まだまだ稚拙な文の多い駄作ですが、お気に入り登録してくださる方が増えてくださり、大変嬉しいです。
今回も原作キャラに関するオリ設定があります。ご了承ください。
母の友人だった南雲菫に引き取られ、南雲家に養子入りした灘亮牙ことグリムロック。しかし彼はまだ、育ての親である灘夫妻の突然の死から立ち直れずにいた。
南雲家は自他ともに認めるオタク一家であった。漫画家である菫は勿論、一家の大黒柱である愁は自らゲーム会社を経営する優秀なクリエイターであり、そんな二人の間に生まれた一人息子のハジメも、両親の影響を受けてかオタク趣味を嗜み、まだ小学生で「趣味の合間に人生」という座右の銘を掲げる程であった。
菫が急逝した幼馴染の一人息子を養子に迎えたいといった時は、最初は愁も驚いた。だが、菫からその子の身に起きた悲劇、両親の葬式でただ一人悲痛な声を上げて慟哭する姿はとても放っておけないという彼女の言葉に、遂に彼は養子縁組を決意した。
元々心優しい人物であった二人だったが、人々を楽しませるという自分達の仕事にやりがいを持っていた故に、何とかして今なお苦しみ続ける少年を苦しみから救ってあげたかった。
ハジメは自分と同い年の少年が養子に来ることに、内心期待と不安でいっぱいだった。彼は趣味を優先することが多い故に当時から浮いた存在であり、友人と呼べる存在はいなかったため、出来るならその少年と友人になりたいと思った。だが、誰しもが同じ思考・趣味を持っているわけではないことも子どもながらに理解できていたため、打ち解けることが出来るだろうかとも考えていた。
そして遂にその少年、灘亮牙が菫に連れられて南雲家にやってきた。
最初に彼を見た時、ハジメはやや圧倒された。同世代の少年としては大柄な体格に、日本人としては珍しい銀髪の頭、自分とは正反対の外見で、少年漫画とかで主要キャラとして登場してそうだな、と思った。
だが同時に、その外見とは裏腹に生気が感じられないことが疑問に思えた。
亮牙は自分を引き取ってくれた南雲家には感謝していたものの、未だ立ち直る事が出来ずにいた。両親の命を理不尽に奪われた事で、かつて恐竜だった頃に妻と子ども達を失った記憶が再び蘇り、彼の心を苦しめていた。
あの時は子ども達の巣立ちを見てやれず、今度は両親に何も恩返し出来ないまま先立たれてしまった。
自分は家族になった者達を不幸にさせてしまう。今度はこの優しい家族を失うことになるのではないか。自分はもう、誰かと関わらない方がいいのではないか。
強い自責の念や自己嫌悪に駆られ、亮牙は南雲家から度々家出した。しかし行く宛もなかったため、河原や公園でたたずんでいる事が殆どだった。
一般家庭より忙しく、普段はあまり外へ出歩かない南雲夫妻だったが、この時だけは時間を割いて彼を探し、迎えに来た。ハジメもゲームなどそっちのけで、両親と共に彼を出迎えた。
耐え兼ねた亮牙は、自分の胸の内を南雲家に明かした。
「俺を引き取ってくれたのは感謝してるけど、俺と関わっているとあんた達まで父さんや母さんみたいに不幸にさせちまう。それが怖いんだ」
それを聞いた菫は亮牙を抱き締め、語りかけた。二人は貴方と出会えた事を心から喜んでいた、そんな事を言っちゃダメと。
家に戻ると、菫は自室から大事に保管していた手紙の山を出した。それは漫画家である彼女へのファンレターではなく、彼の育ての母・亮子からのものだった。菫の仕事の都合上中々会えなかったが、二人は手紙を通してずっと連絡を取り続けていたらしい。菫にそのうちの一枚、亮子達が亡くなる少し前に送られて来た手紙を渡され、亮牙は目を通した。
菫ちゃん、お元気ですか?私は今、とても幸せです。
