なるべく原作と丸々同じにならないよう気をつけてますが、今回はちょっと大変でした。
シアとティオの誘惑に、亮牙は何度も自分の頭を壁に叩きつけて煩悩を打ち消してから暫く後、マキシマル一行は現在。グリューエン大火山の推定50層くらいの階層に到達していた。推定というのは、現在の彼らの置かれた状況が少々特異なので、はっきりとした階層が分からないからである。
具体的に言うと六人は現在、宙を流れる大河の如きマグマの上を赤銅色の岩石で出来た小舟のようなものに乗ってどんぶらこと流されているのだ。ハジメとしては、地球で一番有名なアグレッシブ過ぎる考古学者となった気分だったが、こんな状況となってしまった理由は、端的に言えば彼のミスである。
というのも、少し前の階層で攻略しながらも静因石を探していたマキシマル一行は、相変わらず自分達を炙り続けるマグマが時々不自然な動きを見せていることに気がついた。大抵、それは通路から離れたマグマの対岸だったり、攻略の障害にはならなかったので気にも止めていなかったのだが、たまたま「鉱物系探査」の効果範囲にその場所が入った。つまり静因石こそが、マグマそのものに宿っているらしい魔力を鎮静化し、流れを阻害して不自然な動きにしているのだ。
ならば静因石は、マグマの動きが強く阻害されている場所に大量にあるはずと推測した一行は、探索の末に大量の静因石が埋まっている場所を多数発見した。マグマの動きに注意しながら、相当な量を集めた六人は、予備用にもう少しだけ集めておこうと、宙に流れるマグマが大きく壁を迂回するように流れている場所に向かった。ハジメが錬成を使って即席の階段を作成して近寄り、「鉱物系探査」を使うと充分な量が埋まっていることがわかった。
早速、錬成の「鉱物分離」を使い静因石だけを回収するハジメだったが、暑さによる集中力の低下と何度も繰り返した回収に油断したのか、壁の向こう側の様子というものに注意が向いていなかった。彼が自分のミスに気づいたのは、静因石を宝物庫に収納し、その効力が失われた瞬間、静因石が取り除かれた壁の奥からマグマが勢いよく噴き出した後だった。
咄嗟に飛び退いたハジメだったが、噴き出すマグマの勢いは激しく、まるで亀裂の入ったダムから水が噴出し決壊するように、穴を押し広げて一気になだれ込んできた。あまりの勢いに一瞬で周囲をマグマで取り囲まれた六人だったが、ユエが障壁を張って凌いでいる間に、ハジメが錬成で小舟を作り出しそれに乗って事なきを得たのである。小舟は直ぐに灼熱のマグマに熱せられたが、ハジメが「金剛」の派生「付与強化」により小舟に金剛をかけたので問題はなかった。
そして、流されるままにマグマの上を漂っていると、いつの間にか宙を流れるマグマに乗って、階段とは異なるルートでグリューエン大火山の深部へと、時に灼熱の急流滑りを味わいながら流されていき、現在に至るというわけだ。
ちなみに、マグマの空中ロードに乗ったとき、普通に川底を抜けそうになったのだが、シアが咄嗟に重力魔法「付与効果」で小舟の重さを軽減したのでマグマに乗ることができた。これは、彼女が触れているものの重量を、自身の体重と同じように調整出来るというものだ。
「あっ、皆さん。またトンネルですよ」
「そろそろ、標高的には麓辺りじゃ。何かあるかもしれんぞ?」
シアが指差した方向を見れば確かに、マキシマル一行が流されているマグマが、壁に空いた大穴の中に続いており、マグマ自体に照らされて下方へと続いていることが分かる。今までも洞窟に入る度に階層を下げてきたので、普通に階段を使って降りるよりショートカットになっている筈だ。
ティオの忠告に頷きながら、マキシマル一行は洞窟内に突入した。マグマの空中ロードは、広々とした洞窟の中央を蛇のようにくねりながら続いている。暫く順調に高度を下げていたマグマの空中ロードだが、カーブを曲がった先でいきなり途切れていた。いや、正確には滝といっても過言ではないくらい急激に下っていたのだ。
「またか。全員しっかり掴まってろよ!」
亮牙の言葉に他の五人も頷き、小舟の縁や恋人の腰にしがみついた。ジェットコースターが最初の落下ポイントに登るまでに感じるのに似た緊張感が漂う中、遂に小舟が落下を開始した。
ゴウォゴウォ!
