グリムロックは宇宙最強   作:オルペウス

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ようやく実写映画からありふれの世界に入ります。少し原作キャラでオリ設定あります

タイトルは『アニメイテッド』第37話が元ネタです。

グリムロックと言えばG1で見られた戦闘狂・傲慢なキャラクター像を思い浮かべる方が多いかと思いますが、本作ではアドベンチャーの「気は優しくて力持ち」やサイバーバースの「ちょっとやんちゃな兄貴分」といったキャラクター像を意識しています。


人間になったグリムロック

 グリムロックは目を覚まし、辺りを見回した。空は真っ暗となっており、隠れ家の近くにはなかった人間の住宅がたくさんある。やはりあの光はスペースブリッジだったようだ。サウスダコタとは別の地に転送されてしまったらしい。

 

 だが何かおかしい。普通なら自分は人間の住宅のほとんどを見下ろすことが出来るのに、今は見上げる形になっている。それに身体の調子もおかしい。異様なまでに軽くなった気がする。

 ふと手を見てみると、彼は驚愕した。その腕は金属でできた逞しい剛腕ではなく、弱々しい肌色の肉質なものになっていたのだ。近くに水たまりがあったので、彼は慌てて覗き込み、またしても驚いた。その顔は厳めしい金属の顔ではなく、可愛らしい人間の顔が映っていたのだ。

 

 グリムロックは人間の赤子の姿になってしまっていたのだ!

 

 何故だ!一体、どうして俺はこんな姿になっている!?

 

訳が分からなくなり、彼は唸り声をあげたが、赤子となった今の彼にはただ泣き声しか発することが出来なかった。やがてその鳴き声に驚いたのか、けたたましいサイレンと共にパトカーがやってきた。

 グリムロックは降りてきた警察官に立ち向かおうとしたが、赤子となってしまった彼にはどうすることもできず、抵抗空しく連れていかれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 警察に捨て子として保護されたグリムロックはその後、児童養護施設へと引き取られた。グリムロックはなぜこんなことになったのか今でも理解できず、その苛立ちをぶつける方法もなくただ野獣のように泣き叫ぶしかなかった。施設のスタッフ達はそうやって中々心を開かない彼にほとほと手を焼いていた。

 1年後、とある夫婦が里親になりたいと施設を訪ねてきた。夫は灘啓治(なだけいじ)、妻は灘亮子(なだりょうこ)という名前だった。2人は孤児院の子ども達を見ていき、グリムロックを里子に迎えたいと言った。施設のスタッフは、グリムロックがよく暴れる問題児だとしてお勧めしなかったものの、夫妻がどうしても彼の里親になりたいという事もあり、厄介払いもできると考えて了承した。

 

 灘家に引き取られたグリムロックは、「亮牙(りょうが)」という名前を与えられた。亮子の名前と、強い子に育ってほしいという気持ちを込めて付けたそうだ。

 グリムロックは孤児院にいた時と同様に、当初は彼ら二人に心を開こうとしなかった。トランスフォーマーだった頃に目にした人間達の所業から、彼が信頼を寄せる人間は元の世界でもケイドなど僅かだった。

 それでも、灘夫妻はグリムロックを見放さなかった。彼らはグリムロックに親身になって愛情を注ぎ、次第に彼の心を開かせていった。

 

 ある程度成長していくと、グリムロックは自分のいる世界についてを知る事が出来た。この世界はかつて自分がいた星と同じようだが、どうやらトランスフォーマーの存在が知られていないらしい。自分達は長年にわたって地球と関わってきたのに、一切の情報が得られなかったのだ。これは大きな謎だった。

 

 自分を育ててくれている人間の夫婦についても知ることが出来た。

 

 父親代わりの啓治はジャーナリストであり、世界各地を巡っては、戦争など人間達が抱えている問題についてを調べているらしい。当初グリムロックは養父がケイド程強そうには見えなかったので、わざわざ危険なところへ行って働くのが怖くないのかと尋ねてみた。すると啓治はこう答えた。

 

「確かに怖いよ。でも世界には俺達の知らないところで、人間でも動物でも傷つき苦しんでいる命が大勢あるんだ。俺一人の力で何が変えられるかは分からないけど、それでも俺が見て調べた事実を多くの人達に伝えたいんだ。そうすれば亮牙が大きくなった頃には、何か変わってるかもしれないからね」

 この言葉を聞き、グリムロックは啓治にケイドやオプティマスの面影を重ねるようになった。

 

 母親代わりの亮子は絵本作家で、よく自作の絵本をグリムロックに読み聞かせてくれた。子ども達を喜ばせる仕事をしていたので母親になる事を強く望んでいたが、彼女は体が弱くて子どもを産めなかった。そのため啓治と相談し、よく絵本を寄付していた施設の一つから養子を引き取ろうと決めたらしい。だかなぜ自分のような問題児を引き取ったのか分からず、グリムロックは彼女に疑問をぶつけた。そんな彼に亮子は優しく答えた。

 

「はじめて会ったとき、貴方に何処か苦しんでいる感じがしたの。まだ幼いのに、誰も信じられず辛そうな顔をしていた。赤ちゃんを産めないと知った時の私みたいにね。だから貴方のお母さんになって、その苦しみから助けられるよう寄り添いたいと思ったの」

 

 グリムロックはかつてティラノサウルスとして生きていた頃、妻や我が子には恵まれたが、彼自身は親からの愛情などというものは味わったことがなかった。親は彼が卵から孵ってすぐに獲物との戦いで負った傷が原因で死亡しており、彼は兄弟ともども自力で生きてゆくしかなかった。弱肉強食の世界で、ときには同族からの脅威もあり、ほとんどの兄弟が死に絶え、彼自身も成熟するまでかなりの苦労を味わった。成長した彼が我が子に深い愛情を注いだのも、自身のような思いをさせたくなかったからかもしれない。

