グリムロックは宇宙最強   作:オルペウス

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昨日7/31に、三度目のゴジラVSコングを見てきました。
自分にとって怪獣と言えばキングコングなのでどハマりしたのもありますし、本作の執筆においても戦闘描写の参考にもなりますので(笑)


格の違い

(な、何なんだいこの化け物は!!?)

 

 同盟者達の残虐非道振りに若干辟易しつつも、自らの勝利を確信していたカトレアは、一転して恐怖に震え上がっていた。

 突如として天井を突き破って降り立ち、そのまま真下にいたアブソドの頑強な甲羅を踏み砕いて即死させたその生き物は、今まで彼女が見てきた魔物が愛玩動物に見えるくらい巨大だった。ショックウェーブの使役するドリラーに比べれば小柄だが、全長40mもの巨体に、無数の刀剣が並んだような鋭い牙の生えた巨大な顎は、それ以上の迫力を醸し出していた。

 おまけに背中には、まだ三人ほど仲間らしき輩が跨っている。うち一人は、明らかに同盟者であるディセプティコン達と同類に見える。もしかして此奴らもディセプティコンの兵士かもしれない。地下へと進んでいったショックウェーブからも、地上へ攻め入ったドレッドボットからも新たな応援を送るなんて連絡はなかったが、連絡がまだ回っていない可能性だってある。

 そんな淡い期待が正しい事を必死に祈りながら、カトレアはモホークとボーンクラッシャーへと振り返るが…

 

「うそ〜ん…」

「何ダァ?此奴らぁ?」

 

 モホークは先程まで殺戮を楽しんでいたのが嘘のように、口をあんぐりと開けたまま、この世の終わりと言わんばかりに絶望した表情となっている。おかげで次の犠牲者となる筈だった雫は、最後の力を振り絞って逃げ出す事が出来たようだ。ボーンクラッシャーの方は警戒しつつも、闘志を沸らせている。どうやら当てが外れたらしい。

 それでも彼女は、現れた連中が敵ではなく味方であって欲しいという希望を捨てられず、モホークに尋ねた。

 

「モ、モホーク…。アンタ、あのデカブツの事知ってるみたいだけど、ディセプティコンの仲間かい?」

「…ちげーよカトちゃん。俺らの敵・オートボットの英雄で、前世のドレちゃんぶっ殺した化け物さ」

 

 やはり目の前の相手は敵だった。それを聞いたカトレアは身構えながらも、内心は恐怖で発狂しそうだった。軍人として戦場に立ち、多くの敵と対峙した経験があるからこそ、目の前に現れた怪物の強さが理解できてしまったのだ。配下の魔物達も、それを本能的に悟っているらしく、さながら蛇に睨まれた蛙の如く固まっている。

 

「馬鹿野郎!何そこで寝っ転がってる猿どもみてぇにビビってやがる!ボッツの仲間って事は俺らの敵、ぶっ殺せば良いってだけだろうが!」

 

 そんな仲間達に対して、好戦的なボーンクラッシャーが怒鳴り声を上げると、グリムロック達目掛けて突進していった。彼の性格は一言で言えば「方向性無き破壊衝動」と称すべき戦闘狂だ。破壊衝動のままに暴れ回り、時には仲間のディセプティコンにすら牙を剥く。主君であるメガトロンと、その更に上の存在たるメガトロナス・プライムくらいしか、彼の恐れるものはないのだ。

 そんな彼の一言に励まされたのか、カトレアとモホークも腹を括ったようだ。何にせよ、出会した以上戦うしかない。勝って運命を切り開くしかないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「野郎ぶっ殺してやらぁ〜!!!」

 