六人の耳元でそんな風の吹き荒れる音が響き、シアの重力魔法を使った体重移動とティオの風によって制御しながら、途轍もない速度で激流と化したマグマを下っていく。マグマの粘性など存在しないとばかりに速度は刻一刻と増していった。
ハジメは靴裏にスパイクを錬成し、亮牙とスラッグは強靭な握力と鉤爪のような指で体を固定しながら、油断なく周囲を警戒する。何故なら、こういう時に限って敵が襲ってくるからだ。
「来たぞ!ハジメ!」
「あいよ!」
亮牙の声と同時にハジメはドンナーを抜き、躊躇いなく引き金を引いた。周囲に炸裂音が三度響くと共に、三条の閃光が空を切り裂いて目標を違わず撃破した。襲撃者の正体は、翼からマグマを撒き散らすコウモリだった。
このマグマコウモリは、かなりの飛行速度とマグマ混じりの炎弾を飛ばすくらいしか目立った能力はなく、マキシマル一行にとっては雑魚同然の敵だ。だが厄介な事に、ゴキブリの如く岩壁の隙間などからわらわらと現れ、群れで襲って来るのだ。今も三羽を瞬殺したが、案の定、激流を下る際の猛スピードがもたらす風音に紛れて、おびただしい数の翼がはためく音が聞こえ始めた。
「ハジメ、ユエ、スラッグ、あの蝿どもを蹴散らすぞ」
「あいよ!」
「ん、任せて」
「俺スラッグ、分かった!」
「シア、デカパイ、引き続き船の制御を頼む」
「はいです!」
「うむ、任された。ご褒美は乳揉みでよいぞ?」
ティオの冗談とも本気ともつかない変態発言をスルーして、亮牙とスラッグ、ハジメとユエが小舟の上で背中合わせで円陣を組んだ直後、マグマコウモリの群れがその姿を見せた。夥しい数で、まるで鳥類の一糸乱れぬ集団行動のように一塊となって波打つように動き回るその姿は、最早一つの生き物といっても過言ではない。翼がマグマを纏い赤く赤熱化しているので、傍から見れば炎龍のようだ。
一塊となってマキシマル一行に迫ってきたマグマコウモリは、途中で二手に分かれると、前方と後方から挟撃を仕掛けてきた。いくら一体一体が弱くとも、一つの巨大な生き物を形取れる程の数では、普通は物量で押し切られるだろう。しかし現在彼らが挑んでいる集団は、単純な物量で押し切れる程甘くはなかった。
ハジメは宝物庫からメツェライを取り出すと、腰だめに構えてトリガーを引いた。ドゥルルルルルル!と独特の射撃音を響かせながら、恐るべき威力と連射を遺憾無く発揮した殺意の嵐は、その弾丸の一発一発を以て遥か後方まで有無を言わせず貫き通す。洞窟の壁を破砕するまでの道程で射線上にいたマグマコウモリは、一切の抵抗も許されず粉砕され地へと落ちていった。
続いて亮牙が、宝物庫から新たな武器を取り出した。剣やメイスなど接近戦用の武器を好む彼としては珍しい、2本の銃身を持つ銃だ。彼は銃口をマグマコウモリ達へ向けると、容赦なく引き金を引いた。すると、銃口から2発のロケット弾が火花の尾を引いて飛び出し、メツェライの弾幕により中央に固められた群れのど真ん中に突き刺さり、轟音と共に凄絶な衝撃を撒き散らした。結果は明白、木っ端微塵に砕かれたマグマコウモリの群れは、その体の破片を以て一時のスコールとなった。
後方から迫っていたマグマコウモリも同じようなものだ。
「俺スラッグ!撃つべし撃つべし!」
「嵐龍」
スラッグが銃を乱射してマグマコウモリ達を蹴散らす中、ユエが右手を真っ直ぐ伸ばしてそう呟いた瞬間、緑色の豪風が集まり球体を作った。そして瞬く間に、まるで羽化でもするかのように球形を解いて一匹の龍へと変貌する。緑色の風で編まれた風の龍は、マグマコウモリの群れを一睨みすると、その顎門を開いて哀れな獲物を喰らい尽くさんと飛びかかった。
