理由としては、前話を書き終えたあたりから仕事がハードになっており、その所為で肩を痛めたために治療していたことや、新たに購入したコレクションの整理などもあって中々執筆に時間が取れなかったためです。ご心配をおかけしました。
現在は多少肩の痛みは治りましたが、まだ全快ではないので、以前より投稿のペースが遅れると思いますが、これからも本作を応援して頂けると幸いです。
グリムロックこと灘亮牙がマグマの中に墜落する直前、その他のマキシマルの面々は、上空から攻撃する敵に苦戦していた。
「オラオラどうしたぁ⁉︎虫ケラどもがぁ!」
ラプターに変形して急降下してきたスタースクリームは機関銃を乱射しながら、ハジメ達に接近すると再び変形して、更にミサイルを大量に発射する。豪雨の如く降り注ぐミサイルに、咄嗟にユエが結界を張って防御することで五人は直撃を免れたが、ニトロゼウスの掃射も加わり、その場に釘付けにされて反撃が出来ないでいた。
更に、フリードを倒すべく上空へと飛び上がったグリムロックに、更なる危機が迫っている事を「未来視」で察知したシアが思わず叫んだ。
「ッ!ダメです亮牙さん!上です!」
しかし彼女の警告の甲斐なく、グリムロックは再び投下されたミサイルの餌食となる。そして更に遥か上空からランサーが降下してきたかと思うと、更に巨大なディセプティコンへと変形した。その姿を見て、スラッグが叫んだ。
「!彼奴、サイクロナスだ!空中戦だと、彼奴のが有利!俺スラッグ、グリムロックに加勢する!ユエ、ちょっと緩めて!」
「ん!」
敵の正体をよく知るスラッグは、流石のグリムロックでも不利な戦いになるとすぐに悟り、自分も加勢するべくユエにそう告げる。ユエが絶妙なバランスでスラッグの真上だけ結界を緩めると、彼は思い切り飛び上がって結界を突っ切り、上空へと突進する。
「おっと!そう何度も好きにさせるかよ!」
しかし今度は、敵も黙って通らせるつもりはなかった。ニトロゼウスはそう叫ぶと左腕のカノン砲を収納し、新たな武器を展開した。左腕から触手のように生えた、三本の長い鞭だ。
彼は大きく左腕を振るうと、自分達を突っ切ろうとするまだ人間態のスラッグを絡め取った。その姿はさながら猛牛を鞭で縛り上げるカウボーイのようだ。
「ぐぅっ⁉︎俺スラッグ、この程度、屁でもないぞ!」
「おいおいおい、このニトロジャッカーの真の力はこんなもんじゃねえぞ!」
拘束されながらも脱出しようとするスラッグだったが、ニトロゼウスは嘲笑うようにそう告げると、彼を縛り上げた鞭の更なる仕掛けを作動させた。
すると、鞭はギュイイイン!と音を上げて青く輝き出し、同時に締め上げられたスラッグが弱り始めた。
「ぬわぁぁぁ…!お、俺スラッグ、力が抜ける…⁉︎」
「ハッハッハ!オメェの電気とエネルゴンを吸い取ったのさ!これこそショッキーが俺のために作ってくれた専用武器・ニトロジャッカーの力だ!」
そう嘲笑いながらニトロゼウスは左腕を大きく振るい、力を吸い取り終わったスラッグを地上へと投げ落とした。
電気とエネルゴンの大半を吸い取られて衰弱したスラッグはそのまま落ちていくが、間一髪のところでハジメが跳躍して彼を抱え、マグマの海に落ちるのを防いだ。
「スラッグ!大丈夫⁉︎」
「お、俺スラッグ、力が出ない…」
スタースクリームとニトロゼウスは容赦なく爆撃の嵐を浴びせ、更にフリードも加勢して白竜に無数の光弾を放たせる。かつてのヒュドラに似た戦闘スタイルだが、それよりも極光の威力が上である以上、光弾の威力も侮ることは全く出来ない。神代魔法の使い手とのコンビネーションも相まって厄介さは格段に上だ。
スラッグが戦闘不能に陥り、防戦一方のマキシマル一行は更に追い込まれていく。
「グオオオオオオッ!!?」