 凄まじい怒声を上げながら突進してくるボーンクラッシャー。一方のグリムロックは、そんな彼に注意を払いつつも周囲の様子を観察した。

 遠藤の報告どおり、魔人族は目の前の女一人、ディセプティコンは二人だ。こっちに向かってくる一体は見た事ないが、もう一体は見覚えがある。ドレッドボット達と共にケイド達を襲った奴で、確かモホークと言う奴だ。自分の記憶が正しければ、バンブルビーに討ち取られた筈なのだが、恐らくメガトロナスの策略でこのトータスに転生したのだろう。

 後は魔人族の配下と思われる魔物達が、自分が降り立った際に踏み殺したアンキロサウルスの偽物らしい奴含めて何体かいるが、遠藤の報告にあった奴らが確認できない。述べられた特徴からしてドリラーボットなのだが、嗅覚を研ぎ澄ませても全く匂いを感じとることが出来ない。

 

(まさか…)

 

 グリムロックの脳裏に嫌な予感が過ぎる中、ボーンクラッシャーはどんどん近づいてくる。だが、グリムロックの背中に乗っているインパクターの右肩のカノン砲が発射され、直撃を受けたボーンクラッシャーは大きく仰け反った。

 

「此奴は僕にやらせて。今後に備えて、自分がディセプティコン相手にどこまでやれるか試したいからさ」

「俺グリムロック、分かった。ユエ、援護しろ」

「ん、任せて。私とハジメなら、大丈夫」

 

 そう言うと二人はグリムロックの背中から飛び降りて、怒りに震えるボーンクラッシャーと対峙する。どうやら致命傷とはならなかったらしく、目の前の見た事ないオートボットへの殺意を激らせている。

 

「シア、俺グリムロックと一緒に、雑魚ども片付ける。いいか?」

「了解です!私達もハジメさんとユエさんに負けないくらいの愛のパワー、見せつけてやりましょう!」

「俺グリムロック、任せろ」

 

 そうやる気満々な様子でシアは、両手に斧に変形させた2体のテラクサドンを構えると、グリムロックの背中から降り立った。その頼もしい姿にグリムロックは嬉しそうに微笑むと、目の前の敵へと向き直った。

 自分が気になった点については後回しだ。後で一体生け捕りにして尋問すれば良いだけだ。

 

「ひ、怯むなお前ら!相手はたったの四人だ!アハトド、やっちまいな!」

 

 怯えつつもカトレアは配下の魔物達を呼応すると、一体の魔物に号令を出した。その魔物・アハトドは、牙の生えた馬のような頭部に下半身はゴリラ、そして上半身は四本腕の筋肉モリモリマッチョマンの化物だった。常人から見ればまるで地獄の獄卒の如く悍ましい容姿をしているのだが、今のアハトドは目に見えて怯えており、とても恐ろしい存在には見えなかった。

 無理もないだろう。先程まではディセプティコン達に惨殺された騎士達や勇者一行の死骸を思う存分貪り食い、いよいよメインディッシュとして柔らかい女の肉が食えると思った矢先、自分達の中で一番デカいアブソドを瞬殺するレベルの化け物が現れたのだ。実質的には魔人族の家畜である彼らだが、身体に刻まれている野生の本能が、目の前の相手と戦うべきではないと警報を鳴らしているのだ。

 しかし家畜である以上、主人の命令には逆らえない。もし逆らったら、次は自分が主人の同盟者達に嬲り殺しにされるかもしれない。

 

「ルゥアアアア!!!」

 

 もう自棄糞だと言わんばかりにアハトドは雄叫びを上げると、半端自暴自棄になってグリムロックへと突進していく。自分が持つ魔力を衝撃波に変換する固有魔法「魔衝波」を使えば、運が良ければ目の前の化け物を倒せるかもしれないと、僅かな期待を抱いて。

 

ガブリンチョ!!!