当然マグマコウモリ達は炎弾を放ちつつ、スラッグの銃撃を喰らいながらも、嵐龍を避けるように更に二手に分かれて迂回しようとした。しかしユエの「龍」はその全てが重力魔法との複合魔法であり、この「嵐龍」も唯の風で編まれただけではなく、風刃で構成され、自らに引き寄せる重力を纏った龍であり、一度、発動すれば逃れることは至難だ。マグマコウモリ達は抗うことも許されず「嵐龍」へと引き寄せられ、風刃の嵐に肉体を切り刻まれて血肉を撒き散らし四散した。最後に「嵐龍」は群れのど真ん中で弾け飛ぶと、その体を構成していた幾百幾千の風刃を全方向に撒き散らし、マグマコウモリの殲滅を完了した。
「俺スラッグ、ユエ凄い!」
「ん、当然」
「う~む、いつ見ても恐ろしいものがあるのぉ」
「流石ですぅ」
自分より多くの敵を仕留めた事をスラッグから称賛され、ユエは得意気に胸を張った。小舟を制御して激流に上手く乗りながら、ティオとシアも苦笑い気味に称賛を送る。それに肩を竦めつつメツェライをしまったハジメは彼女の頬を軽く触れて、前方に視線を戻した。ユエも、触れられたことに目元を緩めて嬉しそうにしながら視線を周囲の警戒に戻す。
さり気なく、チャンスは逃さんとばかりにイチャつく二人に、シアがそれなら私達も!とオーラを出し、ティオがそれに便乗する。同じく前方を見張っていた亮牙は仕方ないなと少し困った表情で、シアとティオの頭をそれぞれ軽く撫でてあげた。それだけで二人共やたら嬉しそうな表情をするのだから、彼としても何とも困ったものである。
マグマの激流空中ロードを、魔物に襲われながら下っているというのに結構余裕のあるマキシマル一行だったが、その余裕に釘を刺したかったのか、今まで下り続けていたマグマが突然上方へと向かい始めた。勢いよく数十mを登ると、その先に洞窟の出口らしき光が見えた。だが問題なのは、今度こそ本当にマグマが途切れていることである。
「掴まれ!」
亮牙の号令に、皆は再び小舟にしがみついた。小舟は、激流を下ってきた勢いそのままに猛烈な勢いで洞窟の外へと放り出された。襲い来る浮遊感などものともせず、亮牙は素早く周囲の状況を確認した。彼らが飛び出した空間は、かつて見たライセン大迷宮の最終試練の部屋よりも尚、広大な空間だった。
ライセンの部屋と異なり球体ではなく、自然そのままに歪な形をしているため正確な広さは把握しきれないが、少なくとも直径3km以上はある。地面はほとんどマグマで満たされており、所々に岩石が飛び出していて僅かな足場を提供していた。周囲の壁も大きくせり出している場所もあれば、逆に削れているところもある。空中には、やはり無数のマグマの川が交差していて、そのほとんどは下方のマグマの海へと消えていっている。
ぐつぐつと煮え立つ灼熱の海とフレアのごとく噴き上がる火柱は、さながら地獄の釜のようだ。だがなにより目に付いたのは、マグマの海の中央にある小さな島だ。海面から10m程の高さにせり出ている岩石の島で、その上をマグマのドームが覆っていた。まるで小型の太陽のような球体のマグマが島の中央に存在している異様は、マキシマル一行の視線を奪うには十分だった。
「風よ」
