グリムロックは宇宙最強   作:オルペウス

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あっという間に本作も一周年。ここまで続けられたのも、読者の皆様が応援してくださったおかげです。ありがとうございます。

本日5月16日は私の誕生日。本当なら『ゴジラVSコング』を鑑賞して迎えたかったです(泣)
まあ、モンスターアーツのコングは買えたし、今月末はスタジオシリーズのグリムロック&ウィーリーが届くので、我慢するか…。




今更ですが、今回は再び下ネタがあります。ご注意下さい。


再びホルアドへ

「ぬがぁ〜!!!また負けたぁ〜!!!」

「んみゅ!またおやぷんがどべなの!」

「俺スラッグ、もう嫌!!!」

 

 左側のライセン大峡谷と右側の雄大な草原に挟まれながら、パイロとアリオンが太陽を背に西へと疾走する。街道の砂埃を巻き上げながら、それでも道に沿って進むパイロの車内では、ハジメ・ユエ・スラッグ・ミュウの四人で、ハジメが用意したトランプでババ抜きをしていた。何度目かの勝負でまたスラッグが負けたらしく、彼はうがー!と悔しそうに叫びながら手札をばら撒くと、そのまま不貞腐れてねっ転がった。

 現在、パイロの運転は誰がしているのかと言うと、ストレイフだ。インテリ派の彼は直ぐに運転方法をマスターすると、時々自分が運転を引き受けて、ハジメにミュウと遊ばせてあげていた。助手席にはティオが乗っている。

 ちなみに亮牙とシアはと言うと、サイドカーを外したアリオンに乗っているのだが…

 

「ヒャッハー!ですぅ!」

「……」

 

 なんと何時もとは違い、シアが運転しているのである。恋人を後ろに乗せた彼女は、峡谷側の荒地や草原を行ったり来たりしながらご機嫌な様子で爆走していた。

 ちなみに亮牙は、何時ものへそ出しルックとなった彼女のお腹に腕を回してしがみついたまま、黙っていた。

 

「…シアったらご機嫌だね。世紀末な野郎みたいな雄叫び上げてるよ」

「…むぅ。ちょっとやってみたいかも」

 

 パイロの窓枠に肘をかけながら二人を見たハジメが、呆れたような表情で呟いた。たまに乗り物に乗ると性格が豹変する人がいるが、シアもその類なのかもしれない。

 その傍らで同じように二人の様子を見ていたユエが、ちょっと自分もやりたそうにしている。恋人が「ヒャッハー!」とか言いだしたら、ひどく悲しい気分になりそうなので、絶対阻止しようと心に決めるハジメであった。

 もともとシアは、二輪の風を切って走る感じがとても気に入っていたのだが、最近人数が多くなり、すっかりパイロでの移動が主流になっていたため少々不満に思っていたのだ。車内では亮牙と思う存分イチャイチャ出来るし、窓から顔を出して風を感じることも出来るが、やはり何とも物足りなかった。

 それならば、運転の仕方を教わり自分で二輪を走らせてみたいと亮牙に懇願したのである。最初は渋った亮牙だったが、胸の谷間を強調しながら「お・ね・が・い・ですぅ〜♡」と頼み込むシアに、アッサリと承諾したのであった。

 シュタイフもアリオンも、魔力の直接操作さえ出来れば割と簡単に動かすことが出来るし、場合によってはハンドル操作すら魔力操作で行えるのだ。なのでシアにとっては大して難しいものでもなく、あっという間に乗りこなしてしまった。そして、その魅力に取り憑かれたのである。

 今も奇声を発しながら右に左にと走り回り、ドリフトしてみたりウイリーをしてみたり、その他にもジャックナイフやバックライドなどプロのエクストリームバイクスタント顔負けの技を披露している。アクセルやブレーキの類も魔力操作で行えるので、地球のそれより難易度は遥かに簡単ではあるのだが、それでも既にハジメや亮牙を凌ぐほど乗りこなしていた。シアのウサミミが「へいへい、どうだい、私のテクは?」とでも言うように、ちょっと生意気な感じで時折ハジメ達の方を向いている。

 

