MCUでスパイダーマンのCVを担当した榎木淳弥氏が演じた遠藤ですが、原作でのハジメへのいじめに少なくとも加担していた事、それへの罪悪感や後ろめたさなど微塵も感じられない手のひら返しの態度とかで、どうも好きにはなれないキャラなのでアンチとしました。
「…遠藤?」
ハジメの呟きに「!」と某ダンボール好きな傭兵のゲームに出てくる敵兵のような反応をする黒装束の少年、遠藤浩介は辺りをキョロキョロと見渡すと、目の前の8人組のうちの二人、亮牙とハジメに気がついた。遠藤から顔をマジマジと見つめられ、心底嫌そうな表情で顔を背けるハジメに、遠藤はまさかという面持ちで声をかけた。
「な、南雲に、灘、なのか…?」
「はぁ、そうだよ。見た目は少し変わったけど、正真正銘、南雲ハジメだよ」
そうハジメは頬をカリカリと掻きながら、あまり関わりたくないなぁ、という態度で告げた。一方の亮牙は怪しむような目を遠藤に向けたまま黙っていた
そんな彼らを上から下までマジマジと観察した遠藤は、地球にいた頃より逞しい体つきになり、顔の右半分に大きな火傷のような痕があるものの、顔の造形から南雲ハジメ本人だと確信した。亮牙に至っては瞳の色こそ変わっているが、外見はほぼ変化がなかったのですぐに彼だと分かった。
「お前ら、生きていたのか…」
「今、目の前にいるんだから当たり前でしょ」
「何かお前、少し変わったんじゃないか…?前より見た目とか雰囲気とか若干逞しくなってるし…」
「奈落の底から自力で這い上がってきたんだ。嫌でも変わらざるを得なかった」
「そ、そういうものかな?いや、でも、そうか…。ホントに生きて…」
あっけらかんとしたハジメの態度に困惑する遠藤だったが、それでも死んだと思っていたクラスメイトが本当に生きていたと理解し、安堵したように目元を和らげた。
いくらハジメが香織に構われていることに他の男と同じように嫉妬の念を抱いていたとしても、また檜山達のハジメに対するイジメを見て見ぬふりをしていたとしても、流石に死んでもいいなんて恐ろしいことは思ってないつもりだ。亮牙の方も光輝達に賛同して凶悪な奴というレッテルを貼っていたし、ハジメ程ショックには感じなかったものの、流石にハジメと同様に彼の死も衝撃を与えた。
だからこそ遠藤は、純粋にクラスメイトの生存が嬉しかったのだ。
すると、さっきから黙って遠藤を見ていた亮牙がハジメに話しかけた。
「おいハジメ、誰だこのモブキャラは?こんな知り合いいたか?」
「「え?」」
そう言われたハジメと遠藤はキョトンとなる。やがてハジメが呆れたように肩をすくめると、親友に目の前の少年について説明し始めた。
「あ〜、亮牙?覚えてないの?遠藤だよ遠藤。クラスメイトの遠藤浩介」
「こんな何処にでもいるようなモブキャラなんぞ、俺の記憶にはない。お前の勘違いじゃないのか?」
「いやいや、うちのクラスじゃある意味有名人だったじゃん。影の薄さランキング生涯世界一位で」
「煩せぇよ!誰がコンビニの自動ドアすら反応してくれない影が薄いどころか存在自体が薄くて何時か消えそうな男だ!自動ドアくらい三回に一回はちゃんと開くわ!」
「いやそこまで言ってないから…。てか三回中二回は開かないのか…」
思わずカッとなって自虐しながら怒鳴る遠藤に、ハジメは呆れるが、やはり亮牙は覚えてないらしい。清水の事は朧げながら覚えていたのだが、遠藤の影が薄過ぎるあまり、元から親しい人間以外に関心を持っていなかった事もあって、覚えようともしていなかったようだ。
「やはり記憶にないな。お前みたいに居ても居なくてもどうでも良さそうな奴なんぞ、俺にとっては覚える必要がなかった。それだけの話だ」
「腹立つ奴だなお前…。っていうかお前ら、冒険者してたのか?しかも『金』て…」