 

 しかし現実は無情だった。グリムロックは口を大きく開けると、そのままアハトドに噛み付いた。哀れな魔物はそのまま腰から上下真っ二つに食い千切られ、口からはみ出した自慢の四本腕も鋭い牙でソーセージのようにスパンッと噛み切られて地面に落ちた。そのまま上半身は断末魔の叫びをあげる暇もなくゴクリと飲み込まれ、残った下半身はドスンと倒れた。

 

「俺グリムロック、随分不味い馬肉だな」

 

 呑気にそう呟くグリムロックに、今度は2体のキメラが飛びかかった。仲間であるアハトドの無惨な最期に激昂し、固有魔法で姿と気配を消して、一頭は足元を、もう一頭は背後から襲いかかった。それが自殺行為だとも気付かずに…。

 

ドスン!!!

 

グシャリ!!!

 

グサッ!!!

 

「グギャアアアッ!!?」

 

 グリムロックの強力な嗅覚と、長年培った戦士としての勘の前には、そんなもの無意味も同然だった。ましてや殺気を丸出しなのだから丸分かりだ。オルクスの真の迷宮の魔物達の方がよっぽど隠密に長けている。

 足元に突っ込んだ一頭は、グリムロックに思い切り頭を踏みつけられた。何十トンもの体重は一瞬でキメラの頭を踏み潰し、鈍い音とともに脳漿が地面に飛び散った。背後から回り込んだもう一頭は、飛びかかる間も無く彼の尾の先端で串刺しにされ、激痛のあまり悲鳴を上げた。グリムロックはお構いなしに後ろを振り向くと、尾で串刺しにしたキメラにレーザーファイヤーをお見舞いした。

 

「ギェアアア〜!!?」

 

 生きたまま串焼きのように焼かれたキメラは断末魔の悲鳴をあげるも、すぐに悲鳴は止み、一瞬で黒焦げの焼死体と化した。グリムロックが尾を振ると、炭化したその亡骸は地面へと転げ落ち、粉々の灰となって砕け散った。

 

「グルゥオオオオオオオオ!!!」

「「「「「ギャアアアアアア!!?」」」」」

「な⁉︎落ち着けお前ら!馬鹿、やめろ!やめないか!」

 

 一瞬で三頭の仲間が瞬殺された光景に硬直していた魔物達だったが、グリムロックの雄叫びを浴びせられると、一気に恐慌状態となってしまった。カトレアが必死に宥めようとするものの、最早手遅れだった。

 ある者は同じ種類同士で狂ったように殺し合い、ある者は何度も自分の頭や身体を壁に叩きつけての自傷行為を行って自ら命を絶った。回復役の白烏でさえ、カトレアの肩から飛び立つと、わざと壁に激突して翼を折り、自らの嘴で己の体を刺し貫いて死んでしまった。

 どの個体にも共通して抱いていた感情はただ一つ。目の前の化け物にあんな無惨な殺され方をされるのならば、自らの手で命を断つしかない。でなければ、あの三体のように惨殺されるだけだと…。

 そんな魔物達の気持ちなど露知らず、グリムロックとシアは容赦なく殲滅していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、ハジメに加勢しつつ、逃げ惑う魔物達を蹴散らしていくユエは、地べたに這いつくばっている光輝と雫に気が付いた。二人とも毒に蝕まれながらも死の危機から脱したはいいが、予想外の援軍に戸惑っていた。

 

「…さっさとどいて。 雷錨牽引(プラズマアンカー)

「うわっ!!?」

「きゃっ!!?」

「こ、光輝!!?」

「雫ちゃん!!?」

 

 二人の顔を見て、亮牙やハジメから聞かされていた同郷の馬鹿どものリーダー格の連中だと気づいたユエは顔を顰めながらも、両手を二人に向かって伸ばし、腕から電撃の錨を出現させて倒れ伏す二人に絡みつけると、そのまま香織達四人が倒れ伏す隅まで投げ飛ばした。光輝と雫はそのまま四人のもとへと投げ落とされて、龍太郎と香織が動揺して叫んだ。

 すると突然、六人に向かって何か液体が噴射された。また毒かと思い身構える光輝達だったが、ふと気づくとさっきまで身体を蝕んでいた痺れが消えていた。全快というわけではないが、体力が回復していたのだ。