「パパ!パパ!ミュウもあれやりたいの!」

 

 するとユエの更に隣で窓から顔を出して気持ちよさそうにしていたミュウが、いそいそとユエの膝の上によじ登ると、そのまま大きな瞳をキラキラさせながらシア達を指差し、ハジメにおねだりを始めた。

 

「ダメに決まってるでしょ」 

「やーなの!ミュウもやるの!」

「…暴れちゃメッ!」

 

 ミュウがユエの膝の上に座りながら、即行で自分のお願いを否定したハジメに全力で駄々をこねる。暴れるミュウが座席から転げ落ちないよう、ユエが後ろから抱きしめて叱りつけた。「うぅ~」と可愛らしい唸り声を上げながらしょぼくれるミュウに、ハジメが仕方ないなぁ~という表情になる。

 

「ミュウ。後で僕乗せてあげるから、それで我慢して」

「ふぇ?いいの?」

「うん。シアと乗るのは絶対ダメだけどさ、僕となら構わないよ」

「シアお姉ちゃんはダメなの?」

「うん。絶対ダメ。あんな危険運転する人の乗り物に乗るなんて絶対ダメだからね。ってか亮牙もなんで止めないんだよ…」

 

 今もなお凄まじい運転を続けるシアと、そんな彼女にしがみついたまま何の注意もしない亮牙にジト目を向けながら、ハジメはミュウに釘を刺す。見てないところでシアに乗せてもらったりするなよ?と。

 ミュウと旅し始めて少し経つが、ハジメは既に「パパ」という呼び名については諦めていた。当初は、何が何でも呼び名を変えようとあの手この手を使ったのだが、そうする度にミュウの目端にジワッと涙が浮かび、ウルウルした瞳で「め、なの?ミュウが嫌いなの?」と無言で訴えてくるのだ。今や奈落の魔物だって蹴散らせるハジメだが、何故かミュウにはユエと同じくらい勝てる気がせず、結局なし崩し的に「パパ」の呼び名が定着してしまった。

 「パパ」の呼び名を許容(という名の諦め)してからというもの、ハジメは何だかんだでミュウを気にかけるようになり、今ではむしろ過保護と言っていいくらいだった。シアは残念ウサギだし、ティオは変態だし、亮牙とスラッグに至っては非常識が服を着て歩いているようなものだし、母親の元に返すまでミュウは俺が守らねば!とか思っているようだ。世話を焼きすぎる時は、むしろユエやストレイフがストッパーになってミュウに常識を教えるという構図が現在のマキシマルだった。

 ミュウがハジメにべったりなので、ユエとしては中々二人っきりでイチャつく機会が持てず、若干欲求不満気味だったが、やはり懐いてくれるミュウが可愛いので仕方ないかと割り切っていた。

 

「あ〜、お前ら。ミュウちゃんの目と耳塞いだ方が良いぞ。ありゃヤバい…」

「「え?」」

「んみゅ?」

 

 突如、運転しているストレイフが、亮牙とシアを眺めながら、後ろの仲間達にそう告げた。いびきをかきながら不貞寝しているスラッグ以外の三人は疑問を浮かべた。それは彼の隣に座っていたティオもだ。

 

「叔父上、ヤバいとはどういう事じゃ?シアは問題なさそうじゃが…」

「…シアちゃんの方じゃねえよお嬢。問題なのはグリムロックだ」

「ご主人様が?」

 

 ヤバいのはシアではなく亮牙。そう言われてますます疑問を浮かべる三人。一体亮牙の何がヤバいのだろうか?