「まぁ、僕らも僕らで色々やる事があったからね」
亮牙の毒舌に怒りを覚える遠藤だったが、ハジメの返答を聞いてその表情は、クラスメイトが生きていた事にホッとした様子から切羽詰ったような表情にガラリと変わった。改めてよく見てみると遠藤がボロボロであることに気がつく亮牙達は、一体何があったんだと内心首を捻った。
「…つまり、迷宮の深層から自力で生還できる上に、冒険者の最高ランクを貰えるくらい強いってことだよな?…まあ南雲はともかく、灘の場合は何の天職もなしにベヒモス倒せるんだし当然か?」
「だったら何だ」
遠藤の真剣な表情でなされた確認に、ぶっきらぼうながらも肯定の意を亮牙が示すと、遠藤は彼とハジメに飛びかからんばかりの勢いでつかみ掛かり、今まで以上に必死さの滲む声音で、表情を悲痛に歪めながら懇願を始めた。
「なら頼む!一緒に迷宮に潜ってくれ!早くしないと皆死んじまう!一人でも多くの戦力が必要なんだ!健太郎も重吾も死んじまうかもしれないんだ!頼むよ、二人とも!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!いきなり何だよ⁉︎状況が全くわからないんだけど!死んじまうって何なんだよ。天之河君がいれば大抵何とかなるんじゃない?」
「またメルド・ロギンスの指示を無視して馬鹿でもやらかしたか?つくづく救いようがねぇなテメェら…」
普段目立たない遠藤のあまりに切羽詰った尋常でない様子に、ハジメは困惑した。亮牙の方は鬱陶しそうな表情で、またあの時の檜山や迷惑カルテットみたくメルドの命令を無視して大惨事を引き起こしたのか問い返した。
すると、遠藤はメルドの名が出た瞬間、ひどく暗い表情になって膝から崩れ落ちた。そして、押し殺したような低く澱んだ声でポツリと呟いた。
「…んだよ」
「あ?聞こえねぇよ。はっきり喋れ」
「…死んだって言ったんだ!メルド団長もアランさんも他の皆も!迷宮に潜ってた騎士は皆死んだ!俺を逃がすために!俺のせいで!死んだんだ!死んだんだよぉ!」
「「…そうか」」
癇癪を起こした子供のように「死んだ」と繰り返す遠藤に、亮牙もハジメもただ一言、そう返した。
ハジメの天職が非戦系である事、そして何より亮牙が聖教教会とハイリヒ王国を一切信用してない事もあって、二人とメルドとの接点はそれほど多くなかった。しかし、それでもメルドが少なくとも善人であったことは覚えていた。
そんな彼が死んだと聞かされれば、奈落から出たばかりの頃なら二人とも「あっそ」で終わらせたかもしれないが、今は少しばかり哀れみを感じていた。あんな腐敗した国に仕えたばっかりに、こんなガキ共なんぞに希望を託してしまったばっかりに非業の死を遂げたメルドを…。
「それで?何があったのさ?」
「それは…」
尋ねるハジメに、遠藤が膝を付きうなだれたまま事の次第を話そうとすると、しわがれた声による制止がかかった。
「話の続きは、奥でしてもらおうか。そっちは、俺の客らしいしな」
声の主は、60歳過ぎくらいのガタイのいい、左目に大きな傷が入った迫力のある男だった。その眼からは、長い年月を経て磨かれたであろう深みが見て取れ、全身から覇気が溢れている。
「何だテメェはバカヤロー」
「ここの支部長ロア・バワビスだこのヤロー」
そんな強面の男に対して容赦なく失礼な問いかけをする亮牙。対してその男、ロア・バワビスは気にした様子もなく、ノリの良い感じで答えた。
ハジメはロアを見た瞬間、先程の受付嬢が傍にいることからも彼がギルド支部長だろうと予測していたが、それは当たっていた。そして、遠藤の慟哭じみた叫びに再びギルドに入ってきた時の不穏な雰囲気が満ち始めた事から、この場で話をするのは相応しくないだろうと判断し大人しく従う事にした。
