グリムロックは宇宙最強   作:オルペウス

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前回はアンチ続きから久々にギャグ&下ネタ展開でしたから、あまり皆様のお気に召すものじゃなかったかもしれないですね(苦笑)

まあ本作はマイケル・ベイへのリスペクト込めているつもりなので、これからも私の性癖丸出しの展開やキャラ崩壊があると思います。ご了承して頂けると幸いです。


アンカジ救出大作戦

 未だ体内に異常事態を抱える青年は、意識は取り戻したもののまともに立つことも出来ない状態だった。砂漠の気温も相まって相当な量の発汗をしており、脱水症状の危険もあったので車内に招き入れ水を飲ませてやる。

 青年は、パイロを馬車のようなものだと無理やり納得したものの、車内の快適さに違う意味で目眩を覚えていた。しかし、自分が使命を果たせず道半ばで倒れたことを思い出し、こんなところでのんびりしている場合ではないと気を取り直す。そして、自分を助けてくれたマキシマル一行と互いに自己紹介をした。

 

「まず、助けてくれた事に礼を言う。本当にありがとう。あのまま死んでいたらと思うと、アンカジまで終わってしまうところだった…。私の名は、ビィズ・フォウワード・ゼンゲン。アンカジ公国の領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲン公の息子だ」

 

 驚いたことに、ビィズと名乗った青年はとんだ大物だったらしい。アンカジはエリセンより運送される海産物の鮮度を極力落とさないまま運ぶための要所で、その海産物の産出量は北大陸の八割を占めている。つまり、北大陸における一分野の食料供給に置いて、ほぼ独占的な権限を持っているに等しいという事だ。単なる名目だけの貴族ではなく、ハイリヒ王国の中でも信頼の厚い屈指の大貴族である。

 ビィズの方も、マキシマル一行の冒険者ランクを聞き、目を剥いて驚愕を露わにした。そして、これは神の采配か!我等のために英雄達を遣わして下さったのか!といきなり天に祈ったのち、事情を説明し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 四日前からアンカジでは突如、原因不明の高熱を発し倒れる人が続出した。直ぐに医療院は飽和状態となり、公共施設を全開放して医療関係者も総出で治療と原因究明に当たったが、ストレイフと同じく進行を遅らせることは何とか出来ても完治させる事は出来なかった。

 そうこうしているうちに次々と患者は増えていき、医療関係者の中にも現れ始めた。進行を遅らせるための魔法の使い手も圧倒的に数が足りず、何の手立ても打てずに混乱する中、僅か二日で遂に死者が出始めた。

 絶望が立ち込める中、一人の薬師がひょんなことから飲み水に『液体鑑定』をかけた結果、魔力の暴走を促す毒素が含まれていることがわかったのだ。直ちに調査チームが組まれ、最悪の事態を想定しながらアンカジのオアシスが調べられたのだが、案の定、オアシスそのものが汚染されていた。

 当然、砂漠のど真ん中にあるアンカジにおいてオアシスは生命線であるから、その警備・維持・管理は厳重に厳重を重ねており、普通に考えればオアシスに毒を流し込むなど不可能に近いと言っても過言ではないほどあらゆる対策が施されていた。首を捻る調査チームだったが、それより重要なのは、二日以上前からストックしてある分以外、使える水がなくなってしまったということだ。そして結局、既に汚染された水を飲んで感染してしまった患者を救う手立てがないということである。

 しかしまだ、患者達を救える方法が一つ存在した。それは、砂漠のずっと北方にある岩石地帯か「グリューエン大火山」で少量採取できる、魔力の活性を鎮める効果を持っている「静因石」だ。魔力調整や暴走の予防に使われるこの石を粉末状にしたものを服用すれば、体内の魔力を鎮めることが出来るだろうというわけだ。

 しかし北方の岩石地帯は遠すぎて往復に少なくとも一ヶ月以上はかかってしまう。またアンカジの冒険者、特にグリューエン大火山の迷宮に入って静因石を採取し戻ってこられる程の者は既に病に倒れてしまっていた。生半可な冒険者ではグリューエン大火山を包み込む砂嵐すら突破できないし、仮にそれだけの実力者がいても、どちらにしろ安全な水のストックが圧倒的に足りない以上、王国への救援要請は必要だった。