飛び出した勢いでひっくり返った小舟を、ティオが空中で立て直し、それぞれ己の姿勢を制御して再び乗り込んだ。ユエが小舟の落下速度を「来翔」で調整し、柔らかくマグマの海に着地すると、明らかに今までと雰囲気の異なる場所に、六人は警戒を最大にした。マグマドームのある中央の島に視線をやりながら、スラッグが呟いた。
「俺スラッグ、あれがゲリピー・デブセンの仲間の住処かな?」
「深さ的にも多分そうだろうな。けどそうなりゃあ…」
「最後のガーディアンがいるはず、じゃな?ご主人様よ」
「ショートカットして来たっぽいですし、とっくに通り過ぎたと考えてはダメですか?」
「シア、気持ちは分かるけど、楽観が過ぎるよ」
亮牙の考えをティオが確認し、普段の変態っぷりが嘘みたいに、僅かな異変も見逃さない鋭い視線を周囲に配った。そんな仲間達の様子に気を引き締めながらも、正規のルートらしき階段と足場を見つけたシアが楽観論を呟いてみた。しかし、いくらマグマの空中ロードに乗って流れてくることが普通は有り得ないことだとしても、大迷宮の最終試練までショートカット出来たと考えるのは楽観が過ぎるというものだ。彼女も、そうだったらいいなぁ~と口にしつつも、その鋭い表情はまるで信じていない事を示している。
六人の警戒が正しかった事は、直後、宙を流れるマグマから、マグマそのものが弾丸のごとく飛び出してくるという形で証明された。
「むっ、任せよ!」
ティオの掛け声と共に魔法が発動し、マグマの海から炎塊が飛び出して頭上より迫るマグマの塊が相殺された。しかしそれは唯の始まりの合図に過ぎなかったようだ。彼女の放った炎塊がマグマと相殺され飛び散った直後、マグマの海や頭上のマグマの川からマシンガンのごとく炎塊が撃ち放たれたのだ。
「散れ!」
亮牙の合図と共に六人は小舟を放棄して近くの足場に散開する。凄まじい物量の炎塊によって粉砕された小舟がマグマの海へと沈んでいく中、六人はそれぞれ別の足場に着地し、なおも追ってくるマグマの塊を迎撃していった。迎撃そのものは切羽詰るという程ではなかったのだが、いつ終わるともしれない波状攻撃に、皆苛立たしげな表情を見せている。
そんな状況を打開すべく、亮牙は後方で戦うユエに声をかけた。
「ユエ!弾幕を切り開けるか⁉︎」
「ん、任せて!絶禍!」
彼女がそう叫ぶとともに、六人の中間地点に黒く渦巻く球体が出現し、飛び交うマグマの塊を次々と引き寄せ、超重力のもと押し潰し圧縮していく。おかげで炎塊の弾幕に隙ができ、亮牙は強靭な脚力で跳び上がると一気にマグマドームのある中央の島へと接近した。
マキシマル一行を襲う弾幕で一番厄介なのは、止める手段が目に見えないことだ。場所からして明らかに最終試練なのだが、今までの大迷宮と異なり目に見える敵が存在しないので、何をすればクリアと判断されるのかが分からなかった。そのため、もっとも怪しい中央の島に乗り込んでやろうと考えた亮牙は、そのまま皆に指示を出した。
「援護頼む!あの島を調べる!」
「「「「「了解(ですぅ/なのじゃ)!!!」」」」」
ユエの「絶禍」の効果範囲からマグマの塊が亮牙を襲うが、そうはさせじとティオがマグマの海より無数に炎弾を飛ばして迎撃し、シアもドリュッケンを戦鎚に展開せずショットガンモードで迎撃していく。ユエは「絶禍」を展開維持し、更にハジメとスラッグが射撃で迎撃に当たった。皆の援護をもらって、一直線に中央の島へと迫った亮牙は、そのまま飛び移ろうとしたが、次の瞬間…
「ゴォアアアアア!!!」
「何ッ⁉︎」