おそらく、遠藤は既にここで同じように騒いで、勇者組や騎士団に何かがあったことを晒してしまったのだろう。ギルドに入ったときの異様な雰囲気はそのせいだ。
ロアは遠藤の腕を掴んで強引に立たせると有無を言わさずギルドの奥へと連れて行った。遠藤はかなり情緒不安定なようで、今はぐったりと力を失っていた。きっと話の内容は碌な事じゃないんだろうなと嫌な予想をしながら、マキシマル一行は後を付いていった。
そんな彼らを密かに見下ろす者がいた。遠藤に張り付いて地上まで上がってきたインセクティコンだ。この小さなディセプティコンは、遠藤がギルドに辿り着いた瞬間に密かに離れて天井に張り付くと、未だ迷宮にいる援軍のために信号を発し続けていたのだ。
同時刻、オルクス大迷宮の5階層を冒険者の一団が探索していた。彼らは地上の喧騒など知る由もない。彼らとすれ違って地上へ上がっていった遠藤に対しても、その影の薄さから全く気づいていなかった。
突如、地面が揺れ始め、ドスドスと何かの足音が聞こえ始めた。冒険心達は一瞬動揺しつつも、魔物の襲来かと思い身構える。足音はどんどん近づいてくる。
やがて迷宮の奥から、2体の巨獣が猛スピードで突進してきた。あまりの巨体とスピードに、冒険者達は応戦する間も逃げる余裕もなく、まるで地を這う蟻の如く踏み殺されてしまった。巨獣達はそんな哀れな犠牲者達に気付きもせず、地上目指して駆け抜けるのであった。
「魔人族に、正体不明の敵、ね…」
冒険者ギルド・ホルアド支部の応接室に、ハジメの呟きが響いた。対面のソファーにホルアド支部の支部長ロアと遠藤が座っており、遠藤の正面にハジメと亮牙が座っている。ハジメの右側にユエとスラッグが、亮牙の左側にシアとティオとストレイフが並んで座っている。ミュウは、ハジメの膝の上だ。
遠藤から事の次第を聞き終わったマキシマル一行の第一声が、先程のハジメの呟きだった。魔人族の襲撃に遭い、更には未知の敵まで現れて、勇者パーティーは死者まで出て窮地にあるというその話に、遠藤もロアも深刻な表情をしており、室内は重苦しい雰囲気で満たされていた。
…のだが、ハジメの膝の上のミュウと右端に座るスラッグが、モシャモシャと頬をリスのよう膨らませながらお菓子を頬張っているため、イマイチ深刻になりきれていなかった。
ミュウにはハジメ達の話は少々難しかったようだが、それでも不穏な空気は感じ取っていたようで、不安そうにしているのを見かねてハジメがお菓子を与えておいたのだ。それに食いしん坊なスラッグが便乗した形だ。亮牙に至っても、ギルド職員が出したお茶を呑気に飲んでいる始末だ。
やがて自分の分を食べ尽くしてしまったスラッグは、まだミュウが全部食べ切れていないことに気づくと、横から手を伸ばしてそのお菓子を全部掠め取って口いっぱいに頬張った。ミュウは「んみゅ⁉︎」と叫ぶと、やがてウルウルと瞳を潤ませてハジメに抱きついた。
「おやぷんがミュウのお菓子取った〜!!!」
「ワハハハハ!俺スラッグ、ミュウが食べるの遅いのが悪い!」
「「「「「「スラッグ(さん/殿)!!!」」」」」」
泣き出すミュウに大人気なく憎まれ口を叩いて揶揄うスラッグに、残る六人が雷を落とす。一番隣にいたユエが、代表して彼の手を叩いた。
空気を読むどころか、場の雰囲気を壊すような彼ら8人に、遂に耐え切れなくなった遠藤がビシッと指を差しながら怒声を上げた。
「いい加減にしろよ!何なんだよ、お前ら!何で呑気に菓子食って茶なんか飲んでんの⁉︎状況理解してんの⁉︎みんな、死ぬかもしれな……熱ぃっ!!?」
だがその怒声は途中で途切れた。亮牙が自分のカップのお茶を遠藤にぶっかけたからだ。亮牙の熱で通常より熱くなったお茶をかけられ、遠藤の悲鳴が上がる。
