グリムロックは宇宙最強   作:オルペウス

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ジェネレーションセレクトのボルカニカスの交換完了!
いやぁ〜、実に素晴らしい逸品です!ボルカバルカンの組み間違いも簡単に直せるものだったし、文句なしです!

それでは、新章スタートです。


姪っ子誕生⁉︎そして因縁の始まり
フューレンへの帰還と目覚める侠客


 中立商業都市フューレンの活気は相変わらずだった。

 高く巨大な壁の向こうから、まだ相当距離があるというのに町中の喧騒が外野まで伝わってくる。これまた門前に出来た相変わらずの長蛇の列、唯の観光客から商人など仕事関係で訪れた者達まであらゆる人々が気怠そうに、あるいは苛ついたように順番が来るのを待っていた。

 そんな入場検査待ちの人々の最後尾に、実にチャライ感じの男が、これまたケバい女二人を両脇に侍らせていた。取り敢えず何か難しい言葉とか使っとけば賢く見えるだろうと言う、如何にも馬鹿丸出しの考えで、気怠そうに不満を垂れ流していた。

 すると、キィイイイイイイイ!と聞き慣れない音が聞こえ始めた。最初は無視して傍らの女二人に気分よく語っていたチャラ男だが、前方の商人達や女二人が目を丸くして自分の背後を見ていることと、次第に大きくなる音に苛ついて背後の街道を振り返ると、ギョッと目を剥いた。

 なんと、見たこともない赤を基調とした箱型の物体が猛烈な勢いで砂埃を巻き上げながら街道を爆走してきたのだ。多くの人々が魔物かと思い逃げ出そうとするが、箱型の物体の速度は想像以上のものであり、気がついたときには直ぐそこまで迫っていた。

 チャラ男が硬直し、列の人々がもうダメだ!とその瞳に絶望を映すが、箱型の物体は後部を振りながら半回転し、砂埃を盛大に巻き上げながら急停止した。

 停止した物体の正体、それは亮牙一行が乗るパイロだ。今までは僅かな労力で避けられる面倒なら避けるべきという方針から、極力アーティファクト類は人目に見せないつもりだったが、ウルの町での戦いは瞬く間に伝播するはずなので、そのような考えはもう無駄だろうと考え、自重なしで行くことにしたのだ。

 だがそんな事知る由もない人々に混乱が広がる中、ドアが開き、人々がビクッとする中、一人降りてきた。チャラ男と連れの女二人は、僅かな好奇心から降りてきた者の正体を見極めようとするが…

 

「前が見えねェ」

 

「「「アイエエエッ!!?」」」

 

 中から出てきたのは、誰かに殴られたのか顔が大きくめり込んだ亮牙だった。常人なら間違いなく死んでいるレベルの重傷なのだが、ギャグ漫画みたいに平然と喋りながら歩いている。

 だが、いきなりそんなホラー映画みたいな状態の奴が出てきたら、驚くなと言う方が無理である。チャラ男と連れの女達の三人組は、まるで妖怪でも見たかのような絶叫を上げると、口から泡を吹き、股間から盛大に失禁すると、三人仲良く仰向けに倒れて気絶した。

 

「…いきなり人の顔見て気絶するとは失礼な奴等だな」

「あのさ亮牙、その顔見たら誰だってそうなるよ…」

 

 チャラ男達の態度にイラッとして文句を言う亮牙だが、運転席から降りてきたハジメが無理はないとツッコんだ。

 

「シア、やり過ぎ…。亮牙が可哀想…」

「うぅ〜、だって亮牙さんが〜」

「シア、ごめん…」

「俺スラッグ、早速シアはグリムロックを尻に敷いたな」

「あのスラッグ殿、あれは尻に敷いたと言うべきなのでしょうか…?」

 

 そんな事を言いながら、他の面々が呑気に降りてきた。

 亮牙の顔面をめり込ませた犯人、それはシアだった。帰る途中、愛子の件で問い詰めていた際、事故とはいえティオの胸の谷間に頭を埋めた亮牙に遂に怒った彼女は、思わず彼の顔をぶってしまったのだ。

 常人のパンチなら逆に相手の腕をへし折るぐらい頑丈な亮牙だが、恋人となってからのシアは『ダイナボットの祝福』の影響もあってか凄まじい怪力を誇るようになっており、モロに一撃を喰らった彼の顔面が大きく凹んでしまったのだ。幸い、人間じゃないので致命傷にはならなかったが。