そんな腹の底まで響くような重厚な咆哮が響いたかと思うと、宙を飛ぶ亮牙の直下から大口を開けた大蛇が襲いかかってきた。全身にマグマを纏わせているせいか、周囲をマグマで満たされたこの場所では熱源感知にも気配感知にも引っかからず、更にマグマの海全体に魔力が満ちているようなので魔力感知にも引っかからなかったことから、完全な不意打ちとなった。
だが、亮牙は常人離れした反応速度で体を捻ってその顎門による攻撃を回避すると、すれ違いざまにマグマ蛇がバクンッ!と口を閉じる瞬間、すかさずスルトを展開して、その頭を叩き斬った。
「…マジかよ」
しかし、頭を斬り落とされながらもマグマ蛇は断末魔の叫びなど上げず、逆に亮牙の驚愕の声が上がった。マグマの飛沫が飛び散っただけであり、中身が全くなかったのだ。今までのグリューエン大火山の魔物達は、基本的にマグマを身に纏ってはいたが、それはあくまで纏っているのであって肉体がきちんとあり、マグマだけで構成されていたわけではない。
亮牙は直ぐに立ち直ると、物は試しにと残った胴体に銃撃を浴びせていくが、やはりどこにも肉体はなかった。どうやらこのマグマ蛇は、完全にマグマだけで構成されているらしい。驚く亮牙だったが、取り敢えず行動不能に出来たので、その脇を通り抜けて再度中央の島へ跳ぼうとした。
だが、彼が脇を抜けようとした瞬間、頭部を失い体中を四散させておきながらもマグマ蛇は突如身をくねらせ体当たりを行ってきた。亮牙はすかさずエネルゴンの盾を展開してその攻撃を間一髪受け流したたが、マグマの海からマグマ蛇が次々と飛び出し、その巨大な顎門を大きく開いて襲いかかってきた。彼はすかさずスルトでその頭を全て叩き斬ると、近くの足場に着地した。その間に、炎塊の掃射は一時止んだらしく、残る五人もやって来た。
「亮牙さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。それより、ようやく本命が来たぞ」
恋人の腕にそっと触れながら安否を気遣うシアに、亮牙は前方から目を逸らさず、そっと触れ返すことで応える。やがて、次々とマグマ蛇が現れ、遂に20体以上もの数が六人を睥睨するに至った。
「やはり、中央の島が終着点のようじゃの。通りたければ我らを倒していけと言わんばかりじゃ」
「でも、さっき亮牙さんに倒された筈の奴、普通に再生してますよ?倒せるんでしょうか?」
最初に亮牙に倒された筈の個体も、既に再生を終え何事もなかったかのように元通りの姿を晒しており、シアが眉をしかめて指摘した。ライセン大迷宮の時はインフェルノ軍団に動揺していたというのに、今は冷静に攻略方法を考えているようだ。それを示すようにウサミミをピコピコと忙しなく動かす仕草に、随分と逞しくなったものだと微笑ましげに見つめつつ、亮牙は自分の推測を伝えた。
「多分アンカジでぶっ殺したバッチイと同じで、マグマを形成するための核がある筈だ。ハジメ、特定できるか?」
「…いや、マグマが邪魔でパーセプターでも位置を特定出来ない。それをぶち壊すしかないね」
親友の問いかけにそう答えたハジメの言葉に全員が頷くのと同時に、総数20体のマグマ蛇が一斉に襲いかかった。まるで太陽フレアのように噴き上がると、頭上より口から炎塊を飛ばしながら急迫する。普通なら逃げ場もなく大質量のマグマに呑み込まれて終わりだろう。
「激力雷電!」
「久しぶりの一撃じゃ!存分に味わうが良い!」