「モブキャラ風情が偉そうに俺らに指図するな。その喉掻っ切って永久に黙らせるぞ?」
「ひぃっ!!?」
睨みつけながらそう脅してくる亮牙に、文句を言おうとした遠藤は忽ち悲鳴を上げて浮かしていた腰を落とした。隣ではハジメが未だ泣いているミュウをあやしており、もうすっかり父親のようだ。左端ではストレイフが「どうしてグリムロックもスラッグもこう大人気ないんだ…」と呆れていた。
ソファーに倒れこみガクブルと震える遠藤を尻目に、ミュウを宥めるハジメと呑気に欠伸をする亮牙に、呆れたような表情をしつつもロアが埒があかないと話に割り込んだ。
「さて、亮牙にハジメ。イルワからの手紙でお前らマキシマルの事は大体分かっている。随分と大暴れしたようだな?」
「全部成り行きだ。好きでやったわけじゃねえ」
成り行き程度の心構えで成し遂げられる事態では断じてなかったのだが、ぶっきらぼうにそう告げる亮牙に、ロアは面白そうに唇の端を釣り上げた。
「手紙には、お前らの金ランクへの昇格に対する賛同要請と、できる限り便宜を図ってやって欲しいという内容が書かれていた。一応、事の概要くらいは俺も掴んではいるんだがな…。たった数人で六万近い魔物の殲滅と、半日でフューレンに巣食う裏組織の壊滅…。にわかには信じられんことばかりだが、イルワの奴が適当なことをわざわざ手紙まで寄越して伝えるとは思えん…。もう、お前が実は魔王だと言われても俺は不思議に思わんぞ」
ロアの言葉に、大きく目を見開いて驚愕をあらわにする遠藤。自力でオルクス大迷宮の深層から脱出した亮牙とハジメの事を、それなりに強くなったのだろうとは思っていたが、それでも自分よりは弱いと考えていたのだ。
何せハジメの方は非戦系職業の錬成師で元は「無能」と呼ばれていたし、亮牙の方も既にベヒモスを討伐した事から自分達は彼を追い越していると考えていたからだ(単身魔法もなしに倒した亮牙と違い、自分達は全員で魔法を使った連携の末に倒した事など気づかずに)。
それに金ランクと言っても所詮は異世界の冒険者の基準であるから、自分達召喚された者とは比較対象にならす、精々破壊した転移陣の修復と、戦闘のサポートくらいなら出来るだろうくらいの認識だったのだ。
元々、遠藤が冒険者ギルドにいたのは、高ランク冒険者に光輝達の救援を手伝ってもらうためだった。もちろん、深層まで連れて行くことは出来ないが、せめて転移陣の守護くらいは任せたかったのである。駐屯している騎士団員もいるにはいるが、彼等は王国への報告などやらなければならないことがあるし、何より、レベルが低すぎて精々30層の転移陣を守護するのが精一杯だった。70層の転移陣を守護するには、せめて銀ランク以上の冒険者の力が必要だったのである。そう考えて冒険者ギルドに飛び込んだ挙句、2階のフロアで自分達の現状を大暴露し、冒険者達に協力を要請したのだ。
だが、人間族の希望たる勇者一行が4人も死亡して窮地である上に、騎士団の精鋭は全滅、おまけに依頼内容は70層で転移陣の警備というとんでもないもので、誰もが目を逸らし、同時に人間族はどうなるんだと不安が蔓延したのである。そして騒動に気がついたロアが、遠藤の首根っこを掴んで奥の部屋に引きずり込み事情聴取をしているところで、マキシマル一行のステータスプレートをもった受付嬢が駆け込んできたというわけだ。
そんなわけで遠藤は、自分が亮牙とハジメの実力を過小評価していたことに気がつき、もしかすると自分以上の実力を持っているのかもしれないと、過去の二人と比べて驚愕しているのである。そうしている間も、ロアと亮牙の話は進んでいった。