 ユエからやり過ぎだと叱られ、シアもカッとなり過ぎたと反省しつつも、複雑な乙女心故にまだモヤモヤしているようだ。スラッグはストレイフを抱えながら、親友が早速恋人の尻に敷かれた事を呑気に揶揄っているが、流石のウィルもこれにはやや引いていた。

 そして、ティオはと言うと…

 

「あぁ〜ん♡ご主人様だけ狡いのじゃあ〜!妾も同じくらいの力でぶって欲しいのじゃ〜!」

「元はと言えばテメェの所為だろ!!!」

「あひぃ〜ん♡」

 

 …期待したような目で自分も殴って欲しいなどと言いながら、亮牙に擦り寄ってきた。

 当然、恋人にぶたれる原因となった彼女に対して亮牙が黙ってる筈もなく、その爆乳を思いっきりビンタした。

 だがティオは、艶かしい声を上げながら幸せそうに崩れ落ち、嬉しそうに「ハァハァ」と興奮する始末で、亮牙は山脈の戦いで丸呑みにしとけば良かったと後悔するしかなかった。

 一方、未知の物体と超美少女&美女、そして何より顔面がめり込んだままなのに平然としている青年の登場という衝撃に、誰もが硬直したままだった。普通ならシア達に見惚れたり、彼女達やハジメのアーティファクト類に舌舐めずりする輩が出てきてもおかしくないのだが、亮牙の今の顔があまりにも衝撃的過ぎて、誰もそんな気になれなかった。

 すると、にわかに列の前方が騒がしくなった。ハジメ達が視線を転じると、三人の門番達が馬に乗って駆けてきた。おそらく、先程のチャラ男達の悲鳴を聞いて何事かと確認しに来たのだろう。

 

「おい!この騒ぎは何──うぉっ!!?君、その顔どうしたんだ⁉︎まさか、そこで倒れている連中に…?」

 

 高圧的に話しかけようとした門番は、亮牙のめり込んだ顔を見て驚愕の声を上げると共に、安否を確認し出した。一方の亮牙は、面倒臭そうに溜息を吐くと、門番に事情を説明した。

 

「ああ、ちょっとぶつけただけだ。心配ねえよ。そいつらは俺の顔見た途端、いきなり悲鳴あげて失神しやがったんだ。失礼な話だよな?」

「な、成る程…。それにしても、本当に大丈夫か…?」

「心配するな、すぐ治す」

 

 そう言いながらブンブンと首を振るとあら不思議、亮牙の顔は忽ち元通りになった。門番も野次馬達も「どういう理屈で治るんだよ⁉︎」と内心ツッコまずにはいられなかったが、ハジメ達は最早何が起きても驚かない事にしていた。

 とその時、門番の一人が元に戻った亮牙の顔を見て首を傾げると、「あっ」と思い出したように隣の門番に小声で確認する。何かを言われた門番が同じように「そう言えば」と言いながら亮牙達をマジマジと見つめた。

 

「…君達、もしかしてリョウガ、ハジメ、ユエ、シア、スラッグという名前だったりするか?」

「ん?はい、確かにそうですが…」

「そうか。それじゃあ、ギルド支部長殿の依頼からの帰りということか?」

「ああそうだ。その言い方からして、チャングから通達でも来てるのか?」

 

 亮牙の予想通りだったようで門番は頷いた。どうやら直ぐに通せと言われているようで順番待ちを飛ばして入場させてくれるようだ。列に並ぶ人々の何事かという好奇の視線を尻目に、亮牙一行はパイロに乗って門番の後を着いて行きながら悠々と進み、再びフューレンの町へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在、ハジメ達は冒険者ギルドにある応接室に通されていた。

 出された如何にも高級そうなお茶菓子を遠慮なく貪りながら待つこと五分、イルワが部屋の扉を蹴破らん勢いで開け放ち飛び込んできた。以前の落ち着いた雰囲気などかなぐり捨てて、視界にウィルを収めると挨拶もなく安否を確認する様子から、それだけ心配だったのが伺える。

 感動の再会を果たした二人は、迷惑をかけてしまったとお互いに謝った後、ウィルはイルワから既にフューレンに滞在している両親に会いに行くよう促された。彼は改めて捜索に骨を折ってもらったことを感謝し、亮牙達に改めて挨拶に行くと約束して部屋を出て行った。