 

「…死にたくなかったら引っ込んでて。戦いの邪魔だから」

 

 突然の回復に動揺する光輝達に、マスクで顔が隠れて分かりづらいものの、ユエが冷めた表情で吐き捨てた。その右腕に装備されたブラスターからは、神水らしき雫が滴り落ちていた。

 ユエが光輝達に放水した液体は勿論、神水だ。彼女にとっても、光輝達六人の命など何の価値もない。最愛の人と友人を迫害し、あまつ二人を殺そうとした外道を何の疑いもせず仲間としていた連中なのだから、無理もないだろう。

 しかしディセプティコンを相手に戦っている今、まだ生きているのに逃げもせずに地べたに這いつくばっている光輝達は、はっきり言って邪魔でしかない。此奴らに気を取られているうちに敵の攻撃を受ける可能性もあったので、ある程度回復させて隅っこに引っ込ませておく事にしたのだ。もし後で亮牙とハジメが六人を制裁したいと言えば、拘束すれば良いだけだ。

 

「お〜っとおチビちゃん!油断大敵だよ〜ん!」

 

 すると、その一瞬の隙をついて、飛び上がったモホークがナイフを投擲した。優香のナイフ投げと比べると、彼の方が遥かに腕力があるので、投擲の威力も半端ではない。常人の首なら容易く切断されてしまうだろう。

 

「…甘い。私を舐めるな」

「な!!?」

 

 しかしユエは動じない。すかさず左腕の前腕辺りに「聖絶」の簡易版とも言える結界魔法を発動させる。さながら古代ローマ兵の盾・スクトゥムに似た形の結界が張られ、投擲されたナイフを弾き返した。

 これにはモホークも驚愕の声を上げるが、彼女の魔法はこれで終わりではなかった。

 

「私をチビ呼ばわりした事、後悔させてやる…」

 

 そう呟くと、ユエは右腕に魔力を込めていく。すると、彼女の右腕は次第に燃え上がり、まるでティラノサウルスの頭部を模した形へと変わっていく。

 これを見たモホークは流石にヤバいと悟り、慌てて逃げようとするが、手遅れであった。

 

「喰らい尽くせ、紅蓮牙(ぐれんげ)!!!」

 

ドォガァァアアアアアッ!!!

 

「アイエエエ〜ッ!!?」

 

 その一言とともに、ユエはモホーク目掛けて右ストレートをお見舞いする。同時に彼女の右腕に集中していた炎は、まるで本物のティラノサウルスの如くモホークの身体に食らいつき、彼の身体は轟音を立てて大爆発を起こした。やがて、吹き飛ばされた頭がコロンコロンと音を立てて地面に転がり落ちた。

 

「チクショ〜、またこれか〜い…」

 

 頭だけになりながらもまだ生きていたモホークは、悔しそうにそう呟いたが、直ぐに動かなくなった。彼もまたドレッドボットと同様、前世と同じあまりにも呆気ない最期であった。

 それを見届けたユエは、もう一人のディセプティコンと対峙する恋人への加勢に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 インパクターを操縦するハジメは、ディセプティコン屈指の狂戦士・ボーンクラッシャーと死闘を繰り広げていた。初めてとなるディセプティコン兵との戦いに苦戦しつつも、右肩のカノン砲で距離を取りつつ、逃げ惑う魔物達を右腕の銛で貫き、スリングのように相手にぶつける事で応戦していた。

 しかし、ボーンクラッシャーは歴戦の戦士だ。魔物や人間の悪党のように容易く倒せるはずも無く、クローや腕に装備したブラスターを発射して応戦する。特にクローの攻撃は、まるで恐竜か大蛇の顎が獲物に食らいつくかのようで、捕まればボディを容易く引き千切られてしまうだろう。

 

「調子に乗るんじゃねえぞゴルァアアア!」

「うわっ⁉︎」

 