突如として上空から苦悶に満ちた叫びが聞こえてきた。マキシマル一行が上空に視線を向けると、グリムロックがサイクロナスに袈裟斬りにされるという絶望的な光景が目に写った。更に銃撃を受けて巨体をふらつかせたかと思うと、そのまま彼は人間態へと姿を変えて真っ逆さまに墜落していく。
「ッ⁉︎亮牙さぁん!!?」
「おいおい、オメェらの相手は俺達だぜぇ!」
恋人の敗北に動揺しつつも、このままでは亮牙がマグマの海に落ちると悟ったシアは、彼を受け止めるため駆けつけようとする。しかし、ニトロゼウスの射撃によって足止めされてしまい、間に合わなかった。
彼女の最愛の恋人は目の前で、そのままマグマの海に沈んでいった。
「亮牙さん!!?いやぁあああああ!!?」
彼には後悔と怒りがあった。それは先程まで戦っていた敵に対してではなく、自分の不甲斐なさに対してだ。
ウルの町で仇敵の一人と戦い、死闘を繰り広げるも仕留めきれずに逃してしまった時に自覚していた筈だったが、その他の敵は常に圧倒し殲滅してきたこともあり、気付かぬうちに自分は最強だと慢心してしまっていたのだ。
その結果がこれだ。親友が鍛え上げてくれた剣を砕かれ、手酷く痛めつけられた末に、種族の違う自分を恋人として愛してくれている少女の眼前で醜態を晒してしまった。薄れゆく意識の中、彼女の慟哭が耳に響き渡る。最愛の人を泣かせてしまう自分の不甲斐なさに、つくづく怒りが込み上げて来る。
そして何より、長いこと感じてこなかった、或いはそう思い込んでいただけなのかもしれない感情が蘇ってきた。それは恐怖だ。
遥か昔、感情とは無縁だった恐竜の時に感じた、愛する者を失う悲しみへの恐怖。自分が敗れ去った今、敵が次にその矛先を向けるのは、自分にとって何より大切な仲間達だ。皆確かに強いものの、敵は予想を遥かに超えて強くなっている上、何より残忍で情け容赦がない。最悪、自分の二の舞か、自分以上に残酷な方法で命を奪われるかもしれない。
また、何も守れず喪うのか?最初は妻と子ども達、次に育ての両親、そして弟同然の親友の平穏。今度はその親友自身の命、旅の中で出会った仲間達の命、そして、こんな自分を愛してくれた少女の命を、また理不尽に奪われるのか?
巫山戯るな⁉︎俺から大切な仲間達を、愛する者を、二度と奪わせるものか‼︎そもそもあの時、二度とそんな無様は晒さないと誓っただろう‼︎
戦え!男が止まるのは、死ぬ時だ!!!
その時、不思議な事が起こった。彼が浸かっているマグマの強烈なエネルギーが、滾る怒りと闘志に呼応するかのように、彼に集まり始めたのだ。同時に体色も変化していき、大きく斬り裂かれた傷口も溶接されたかのように治癒していく。
それはまるで、星そのものが彼を認めて、力を与えるかのようであった。
「り、亮牙が負けた…⁉︎」
「そ、そんな…⁉︎」
「お、俺スラッグ、信じない…」
防戦一方だったマキシマル一行は、たった今自分達の目に飛び込んできた光景が信じられなかった。仲間内で最強を誇る亮牙が敗れ去り、自分達の目の前でマグマの海に沈んでいったのだ。
「亮牙さん!返事してください!亮牙さぁん!」
恋人が沈んだ箇所に向かって、シアが悲痛な叫びを響かせるが、亮牙の返事は一切ない。それでも彼女は目に涙を浮かべて叫び続けるが、その姿を上空の敵達は嘲笑った。
「ケッ、マグマの中に落ちて無事なわけがねぇだろ!馬鹿な虫ケラだぜ!」
「そーそー、流石の奴もドロドロに溶けちまっただろうよぉ!さっすがサイクの旦那だぜ!」
「お前たち、気を抜くな。一番厄介な奴は倒したが、まだ戦いは終わってないぞ!」
最早勝利を確信して笑い転げているスタースクリームやニトロゼウスと違い、フリードは一切気を抜く事なく、白竜に命じてブレスを放とうとした。狙いは、マグマの海に向かって叫び続けるシアだ。
『貴様らぁ!!!』