 すると、今までずっと黙ったままシアにしがみついていた亮牙の両腕が動いた。彼は彼女のお腹に回していた両腕を緩めると…

 

ムニュッ♡

 

「あんっ♡」

 

 両手で彼女の胸元を掴み、その巨乳を揉み始めたのだ。堪らずシアが嬌声を上げる。

 それでも亮牙はお構いなしに彼女の胸を揉みしだき、更には腰を彼女のお尻に擦り付け始めた。

 

「シア!シア!」

「やんっ♡ああんっ♡ダメですよ亮牙さ〜ん♡こんなところでぇ〜♡あ〜ん♡皆が見てるじゃないですかぁ♡恥ずかしいですよぉ〜♡」

 

 恥じらいながらも満更でもなさそうに顔を赤らめるシアに、亮牙はますます鼻息を荒くして腰を振る。

 そんな二人をストレイフは呆れた表情で見つめていた。

 

「あの馬鹿、ずっと交尾に近い体勢でしがみついてたから、発情しちまってるよ…」

「言ってる場合じゃないでしょ!!?何やってんだよあの二人!!?ミュウ、絶対見ちゃダメだからね!!」

「んみゅ?なんでパパ慌ててるの?ぐりみぃとシアお姉ちゃん、どうしたの?」

「ん、何でもない。良い子は気にしちゃだめ…」

 

 慌ててハジメとユエがミュウの目と耳を塞ぎ、亮牙とシアがしている事を悟らせないようにした。膝の上で疑問を浮かべるミュウの頭を、ユエがいい子いい子しながら宥める。流石に外の光景はミュウの教育に悪過ぎる。

 一方、助手席に座っているティオはと言うと…

 

「シ、シアばっかりずるいのじゃ‼︎ご主人様にあんな事して貰えるなんて‼︎妾も変わって欲しいのじゃ〜♡」

「…お嬢、頼むから黙っててくれ。情けなくて死にたくなるから」

 

 シアが羨ましくなって顔を赤らめて、ハァハァと煩い息遣いとなっていた。その様子を見て隣のストレイフは、疲れ切った表情となりながら片手で額を押さえていた。

 そのうち、遂に見かねたユエが窓から身を乗り出して魔法を撃ち込み、発情しまくっていた亮牙に直撃させた。油断しきっていた亮牙はアリオンから転げ落ち、シアが慌てて「亮牙さ〜ん!!?」と叫んだ。

 

「ユエ、お疲れ」

「ん、全く世話が焼ける…」

「グリムロックには後で説教だな…」

 

 バカップル二人をパイロで追い越すと、ミュウの為にもしっかりしなきゃ!とちょっと虚しい決意をする、ハジメ・ユエ・ストレイフであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何も魔法ぶつけることねーだろ!」

「幼い子の目の前で発情するお前が悪い!」

「良いじゃないですか!私はむしろウェルカムだったのにぃ〜!」

「「黙っとれ残念ウサギ!!!」」

「俺スラッグ、俺が寝てるうちに何があった?」

「んみゅ、みんなに聞いても教えてくれないの」

「ミュウよ、お主が知るにはまだ早過ぎるのじゃ」

 

 亮牙とストレイフが口論となり、加勢するシアにツッコむハジメとユエ。彼らマキシマルは現在、宿場町ホルアドにいた。

 本来なら素通りしてもよかったのだが、フューレンを出発する際にイルワから頼まれごとをされたので、それを果たすために寄り道したのだ。とは言え、もともとグリューエン大砂漠へ行く途中で通ることになるので大した手間ではなかった。

 漸く口喧嘩が終わると、亮牙とハジメは懐かしげに目を細め、ギルドを目指して町のメインストリートを歩いた。ハジメに肩車してもらっているミュウが、二人の様子に気がついたようで、不思議そうな表情をしながらハジメのおでこを紅葉のような小さな掌でペシペシと叩いた。

 

「パパ?ぐりみぃ?どうしたの?」

「ん?ああ、いや、此処には前に来たことがあってね…」

「よく考えりゃあまだ半年も経ってねえのに、色々あり過ぎてもう何年も前のような気がしてきたな…」

「…二人とも、大丈夫?」

 

 複雑な表情をする亮牙とハジメに、ユエは心配そうな眼差しを向けた。それを見た二人は肩を竦めると、次の瞬間にはいつも通りの雰囲気に戻っていた。

 

「大丈夫、問題ないよ。ちょっとね、えらく濃密な時間を過ごしたなぁと思って感慨に耽っちゃった…」

「だな…。思えば、ここであのゴミ野郎に突き落とされたのが全ての始まりだったな。あ〜、思い出したら腹立ってきた」

「……」

 