 改めて亮牙達と向き合ったイルワは穏やかな表情で微笑むと、深々と頭を下げた。

 

「君達、今回は本当にありがとう。まさか、本当にウィルを生きて連れ戻してくれるとは思わなかった。感謝してもしきれないよ」

「いや、生き残れたのはアイツの悪運が強かっただけだ」

「ふふ、そうかな?確かにそれもあるだろうが、何万もの魔物の群れから守りきってくれたのは事実だろう?女神の守護者達?」

「…随分情報が早いですね?」

「ギルドの幹部専用だけどね。長距離連絡用のアーティファクトがあるんだ。私の部下が君達に付いていたんだよ。といっても、あのとんでもない移動型アーティファクトのせいで常に後手に回っていたようだけど…。彼の泣き言なんて初めて聞いたよ。諜報では随一の腕を持っているのだけどね」

 

 そう言って苦笑いするイルワ。最初から監視員がついていたらしいが、ギルド支部長としては当然の措置なので、亮牙達は特に怒りを抱くこともなかった。

 

「それにしても、大変だったね。まさか、北の山脈地帯の異変が大惨事の予兆だったとは…。二重の意味で君に依頼して本当によかった。数万の大群を殲滅した力にも興味はあるのだけど…。聞かせてくれるかい?一体、何があったのか」

「分かった。その前に約束のステータスプレートなんだが、あと三人分追加してくれ」

「ふむ、確かに、プレートを見たほうが信憑性も高まるか…。分かったよ」

 

 そう言ってイルワは、職員を呼んで真新しいステータスプレートを六枚持ってこさせる。

 結果、ユエ達のステータスは以下の通りだった。

 

 ユエ 323歳 女 レベル:75

 天職:ダイナボット魔導戦士

 筋力:120

 体力:300

 耐性:60

 敏捷:120

 魔力:6980

 魔耐:7120

 技能:自動再生[+痛覚操作]・全属性適性・複合魔法・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収]・想像構成[+イメージ補強力上昇][+複数同時構成][+遅延発動]・血力変換[+身体強化][+魔力変換][+体力変換][+魔力強化][+血盟契約]・高速魔力回復・ダイナボットの祝福[+エネルギー吸収][+ダメージ緩和]・生成魔法・重力魔法

 

 シア・ハウリア 16歳 女 レベル:40

 天職:ダイナボット占術士・指揮官夫人

 筋力:60 [+最大測定不能]

 体力:80 [+最大測定不能]

 耐性:60 [+最大測定不能]

 敏捷:85 [+最大測定不能]

 魔力:3020

 魔耐:3180

 技能:未来視[+自動発動][+仮定未来]・魔力操作[+身体強化][+部分強化][+変換効率上昇Ⅱ] [+集中強化] ・ダイナボットの祝福[+エネルギー吸収][+ダメージ緩和]・重力魔法

 

 ティオ・クラルス 563歳 女 レベル:89

 天職:ダイナボット守護戦士

 筋力:770  [+竜化状態4620]

 体力:1100  [+竜化状態6600]

 耐性:1100  [+竜化状態6600]

 敏捷:580  [+竜化状態3480]

 魔力:4590

 魔耐:4220

技能:竜化[+竜鱗硬化][+魔力効率上昇][+身体能力上昇][+咆哮][+風纏][+痛覚変換]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮]・火属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・風属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・複合魔法・ダイナボットの祝福[+エネルギー吸収][+ダメージ緩和]

 

 スラッグ 66000039歳 男 レベル:測定不能

 天職:ダイナボット火炎戦士

 筋力:測定不能

 体力:測定不能

 耐性:測定不能

 敏捷:測定不能

 魔力:測定不能

 魔耐:測定不能

 技能:言語理解[+獣語理解]・騎士化[+部分武装化]・変形・獣の王・魔力操作・エネルギー吸収・レーザーファイヤー・生体電流[+激力雷電] [+雷角回弾] [+雷槍角刺] [+来雷蓄電] [+瞬雷千烈]・トレイルカッターソード・重力魔法

 

 どいつもこいつも常識を完膚なきまでに破壊する無茶苦茶なステータスで、イルワも驚きを隠せず、口をあんぐりと開けて言葉も出ない様子だ。

 

「いやはや……なにかあるとは思っていましたが、これほどとは…」

 