 目の前の名前も知らないトランスフォーマーの執拗な攻撃に苛立っていたボーンクラッシャーはそう怒鳴ると、勢いよく飛びかかってインパクターを押さえつけた。これには流石のハジメも堪らす「ぐっ⁉︎」と倒れ込んだ。

 そんな彼を見下ろしながら、ボーンクラッシャーは戦いの最中にふと気になった事を問いただした。

 

「おい、さっきから何か違和感がある気がしてたんだがよぉ。お前からは魂が感じられねぇ。…お前、本当にサイバトロン人か?」

「…へぇ、バーサーカーかと思ったけど勘がいいね。僕はサイバトロン人じゃない。唯の人間だよ。このボディは君らを模して僕が造ったのさ」

 

 目の前の相手が意外と勘が鋭い事に若干驚きつつも、ハジメは種明かしをする。それを聞き、ボーンクラッシャーの顔が一気に憤怒の相へと変わった。

 

「下等な猿に過ぎない地球人風情が、宇宙の頂点に立つ俺たちサイバトロン人の真似事だとぉ⁉︎巫山戯やがって!お前はお仲間より痛めつけてからぶっ殺してやらぁ!!!」

 

 他のディセプティコンと同様、有機生命体への蔑視を抱いていたボーンクラッシャーは、自分達サイバトロン人を模した武器を使うハジメを、ディセプティコンだけで無くサイバトロン人全体への侮辱行為と見做した。怒りのままにインパクターのボディを何度も殴りつけ、更にはクローで頭を引き千切ろうとした。

 流石のハジメもこれは不味いと、必死に抵抗するが、中々拘束を振り解けずにいた。ボーンクラッシャーのクローがインパクターの頭に食らいつこうとした次の瞬間、援軍が加わった。

 

「私の最愛の人から離れろ、下郎!!!」

「ぐわっ!!?」

 

 モホークを倒したユエが、すかさず凍結魔法を発動し、ボーンクラッシャーのクローを凍らせた。流石の彼もこれには堪らず怯んだところを、体勢を立て直したインパクターに突き飛ばされ、大きく仰け反った。

 

「助かったよユエ。あれを頼めるかい?」

「ん、任せて」

 

 ユエがそう言うと、彼女の纏うアマゾンはギゴガゴゴと巨大なブラスターへと変形し、インパクターの左手に掴まれた。これこそアマゾンのもう一つの形態・バトルマスターモードだ。その銃口は今、怒りに震えるボーンクラッシャーへと向けられた。

 

「「Wreck and rule!!!」」

 

ズダァァァァァァン!!!

 

「グアアアアアアッ!!?」

 

 二人の魔力を込めた強力なエネルギー弾が発射され、ボーンクラッシャーの胸部に直撃した。地雷除去車に変形するだけあって仲間内でも屈指の頑強さを誇る彼の装甲も、これには堪らず大きく損傷するが、致命傷とは至らなかったようで、より一層怒りの籠もった目で二人を睨みつけた。

 

「くっ…!それで勝ったつもりかぁ!!!」

「いや、これで終わりだ!!!」

 

 ハジメはそう告げると同時に、インパクターの右腕の銛を発射、装甲が砕けて内部が無防備になったボーンクラッシャーの胸部に突っ込むと、彼のスパークを貫いた。そしてそのまま銛のチェーンを引っ張り、体内からスパークを抉り取った。

 

「ガハッ…⁉︎そ、そんな…⁉︎この俺が…こんな猿の操る…紛い物なんかに…」

 

 スパークを抉られては、流石のボーンクラッシャーもどうしようもなかった。人間に負けたと言う屈辱に顔を歪めるも、その両目は光を失い、そのまま轟音を立てて前のめりに倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何なんだ奴らは…⁉︎」

 

 一方、絶体絶命のピンチに陥りながらも、悪運が強いのか間一髪助かった勇者パーティの六人。突如として現れた謎の四人組(うち二人は自分達を殺そうとしたロボット達と同類に見える)が、自分達が敵わなかった敵軍を容易く蹴散らしていく様を見て、光輝が皆の気持ちを代弁するかのように呟いた。