 ある意味運命の日とも言うべきあの日のことを思い出し独白をするハジメと亮牙の言葉を、他の面々は神妙な雰囲気で聞いていた。

 ふと、ティオが興味深げに亮牙に尋ねた。

 

「ふむ。ご主人様とハジメ殿は、やり直したいとは思わんのか?元々の仲間がおったのじゃろ?…ご主人様達の境遇はある程度聞いてはいるが、皆が皆、ご主人様を忌み嫌っていたわけではあるまい?仲の良かった者もいるのではないか?」

 

 まだ亮牙達と付き合いが浅いティオは、時折今のように亮牙達の心の内を知ろうと、客観的に見ればかなりストレートな、普通なら気を遣ってしないような質問をする。それは単なる旅の同行者ではなく、彼女自身がきちんとマキシマルの一員になりたいと思っているが故の、彼女なりの努力だ。

 あの時食っとけば良かったと時々思うほど、手に余る変態ではあるが、其の辺の在り方は亮牙も認めていた。なので彼は、特に気を悪くすることもなく、ティオの質問を受け止めた。

 

「ハッ、俺はそんなの全く思った事ねぇよ。ハジメの場合はそんな奴もいたかもしれねぇが、俺の場合は全員から嫌われてたからな。あのクソッタレが正直に名乗り出ても『でかしたぞ』と喜ばれただろうさ」

「亮牙…」

「どんだけ嫌われてたんだよお前…」

 

 鼻で笑いながらそう告げる亮牙に、ストレイフが呆れてツッコむが、ハジメは複雑そうな顔となる。

 確かに優香達とはある程度わだかまりは消えたが、それでも学校での親友は、光輝達のせいで蔑ろにされ、自分と愛子ぐらいしか味方がいなかった。唯一、雫だけは気にかけていたが、基本的に彼女は身内に甘過ぎるため、味方とは言い難い存在だった。

 

「それに俺はある程度したら、ハジメ連れて出て行くつもりだったよ。あのカルト教団も、傀儡国家のハナクソ王国も、見ていて反吐が出るぐらい気に食わなかったし、奴等の出す飯も不味くて食えたもんじゃなかったからな」

「あ〜、それは分かるよ。亮牙のご飯食べ慣れてたから、なんか王国の料理ってしつこい味って感じがしたんだよね…」

 

 そう言いながら「うげぇ…」と言った表情になる亮牙。勝手に他所の世界の自分達を巻き込んでおきながら、何の罪悪感もないどころか「自分達は助けられて当然」と言った態度の聖教協会やハイリヒ王国には腹が立ったし、ハジメが錬成師だと分かると無能呼ばわりしていた時には皆殺しにしてやろうかと真剣に考えた程だ。

 おまけに王国の料理ときたら、無駄に豪勢だが味は個人的に言って最悪。如何にも悪徳貴族が食ってそうな甘ったるい味付けや脂っこい料理ばかりで、とても毎日食えたものじゃなかった。ハジメも同じ気持ちなのか、苦笑いとなる。

 

「とまあそんな感じで、予想外な展開にはなっちまったが、なんだかんだでお前らと会えたのは良かったと思ってるよ。だから、あの日をやり直したいとは全く感じないな」

 

 そう言いながら亮牙は、隣を歩いているシアの耳を優しく撫でた。

 この旅は待ち受ける戦いに備えてのものだが、生き別れた盟友達とも再会できたし、何よりこんな素敵な恋人が出来た。今はとても充実した毎日を送る事が出来ている。

 そんな彼の様子に、シアも優しく微笑みながらギュ〜と亮牙を抱き締め、ストレイフとスラッグも安堵したように笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホルアドの町は、直ぐ傍にレベル上げにも魔石回収による金稼ぎにも安全マージンを取りながら行えるオルクス大迷宮があるため、冒険者や傭兵、国の兵士がこぞって集まり、そして彼等を相手に商売するため多くの商人も集まっていることから、常時、大変な賑わいを見せている。当然、町のメインストリートといったら、その賑わいもひとしおだ。

