、それぞれ身構える。それを見たティオもグッと息を飲み、彼らに従うことにした。

 

「…俺スラッグ、気になること、ある」

「ん、スラッグ、気になることって…?」

 

 だがふと、スラッグが顔を顰めながら口を開いたため、四人は何事かと彼を見た。彼が気になっていたのは、アストロトレインについてだ。

 

「あの時、アストロトレインが出てきた光。あれ間違いなく、スペースブリッジだ」

「スペースブリッジって確か…」

「俺スラッグ、サイバトロンにあるテレポーテーション装置のこと」

 

 そう、スラッグの推測通り、アストロトレインが突如として戦場に現れたのは、スペースブリッジによるものだ。物理法則に逆らい、時空を超えて人や物を移動させることの出来る、サイバトロン独自の技術だ。

 

「スラッグさん、それが一体どうしたんですか?」

「俺スラッグ、スペースブリッジ使って移動できる奴がいるのは知ってる。…けど、アストロトレインにそんな能力、なかった。それに使えるなら、何でグリムロックの前に移動した?」

 

 その言葉にハジメ達はハッとなる。スラッグの記憶が正しければ、今グリムロックが戦っているディセプティコンはスペースブリッジを使えない。そして何より、使えるのなら何故わざわざ敵の前に出現したのだろうか?町の中に転移した方が手っ取り早い筈なのに…。

 

「まさか彼奴らは囮で、ご主人様が戦っておる内に他の連中が町に乗り込むと言うのか…⁉︎」

 

 顔を青くしてそう呟いたティオの予感は当たっていた。

 

「きゃあああああああっ!!?」

「先生⁉︎しまった‼︎」

 

 後方から愛子らしき女性の悲鳴が上がった。ティオの予測通り、アストロトレインの仲間がスペースブリッジで町内に侵入したのだろう。敵にまんまと嵌められた屈辱に、ハジメは顔を顰めつつも、すぐ様仲間達に指示を出した。

 

「クソッ‼︎ユエとティオは最初通り、結界を張りつつ魔物を壁に寄せ付けないで!シアとスラッグは僕に続け!」

「んっ、任せて!」

「はいですぅ!」

「俺スラッグ、分かった!」

「しょ、承知したのじゃ!」

 

 そう言うと、五人はそれぞれ動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時はアストロトレイン襲来まで遡る。

 大地に吹く風が、戦場から蹂躙された魔物の血の匂いを町へと運ばれ、その強烈な匂いに吐き気を抑えられない人々が続出した。それでも人々は、現実とは思えない「圧倒的な力」と「蹂躙劇」に湧き上がり、町の至るところからワァアアアーと歓声が上がった。

 町の重鎮は、初めて見る亮牙達の力に呑まれてしまったかのように呆然としたままだ。優香達もその力を目の当たりにし、自分達との「差」を痛感して複雑な表情になっていた。本来、あのような魔物の脅威から人々を守るはずだった。少なくとも当初はそう息巻いていた自分達が、ただ守られる側として町の人々と同じ場所から、「無能」と見下していたクラスメイト達の背中を見つめているのだから、複雑な心境にもなるだろう。

 愛子はただひたすら亮牙達の無事を祈ると同時に、今更ながらに自分のした事の恐ろしさを実感し表情を歪めていた。目の前の凄惨極まりない戦場が、まるで自分の甘さと矛盾に満ちた心をガツンと殴りつけているように感じたのだ。

 そんな中、突如としてアストロトレインが戦場に乱入し、彼が放ったミサイルが町目掛けて降り注ごうとした。幸い、亮牙がグリムロックに戻り盾となった事と、ユエが咄嗟に張った結界で何とか町内への直撃は防がれた。だがその爆発音に、人々からは一転して恐怖の悲鳴が上がり、慌てて自分達の自宅に逃げ込んだ。

 

「ッ⁉︎灘君!!?」

「ちょっ、愛ちゃん先生!危ないって!」

 