突如、空間全体に響くような不可思議な声が届くと同時に、フリードと白竜の横合いから凄まじい衝撃が襲いかかった。吹き飛ばされ、ブレスを吐き損なった白竜にしがみつきながら、フリードは体長10mに達する白竜を吹き飛ばした原因に目を向けた。直後、驚愕にその目を見開く。
「黒竜だと⁉︎」
『かつて妾を利用して叔父上を奴僕扱いしただけでは飽き足らず、妾の愛しき人をよくも!徒では済まさんぞ!』
フリードと白竜を吹き飛ばしたのは、彼の言葉通り「竜化」したティオだ。竜人族であることを魔人族やディセプティコンに知られることによるリスクを承知の上で、その姿を露わににしたのだ。白竜やスタースクリームより一回り小さいサイズではあるが、纏う威圧感は両者を遥かに凌ぐ。
ティオがマキシマル一行の旅に同行する決断をしたのは、叔父であるストレイフが亮牙の旧友であり、亮牙を気に入ったからというのもあるが、異世界からやって来た者達の確認、そして行く末を確かめるためという理由もあった。その前提として、自分が竜人族であることは、掟に従い極力隠したいと思っていた。いくら強力な種族であっても、数の暴力には敵わない事は、500年前の迫害で身に染みていた。
しかし、無敵だと、傷つくはずがないと思い込んでいた亮牙が敗北した。身体を大きく袈裟斬りにされ、力なくマグマの海に沈んでいった彼の姿を見た時、彼女の胸中は激しい動揺に襲われた。
自分は何を勘違いしていたのか。亮牙とて人。傷つくこともあれば、一瞬の油断であっさり死ぬことも有り得るのだ。そんな当たり前のことをようやく思い出したティオは、長く生きておきながら常識を忘れるほど亮牙に傾倒していた事を、今この時にこそ明確に自覚した。単なる興味の対象でも、ご主人様でもない。灘亮牙は、一人の女として失いたくなかった「男」なのだと自覚したのだ。
それ故に、人前での「竜化」の決断をした。仲間の危機に出し惜しみをするのであれば、もう胸を張ってマキシマルの一員を名乗れない。なにより、竜人族ティオ・クラルスの誇りにかけて、掟と大切な者の命を天秤にかけるような真似は出来なかったし、するつもりもなかった。
「調子に乗んじゃねぇ!この虫ケラがぁ!」
『邪魔をするでない!下郎が!』
「何ぃ⁉︎ぐわぁっ!!?」
スタースクリームは知った事かと言わんばかりに右腕から丸鋸を展開して、ティオに斬りかかる。だが、グリムロックの牙以外はあらゆるものを弾き返してきた彼女の鱗に弾かれ、長い尾で叩かれて大きくよろめいた。
『妾の怒りを思い知れ!これが竜のブレスよぉ!』
轟音と共に黒色の閃光が白竜もろともフリードを呑み込もうと急迫する。白竜は身をひねり迫るブレスに向けて同じように極光のブレスを放った。黒と白の閃光が両者の間で激突して凄絶な衝撃波を撒き散らし、直下にあるマグマの海は衝突地点を中心に盛大に荒れ狂い津波を発生させた。
最初は拮抗していたティオと白竜のブレスだが、次第に、ティオのブレスが押し始める。だが…
「成る程、アストロトレインが言っていた、ストレイフの弱点というのは貴様か」
『ぐっ⁉︎き、貴様…!』
獲物に飛びかかる猛禽の如く上空から降下してきたサイクロナスが、ティオの首に掴みかかった。流石の彼女も身長20m近い巨人の剛腕には敵わず、まるで鶏のように首を掴まれ、苦しそうに呻いた。
ハジメとユエはなおも戦闘態勢を取り続けるが、今や絶体絶命の危機に陥りつつあった。そんな彼らを見下ろしながら、サイクロナスは仲間達を叱責した。
「馬鹿どもが。貴様ら、この程度の連中にいつまで時間をかけている?」
「くっ…!」
「アァ⁉︎テメェ、大将首取ったからって調子乗ってるんじゃねぇぞ!」
「ふん。あんな腑抜けに成り下がった奴など、仕留めたところで何の価値もない」
フリードが悔しそうに顔を歪め、スタースクリームが唾を飛ばしながら言い返すが、サイクロナスは全く相手にしない。だが、先程まで戦っていた亮牙を愚弄するような発言に、ハジメとユエが顔を顰めた。