 そんな周囲の人々の視線を無視しながら、マキシマル一行はようやく冒険者ギルドのホルアド支部に到着した。ハジメは相変わらずミュウを肩車したままだ。他の町のギルドと違い金属製の扉を亮牙が開けると、重苦しい音が響き、それが人が入ってきた合図になっているようだ。

 前回、亮牙とハジメがホルアドに来たときは、冒険者ギルドに行く必要も暇もなかったので中に入るのは今回が初めてだ。ホルアド支部の内装や雰囲気は、ハジメが最初に抱いていた冒険者ギルドそのままだった。

 壁や床は、ところどころ壊れていたり大雑把に修復した跡があり、泥や何かのシミがあちこちに付いていて不衛生な印象を持つ。内部の作り自体は他の支部と同じで入って正面がカウンター、左手側に食事処がある。しかし、他の支部と異なり、普通に酒も出しているようで、昼間から飲んだくれた中年オヤジどもがたむろしていた。二階部分にも座席があるようで、手すり越しに階下を見下ろしている冒険者らしき者達もいる。二階にいる者は総じて強者の雰囲気を出しており、そういう制度なのか暗黙の了解かはわからないが、高ランク冒険者は基本的に二階に行くのかもしれない。

 冒険者自体の雰囲気も他の町とは違うようだ。誰も彼も目がギラついていて、ブルックのようなほのぼのした雰囲気は皆無である。冒険者や傭兵など、魔物との戦闘を専門とする戦闘者達が自ら望んで迷宮に潜りに来ているのだから気概に満ちているのは当然といえば当然なのだろう。

 しかし、それを差し引いてもギルドの雰囲気はピリピリしており、尋常ではない様子だった。明らかに、歴戦の冒険者をして深刻な表情をさせる何かが起きているようだ。

 マキシマル一行がギルドに足を踏み入れた瞬間、冒険者達の視線が一斉に彼ら八人を捉えた。正史ならミュウはその眼光のあまりの鋭さに怯えてしまうのだが、今の彼女の仲間には人相の悪い暴れん坊三人が仲間にいるので、目の前の中年オヤジどもには何一つ恐怖を感じていなかった。

 冒険者達は、美女・美少女に囲まれた亮牙やハジメ達に、色んな意味を込めて殺気を叩きつけ始めた。一部は血気盛んな、あるいは酔った勢いで席を立ち始めた。その視線は「ふざけたガキ共をぶちのめす」と何より雄弁に物語っており、このギルドを包む異様な雰囲気からくる鬱憤を晴らす八つ当たりと、単純なやっかみ混じりの嫌がらせであることは明らかだ。

 亮牙達は単なる依頼者であるという可能性もあるのだが、どいつもこいつも既にそのような考えは持っていなかったらしい。取り敢えず話はぶちのめしてからだという、単純極まりない考え方でマキシマルの方へ踏み出そうとした。それがどれだけ愚かな判断かも知らずに…。

 

「おいクソガ「邪魔だ」ひでぶっ!!?」

「「「「「!!?」」」」」

 

 そのうちの一人、20階層をクリアした紫ランクの冒険者アテウ・マデスがマキシマル一行に近づいた瞬間、亮牙のパンチがその顔面に直撃した。某ガキ大将の必殺「ジャイ○ンパンチ」の如く、アテウの顔面は一瞬で陥没し、全ての歯が砕け散った挙句そのまま後ろに吹き飛び、壁に上半身がめり込んだ。一応生きてはいるようで、足は死にかけの虫のようにピクピクと動いている。名前通りの当て馬っぷりだ。

 その容赦ない一撃は、先程までマキシマルを睨みつけていた冒険者達は、一瞬で全員が凍りついた。誰もがあんぐりと口を開け、呆然とした表情で亮牙達を見ている。

 

「ぐりみぃ!いじわるしたらめっ、なの!」

 

 ハジメに肩車されて亮牙と同じくらいの目線になったミュウが、ペシペシと彼の頭を叩いた。そんなシュールな光景に誰もがポカンとなる。

 