 

「…ねえ皆、さっきから何か聞いたことある気がすると思ったんだけど、あの小さい方のロボットから南雲君の声がしない?」

「!確かに南雲君の声がする!」

 

 ふと、普段からの周囲に気を配り過ぎる性格からか四人を観察していた雫が、インパクターから死んだ筈のハジメの声が聴こえてくる事に気づいた。その呟きに、香織が先程まで苦しんでいたのも忘れて嬉しそうな表情となる。

 しかし、残る四人は懐疑的な表情だ。今度は龍太郎が口を開いた。

 

「で、でもよぉ雫。南雲なら、四ヶ月前に檜山によって灘と一緒に殺されちまった筈じゃあ…」

「ちょっと龍太郎君!()()()()死んでないよ!勝手に殺さないで!」

「お、落ち着きなさい香織…!…でも確かに龍太郎の言う通りよね。それに何で奴等と同じ姿に…?」

 

 とっくにハジメを亮牙と共に死んだ扱いにしていた龍太郎に香織が激怒する。またしても亮牙の事など眼中に入れてなかった。

 雫はそれを宥めながらも、より一層混乱する。もし生きていたのなら嬉しいが、何故あのロボット達と似た姿になって戦っているのだろうか。それに、一緒にいる三体は何者なのか。うち一体は、片言ながらも亮牙に似た声で喋っているが…。

 

「お前らぁ〜!動ぐんじゃねぇ〜!オデに近づいだら、此奴をぶっ殺ずぞぉ〜!」

「ッ、辻さん⁉︎檜山ァ!!!」

 

 そんな彼女の思考を遮るように、階層中に忌々しい声が響き渡った。声の主は醜い裏切り者・ホリブルシットだ。但しその股間の触手の顎には、ブルタールモドキどもの慰み物にされて目から光を失った辻が咥えられており、それに気づいた雫が叫んだ。

 最初は主人達が新たな乱入者達を返り討ちにしてくれると期待したホリブルシットだが、2体のディセプティコンは死闘の末に敵に討ち取られ、カトレア配下の魔物達も殲滅・自滅であっという間に数を減らしていった事に危機感を抱いた。そんな中、ブルタールモドキに捨て置かれてぐったりしていた辻に気づくと、彼女を人質にしてこの場から逃げようと目論んだのだ。

 最早こんな姿になってしまったし、勇者一行を裏切った以上頼れる者はいないのだから、どんな事をしてでも生き延びてやる。そんなどこまでも自分本位で醜悪な事を考えながら…。

 すると、それに気づいたグリムロックが睨みつけてきた。ホリブルシットがそれに動揺するが、当の彼は意にも介さず、ビーストモードから人間態・灘亮牙としての姿に戻った。

そのあり得ない光景に、雫達もホリブルシットも驚愕を露わにする。

 

「ええっ⁉︎な、灘君⁉︎」

「な、灘ぁ⁉︎な、な、何でお前が生ぎでいやがるぅ〜!!?」

「黙れ、口が臭えんだよ」

 

 そんな叫びを無視して、亮牙はスルトを展開して一振りする。炎の斬撃はそのままホリブルシットに向かっていき、辻を捕まえていた股間の触手を焼き斬った。辻は地面に転がり落ち、斬り落とされた触手は黒焦げになって燃え尽きた。

 

「イギャアアアアアッ⁉︎お、オデのチ○コがぁぁぁ!!?」

 

 生殖機能は失われながらも、股間が急所である事は変わらなかったようで、ホリブルシットは触手を斬り落とされた股間を押さえながら、あまりの激痛にのたうち回った。

 そこへ、残る魔物を殲滅し終えたシアが亮牙のもとへと駆け寄ってきた。彼女は目の前で悶絶する醜悪な怪物の顔を見て、最愛の恋人を突き落とした卑劣漢である事に気づいた。その近くで裸の状態でぐったりと横たわる辻を見て、彼女は目の前の腐れ外道が更に悪事を重ねた事を悟り、怒りの炎を激らせた。