「お前、亮牙が腑抜けだと…⁉︎」
「亮牙?…グリムロックの奴め、そう名乗っているのか。言葉通りの意味だ。奴も他のダイナボット共も最早戦士などではない。今の奴らはただの腑抜けだ」
「…どういう意味だ…⁉︎」
「かつてダイナボットは、宇宙全土にその名を轟かせた歴戦の戦士だった。圧倒的な強さと冷酷非情さを武器に、多くの敵を打ち負かしてきた。中でもグリムロックは容赦なさと無類の強さで、多くのサイバトロン人から畏敬の念を集めてきた。無論、この俺も敵とはいえ奴を認めていた…」
亮牙達への侮辱の言葉に怒りを露わにするハジメとユエだが、意外にもサイクロナスはダイナボット達を認めていたかのような口ぶりだ。しかし、すぐに彼の言葉には侮蔑が再びこもり始めた。
「…しかし、此奴らは情を得た事で戦士として堕落した!ストレイフはこんな羽虫の小娘の命と引き換えに我々の奴僕になる事を受け入れた!グリムロックに至っては、かつてどのディセプティコンもがその名を恐れる程の残忍さを轟かせたというのに、かつての獰猛さを失った挙句、貴様らを潰さぬようにと醜い人の姿で死んでゆく始末!それもこれも、貴様らのような下等生物どもとの下らん絆に毒されたからだ!」
『き、貴様…!巫山戯た事を…!』
かつての宿敵達が、人間共との絆によって堕落したと怒りを露わにするサイクロナスに、彼の左腕に首を掴まれたティオは苦しそうに呻きながらも睨みつける。
しかし、彼女とてその発言には若干ショックを受けていた。確かに亮牙とストレイフは強いものの、自分達の存在が足枷になっているのでは、という思いがあったからだ。実際、ウルでは自分が油断して敵に洗脳されていた際に、ストレイフを敵の奴僕にされるという屈辱な目に遭わせてしまっている。
「違う!亮牙さん達は腑抜けなんかじゃありません!」
そんな中、サイクロナスに真っ向から反論する者がいた。目に涙を溜めたシアだ。
「亮牙さんのおかげで、私は理不尽に抗う強さを手にする事が出来たんです!あの人はシビアなところもありますけど、誰かを思いやる優しさを持ち合わせているんです!スラッグさんやストレイフさんも同じくです!私の大切な仲間達を、愛する人を侮辱するのは許しませんよ!」
「…愚かな。戦士にくだらない感情など不要!ただ敵を討ち滅ぼす力と冷酷ささえあれば良いのだ!ちょうど良い。次は貴様をその愛とやらに殉じさせてやろう!」
シアの怒りの叫びを嘲笑うと、サイクロナスは右腕のブラスターの照準を彼女に定めて、発射した。ユエは咄嗟に結界を張ろうとするも、ニトロゼウスの横槍を受けて間に合わなかった。
襲い掛かるレーザーに、シアは死を覚悟したが…
「
「何ッ!!?」
突如、マグマの海から強烈な火炎が一直線に放出された。火炎はそのままサイクロナスのレーザーに直撃すると、相殺どころか吹き飛ばして、そのまま彼に襲い掛かった。サイクロナスは咄嗟に躱したが、近くを飛んでいた灰竜達は逃げ遅れ、障壁を張ろうとした亀型の魔物ごと焼き尽くされた。
その際、彼の左腕が緩んだ隙をついてティオは脱出を果たした。しかし、強靭な握力で首を締め上げられた事で疲弊し、力無くマグマの海へと墜落しそうになる。
だが、マグマの海から何かが浮上して、墜落しつつあった彼女を受け止めた。その姿を見て、ディセプティコン達は驚愕し、マキシマル達は歓喜の声を上げる。
「「「亮牙(さん)!!!」」」
そう、我らが主人公・グリムロックである!
但しその身体は、仲間達が見慣れた銀色ではなく、まるで灼熱の溶岩の如く紅蓮に染まっており、瞳も赤からエメラルドのような緑色に輝いていた。これは、マグマに浸かった事で、星のエネルギーに干渉する重力魔法が無意識のうちに発動し、彼はグリューエン大火山の熱エネルギーを吸収してパワーアップを果たした。
そう、グリムロックは新たに、
ファイヤーブラストグリムロックへと覚醒したのだ!