お医者様から子どもを産めないと聞かされた時は悲しい気持ちで一杯でした。啓治さんにも申し訳なくて心が押しつぶされそうでした。
そんな中、貴方が養子縁組を勧めてくれたおかげで、亮牙というかけがえのない家族と出会う事が出来ました。最初こそ中々心を開いてくれなかったけど、今ではすっかり打ち解け、毎日が充実しています。
少しやんちゃなところもありますがとても優しい子で、私の書いた絵本をいつも楽しそうに読んでくれて、私が作った料理も好き嫌いなく美味しそうに食べてくれます。また、幼いながらもいつも家事を手伝ってくれて、私も忙しくて手が離せない時は本当に助かっています。
啓治さんもあの子がお仕事の話を嫌がる事なく真剣に聞いてくれるのがとても嬉しいみたいで、休日が取れるとよくキャンプやバーベキューに連れて行ってます。
何より嬉しいのが、私達をお父さん・お母さんと呼んでくれることです。親としてちゃんと育ててあげられているか不安になる時もありますが、あの子が笑顔でこう呼んでくれる事が何よりの励みになっています。
もし今度、お互いの家族の予定が合う日があれば、みんなで会って食事でもしませんか?貴方のところのハジメ君も確か亮牙と同い年なので、良い友達になれるかもしれないね。
最後に一言。私達夫婦とあの子が出会うきっかけをくれて、本当にありがとう。亮子より
涙が溢れた。血も繋がらないどころか本当は人間ですらない、碌に親孝行もできなかった俺を、あの二人はここまで愛してくれていたなんて。それがあまりにも嬉しくて涙が止まらなかった。
そんな彼に、今度は愁が優しく語りかけた。
「ご両親のことは本当に残念だったが、あれは君のせいではないんだ。怒りの矛先が向けられなくて辛いだろうが、それ以上自分を責めては駄目だ。それに俺達家族に遠慮しているようだけど、俺達は人を楽しませる仕事をしてきたんだ。今苦しんでいる君を放ってはおけないよ。遠慮する必要はない。君が来たことを迷惑だとは全く思ってないよ」
さらにハジメも語り掛けてきた。
「僕は自分の趣味に没頭してばかりだったから、君の助けになれるか分からないけど、困っていれば、出来る限り力になるよ。もう僕達は家族なんだからさ」
この世界で信頼できる人間は両親だけだと思っていた亮牙だったが、その日改めて評価が変わった。絶望に苛まれていた彼の心は、この優しい家族のお陰で救われた。
その日から彼の、灘亮牙としての新たな生活が始まった。
南雲一家と打ち解けたことで、亮牙はかつての明るさを取り戻していった。
自分を苦しみから救ってくれた彼らに少しでも恩返しがしたいと、亮子から学んだ家事スキルを駆使し、人気漫画家ゆえに家事との両立に困っていた菫に変わり、南雲家の家事の大半を引き受けるようになった。(あまりの家事スキルの高さに、菫が少し嫉妬した程だった。)
愁やハジメからは息抜きにと様々なサブカルチャーを勧められて、それらの知識も多少なりとも学び、特にアクションゲームやSF作品、アメコミなどを好むようになった。こうしたSF作品に夢中になる事で、彼は自分が前いた地球とこの地球は別次元の世界なのでは、と推測するようになった。
また、啓治から生前教わっていたアウトドアカルチャーに関する知識は、愁のゲーム製作の際の参考にもなった。
亮牙との生活は、ハジメにとっても大きな変化を与えた。
何よりも趣味を優先してきた彼だったが、そのおかげで友人と呼べる存在があまりいなかったことに寂しさも感じていた。だがこの新たな家族は自分の趣味に理解を示してくれ、自分が勧めたゲームやSF作品を楽しみ、いつしか親友となっていった。
また、蛇やヒキガエルなんかを素手で捕まえてきたりなどのやんちゃな一面を見せたり、趣味に没頭し過ぎて勉強に困った時は教えてくれたりなど、ハジメにとって彼は兄のようも感じられた。