 冷や汗を流しながら何時もの微笑みが引き攣っているイルワに、亮牙達はお構いなしに事の顛末を語って聞かせた。普通に聞いただけならそんな馬鹿なと一笑に付しそうな内容でも、先にステータスプレートで裏付けるような数値や技能を見てしまっているので信じざるを得ない。

 全ての話を聞き終えたイルワは、一気に十歳くらい老けたような疲れた表情でソファーに深く座り直した。

 

「…道理でキャサリン先生の目に留まるわけだ。亮牙君とハジメ君が異世界人だということは予想していたが…。実際は、遥か斜め上をいったね…」

「…で、どうする気だチャング?あのカルト教団共に危険分子として突き出すか?」

 

 亮牙の質問に、イルワは非難するような眼差しを向けると居住まいを正した。

 

「冗談がキツいよ。出来るわけないだろう?君達を敵に回すようなこと、個人的にもギルド幹部としても有り得ない選択肢だよ…。大体、見くびらないで欲しい。君達は私の恩人なんだ。そのことを私が忘れることは生涯ないよ」

「…ふむ、試して悪かったな」

「私としては、約束通り可能な限り君達の後ろ盾になろうと思う。ギルド幹部としても、個人としてもね。まぁ、あれだけの力を見せたんだ。当分は、上の方も議論が紛糾して君達に下手なことはしないと思うよ。一応、後ろ盾になりやすいように、君達の冒険者ランクを全員『金』にしておく。普通は、『金』を付けるには色々面倒な手続きがいるのだけど、事後承諾でも何とかなるよ。キャサリン先生と僕の推薦、それに『女神の守護者』という名声があるからね」

 

 イルワの大盤振る舞いにより、他にもフューレンにいる間はギルド直営の宿のVIPルームを使わせてくれたり、彼の家紋入り手紙を用意してくれたりした。何でも今回のお礼もあるが、それ以上に亮牙達とは友好関係を作っておきたいということらしい。ぶっちゃけた話だが、隠しても意味がないだろうと開き直っているようだ。

 その後、イルワと別れた亮牙一行は、フューレンの中央区にあるギルド直営の宿のVIPルームで、未だ眠っているストレイフの看病に務めることにした。

 途中、ウィルの両親であるグレイル・クデタ伯爵とサリア・クデタ夫人がウィルを伴って挨拶に来た。かつて王宮で見た横柄な貴族どもは異なり随分と筋の通った人らしく、息子の人の良さというものが納得できる両親だった。グレイル伯爵は困ったことがあればどんなことでも力になると約束をして去っていった。

 広いリビングの他に個室が複数付いた部屋は、その全てに天蓋付きのベッドが備え付けられており、テラスからは観光区の方を一望できる。亮牙は、リビングの超大型ソファーにストレイフを横にさせると、リラックスした様子で深く息を吐いた。

 

「取り敢えず今日はもう休もう。明日は消耗品とかの買い出しとかしなくちゃな」

 

 そう呟いた亮牙は、ふとシアが先程までとは違い、何処か嬉しそうに顔を赤く染めながらニヤけているのに気づいた。彼女は亮牙の視線に気づくと、更にイヤンイヤンと身体をクネクネし始めた。

 

「…さっきまで怒ってたのに、一体どうしたんだ?」

「だってだって、私の天職見ました?指揮官夫人って書いてありましたよ!つまり私の職業、亮牙さんの奥さんだってことですよ!えへへ、嬉し過ぎて怒りも吹っ飛んじゃいましたよ〜!」

 

 そう言うと更に嬉しそうな顔をしてぴょんぴょんと飛び跳ねるシア。一応、天職には占術士も含まれていたのだが、漸く機嫌も治ったみたいだし、呆れつつも余計な口出しはしない亮牙であった。

 ハジメ達も同じ気持ちなのか呆れた目でシアを見つめ、ティオに至っては羨ましそうな目をしていたが、当のシアは全く気づいていなかった。

 

 

 

 

 

「ググ………?」

 

 その時、ふと超大型ソファーから何か声が聞こえ、六人の視線がソファーに集まった。無論視線の先は、ソファーで横になるストレイフだ。

 

「ストレイフ!目が覚めたか⁉︎」

 

 一番近くにいた亮牙が慌てて駆け寄って片膝をつき、懐かしき友人の容態を確認しようとしたが…

 