 その救援要請にしても、総人口27万人を抱えるアンカジ公国を一時的にでも潤すだけの水の運搬やグリューエン大火山という大迷宮に行って、戻ってこられる実力者の手配など容易く出来る内容ではない。公国から要請と言われれば無視することは出来ずとも、内容が内容だけに一度アンカジの現状を調査しようとするのが普通だが。そんな悠長な手続きを経てからでは遅いのだ。なので強権を発動出来るゼンゲン公か、その代理たるビィズが、直接救援要請をする必要があった。

 

「父上や母上、妹も既に感染していて、アンカジにストックしてあった静因石を服用することで何とか持ち直したが、衰弱も激しく、とても王国や近隣の町まで赴くことなど出来そうもなかった。だから、私が救援を呼ぶため、一日前に護衛隊と共にアンカジを出発したのだ。その時、症状は出ていなかったが、感染していたのだろうな…。おそらく、発症までには個人差があるのだろう。家族が倒れ、国が混乱し、救援は一刻を争うという状況に……動揺していたようだ。万全を期して静因石を服用しておくべきだった。今、こうしている間にも、アンカジの民は命を落としていっているというのに、情けない!」

 

 ビイズは身体に力が入らない中、それでもあらん限りの力を込めて拳を己の膝に叩きつけた。アンカジ公国の次期領主として、責任感の強い民思いな性格らしい。護衛をしていた者達もサンドワームに襲われ全滅したというから、そのことも相まって悔しくてならないのだろう。

 僥倖だったのは、サンドワーム達がおそらくこの病を察知して捕食を躊躇ったことだ。病にかかったがゆえに力尽きたが、それゆえにサンドワームに襲われず、結果マキシマル一行に出会うことが出来た。人生、何が起きるかわからないものである。

 

「…君達に、いや、貴殿達にアンカジ公国領主代理として正式に依頼したい。どうか、私に力を貸して欲しい」

 

 そう言って、ビィズは深く頭を下げた。車内にしばし静寂が降り、窓に当たる風に煽られた砂の当たる音がやけに大きく響いた。領主代理が、そう簡単に頭を下げるべきでないことはビィズ自身が一番分かっているのだろうが、降って湧いたような僥倖を逃してなるものかと必死なのだろう。

 マキシマル一行の男性陣は、腕を組んで目を瞑り、どうすべきか考えを巡らせていた。女性陣は彼らの判断に委ねるつもりだが、シアとミュウの眼差しの中には、明らかに助けてあげて欲しいという意思が含まれていた。中でもミュウは、もっと直接的だ。

 

「みんな〜、助けてあげないの?」

 

 そんなことを物凄く純真な眼差しで言ってくる。ミュウにとって紛れもなくヒーローであるハジメ達なら、何だって出来ると無条件に信じているようだ。そんな彼女の眼差しに、男四人は苦笑い気味に肩を竦めた。

 

「しょうがないね。可愛いミュウの頼みとあっちゃ」

「だな。俺も一応医者がわりだし、見過ごすつもりはねえよ」

「俺スラッグ、ミュウは子分だから、親分として言う事聞いてやる!」

「ったく、これじゃ俺が反対するわけにはいかねぇな。いいぜ、その依頼引き受けてやる」

 

 ビィズに向かって了承の意を伝えた四人の姿に、シアとティオは「ふふ」と笑みをこぼしている。ユエはいつも通りだ。恋人と友人達がどんな選択をしても、己の全てで力になる。言葉にしなくても彼女の気持ちははっきり伝わった。

 もともと、グリューエン大火山には行く予定であったし、その際ミュウはアンカジに預けていこうと考えていた。いくら何でも四歳児を大迷宮に連れて行くのは妥当ではないので、大迷宮攻略ついでに静因石を確保することは全くもって問題なかったし、海人族のミュウには魔力暴走という今回の病因は関わりがないので危険もない。どちらにしろ、マキシマル一行の道程の中で処理できる問題だった。

 