「俺グリムロック、デカパイ、大丈夫か?」
『ご、ご主人様…!無事で良かったのじゃ…』
「迷惑かけた。少し休め」
『か、忝いのじゃ…』
頭上に不時着したティオを優しく近くの足場に下ろすと、グリムロックはロボットモードへと変形する。墜落前にサイクロナスに斬り裂かれた胸部の傷は、まるで溶接されたかのようにすっかり治癒していた。
「おいサイクロナス。確かに俺も油断していたが、好き放題やってくれたじゃねえか」
ぐったりしたスラッグや、それを支えるハジメとユエ、目を真っ赤にしたシアの姿を見ると、グリムロックは上空にいる敵達を睨みつけた。殺気立ったその気迫に、ディセプティコン達も警戒を露わにする。
「コイツらとの絆が、俺達を腑抜けさせただと?逆だ。コイツらという大切な仲間と出会えたからこそ、コイツらを守りたいという思いが俺達を更に強くしてくれた!その錆びついた目にしっかり刻みつけろ!」
そう啖呵を切ると、グリムロックは武器を展開した。柄はスルトと同じだが、先程の戦いで砕けた刀身は、新たにマグマが固まったような両刃となっている。スルトがグリューエン大火山の熱エネルギーを吸収する事で、新たな武器・マグマトロンへと変わったのだ。
その大剣を右手に握り締め、グリムロックは重力魔法を使い、再び敵の待つ上空へと飛び上がった。
「怯むな!一斉に攻撃しろ!」
サイクロナスは仲間達にそう命じると、左腕のガトリングをグリムロック目掛けて連射する。その呼びかけに、迫り来る敵への気迫に呑まれていたフリード達もハッとなり、攻撃を再開した。
しかしグリムロックは怯まない。真紅に染まったボディは、敵の攻撃を易々と弾き返していた。彼は左腕を大きく振りかぶると、上空の敵目掛けて拳を突き上げた。
「
「なっ⁉︎クソッ!」
「「「「「グギャアアアッ!!?」」」」」
すると、まるでグリューエン大火山がグリムロックに呼応するかのように、マグマの海から大量の火山弾が噴出し、ディセプティコン達に襲い掛かった。フリードは驚愕しつつも、咄嗟に亀型の魔物達に命じて、自分と白竜、三体のディセプティコンだけに集中して障壁を張るよう命じた。おかげで彼らは無事だったが、障壁に守られなかった灰竜達は一頭残らず火山弾の餌食となり、断末魔の悲鳴を上げながら焼き尽くされた。
「まだまだ荒れるぜ!止めてみな!」
「上等だこの野郎!」
灰竜達を殲滅し、再び上空に舞い戻ったグリムロックがそう叫ぶと、ニトロゼウスが左腕からニトロジャッカーを伸ばした。そして、スラッグから奪った電撃を纏わせると、大きく振りかぶって彼の右腕に絡み付けた。どうやらスラッグにしたように、エネルギーを吸収してしまおうという魂胆のようだ。
しかし何度も同じ手が通用するはずが無い。グリムロックは右腕を大きく振り回して、ニトロジャッカーを容易く振り解いた。
「のわああああっ!!?」
「ルァアアアアン!!!」
大きく吹き飛ばされたニトロゼウスはそのまま白竜に激突し、あまりの衝撃に白竜が悲鳴を上げた。それでも両者ともに、空中で何とか体勢を立て直して墜落を防いだ。フリードも何とか耐えたようだ。
雑魚に用はないと言わんばかりに、グリムロックは彼らには見向きもせず、大将であるサイクロナスに斬りかかった。対するサイクロナスも再びダークマターカリバーを手に取ると、迫り来る敵へと振り下ろした。
再び剣と剣がぶつかり合う音が響き渡る。だが、今度はグリムロックが優勢だ。先程とは打って変わって、サイクロナスの方が追い詰められていく。
「ウルァアアアアアッ!」
「ぐっ…⁉︎調子に乗るなぁ!」
処刑人の如くグリムロックが振り下ろしたマグマトロンを、間一髪で躱したサイクロナスだったが、刃は左腕を掠め、装備していたガトリングガンを破壊する。左腕の痛みに顔を顰めながらも、サイクロナスは右腕でグリムロックを殴りつけて、更に上空へと上昇して距離を取った。
するとグリムロックは一旦近くの足場に着地して、体勢を立て直すとマグマトロンを野球のバットの如く振りかぶった。すると、刃が煮えたぎるマグマの如く紅蓮に輝き始めた。凄まじいエネルギーが込められているのだ。
「ッ⁉︎アレを直撃するのは、流石に不味いな…!ニトロゼウス、バウアー!一旦下がれ!」
「り、了解…!」
「す、すまん…!」
長年、戦士として戦ってきた経験から、今から繰り出される攻撃の危険性を察知したサイクロナスは、先程と同じ光り輝く膜を出現させると、衝突のダメージで疲弊していたニトロゼウスとフリード達を避難させた。
彼自身も、ハジメ達と戦闘中のスタースクリームを呼び寄せて、膜の中に飛び込もうとするが…
「食らえよ、暴君の刃────
──
次の瞬間、グリムロックがマグマトロンを上空目掛けて振るい、さながら火山の噴火のような爆炎の斬撃が放たれた。斬撃はそのまま、全てを焼き尽くす火砕流のように、サイクロナスと駆けつけたスタースクリームに襲い掛かった。
「チッ!おいスタースクリーム!