「グガァアアアアアッ!!!」

「ぐっ⁉︎」

 

 呼びかけに対して怒りの咆哮を上げたストレイフは、勢いよく飛び起きると片手で亮牙の胸ぐらを掴んで床に押し倒すと、もう片方の腕から剣を展開して、彼の首筋に鋒を突きつけた。

 

「「「亮牙(さん)!!?」」」

「叔父上⁉︎何をするのじゃ⁉︎」

 

 突然の出来事に一瞬怯んだハジメ達は、慌てて亮牙を助けようと攻撃の構えを取る。ティオは叔父の突然の蛮行に動揺しつつも、ストレイフを止めに入ろうとした。

 

「皆やめろ!ここ、グリムロックに任せろ!」

 

 だが二人と付き合いの長いスラッグは冷静だった。彼は腕を振って四人に怒鳴り、誰も手出ししないよう制止した。

 それでも四人が不安げな顔をする中、ずっと冷静さを失わなかった亮牙が口を開いた。

 

「落ち着けストレイフ。俺だ。姿は変わっちまったが、グリムロックだ」

 

 その言葉が、ストレイフを覆った怒りの靄にゆっくりと浸透していき、憤怒の形相が次第に戸惑い混じりの落ち着いた顔つきへと変わった。やがて亮牙の胸ぐらを掴んでいた拳を緩め、彼はもう片方の手に握った剣を下ろして立ち上がった。

 

「まさか……本当にグリムロックなのか…?」

「ああそうだ。久しぶりだな」

「俺スラッグもいるぞ!」

 

 まだ信じられない者を見ているように驚きを隠せないストレイフに対して、亮牙は起き上がり彼と向き合った。スラッグも嬉しそうに輪に加わった。

 ストレイフは頭に片手を当てて、何が起きたかを思い出そうとした。

 

「俺は確か……アストロトレイン達に捕まって……そうだ、お嬢が人質に!」

「「()()?」」

「「俺の家族だ!姿は人間に似てる、胸部のデカい黒ずくめの女だ!お嬢は、彼女は無事か⁉︎」

 

 そう己重要事項について問いただすストレイフ。対して亮牙とスラッグは「お嬢」という単語に怪訝な顔つきとなる。何せ、該当すると思われる人物は一人しかいない。

 

「あ〜、叔父上?妾ならここじゃよ?」

「!お嬢、無事だったか⁉︎」

「ま、まあのぉ…」

 

 その人物、ティオが気不味そうに声をかけると、ストレイフは安堵の声を漏らした。どうやら、かなり心配だったようだ。

 だが、亮牙達五人にはまだストレイフの先程の言葉の中で気になる事があった。それは「アストロトレイン達に捕まった」と、「ティオを人質に取られた」という事だ。代表して亮牙がストレイフに問いかけた。

 

「おいストレイフ、ちょっといいか?スラッグが言うにはお前、操られてたそうじゃないか?それにソイツが人質って、一体あの時、アストロトレイン達に何をされたんだよ…?」

「ん?ああ、そうだったな。話せば長くなるんだが…」

 

 そう呟くと、ストレイフはあの時なぜ自分がディセプティコンに操られていたか、その理由について語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 約六百年前にトータスへと転移し、竜人族の姿となったストレイフは、彼らと共に暮らしており、五百年前の迫害と虐殺から逃げ延びた後も、山脈も向こう側に隠れ里を作りひっそりと暮らしてきた。

 しかし数ヶ月前の大魔力の放出とこの世界にやって来た何者かの正体を探る調査が行われる事になり、もしかしたら仲間達が来たのではと推測した彼はこれに志願、姪であるティオと共に旅立った。

 山脈を越えた後、ティオが人里に向かう前に一度しっかり休息を取りたいと懇願したため、くれぐれも用心するように告げると、暫く一人で周囲を探索していた。

 だがその際、僅かなエネルゴンの匂いを感知したので確認しに向かうと、この世界にいる筈のないディセプティコン達と遭遇してしまったのだ。通常のディセプティコン兵ならストレイフの敵ではないのだが、敵側にはパワーと体格で勝るアストロトレインがおり、激しい戦いで徐々に追い詰められ、遂に捕らえられてしまった。

 更に追い討ちをかけるように、敵達は人間の協力者がおり、其奴のおかげで竜人族を一人生け捕りにしたと告げられた。嫌な予感は的中し、もう一人のディセプティコンから立体映像化で見せられたのは、洗脳され人間達を襲うティオの姿であった。