「貴殿達が金クラスなら、このまま大火山から静因石を採取してきてもらいたいのだが、水の確保のために王都へ行く必要もある。この移動型のアーティファクトは、ハジメ殿以外にも扱えるのだろうか?」

「まぁ一応ミュウ以外は扱えるが、わざわざ王都まで行く必要なんぞねえ。水の確保はどうにか出来るだろうから、一先ずアンカジに向かうぞ」

「どうにか出来る?それはどういうことだ?」

 

 数十万人分の水を確保できるという言葉に、当然ビィズは訝しんだ。しかし水は何も運搬しなくとも、水系魔法で大気中の水分を集めて作り出せばいいのだ。勿論普通の術師ではおよそ不可能だろうが、マキシマルには魔法に関して稀代の天才たるユエがいる。しかも彼女ならば、魔力をすぐさま回復する手段も多数持ち合わせているので、ビィズなりランジィなりがアンカジに残っている静因石をしっかり服用し体調を万全に整えて、改めて王国に救援要請をしに行くくらいの時間は十分に稼げる筈だ。

 その辺りのことを掻い摘んで説明すると、最初は信じられないといった風のビィズだったが、どちらにしろ今の自分の状態ではまともに王国までたどり着けるか微妙だったので、アンカジに引き返すことを了承した。

 砂漠地帯を滑るように高速で走り出すパイロに再び驚きながら、ビィズは、なぜ海人族の幼子が人間族のハジメやスラッグをパパだの親分だのと呼ぶのか、兎人族と和気あいあいとしているのか、なぜ黒髪の妙齢の女性は罵られて気持ち悪い笑みを浮かべているのかなど疑問に思いつつも、見えてきた希望に胸の内を熱くするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤銅色の砂が舞う中、たどり着いたアンカジは、外壁も建築物も軒並み乳白色で、外界の赤銅色とのコントラストが美しい都市だった。中立商業都市フューレンと違うのは、不規則な形で都を囲む外壁の各所から光の柱が天へと登っており、上空で他の柱と合流して都市全体を覆う強大なドームを形成していることだ。月に何度か大規模な砂嵐に見舞われるそうだが、このドームのおかげで曇天のような様相になるだけでアンカジ内に砂が侵入することはないという。

 マキシマル一行は、砂を防ぐための魔法によるバリア式の巨大な門からアンカジへと入都した。門番はパイロの姿に驚きはしたが、祖国の現状が影響しているのか暗い雰囲気で覇気もなく、どこか投げやり気味であった。もっとも、車内に次期領主が座っていることに気がついた途端、直立不動となり、兵士らしい覇気を取り戻したが。

 高台にある入場門を進み、マキシマル一行は確かにアンカジが美しい都だと感嘆した。太陽の光を反射してキラキラときらめくオアシスが東側にあり、その周辺には多くの木々が生えていてい非常に緑豊かだった。オアシスの水は、幾筋もの川となって町中に流れ込み、砂漠のど真ん中だというのに小船があちこちに停泊している。町のいたるところに緑豊かな広場が設置されていて、広大な土地を広々と利用していることがよく分かる。

 北側は農業地帯のようで、亮牙の敏感な嗅覚で嗅いだ限り多種多様な果物が育てられているのが分かった。西側には、他とは一線を画す荘厳さと規模の宮殿らしき建造物があり、あれが領主の住む場所なのだろう。その宮殿の周辺に無骨な建物が区画に沿って規則正しく並んでいるので、行政区にでもなっているのかもしれない。

 砂漠の国でありながら、まるで水の都と表現したくなる。アンカジ公国はそんなところだった。普段なら交易や観光地として活気と喧騒に満ちた都であるはずが、今は暗く陰気な雰囲気に覆われていた。通りに出ている者は極めて少なく、ほとんどの店も営業していないようだ。誰もが戸口をしっかり締め切って、まるで嵐が過ぎ去るのをジッと蹲って待っているかのような、そんな静けさが支配していた。

 

「…貴殿達にも、活気に満ちた我が国をお見せしたかった。すまないが、今は時間がない。都の案内は全てが解決した後にでも私自らさせて頂こう。一先ずは、父上のもとへ。あの宮殿だ」