スラッグがすかさず電撃を放ち、更にティオが竜人族のブレスを、正面に突き出した両手から一気に解き放った。落雷の如き電撃と黒色の閃光は、二人の正面から迫っていたマグマ蛇を10体も消滅させ、それにより出来た包囲の穴から、六人は一気に飛び出した。流石に跡形もなく消し飛ばされれば、魔石も一緒に消滅しただろうと思われたが、半数に減らされた筈のマグマ蛇達は再び20体に戻っており、亮牙達は悔しそうに表情を歪めた。
「そんな⁉︎確かに魔石は破壊されてたのに⁉︎」
「…どうなってる?クリア条件は別にあるのか?」
「皆さん!見て下さい!岩壁が光ってますぅ!」
すると、シアが中央の島の岩壁の一部が拳大の光を放っている事に気づき、声を張り上げた。先程までは気がつかなかったが、岩壁に埋め込まれている何らかの鉱石からオレンジ色の光が放たれている。
亮牙が目を凝らして確認すると、保護色になっていて分かりづらいが、かなりの数の鉱石が規則正しく中央の島の岩壁に埋め込まれている事に気づいた。中央の島は円柱形なので、鉱石が並ぶ間隔と島の外周から考えると、ざっと百個の鉱石が埋め込まれている事になる。そして現在、光を放っている鉱石は、先程スラッグとティオが消滅させたマグマ蛇と同数の10個だ。
「でかしたシア。どうやらクリア条件は、この環境であの蛇どもを100匹ぶっ殺すみたいだな」
ただでさえ暑さと奇襲により疲弊しているであろう挑戦者を、最後の最後で一番長く深く集中しなければならない状況に追い込む。大迷宮に相応しい嫌らしさと言えるだろう。確かにマキシマル一行も相当精神を疲労させているが、その表情には疲労の色はなく、攻略方法を見つけさえすればどうとでもしてやるという不敵な笑みしか浮かんでいなかった。
そうして六人全員が、やるべき事を理解して気合を入れ直した直後、再びマグマ蛇達が襲いかかった。マグマの塊が豪雨のごとく降り注ぎ、大質量のマグマ蛇が不規則な動きを以て獲物を捉え焼き尽くさんと迫る中、亮牙達は再び散開し、それぞれ反撃に出た。
亮牙とスラッグは、剣を展開してマグマ蛇の頭や身体を切り裂きながら、手にした銃で容赦なく銃撃を浴びせていく。普段は幼稚な仕草も多い二人だが、歴戦の戦士だけあって「酷い射撃、1発も当たってない」なんて醜態など晒す筈もなく、容赦なくマグマ蛇達を仕留めていった。
「これが水やタールなら、飛び込んで直接仕留めるんだがな!」
「俺スラッグ、そんな事したらドロドロに溶けちまう!」
敵を叩きのめす手を止めず、そう呟く亮牙とスラッグ。流石の彼らでも、マグマの中に飛び込んだらただでは済まないだろう。彼らの十八番である火炎放射では、今回の敵には相性は悪いので、少々不満げだ。
ティオは竜の翼を背から生やし、そこから発生させた風でその身を浮かせながら、真空刃を伴った竜巻を砲撃の如くぶっ放す「砲皇」で、マグマ蛇を吹き飛ばし切り刻んでいく。
シアも跳躍してドリュッケンでマグマ蛇の頭部を下にあるマグマの海まで一気に爆砕し、魔石を容赦なく叩き潰す。背後から別のマグマ蛇が襲いかかるも、彼女は特に焦ることもなく、背中のホルスターから感応石により操作される円盤を取り出して放り投げ、体重操作を施しながらその上を足場にして再度宙を舞った。目測を外され下方を虚しく通り過ぎるマグマ蛇に、シアは変形させたドリュッケンの銃口から炸裂スラッグ弾を放ち、狙い違わず背後から爆殺した。