「俺は良いの。俺悪い子だから」

「んみゅ!ぐりみぃ、良い子にならなきゃだめなの!」

「良いも〜んだ、みのも〜んた」

「「ガキかお前は」」

「ご、ご主人様〜?出来れば妾も一発…」

「黙ってろ気色悪りぃ。口を縫い合わすぞ」

「はぅぅぅんっ♡」

 

 最早先程人一人を殴り倒した事など何でもないかのように、ミュウに軽口を叩いて揶揄う亮牙に、呆れたストレイフとハジメのツッコみが入る。ティオが自分もやってほしいなどと曰うが、容赦ない口撃に興奮する。

 呆気に取られている冒険者達達を無視して、マキシマル一行はカウンターへと歩いて行き、たどり着いたカウンターの受付嬢に要件を伝えた。

 ちなみに受付嬢は可愛かった。ハジメと同じ年くらいの明るそうな娘だ。テンプレはここにあったらしい。もっとも普段は魅力的であろう受付嬢の表情は、先程の惨劇を見たからか緊張でめちゃくちゃ強張っていたが。

 

「此処の支部長はいるか?フューレン支部のイルワ・チャング支部長から手紙を預かってる。本人に直接渡してくれとの事だ」

 

 そう言いながら亮牙はステータスプレートを受付嬢に差し出した。受付嬢は緊張しながらも、プロらしく居住まいを正してステータスプレートを受け取った。

 

「は、はい。お預かりします。え、えっと、フューレン支部のギルド支部長イルワ・チャング様からの依頼、ですか?」

 

 普通、一介の冒険者がギルド支部長から依頼を受けるなどということはありえないので、少し訝しそうな表情になる受付嬢。しかし、渡されたステータスプレートに表示されている情報を見て目を見開いた。

 

「き、金ランク⁉︎」

 

 冒険者において金のランクを持つ者は全体の一割に満たない上、金ランク認定を受けた者についてはギルド職員に対して伝えられるので、当然、この受付嬢も全ての金ランク冒険者を把握しており、亮牙の事など知らなかったので、思わず驚愕の声を漏らしてしまった。

 その声に、ギルド内の冒険者も職員も含めた全ての人が、受付嬢と同じように驚愕に目を見開いて亮牙達を凝視し、建物内がにわかに騒がしくなった。受付嬢は自分が個人情報を大声で晒してしまったことに気がついて、サッと表情を青ざめさせると、ものすごい勢いで頭を下げ始めた。

 

「も、申し訳ありません!本当に、申し訳ありません!」

「別にいい。さっさとしろ」

「は、はい!少々お待ちください!」

 

 放っておけばいつまでも謝り続けそうな受付嬢に、ぶっきらぼうにそう告げる亮牙。最早隠す必要もないので、先ほども容赦なくアテウ・マデスを殴り倒したのだ。

 先程まで呆気に取られていた冒険者達は、目の前の相手が金ランク冒険者だと知り、誰もが「アイエエエ…」等と震え上がっていた。そして全員が、下手な真似してアテウの二の舞にならなくて良かったと、内心安堵していた。

 マキシマル一行はそのまま待機していたが、注目されることに慣れていないミュウが、居心地悪そうなので全員であやした。ティオのあやし方だけ情操教育的に悪そうだったので、亮牙が容赦なく拳骨をお見舞いしておいた。

 やがて、と言っても5分も経たないうち、ギルドの奥からズダダダッ!と何者かが猛ダッシュしてくる音が聞こえだした。何事だとマキシマル一行が音の方を注目していると、カウンター横の通路から全身黒装束の少年がズザザザザザーと床を滑りながら猛烈な勢いで飛び出てきて、誰かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡し始めた。

 ハジメはその人物に見覚えがあり、こんなところで再会するとは思わなかったので思わず目を丸くして呟いた。

 

「…遠藤?」

 

 

 

 

 




今回の下ネタは、アニメ12話でシュタイフを運転するシアのパンチラ&尻振りに悩殺された勢いで書きました(笑)

あれを見ちゃうとさ、本当にさ、
ムラムラします(`・ω・´)

後は『リベンジ』冒頭でサムの愛犬達の交尾シーンのオマージュのつもりでもあります。





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