 

 一行は、ビィズの言葉に頷き、原因のオアシスを背にして進みだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「父上!」

「ビィズ!お前、どうして…いや、待て!その者達は…?」

 

 ビィズの顔パスで宮殿内に入ったマキシマル一行は、そのまま領主ランズィの執務室へと通された。衰弱が激しいと聞いていたのだが、どうやら治癒魔法と回復薬を多用して根性で執務に乗り出していたらしい。

 そんなランズィは、一日前に救援要請を出しに王都へ向かったはずの息子が帰ってきたことに驚きを露わにしつつ、その息子が見知らぬ者達を引き連れ、その一人の肩に担がれている姿に目を見開いた。

 運んでいるのはスラッグだ。ビィズも衰弱が激しく、何とか持ち直し意識ははっきりしているものの、自力で歩行するには少々心許ない有様だった。見かねたマキシマル一行の男性陣がじゃんけんで誰かが肩を貸すかを決め、結果負けたスラッグが荷物のようにビィズを肩に担いで来たのである。

 ビィズは若干情けない姿でありながらも、事情説明を手早く済ませた。話はトントン拍子に進み、執事らしき人が持ってきた静因石の粉末を服用して完治させたビィズにストレイフが神水を飲ませると、全快とまでは行かずとも行動を起こすに支障がない程度には治ったようだ。

 体内の水分に溶け込んだ毒素がなくなったわけではなく、単に静因石により効果を発揮できなくなったというだけである。体内の水分に溶け込んでいる以上、時間と共に排出される可能性はあるので、今のところ様子見をするしかない。

 

「ようし、ストレイフとシア、デカパイは医療院に行って患者達の毒抜きを頼む。俺達は水の確保だ。ゼンゲン、最低でも200m四方の開けた場所はあるか?」

「む?うむ、農業地帯に行けばいくらでもあるが…」

「ならそこを使わせてもらう。シア、ストレイフが抜いた魔力を魔晶石に貯め終えたら持ってきてくれ」

「はいですぅ」

 

 亮牙が皆に指示を出す。やることは簡単だ。ビィズの時のように、ストレイフがパワードレインで患者たちから魔力を少しずつ抜きつつ、ティオやシアと共に応急処置をする。抜き取った魔力は魔晶石にストックし、貯まったらそれをユエに渡して水を作る魔力の足しにする。

 残る男性陣で貯水池を作るユエに協力したあと、そのままオアシスに向かい、一応原因の調査をする。分かれば解決してもいいし、分からなければそのままグリューエン大火山に向かう、というプランだ。

 亮牙の号令に、全員が元気良く頷くと、各々動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在、領主のランズィと護衛や付き人多数、そして亮牙、ハジメ、ユエ、ミュウ、スラッグはアンカジ北部にある農業地帯の一角に来ていた。200m四方どころかその三倍はありそうな平地が広がっている。普段はとある作物を育てている場所らしいのだが、時期的なものから今は休耕地になっているそうだ。

 藁をも掴む思いで水という生命線の確保を任せたランズィだったが、常識的に考えて不可能な話なので、その眼差しは疑いを孕んでいた。だが次の瞬間、その眼差しは驚愕一色に変わった。

 

「「変身(トランスフォーム)!!!」」

 

 皆から距離を取った亮牙とスラッグは大きく叫ぶと、忽ちビーストモードへと姿を変えた。そして二体揃って、さながら巨大なブルドーザーのように、地響きを鳴り響かせながら大地を掘り起こしていった。全長40mに達する金属の巨獣達は、あっという間に農地を200m四方・深さ5mの巨大な貯水所用の大穴を掘り上げた。

 

「「「「「ほげぇぇぇ!!?」」」」」

 

「わ〜!おやぷんもぐりみぃもすご〜い!!!」

 

 一部始終を見ていたランズィも従者達も、あまりの衝撃に全員が目を飛び出さんばかりに見開いて、顎が外れないか心配になるほどカクンと口を開けて絶叫していた。ミュウは巨大な友人達の活躍に、さながら工事現場で活躍する重機でも見たかのような歓声を上げていた。