「魔王だぁ?寝言は寝て言え。俺達全員、そんな雑魚よりもっと強いぞ」
「ふっ、魔王を雑魚扱いか?随分な大言を吐く奴だ…。だが、それが本当なら俺からの、冒険者ギルド・ホルアド支部長からの指名依頼を受けて欲しい」
「あ?何をだよ?」
「察しなよ亮牙…。勇者達の救出ですね?」
「そ、そうだ!灘に南雲!一緒に助けに行こう!お前達がそんなに強いなら、きっとみんな助けられる!」
ミュウをあやしながらそう問いかけるハジメの「救出」という言葉を聞いて、ハッと我を取り戻す遠藤。見えてきた希望に瞳を輝かせると、身を乗り出しながら、亮牙達に捲し立てた。だが…
「「……」」
「な、何だよその嫌そうな顔は⁉︎」
当の亮牙とハジメは、某海賊漫画に登場する侍の如く、心底嫌そうな顔をするだけだった。
遠藤は当然、亮牙とハジメが一緒に救出に向かうものだと考えていたので、即答しないことに困惑した。
「どうしたんだよ!今、こうしている間にもアイツ等は死にかけているかもしれないんだぞ!何を迷ってんだよ!仲間だろ!」
「…仲間だと?」
「あ、ああ。仲間だろ!なら、助けに行くのはとうぜ…」
ヒートアップする遠藤を冷めた目で睨み返す亮牙とハジメ。二人の瞳に宿る余りの冷たさに思わず身を引く遠藤は、先程の殺気を思い出し尻込みするが、それでも貴重な戦力を逃すわけにはいかないので半ば意地で言葉を返した。それをハジメと亮牙は鼻で笑った。
「…今まで散々好き放題見下して忌み嫌ってた癖に、都合の良い時だけ手のひら返して仲間面するのはやめてよ。はっきり言うけどさ、僕達が君達にもっている認識は唯の『同郷』の人間程度であって、他人も同然なんだよ」
「なっ⁉︎そんな…。何を言って…」
「そもそも、あんな真似をしておいて、助けて貰えると思ってるのか?生憎俺達はそんな聖人君子じゃない。つくづくおめでたい奴らだな」
「あんな真似?一体お前ら、何があったんだ?」
「ご存知ないんですかロア支部長?そもそも僕達がオルクスの底から自力で脱出する事になったのは、勇者一行の一人・檜山大介に突き落とされたからです」
「「!!?」」
二人の予想外に冷たい言葉に狼狽する遠藤。だが話を聞いていたロアが聞き捨てならない言葉を問いただすと、ハジメはそもそもの元凶である檜山の所業を暴露した。それを聞き、ロアは勇者一行が仲間を殺そうとした事に、遠藤はあの事件の真相が明かされた事に、それぞれ戦慄する。
「あ、彼奴が犯人だったのか…⁉︎で、でも!檜山ならもう敵に殺された筈だ!既に報いは受けたよ!俺達は関係ないだろ⁉︎」
「関係ない?そもそもあんな事態になったのは、檜山がメルド団長の警告無視してトラップ発動させたのが原因じゃないか。それだけでも罰するべきだったのに、君達は奴の土下座一つで簡単に許したそうじゃないか」
「そ、それは…」
「誤魔化すなよ。どうせテメェらにとっちゃ、俺もハジメも死んでも構わない存在だったから、そんな簡単に片付けたんだろ。むしろ俺達が死んでくれて、大喜びだったんじゃないのか?」
「うっ…」
ハジメと亮牙の皮肉たっぷりな言葉に、遠藤は反論できなかった。
仮に檜山が故意に魔法を亮牙にぶつけてなかったり、奇跡的に死者が出なかったにしても、あの事態を引き起こした時点で過失傷害罪か過失致死罪にあたる。それを自分達は光輝が許すからと、土下座一つで簡単に奴を許した。今落ち着いて考えてみれば、自分が被害者だったら巫山戯るなと怒り狂うだろう。
あの後犯人探しもせず、亮牙がハジメを道連れにした自業自得で片付けてしまったのも、自分が犯人かもしれないのが怖かった以上に、心の何処かで2人の死を「ざまあみろ」とでも思っていたのかもしれない。そんな事はないと言い聞かせたかったが、メルドの「光輝以外を切り捨てる」苦渋の決断を聞いた後では、中々自己弁護できなかった。