 グリムロックが片膝をついた姿を見て、愛子は慌てて彼のもとに駆け寄ろうとするが、優香が慌てて羽交い締めにして静止した。

 愛子としては唯でさえ生徒を死地に赴かせてしまったと言うのに、その生徒が自分達を庇って攻撃を受けてしまったのだから、良心の呵責に耐えられる筈もない。だが、優香としては愛子の護衛を引き受けているのだから、その護衛対象を危険な目に遭わせられるわけがない。

 

「離してください園部さん!やっぱり彼らにあんな負担を押し付けられませんっ‼︎」

「駄目ですって!私達が行っても何の役にも立てないですよ!ここは南雲と灘を信じましょう!」

「で、でもっ⁉︎」

 

 そう言って必死に愛子を宥める優香だが、彼女も内心では愛子と共にハジメや亮牙達のもとに駆けつけたかった。ハジメの態度から、最早自分は許してもらえない、それだけ自分達は二人に酷いことをしたという事を漸く理解した彼女は、出来るなら何か償いをしたかった。

 それでも、自分は愛子の護衛という重大な任務がある。確かに亮牙に指摘された打算があったのは事実だ。それでも、自分達の事を今も見捨てず守ろうとしている、大好きな先生の役に立ちたいという気持ちに嘘偽りはない。ここで彼女を危険な目に遭わせたら、それこそ自分はデビッドが指摘した通り、唯の穀潰しだ。

 他の護衛隊の五人もオロオロしているが、その気持ちは優香と同じだろう。

 

「おうおう。種族が違うとは言え、生徒を捨て駒扱いとは酷え教師だなぁ〜」

「「「「「「「ッ!!?」」」」」」」

 

 突如、小馬鹿にするようなネットリとした男の声がして、愛子達は声がする方を振り向いた。すると目の前に謎の光が出現し、そこから全身を金属で覆われた一羽の鳥が出て来た。そう、レーザービークだ。両足には何かを入れた袋を掴んでいる。

 おまけに光から出てきたのは彼だけではなかった。更にもう一体、全身を金属で覆われた獣が出てきた。外見はジャガーなどのネコ科肉食獣に似ているが、赤く光る目はサイクロプスのように単眼で、腰には二丁の機関銃が装備されている。

 その正体は、ディセプティコン諜報破壊兵・ラヴィッジだ。

 突如として現れた二体のロボット達に、愛子や優香達は身構えた。グリムロック達に似ているが、彼らとは違い邪悪な雰囲気を醸し出しているのは、流石の彼女達にも感じ取れた。

 そんな彼女達を見下すように下卑な笑みを浮かべながら、レーザービークは喋り出した。

 

「まあ落ち着きな。俺達は少〜し話に来ただけだからよ」

「話、ですか…?」

 

 話をしたいと主張する目の前の鳥型ロボットに、愛子は警戒しつつも問いかける。

 

「ああそうさ。俺らの姿を見りゃ分かるだろうが、今町の外で暴れてる奴は俺らの仲間でな。この町を襲撃してるのはとある重大な目的があるからなんだが、俺らもそこまで鬼じゃねぇ。今すぐ全面降伏して、俺らの条件を飲むのなら、今すぐ攻撃を中止してやってもいい。どうする?」

 

 ネットリとした不気味な口調でそう告げるレーザービークに、愛子や優香達、町の重役達は戸惑った。その条件を飲めば攻撃を中止してくれるというのが事実なら、今すぐ受け入れるべきだろう。

 だが目の前の二体のロボットは、見るからに邪悪な存在であることは、その場にいる誰もが感じ取ることが出来た。そもそも、今まさにこの町を襲撃し、大虐殺を行おうとしている連中の言葉など、信用できる筈もない。

 

「…その条件とは、一体何でしょうか?そもそも、貴方達は何の目的でこんな事を?」

 

 やがて意を決したように、愛子がレーザービークに問いかけた。目の前の相手は確かに信用ならないが、今すぐ攻撃を中止してもらえるならその条件を飲むべきかもしれない。何より、今更後悔しても遅いのは分かっているが、これ以上生徒である亮牙やハジメに負担を押し付けるような真似は耐えられなかったのだ。