 

「この竜人族を無事に解放して欲しかったら、俺達の命令に従って貰うぞ。逆らうなら、此奴には死より惨い目に遭って貰うだけだ」

 

 そう脅迫されてしまっては、ストレイフに選択肢などなく、渋々敵に従うしかなかった。

 そしてアストロトレインが持っていた、毒々しい翡翠色の宝珠を身体に装着されたのだが、これにより凄まじい怒りと殺意、それから来る破壊衝動に精神を支配されてしまった。抗おうにもどうすることも出来ず、ただ衝動のままに暴れるしかなかった。

 そして途中で意識を失い、気づいた時には人間態に戻り、今こうして目覚めたという訳である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの時俺は、ただ目につくもの全てを壊したい衝動に駆られちまってた。自分でなんとかしようにも、どうしようもなかった…」

「そうだったか。辛かったな…」

 

 話しているうちにストレイフは、次第に悲痛そうな表情となっていった。敵に敗れただけではなく、親類を人質に取られた挙句、敵の支配下に置かれてしまい、洗脳状態とはいえ破壊工作に協力してしまったのだ。

 全てを聞き終わった亮牙は、盟友を励まそうと肩に手を置いたが、額には怒りで血管が湧き上がっていた。その怒りはストレイフを操り破壊工作を行ったディセプティコンに対してだが、一部は彼がそんな目に遭う原因となった人物に対してもだ。ハジメ達四人も同じ気持ちなのか、とある人物を冷めた目でじーと見ていた。

 その人物、ティオは顔を青くして、大量の冷や汗を流していた。まさか自分が寝ていたせいで、叔父がそんな目に遭わされていたとは夢にも思わなかったのだろう。

 

「い、いや〜、これで叔父上も無事に仲間に加わった事じゃし、めでたしめでたしじゃな!これからの旅が楽しみなのじゃ!」

「誤魔化してんじゃねぇ!!!」

「あひぃぃぃぃん!!?」

 

 そう言って上手く締め括ることで誤魔化そうとするティオだが、そうはいかなかった。亮牙はクワッ!と振り返り、すかさず彼女に飛びかかると、容赦なくアルゼンチンバックブリーカーをお見舞いした。

 

「テメェが能天気に爆睡してたせいでストレイフはなぁ‼︎」

「ひぎぃん⁉︎ああ〜ん!ら、らめぇなのじゃあ〜♡イッちゃう、イッちゃうのじゃあぁ〜!!!」

 

 怒りに燃える亮牙に、メキメキと凄まじい音を上げながら締め上げられているにも拘らず、妖艶な雰囲気を撒き散らしながらアヘ顔で喜ぶティオ。もはや救いようがないその姿に、ハジメ達は怒りを通り越して呆れていた。

 だが、親類であるストレイフは初めて見る光景だったらしく、「お、お嬢⁉︎」と困惑の表情となりながら、亮牙を止めるべきか否かオロオロとするのであった。

 

 

 




〜用語集〜
・前が見えねェ
 『クレヨンしんちゃん』コミックス第二巻にて、給食当番を任されたしんちゃんがシチューの熱さを給食のおばちゃんの足の裏で確かめた結果、おばちゃんの制裁を食らって顔面崩壊した際の台詞。
 アニメでは流石に再現されなかったが、作者はこれが原作クレしんで一番のお気に入り。

・ダイナボット狙撃戦士ストレイフ
 身長:ロボットモード時57フィート(約17.3m)、人間時180cm
 ビーストモード:全長98フィート(約29.8m)、頭胴長53フィート(約16.1m)、翼開長推定40m
 ダイナボット唯一の航空戦力で、双頭・二尾のプテラノドンに変形する。人間態は竜人族らしく、着流しに似た青い服を着た青年。
 故郷はブラジルで、『ロストエイジ』での香港戦の後は一人故郷へと帰還したが、プライム達の招集によりトータスへと召喚され、メガトロナスの干渉でまだ竜人族が迫害される前の600年前に転移した。
 役職はテックボット部隊の狙撃員ストレイフと、ダイノボット砲撃戦士スワープから。
 ちなみに目覚めた際のやりとりは、『ダークサイド・ムーン』でのセンチネルプライム復活シーンのオマージュ。





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