 そんな周囲の様子などお構いなしに、グリムロックはスラッグとともに貯水所から這い上がると、ハジメに合図を送った。

 

「俺グリムロック、ハジメ、仕上げ頼む」

「あいよ」

 

 そう言って貯水池に降りたハジメは、宝物庫から取り出したインパクターのビークルモードで走り出した。他の人造トランスフォーマーと同じく、キャタピラについている整地機能で土中の鉱物を「鉱物分離」で取り出し、水が吸収されないように貯水池の表面を金属コーティングしているのだ。

 そしてコーティングを終えて戻ってくると、今度はユエが腕を突き出し、即席の貯水池に水系上級魔法の一つで、大波を作り出して相手にぶつける「虚波」を行使した。普通の術師ではせいぜい10〜20m四方の津波が発生する程度だが、魔法の天才たるユエは横幅150m・高さ100mもの津波を虚空に発生させ、一気に貯水池へと流し込んだ。

 この貯水池に貯められる水の総量は約20万トン。流石の彼女僅かだが倦怠感を感じていた。ウルでの時のように魔晶石からストックしてある魔力を取り出してもいいのだが、この後グリューエン大火山に挑むことを考えれば、出来るだけ魔晶石の魔力は温存しておきたいし、あの時と違い時間はあるので、もう一つの魔力補給方法であるハジメからの吸血で、魔力を補給して半分ほど溜め込んだ。

 流石にハジメの血量にも限界はあるが、暫くして現場にシアが、ストレイフから預かった魔晶石を持って飛び込んで来た。少量ずつとは言え、数千人規模の患者からドレインした魔力故に、相当な量が蓄えられている。ストレイフはグリムロックやスラッグに比べると少食だが、まだ二時間も経ってないのにこれだけの量をドレインするとは、矢張り彼も大概である。

 シアが再びストレイフの手伝いに戻ったと同時に、持ち込まれた魔晶石で回復したユエは「虚波」の連発を再開した。ほどなくして、200m四方の貯水池は、汚染されていない新鮮な水でなみなみと満たされた。

 

「……こんなことが……」

 

 ランズィはあり得べからざる事態に言葉もないようで、呆然としながらオアシスと同じように光り輝く池を見つめた。

 そんな彼を尻目に、グリムロックはロボットモードへと変形する。

 

「ほらよ、これで暫くは大丈夫だ。ついでにオアシスも調べてやる」

「あ、ああ…。いや、聞きたい事は色々あるが、ありがとう。心から感謝する。これで、我が国民を干上がらせずに済む。オアシスの方も私が案内しよう」

 

 ランズィはまだ衝撃から立ち直りきれずにいるようだが、それでもすべきことは弁えている様で、マキシマル一行への態度をガラリと変えると誠意を込めて礼をした。

 亮牙達は、そのままランズィ達に案内されて、オアシスへと移動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オアシスは、相変わらずキラキラと光を反射して美しく輝いており、とても毒素を含んでいるようには見えなかった。

 だがハジメは眉をしかめてオアシスの一点を凝視すると、様子の変化に気がついたユエが首を傾げて疑問顔を見せた。

 

「…ん?」

「…ハジメ?」

「いや、何か今、パーセプターに反応があったような…。ゼンゲン公、調査チームはどの程度調べたんですか?」

「…確か、資料ではオアシスとそこから流れる川、各所井戸の水質調査と地下水脈の調査を行ったようだ。水質は息子から聞いての通り、地下水脈は特に異常は見つからなかった。…もっとも、調べられたのは、このオアシスから数十mが限度だがな。オアシスの底まではまだ手が回っていない」

「オアシスの底には、何かアーティファクトでも沈めてあるんですか?」

「?いや。オアシスの警備と管理に、とあるアーティファクトが使われているが、それは地上に設置してある…。結界系のアーティファクトでな、オアシス全体を汚染されるなどありえん事だ。事実、今までオアシスが汚染されたことなど一度もなかったのだ」

 