 そんな彼女に対して、レーザービークはケタケタと笑いながら、衝撃的な言葉を口にした。

 

「俺らが欲しいのは、お前の命だよ。アイコ・ハタヤマ」

「………え?」

 

 愛子は、一瞬何を言われたのかわからなかったようで思わず間抜けな声を漏らした。優香達も同様で、一瞬ポカンとするものの、愛子よりは早く意味を理解し、激しい怒りを瞳に宿してレーザービークを睨みつけた。

 だが、彼女達の射抜くように強烈な怒りが宿った眼光に対しても、歴戦の暗殺者であるレーザービークにとっては蚊に刺された程度に過ぎない。彼は嘲笑うように話を続けた。

 

「いやぁ〜、俺らのご主人の協力者がお前が邪魔だって言うんでよ。…まあ気持ちは分かるけどな。お前の存在は人間共の食糧事情を一変させちまうし、何よりたかが人間共の小娘風情が現人神として民衆の支持を集められちゃあ、宗教概念が狂っちまうしよぉ。だから俺らにお前を抹殺するよう依頼が来たってわけさ。てな訳でついでにこの町の連中ごとぶっ殺そうとしたんだが、思わぬ邪魔が入っちまったからな…」

 

 そう嘲笑するように、「命を狙われた」という事実に呆然とする愛子を見ていたレーザービークだったが、最後の方は心底腹立たしいといった口調となっていた。恐らく、彼らにとっても亮牙達の参戦は計算外だったのだろう。

 

「…とまあ、俺らの条件はこんなところだ。今暴れているアストロトレインは仲間内でも強いんだが、流石にダイナボット二体じゃ厳しいだろうしよぉ。それにお前も、自分のせいで他人が犠牲になっちまうのは嫌だろ?さあ、どうする?」

 

 下卑た笑みで問いかけるレーザービークに、愛子はどうすれば良いのか頭を悩ませた。

 無論、少しお人好し過ぎる彼女とて、目の前の鳥型ロボットを信用などしていなかった。自分の命を狙われた挙句、ついでみたいな感覚で大虐殺を行おうとした連中など、信用出来るはずもない。だが、これらの騒動が自分の命を狙ったものだと言われてしまい、罪悪感が愛子の心を蝕んだ。自分が此処に来なければ、ウルの町が襲撃されることも、亮牙とハジメが戦う必要もなかった筈だ、と。

 死の恐怖に怯えつつも、彼女の脳裏には降伏という選択肢が浮かびつつあった。自分が犠牲になれば、亮牙やハジメ、ウルの町を見逃してもらえるかもしれない。しかし愛子がその条件を飲もうとした瞬間、優香がアーティファクトのナイフを構え、彼女とレーザービークの間に割って入った。

 

「巫山戯るんじゃないわよ⁉︎さっきから黙って聞いてれば舐めた事ばっかり抜かして!アンタ達みたいなイカれたロボットなんかに愛ちゃんを殺させたりはしないわよ!!!」

 

 優香はそう啖呵を切ったが、内心では怖くて堪らなかった。しかし目の前のロボット達は、亮牙達とは違い明確な悪意を持っており、間違いなく愛子を殺そうとしているのは、流石の彼女にもよく分かった。そんな輩に大好きな先生を引き渡すなど死んでもお断りだ。

 そんな彼女の啖呵に他の護衛隊も覚悟を決めたのか、各々のアーティファクトを構えて睨みつける。そんな彼女達に、レーザービークは呆れたように溜息を吐いた。

 

「おいおい、お前らには聞いてねぇっての…。まあでも、それが答えのようなら仕方ねぇなぁ。お〜いレイスちゃ〜ん、ご飯だぜぇ〜‼︎」

 

 そう彼の呼び声に応えるかのように、再び青い光が現れると、更にある者が出て来た。その正体は魔人族の特殊部隊所属の戦士・レイス。愛子殺害のためにウルの町へ向かい、レーザービーク達と共に接触した清水を唆して、魔物の軍勢を差し向けた黒幕の一人だ。とは言え、そんな事実は愛子達が知る筈もなかった。