そんな遠藤の内心など知ったことかと言わんばかりに亮牙の指摘は続く。
「そもそも俺もハジメも先生も、この世界に来た頃から散々指摘した筈だ。戦争とは命の奪い合い。幾らこの世界の大抵の連中より強くても、不死身じゃない以上殺されるかもしれないってな。その警告を無視して、年寄りや妊婦に席譲る感覚で戦場に立つ道を選んだのは、一体何処のどいつだ?」
「あ、あれは天之河達が言うから!それに地球に帰るにはこの世界を救わないと…!」
「確かに煽動したのは奴らだが、ホイホイ従って自分の命を捧げる選択したのはテメェら自身だろうが…。それに俺達は攫われた被害者。考えて交渉すれば戦場に立つ必要もなかった筈だ」
危険な手段を選ぶよう唆した光輝達が悪い、と反論しようとした遠藤だが、そんなの言い訳にはならない。最終的にそれに賛同し、戦うという選択を選んだのは他ならぬ遠藤達だ。亮牙の言う通り、もう少し注意して選択していれば、安全な道も取れた筈だ。
「大体先生に会って聞いたが、俺達が突き落とされた後、先生の尽力で戦場から離れられるチャンスは得た筈だ。だけどテメェら15人はそのチャンスを手放し、戦う道を選んだ。…大方、あんな子ども大人に泣きつかなくても、自分達で何とか出来るって思ってたんだろ?」
「ち、違っ⁉︎俺達は愛ちゃん先生をそんな風に見下しては…!」
「見下してたから今日の今日まで、あの人に従わずに好き勝手やってたんだろうが…。大体、他人を救う立場に立っておきながら助けを求めるなんざ、聞いて呆れる。冒険者どもが依頼を拒んだのも、そんな情けないお前らに失望したからだろうさ」
亮牙達が愛子と再会していた事に驚く遠藤だが、それよりも亮牙の容赦ない言葉が心にグサリと突き刺さる。
愛子はこの世界に来てから散々、自分達生徒が他所の世界の戦争に巻き込まれる事に反対し、亮牙達の一件があってからは必死に尽力して、皆を戦争から引き離そうとしてくれた。けれど結局、遠藤達は彼女ではなく光輝について行く道を選んだ。口ではいくら否定しても、心の底で愛子を頼りないと見下していたに違いない。
そもそも世界を救う立場の人間が、ピンチに陥ったから助けて欲しいなんて、まさにミイラ取りがミイラになったようなものだ。冒険者達の苛立っていた理由も分かる。散々自分達が世界の救世主だと持て囃されときながら、結局は何の役にも立たないただのカカシだったと知れば、失望と怒りを抱くのも無理はないだろう。
「以上が僕達が君達を助けに行きたくない理由だ。すみませんがロア支部長、先程の依頼は断らせて頂きます」
「そうか…。残念だ」
「まあ悲しむ事はねぇよ。テメェらみてえなモブキャラでも、戦って死んだとなれば、教会も王国も名誉の死と褒め称えてくれるさ。それじゃお前ら、行くぞ」
「ま、待ってくれ二人とも!頼むから見捨てないでくれ!」
ハジメの丁重な断りにロアは残念そうな顔をし、皮肉を述べながら席を立とうとする亮牙を、遠藤は必死に引き止めようとした。
すると突如として、ギルドの外から何かが破壊される音が響き渡った。続いて多くの怒声や悲鳴、更に獣の唸り声が聞こえてくる。
部屋にいた皆が何事かと身構える中、先程の受付嬢が大慌てで部屋に駆け込んできた。その顔からは血の気が引き、完全に青ざめてしまっていた。
「支部長!大変です!」
「何だ⁉︎一体、外の騒ぎは何だ⁉︎」
只事ではないと悟ったロアが問いただすと、受付嬢は直ぐに何が起きているのかを伝えた。
「見た事もない新種の魔物が迷宮から這い出してきて、町を襲っています!」
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