 

「亮牙さん、このクソッタレは私がトドメを刺します。貴方が受けた仕打ち以外にも、此奴を許せそうにないんで…」

「おう。じゃあ任せるぞ」

 

 亮牙から許可を得ると、シアは得物をテラクサドンからドリュッケンへと変えた。そして、偶然足元に転がっていた勇者一行の武器を拾い上げた。光輝の愛用する聖剣だ。

 光輝が「俺の聖剣が⁉︎」と叫ぶのを無視して、シアは片手で聖剣を放り投げると、ドリュッケンを大きく振りかぶり、メジャーリーガーも顔負けの凄まじいスイングで聖剣をホリブルシット目掛けて打ち込んだ。

 

「地獄へ堕ちろですぅ〜!!!」

「グギャアアアアッ!!?」

 

 聖剣はそのまま真っ直ぐに、股間の激痛に悶絶したままであったホリブルシットの胸に深々と貫通した。堪らず悲鳴を上げるホリブルシットだが、その身体を貫いてもなお聖剣の勢いは止まらず、そのままホリブルシットごと岩壁に深々と突き刺さった。

 まるで虫ピンで固定された昆虫標本のように串刺しにされたホリブルシットは、大量の血反吐を吐きながら「ウグゥ〜」と苦しそうに手足を痙攣させた。しかし次第にそれも弱まり、遂に完全に動かなくなった。

 どこまでも自分勝手で性根の腐った卑劣漢らしい、惨めな最期であった。

 

「ふぅ、これで腐ったガスも抜けるでしょうね

 

 敵が絶命した事を確認したシアは、恋人の影響もあってか、中々容赦ない決め台詞を呟くのであった。

 こうしてマキシマル一行は、あっという間に敵を殲滅した。残るはカトレアたった一人だ。

 

 




〜用語集〜
・アマゾン
 本作オリジナルのアーティファクト。マキシマルの女性陣の対ディセプティコン武器としてハジメが作ったアーマー。
 高い防御力を誇る他、巨大なブラスターに変形して自身の魔力を込めてエネルギー弾を放つバトルマスターモードで、他のマキシマル面々の武器としても使用可能。
 名前はギリシャ神話のアマゾン族と、『ウォー・フォー・サイバトロン・トリロジー』のバトルマスターから。

・紅蓮牙
 本作でのユエのオリジナル魔法。かつてより魔力も高まった事からグリムロックの大炎爆発にインスピレーションを得て、ティラノサウルスの顎を模した爆炎を纏って強力なパンチをお見舞いし、敵を焼き尽くす。
 元ネタは『ONE PIECE』におけるサカヅキの犬噛紅蓮や、ビッグマムの天上の火。名前は鬼滅の刃の主題歌『紅蓮華』をもじった。

・またこれか〜い
 モホークの前世での最期は呆気ないもので、オンスロートとドレッドボットの戦死を受けてメガトロン達が撤退する中、一人取り残されたのを知らずに皆を探している中、バンブルビーの射撃で体を吹き飛ばされ、頭だけになってしまった。
 歴代ディセプティコンの中でも個性的な性格で、作者は個人的にその活躍を期待していただけあって、その早過ぎる退場は中々にショックだった。

・これで腐ったガスも抜ける
 皆大好き『コマンドー』のTBS版での、シュワちゃん演じる主人公・メイトリクスが宿敵ベネットを串刺しににして倒した時の台詞。
 因みにTBS版の吹替は、メイトリクスを屋良有作氏、ベネットを故・青野武氏が演じたことから、国内では「ダイアトラス対デスザラス」や「ひろしと友蔵の親子喧嘩」とネタにされる事もしばしば。





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