「なっ⁉︎巫山戯るな!やめ──」
咄嗟にサイクロナスはその剛腕でスタースクリームを掴むと、迫り来る爆炎の斬撃目掛けて投げつけて盾代わりにし、自分は膜の中に飛び込んだ。
スタースクリームは咄嗟の事に動揺しつつも怒りを露わにするが、文句を言い切る前に斬撃が直撃した。
「グギャアアアアッ!!?」
まるで火山の噴火の如く、爆炎はそのまま天高く突き抜けていく。直撃したスタースクリームは断末魔の悲鳴を上げ、跡形もなく焼き尽くされてしまった。
「亮牙さん!」
「「亮牙!」」
『ご主人様!』
「お、俺スラッグ…グリムロックなら無事だと思ってた…」
攻撃が収まると、マキシマルの仲間達がグリムロックの傍に駆けつけてきた。マグマに沈んでいった時はもう駄目だと思っていたが、彼が無事だった事に皆安堵している。スラッグもまだ疲弊しているものの、仲間の無事を喜んでいた。
しかし、そんな状況に水を差すように、再び上空に光の膜が現れたかと思うと、サイクロナスとニトロゼウス、白竜に乗ったフリードが姿を現した。三人とも、どうやら先程の攻撃を免れたようだ。
「ふぅ〜、サイクの旦那がいなかったら、今頃俺ら消し炭になってたな〜」
「全くだ…。仲間の連中もかなりの実力者だが、あの男はまさに災害そのものだな…」
ニトロゼウスとフリードは、先程の攻撃を間一髪で躱せた事に、安堵の声を漏らした。
そんな彼らを、正確にはサイクロナスを睨みつけながら、グリムロックは上空に剣を突き付けて怒鳴った。
「おいサイクロナス!俺達を好き放題馬鹿にしときながら、テメェ自身は仲間を盾にして逃げやがって!腰抜けはどっちだ!」
だが当のサイクロナスは、その挑発を鼻で笑った。
「フッ、
次の瞬間、彼の隣で黒く燃え盛る炎が発生したかと思うと、その炎の中から驚くべきモノが現れた。先程のグリムロックの斬撃で焼き尽くされた筈のスタースクリームだ!
「テメェ!サイクロナス!よくも俺を盾にしやがったな!俺が不死身だから良かったものを!」
「不死身だからこそ、こういう時に役立って貰わねばな。どうだ?これこそが、貴様達が愚かにも刃向かおうとしている、偉大なるメガトロナス様のお力だ!」
「そうさ!あのお方はこの俺を転生させた際に、何度でも甦る事のできる不死身の身体を与えてくれたのさ!例えお前らがどれだけ強力な攻撃を食らわせようも、俺様は何度でも復活する事が出来るんだよ!」
そう言って高笑いするサイクロナスとスタースクリームに、マキシマル一行は顔を顰める。まさか、敵にユエ以上の再生能力の持ち主がいるとは、思いもしなかった。
「…とは言えグリムロック、先程の言葉は訂正しよう。やはり貴様の強さは並外れている。かつてと同じく、我々の悲願の妨げとなるのは明白だな…。バウアー、やれ」
「うむ。この手は使いたくはなかったのだがな…」
サイクロナスにそう命じられたフリードは、いつの間にか肩に止まっていた小鳥の魔物に何かを伝えた。その直後…
その直後、グリューエン大火山全体に激震が走り、凄まじい轟音と共にマグマの海が荒れ狂い始めた。突如、下から突き上げるような衝撃に見舞われながらも、マキシマル一行は必死にバランスをとった。激震は刻一刻と激しさを増し、マグマの海からは無数のマグマ柱が噴き上がり始めている。
「皆さん!水位が!」
シアの言葉に、他の面々足場の淵を見れば、確かにマグマの海がせり上がってきていた。
グリムロックは押し殺したような声音で、明らかにこの異常事態を引き起こした犯人達に問いかけた。
「テメェらの仕業か?」
「如何にも。
「要石、だと…?」
「そうだ。このマグマを見て、おかしいとは思わなかったのか?明らかに活火山であるもかかわらず、グリューエン大火山は今まで一度も噴火したという記録がない。それはつまり、地下のマグマ溜まりからの噴出をコントロールしている要因があるということ」
「それが『要石』か…。まさかっ⁉︎」
「そうだ。マグマ溜まりを鎮めている巨大な要石を破壊させてもらった。間も無く、この大迷宮は破壊される。貴様らが生き残れたなら、また合間見える事になるだろう…。生き残れたらの話だかな」