 だが、初めて魔人族を見る愛子達にとっても、目の前のレイスは明らかに普通ではなかった。何せ全身は異常に筋肉が発達しており、まるでハ○クのような姿となっている。おまけに口から涎を垂れ流し、両目も白く濁っており、鼻息も興奮したかのように荒い。

 

「ホントは俺がぶっ殺したいけどよぉ〜、この状態にしてから餌やってなかったし、好きなだけ食っちまって良いぞ〜!」

「ウグゥアアアアアアッ、肉ゥ〜!!!」

 

 レーザービークのその号令と共に、レイスは唸り声を上げると、一番近くにいた教会の司祭に襲い掛かった。咄嗟の攻撃に逃げる事も出来なかった司祭は、そのまま喉笛をレイスに噛みつかれた。

 司祭の断末魔の悲鳴と、辺り一体に飛び散る返り血、そしてバリボリと骨ごと司祭を食べ始めたレイスの姿に、一瞬愛子は呆然となっていたが、漸く何が起きたかを理解して悲鳴を上げた。

 

「きゃあああああああっ!!?」

 

 その悲鳴に優香達もハッとなるが、今回は流石の彼女達もただ突っ立っているだけじゃなかった。

 

「奈々、妙子!急いで愛ちゃん達を避難させて!ここは私と男子達で食い止めるわよ!」

「「う、うん‼︎」」

「「「お、おう‼︎」」」

 

 優香の指示と共に、護衛隊はそれぞれ動き出した。本来なら彼女達はオルクス大迷宮の騒動と同様パニックになっていただろうし、六人とも内心は今すぐにも逃げ出したかった。

 しかし、早朝に亮牙から自分達の浅はかさを指摘された事で、彼女達も流石に良心の呵責に耐えかねていた。だからこそ、愛子を守るという本来の仕事は、何としてもやり遂げなければならない。

 

「ギェエエエエッ!!!」

 

 司祭の肉を食べ終えたレイスは、口を血で真っ赤に染めながら突進して来た。玉井達は魔法を浴びせ、優香も天職である投術師の技能を活かし、アーティファクトのナイフでレイスの右目を貫いた。

 しかし、四ヶ月も碌に戦闘訓練などしてなかった事が仇となり、致命傷には到らなかった。逆に怒り狂ったレイスが剛腕を振り回した事で、一瞬で玉井達は吹き飛ばされ、民家の壁に叩きつけられた。幸い、三人とも命に別状はないが、その一撃で意識を失ってしまった。優香もそれに動揺してしまい、隙をついたレイスの腕に捕らえられてしまった。

 

「ぐううぅっ!!?」

「肉ぅ〜‼︎食わせろぉ〜‼︎」

 

 身体を押し潰さんばかりの握力に、優香が痛みに顔を顰めた。だが、レイスはお構いなしに、新たな獲物を味わおうと彼女を口元に引き寄せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、愛子は宮崎と菅原に連れられ、安全な場所に避難しようとしていた。しかし、目の前で人間が惨殺される光景を目の当たりにしてしまい、三人とも足取りがおぼつかず、思うように速く進めなかった。

 そんな哀れな連中を、ディセプティコンの暗殺者であるレーザービークとラヴィッジが逃がす筈もない。ラヴィッジの機関銃が足を掠めて宮崎が転倒し、操鞭師である菅原が応戦しようとアーティファクトの鞭を構えるも、ラヴィッジに腕を噛まれて引き倒されてしまった。

 

「ぐぅううっ⁉︎」

「ぎゃあああ⁉︎」

「宮崎さん!菅原さん!」

 

 苦痛に悲鳴を上げる二人に愛子が叫ぶと、足に袋を抱えたレーザービークが意地悪そうに顔を歪めながら飛んできた。

 

「あ〜あ、教師を守ろうとして痛めつけられるとは可哀想になぁ。まあ単に弱いお前らが悪いけど…」

 