 この世界に飛ばされた挙句人間になってしまったのは予想外だったが、グリムロックはこの優しい夫婦に出会えて良かったと心の底から思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうしてグリムロックは、灘亮牙という人間として新たな人生を歩み始めた。

 自分を息子として受け入れてくれた両親に少しでも恩返しがしたいと、物心ついたころからは積極的に家事を手伝うようになり、両親が仕事で忙しい時に手助けをした。亮子は大変喜び、時間があれば彼に料理を教え、共に食事を作るようになった。

 啓治はジャーナリストとしての仕事上家を空けることが多かったが、帰国した後は自分が世界で見聞きしたものを息子に伝え、機会があれば彼をキャンプなどに連れて行って、アウトドアのノウハウを教えてくれた。

 そして施設から迎え入れた日を誕生日とし、必ず家族3人で誕生日会を開き、大好物となった亮子特製のハンバーグを振る舞い、昔を思い出すことから恐竜に興味を持つようになった彼に恐竜の玩具をプレゼントしてくれた。

 

 なお成長していくと、グリムロックはトランスフォーマーだった頃程ではないが、常人ではありえないような怪力を誇るようになった。それでも夫婦は彼を気味悪がることなど一切なく、将来は何かその力を役立つるようになれるといいなと励ましてくれたので、彼は嬉しかった。

 

 彼らの幸せは長く続くかのように思われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかしその幸せはあまりにも突然に、あまりにも理不尽に奪われることになった。

 

 グリムロックが亮牙としての人生を歩んでから11年目のある日、灘夫妻は彼の誕生日のプレゼントを買いに出かけていた。しかしそんな彼らに危険ドラッグ乱用者の運転する暴走車が激突した。一瞬の出来事で二人は逃げることもできず、即死だった。その手には、帰りを待つ息子へのプレゼントが握られていた。

 二人の命を奪った犯人も、事故の衝撃で即死していた。

 

 グリムロックは両親の訃報を聞いた時、頭が空っぽとなった。何故あれほど心優しい人たちが死ななければならないのか。彼らは戦士として戦場に立っていたわけではない。

 確かに父は時に危険なところへ赴くこともあったが、この日は自分の誕生日を祝うために安全な祖国に帰国していたのに。

 母は血の繋がりのない自分に我が子同然の愛情を注いでくれたとてもやさしい女性だったのに、なぜこんな死に方をしなければならないのだ。

 

 

 グリムロックの脳裏には、かつて恐竜として生きていた頃、理不尽に殺された妻と子ども達の記憶が蘇った。再びできた大切な家族が、またしても理不尽に奪われた。何故、自分ばかりがこんな辛い目に遭い続けなければならないんだ。

 彼はただ泣き叫ぶしかなかった。その慟哭は理不尽への怒りと、それ以上に深い悲しみが入り混じった物であった。

 トランスフォーマーが聞けば、その慟哭は(スパーク)の奥底から響く咆哮に聞こえただろう。

 

 

 

 天涯孤独となったグリムロックは、誰が引き取ることになるのかで問題となった。灘夫妻は啓治・亮子ともに両親が他界しており、親戚付き合いもほとんどなかった。残っているのは、かつて保護されていた児童施設ぐらいだった。

 だが、そんな彼に救いの手が差し伸べられた。

 

「はじめまして、亮牙君。私は南雲菫。あなたのお母さんの友達です。もしあなたが良ければ、私の家に来ない?」

  

 彼女は南雲菫といい、亮子とは幼い頃からの友人であり、成人後は亮子が絵本作家となったのに対し、少女漫画家としてデビューし、今では人気作家となっている。根っからの仕事人間だが、亮子との付き合いは切れることなく、子どもを産めないことに悩んでいた亮子に養子縁組を勧めるなど、困った時にはお互い助け合ってきたそうだ。

 生前の亮子は自分と啓治に親戚付き合いが無かったことから、親友である菫にもしも自分たちに何かあった時は亮牙を助けてくれないかと頼んでいた。今回の親友夫婦の訃報を知った時、菫も悲しみに暮れた。だが何より葬儀の場で、自分の息子と同い年の少年が、二人の遺体の前で慟哭する姿を目にして、彼を放っておけないと感じた。

 親友の愛した息子を自分が助けなければと決心した彼女は、夫と息子に彼を養子に引き取ろうと相談した。二人とも心優しい人物だったため、喜んで了承してくれた。

 

 菫の誘いを受け入れ、グリムロックは南雲家の養子となることになった。しかし彼は両親を失った哀しみから立ち直れず、かつてのような明るさはなかった。かつての彼の姿を知る者が見れば、その姿はまるで魂の抜けた抜け殻に見えただろう。

 

 

 灘夫妻の葬式が終わって一段落した後、グリムロックは菫に連れられ、彼女の自宅へと引っ越した。そこでは彼女の夫である南雲愁と、彼らの一人息子らしき同世代の少年が出迎えてくれた。同世代ではやや大柄なグリムロックに比べると、やや小柄で穏やかな雰囲気の少年だ。

 

「えっと、はじめまして亮牙君。僕はハジメ。今日から宜しくね」

 

これが、後にグリムロックにとって最高の親友となる南雲ハジメとの出会いであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オリキャラの灘啓治ですが、名前の由来は『騎士竜戦隊リュウソウジャー』に登場したナダと、今は亡き名優・藤原啓治さんに由来してます。

私は藤原さんが演じる野原ひろしやグリムロックを見て育った世代なので、未だに彼の訃報がショックでなりません。 

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