「ヒャハハハハ!今度は貴様達が焼け死にやがれ!」
「バイビ〜!」
冷たくマキシマル一行を見下ろしながら、嘲笑うようにそう告げたディセプティコン達は、素早くジェット機へと変形すると、上空に大きく開かれた光の膜に飛び込んでいった。最後に残ったフリードも、マキシマル一行を睥睨した後、踵を返して白竜と共に膜の中に飛び去った後、光の膜は上空から姿を消していた。
周囲のマグマの海は既に、まるでハリケーンの勢力圏に入った海のように荒れ狂い、噴き上がるマグマ柱はその数を次々と増やしている。マキシマル一行の足場も端からマグマが流れ込み始め、まるで終末世界のような光景だ。
グリムロックは剣を収納すると、僅かな時間、何かを考えるように目を細めた。そして何かを決断すると、足場から仲間達を抱えると自分の肩へと乗せた。そして彼は、竜化しているティオをその巨大な掌に乗せると、取り出しておいた『宝物庫』のポーチを彼女の角に引っ掛けて話しかけた。
「…デカパイ、よく聞け。これを持って、お前は一人であの天井から地上へ脱出しろ」
一瞬、何を言われているのか分からないという表情で目を瞬かせるティオだったが、次の瞬間には傷ついたような表情をして悲しみと怒りの混じった声を響かせた。グリムロックの言葉が、まるで彼女だけ生き残らせて、自分達を切り捨てろと言っているように聞こえたのだ。
『ご主人様よ、妾は、妾だけは最後を共に過ごすに値しないというのか?妾に切り捨てろと、そういうのか?妾は…』
「そうじゃねえよ馬鹿。誰が諦めていると言った?神代魔法は手に入れるし、いつか必ずサイクロナス達は倒す。何より『静因石』を届けるという約束も守る。けど、俺一人じゃ無理なんだ。だからテメェの力を借りたい。全てを突破して期限内にアンカジに戻れるのは、テメェだけなんだ。…頼む、
今まで一度も向けたことのない真剣な眼差しで、そして初めてちゃんと彼女の名前を呼びながら、竜化状態のティオの瞳を見つめるグリムロック。傲岸不遜で、何でも一人で出来ると言わんばかりの彼が、全力で頼っている。全ての望みを叶えるには、自分達が全ての困難に打ち勝つには、ティオの協力がなければならないのだと。ティオの力が必要なのだと。そこには諦めも、自己犠牲の精神も、ティオだけを除け者にするような考えも一切ない。
ティオの心が一転して歓喜に震える。今や本気で伴侶になりたいと思っている男から、生死のかかった瀬戸際で大切なものを「託された」のだ。これに応えられなければ、女ではない。故に彼女はただ一言、応えた。
『任せよ!』
ティオは宝物庫が角に掛けられた事を再度確認すると、そっと、グリムロックの掌に頭を擦り付けた。今できる、精一杯の愛情表現だ。グリムロックも応えるように、大きな指で優しく彼女を一撫でした。ティオは、仲間達にも視線を向ける。皆、諦めなど微塵も感じさせずに力強く頷いた。
「ストレイフとミュウには『あとで会おう』と伝えといてくれ」
『ふふ、委細承知じゃよ』
「頼むぞ。あとで褒美に思う存分、そのデカパイ揉んでやるからよ」
『ぬふぉっ⁉︎本当じゃな⁉︎ますますヤル気が出てきたのじゃ!」
グリムロックの軽すぎる伝言を受け取り、思わず笑い声を漏らしたティオは、更にセクハラ紛いの軽口により一層気合いを入れる。一拍の後、力強い風を纏って一気に飛び立った。上空目掛けて、加速することのみに集中し、飛行速度を上げていく。
『ぬふふふ♡ご主人様が妾の乳を…!ああん♡今からでも楽しみなのじゃ〜!』
今からご褒美の事を想像する度、ティオの体の調子が上がり飛行速度が増していく。「竜化」の派生として「痛覚変換」と共に取得した「情欲変換」の効果だ。前者は痛みが酷ければ酷い程、後者は性欲が増せば増す程、テンションと共に任意の能力が一時的に強化されるという酷い派生能力だ。両方とも、グリムロックと出会ってから数百年ぶりに手に入れたものだ。「壁を越えた」というより「扉を開いた」という表現の方が正しいだろう。ストレイフは泣いていい。
ティオは、自分の長い生を思い出しても、ここまでの速度は出したことが無いと思えるほどの速度で、文字通り、疾風と化して飛翔する。