ユエも最近十八番の「雷龍」を放つが、熟練度がどんどん上がっているのか、出現した数は七体。それをほぼ同時に、それぞれ別の標的に向けて解き放った。雷鳴の咆哮が響き渡り、彼女に喰らいつこうとしていたマグマ蛇達は、逆にマグマの塊などものともしない雷龍の群れに次々と呑み込まれ、体内の魔石ごと砕かれていった。
ハジメも、背後から襲いかかってきたマグマ蛇に、振り向くことなく肩越しに炸裂弾を込めたシュラークを連射し、各箇所に均等に着弾し衝撃を以てそのマグマの肉体を吹き飛ばした。同時に衝撃で魔石が宙を舞うと、彼はは、すっと半身になって前方から飛んできたマグマの塊をかわしながら、右のドンナーでマグマの海に落ちる寸前の魔石をピンポイントで撃ち抜いた。拳銃サイズの弾丸では、一撃でマグマ蛇を魔石ごと吹き飛ばす威力はないため、大体二発ほど撃ってマグマの鎧を衝撃で吹き飛ばし、露出した魔石をドンナーでピンポイント狙撃する方法を取ったのだ。
気がつけば、本格的な戦闘が始まってからまだ十分も経っていないが、中央の島の岩壁、その外周に規則正しく埋め込まれた鉱石は、そのほとんどを発光させていた。グリューエン大火山のコンセプトが、悪環境による集中力低下状態での長時間戦闘だというマキシマル一行の推測が当たっていたのだとしたら、彼らに対しては、完全に創設者の思惑は外れてしまったと言えるだろう。
ティオのブレスが、スラッグの電撃が、シアのドリュッケンが、ユエの雷龍が、ハジメの銃撃がどんどんマグマ蛇達を討ち取っていく。
遂に最後の一体となったマグマ蛇が、亮牙の直下のマグマの海から奇襲をかけた。亮牙は重力魔法による体重操作でそのまま直上に飛び上がると、真下からガバッと顎門を開いて迫るマグマ蛇にスルトの斬撃をお見舞いする。マグマ蛇は魚のように左右真っ二つに両断され、体内から姿を現した魔石が姿を現すと、彼はグリューエン大火山攻略のための最期の一撃を放とうと、片手に握った銃口を向けた。
だが、次の瞬間…
ヒュウウウウウウッ!
チュドォオオオオオオオオン!!!
突如として頭上より、大量のミサイルが降り注いだ。ハジメの製作したアーティファクトではない。それどころか、より遥かに強力かも知れない。大気すら悲鳴を上げるその空爆は、攻撃の瞬間という戦闘においてもっとも無防備な一瞬を狙って、亮牙を、最後のマグマ蛇もろとも呑み込んだ。
〜用語集〜
・オルトロス
本作オリジナルのグリムロック専用武器。銃身が2本ある銃で、レーザーガンとロケットランチャーの両方の能力を持つ。
元ネタはG1グリムロックの専用銃。
・ケウラノス
同じく本作オリジナルのスラッグ専用武器。スラッグの電撃を射出する他、レールガンとしての機能もある。
元ネタはG1スラッグの専用武器のエレクトロンブラスター。
・酷い射撃、1発も当たってない
元ネタはG1第18話「対決!!ダイノボット PART I」でのグリムロックの迷言。
感想、評価お待ちしております。
本作での雫について現在検討中なのですが、読者の皆様はどんな展開が良いですか?
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光輝の被害者だし救済してあげて(泣)
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取り敢えず主要メンバーのヒロイン入り
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救済する必要なし。悲惨な末路にしろ