そして何より、彼の持つ強さと優しさにも惹かれていた。
中学二年の時、学校からの帰り道で、亮牙が買いたいものがあるとコンビニに寄っていたのを外で待っていたら、何やら騒がしい声が聞こえたので見てみると、柄の悪そうな連中が男の子とお婆さんに絡んでいた。どうやら男の子が持っていたタコ焼きを、不良の一人とぶつかった際に服にベットリつけてしまったらしく、その事に激怒しているようだった。周囲には何人か人もいたが、皆怖がっているのか誰一人として止めに入ろうとしなかった。
ハジメ自身も怖くて当初は見ているだけだったが、お婆さんが怯えて縮こまりながらクリーニング代を払っても、不良達は満足せずに更に恫喝して財布まで取りあげようとしたのを見て、遂に耐えかねて飛び込んだ。亮牙ならこんな連中叩きのめせるかもしれないが、今この場に彼はいないし、自分は喧嘩など一度もした事がなかった。そこで彼は恥を忍んで公衆の面前で不良達に土下座をした。恥ずかしかったが、こんな事される方だって居た堪れなくなるはずだ。
不良達が怯んでいると、ハジメにとって救いの手が差し伸べられた。買い物を終えて戻ってきた亮牙が物凄い勢いで走ってきたと思ったら、不良の一人に飛び蹴りを喰らわせ、瞬く間に不良達を叩きのめし、彼らを近くのゴミ捨て場に放り捨てた。(男の子にタコ焼きをぶつけられた奴は服をボロボロにされた挙句、生ゴミ用のポリバケツに頭から放り込まれたのには、流石のハジメも同情を禁じ得なかったが。)
お婆さんと男の子がお礼を言って去っていった後、ハジメは自嘲気味に亮牙はやっぱり強いねと言ったが、当の本人はこう答えた。
「何言ってるんだ。あれはお前の方がよっぽど立派だよ。お前はあの時周囲の連中がビビって見て見ぬふりをしていた中、たった一人であの二人を守るために体張ったんだ。あの害虫共に自分自身もどんな目に遭わされるか分からないのにな。俺はどうもプライドが邪魔して、ああいう行動が出来ないから、腕っ節でしか解決出来ねえ…。自分を卑下するな。今日のお前は間違いなくヒーローだった。誇りに思え。助けた二人だってそう思ってるさ」
そう言われてハジメは照れ臭かったが、兄のような存在の亮牙が自分のした事を評価し褒めてくれたのには、内心嬉しくて仕方なかった。
なおそれまでの様子を、彼ら二人と同世代の少女が見ていたのは、また別の話である。
それから月日が流れて、ハジメと亮牙は高校生となった。
当初亮牙は中学を卒業したら就職しようと考えていたが、愁と菫から自分達に気を使う事はないと言われ、ハジメからも一緒に高校生活を楽しみたいと言われたこともあり、彼と同じ高校へと進学した。
入学式では、次席らしい二枚目の少年が新入生代表の挨拶を行った。首席は亮牙だったのだが、彼自身は進学させてくれた南雲家への感謝のつもりで入試一位を取ったので、学校から依頼された時は丁重に断った。(ちなみにハジメも亮牙に勉強を見てもらったおかげで、入試では上位だった。)
その少年が登壇すると、大勢の女子から黄色い歓声が上がった。亮牙もその少年を見たが、何処か歪な雰囲気を本能的に感じとった。一方のハジメは、その少年に亮牙とは違った主人公的なイメージを抱いたものの、すぐにどうでも良くなって居眠りを始めた。そんなハジメの姿を見て、とある少女が心躍らせていた。
それから一年後、亮牙とハジメの運命の歯車は、大きく回り始める事になる。
グリムロックが不良達をぶちのめした描写は、アメコミ『ケイオス・セオリー』で戦前のインパクターと幹部候補生達との乱闘のオマージュです。
次回で原作突入します。
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