「グゥルゥアアア!!!」
そして、竜の咆哮をも響かせながら、黒い風の塊と化したティオが垂直に飛び出し、巨大な砂嵐に囲まれながらも太陽の光が降り注ぐ天空を舞う。彼女は眼下のグリューエン大火山を、先程までの変態的なテンションなど微塵も感じさせない静かな眼差しで見つめた。そして、「信じている」というように一つ頷くと、踵を返してアンカジの方角へと飛翔していった。
数十分後、グリューエン大火山を中心に激震が走った。轟音というのも生温い、大気すら軋ませる大爆発が発生し、一時的に砂嵐さえ吹き飛した。露わになったグリューエン大火山はもうもう黒煙を噴き上げ、赤熱化した岩石を弾き飛ばし、火山雷のスパークを撒き散らしていた。
現存する歴史書の中で、ただの一度も記録されていないグリューエン大火山の大噴火。ある意味、貴重な歴史的瞬間は、どういう原理か数分後には復活した巨大な砂嵐のベールに包まれ、その偉容を隠してしまった。
「パパ…みんな…」
「…大丈夫だよミュウちゃん、グリムロック達ならきっと無事さ」
それでも、まるで世界が上げた悲鳴の如き轟音も、噴き上がる黒煙も、アンカジにいる人々は確かに目にした。
大切な人達の無事を祈っていたミュウは、不安そうに火山のある方を見つめた。ストレイフはそんな彼女の頭を優しく撫でて落ち着かせながらも、内心では仲間達の身を案じていた。
〜用語集〜
・マキシマル指揮官ファイヤーブラストグリムロック
グリムロックがグリューエン大火山のマグマの海に浸かった事で、星のエネルギーを操る重力魔法が派生した結果、火山の熱エネルギーを吸収してパワーアップした姿。体色は溶岩のような紅蓮に染まり、瞳の色はエメラルドグリーンとなった。通常時よりレーザーファイヤーの威力が増しており、さながら歩く火山とでも言うべき火力を誇る。
元ネタは『トランスフォーマージェネレーションズ』のビッグカメラ限定商品・ファイヤーブラストグリムロックと、『恐竜キング』のエレメントフュージョン。
・溶岩剣マグマトロン
刃の折れたスルトが、グリムロックの新たな力に呼応して再生・強化された新武器。片刃から両刃となった刀身は、マグマが冷え固まったようになっており、グリムロックが手に取ると赤く輝く。
名前はジェネレーションセレクト版ボルカニカスの武器が「マグマブレード」だった事から、『超生命体トランスフォーマー ビーストウォーズネオ』の破壊大帝マグマトロンに因んで命名した。
・狩紅羅
マグマトロンを振るい、火砕流の如く強烈な爆炎の斬撃を飛ばして敵を焼き尽くす。
元ネタは『ONE PIECE』のビッグ・マムの必殺技である「威国」と「皇帝剣・破々刃」。名前はティラノサウルスが「暴君トカゲ」を意味する事から、暴君として悪名名高いローマ皇帝カリグラに由来する。
・ニトロジャッカー
本作オリジナルの、ニトロゼウス専用の近接武器。敵からエネルギーを吸い取り、その力を纏うことができる。
元ネタは『仮面ライダーゼロワン』のサウザンドジャッカーと、コンセプトアートでのKSIボスのエレクトロウィップから。
・不死身のスタースクリーム
元ネタはG1スタースクリームが「不死のスパーク」という特異体質の持ち主である事に由来し、『仮面ライダーウィザード』のフェニックスファントムも参考に設定した。
作者としては、実写スタスクも近いうちに何らかの方法で復活しそうな気がするが、どうなるだろうか…。
感想、評価お待ちしてます。
本作での雫について現在検討中なのですが、読者の皆様はどんな展開が良いですか?
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光輝の被害者だし救済してあげて(泣)
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取り敢えず主要メンバーのヒロイン入り
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救済する必要なし。悲惨な末路にしろ