 そうケタケタと嗤うレーザービークを愛子はキッと睨みつけるが、彼はどこ吹く風だ。

 

「おお怖い、自分の疫病神っぷりを棚に上げて八つ当たりかい?そ〜んな駄目教師には、お仕置きにこれをプレゼントしてやるよ‼︎」

 

 そう叫ぶと、レーザービークは袋の中身をぶち撒けた。最初は何か武器を突き付けられるのかと思い身構えた愛子だが、予想が外れて拍子抜けとなる。しかし、撒き散らされた中身を見て、彼女は言葉を失った。

 袋から撒き散らされた中身の正体、それはこの騒動の黒幕と思われていた清水と、デビッドら護衛騎士達の生首五つだったのだ。

 

「清水君!デビッドさん!チェイスさん!クリスさん!ジェイドさん!」

 

 悲鳴にも似た声で五人の名を叫ぶ愛子の姿に、レーザービークは更に愉快そうにケタケタと笑った。

 

「其奴ら五人とも傑作だったぜ。あの魔物共を集めてくれたのが幸利なんだがよぉ、お前を殺してきたら魔人族側の勇者にしてやるって唆したら、あっさり真に受けてホイホイ従うんだもん。おまけにそこの四人もよぉ、お前を助けに来たとか抜かしてたけど、あっさり捕まった挙句にボスの尋問に直ぐ参っちまうんだからさぁ。笑い過ぎて回路がショートしそうになったぜ。…でもまあ、何より面白かったのはなぁ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五人共、お前が原因で死んじまった事さ」

 

 レーザービークから告げられた言葉に、愛子は顔を青くして膝から崩れ落ちた。自分は生徒達に戦いを強いただけには留まらず、自分が原因で五人も死なせてしまった事実に、平常心でいられる筈もなかった。

 

「…あ、ああ……そんな……私の、せいで…」

 

 彼女の絶望した表情に満足したのか、レーザービークはアサルトライフルを突きつけた。

 

「良いね〜その面!お前の首は持ってくるよう命じられていたが、その絶望に歪んだ面のまま殺してやりてぇって思ってたからよぉ!まあ、あの世で幸利に宜しくな」

 

 レーザービークの言葉にも、宮崎や菅原が痛みに悶えながらも彼女に逃げるよう叫ぶ声にも、愛子は両膝をついたまま動けなかった。

 彼が引き金を引こうとした瞬間、突如として何かが飛んできた。それは回転しながら飛んでくると、そのままレーザービークの右翼を斬り落とした。

 

「グギャアアアアッ⁉︎い、痛えええええっ‼︎」

 

 片翼を斬り落とされたレーザービークは痛みに悶絶し、そのまま地面へと墜落した。一方、彼の翼を斬り落としたそれは、まるで呼び戻されたかのように飛んできた方向へと戻っていった。

 何事かと宮崎と菅原がそちらを見るといたのは…

 

「大丈夫ですか⁉︎愛子さん!」

「シア、さん…」

 

 その華奢な体型とは裏腹に、両手に斧を構えたシアが駆けつけたのだ。

 




〜用語集〜
・諜報破壊兵ラヴィッジ
 『リベンジ』に登場した、ジャガー型のディセプティコン。
 米軍が管理するオールスパークの破片の奪取や、ローレンシア海溝に遺棄されたメガトロンの蘇生にも貢献したが、エジプトの戦いでバンブルビーに脊髄ぶっこ抜きで倒された。

・改造魔人レイス
 愛子暗殺のためにウルの町に赴いた魔人族の戦士レイスが、レーザービークらに注入された謎の薬品で変貌した姿。この薬品は、ディセプティコンのある科学者が製作に関わっている。
 薬品の作用で筋肉が肥大化しているが、既にレイス本来の自我はなく、ただ目の前の獲物を捕食したいという殺戮衝動のままに行動する。
 モチーフはIDWのアメコミに登場した怪物スワームとスパークイーター。決してヒ○アカのムーンフィッシュや鬼○がモチーフではない。





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