 ランズィのいうアーティファクトとは、このアンカジを守っている光のドーム「真意の裁断」のことだ。砂の侵入を阻み、空気や水分など必要なものは通す作用がある便利な障壁なのだが、何を通すかは設定者の側で決めることが出来るし、単純な障壁機能だけでなく探知機能もあり、何を探知するかの設定も出来る。その探知の設定は汎用性があり、闇系魔法が組み込まれているのか精神作用も探知可能なのだ。

 つまり、「オアシスに対して悪意のあるもの」と設定すれば、「真意の裁断」が反応し、設定権者であるランズィに伝わるのである。もちろん実際の設定がどんな内容かは秘匿されており。ランズィにしか分からない。ちなみに現在は調査などで人の出入りが多い上、既に汚染されてしまっていることもあり、警備は最低限を残して解除されている。

 アンカジ公国自慢のオアシスを汚され、悔しそうに拳を握り締めるランズィの姿は、ビィズの父親というだけあってそっくりである。

 

「…いや。俺グリムロック、気の所為じゃない。オアシスの中に何かいる」

 

 そんなランズィを尻目に、再びビーストモードに変形したグリムロックはオアシスに近づくと、口先で水中に触れた。元々がティラノサウルスの彼の口先は非常に敏感な触覚センサーとなっており、ハジメが感じ取った魔力を発する「何か」が気の所為などではなく、確かにオアシスの底に潜んでいるのを察知したのだ。それを聞いて動揺するランズィ達に、ロボットモードに変形した彼は問いかけた。

 

「おいゼンゲン、俺達を信じるか?」

「ん?あ、ああ。勿論だが…」

「よーしスラッグ、飛び込め。思う存分放電しろ」

「俺スラッグ、任せろ!ちょうど水浴びしたかった!」

 

 ランズィからの言質を得たグリムロックがそう告げると、スラッグがビーストモードのままノッシノッシとオアシスへと踏み入った。先程までの掘削作業で泥まみれだった身体を洗うと、彼は身体中の生体電気を水中目掛けて放電し始めた。

 

バチバチバチッ!!!

 

 デンキウナギの放電などとは比べ物にならない強力な電撃が、さながら落雷のような凄まじい轟音を上げて、オアシス全体へと流し込まれていく。オアシスの水面は放電の衝撃で大きく揺れ、水中に生息する淡水魚達が大量に浮かび上がってきた。

 他の面々は、スラッグの電撃に感電しないようにとオアシスから距離を取っていた。だが、ランズィ達アンカジの面々は、再び顎が外れんばかりに開けると、人間態に戻った亮牙にしがみついて、必死にスラッグの行動をやめさせようとした。

 

「おいおいおい!亮牙殿、いやグリムロック殿か⁉︎一体スラッグ殿は何をやってるんだ⁉︎」

「俺達を信じると言ったのはお前だろう、ゼンゲン。なら黙って待ってろ。あと俺の名は呼びやすい方で構わん」

「いや確かに言ったけどぉ⁉︎ あぁ!どんどん魚がぁ!我が国のオアシスが死の泉と化してしまぅ〜!」

 

 ハジメのパーセプターに映り、亮牙が敏感な触覚で感知した「何か」を知らないランズィから見れば、いきなりスラッグがオアシスの生態系を破壊しているという状況なのだ。結界の反応から、彼らの所業に悪意が一切ないという訳の分からない状況なので、流石の彼も困惑が隠せなかった。

 だが、再びオアシスの方を見た次の瞬間、ランズィ達の目に今日何度目か分からない驚愕の光景が飛び込んできた。スラッグの容赦ない放電に耐えられなくなっかのように、水面が突如盛り上がったかと思うと、重力に逆らってそのまませり上がり、10m近い高さの小山になったのだ。

 

「なんだ…これは…⁉︎」

 

 ランズィの呆然としたつぶやきが、やけに明瞭に響き渡った。

 

 

 

 

 




感想、評価お待ちしております。

本作での雫について現在検討中なのですが、読者の皆様はどんな展開が良いですか?

  • 光輝の被害者だし救済してあげて(泣)
  • 取り敢えず主要メンバーのヒロイン入り
  • 救済する必要なし。悲惨な末路にしろ
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