4月になってから職場が新体制になったため、そのせいで残業も増えて中々執筆が進まず、ご心配をおかけしました。
ジュラシック・ワールド最新作の新情報やら、ダーク・サイバートロンの邦訳版発売など、ここ最近は怒涛の展開続きでした。
「ミュウ?本当にミュウなのか?」
「ミュウはミュウなの!お爺ちゃん、ただいまなの!」
先程まで嵐の如く暴れ回っていたスコーンは、一転して大人しくなったかと思うと、お爺ちゃんと呼びながら抱きついてきたミュウを抱えたまま、信じられないといった様子で問いかける。一方のミュウは、嬉しそうに頬擦りしながら、スコーンにギュ〜と抱きついている。
「ああっ、ミュウ!無事だったんだな!」
やがて、スコーンは目から涙を流しながら、ミュウを抱きしめ返した。彼はその逞しく大きな手で、ミュウの頭を優しく撫でた。
「人間どもに酷いことされなかったか⁉︎何処か具合が悪いところはないか⁉︎」
「んみゅ!まきしまるのみんなが助けてくれたの!ミュウは大丈夫なの!」
「ああ、良かった。本当に良かった…!」
もう二度と離れないというように固く抱きしめ合うミュウとスコーン。次第に、何処から現れたのか海人族達が集まってきた。どうやら騒ぎが収まったのを感じ取って来たようだが、皆が拐われた筈のミュウの姿を見て驚愕し、盛大に騒ぎ始めた。
「やっぱり、ミュウちゃんはお前のお孫さんだったようだな。スコーン」
「ん?…お前、まさかストレイフか?それにそこでぶっ倒れているのは、グリムロックじゃないか⁉︎」
そんな中、突如として懐かしい感じの声が聞こえ、ハッとなったスコーンが振り向くと、かつての友人と同じ雰囲気を醸し出す青年が立っていた。更にその近くでは、見間違えようもない、自分達の大将がぐったりした様子で横たわっていた。その側では、二人の美少女が心配そうに寄り添っている。
「おーいみんな〜!ちょいと手伝ってよ〜!」
「あっ!パパぁ〜!」
「ぱ、
そんな中、ハジメの呼び声が聞こえる。グリムロックとスコーンの戦いが終わった事で、彼はユエやスラッグと共に海へと投げ飛ばされた海人族達を回収し直すと、無事に港へと潜水艇を停泊させた。
上陸したハジメに気づいたミュウは、スコーンの腕から抜け出すと嬉しそうな笑みを浮かべながらハジメのもとへと駆け寄り、彼の首筋に抱きついた。ハジメも、幼い彼女を心配させてしまった負い目もあってか、苦笑しつつもその頭を優しく撫でた。そんな光景に、周囲の海人族達の視線が、困惑から次第に生暖かなものへと変わっていく。
「パ、パパ⁉︎ミュウ、一体どういう事だ⁉︎というかストレイフ、何故お前達まで⁉︎」
「落ち着けよスコーン。取り敢えず俺達はあの子の味方だ。ほら、これが証拠だ」
ミュウの衝撃的な発言に、スコーンは混乱する。攫われたミュウが無事に戻ってきたこと、生き別れたかつての仲間達との再会、そして誘拐犯と同じ種族である人間の少年を「パパ」と呼び尋常でないくらい懐いているなど、一度に多くの事が発生しているのだから、無理もないだろう。
ストレイフは宥めるようにそう告げると、ティオから預かっていた宝物庫から、ステータスプレートとイルワからの依頼書を取り出してスコーンへと掲示した。
「なっ⁉︎お前ら全員、金ランク⁉︎しかも、フューレン支部長の指名依頼⁉︎」
イルワの依頼書の他、事の経緯が書かれた手紙もストレイフは提出した。これはエリセンの町長と目の前の駐在兵士のトップに宛てられたものだったが、生憎町長も駐在騎士も全滅して人族は一人もいない。スコーンはそれを食い入るように読み進めるて、漸く落ち着きを取り戻した。
「…どうやらお前達が、あの子を助け出してくれたようだな。ありがとう」
「理解してくれたようで何よりだ。他にも色々聞きたいことはあるんだろうが、一先ず、ミュウちゃんを母親を会わせてやろうぜ?」
「もちろんだ。…ところで、ミュウは母親の状態を?」
「いや、まだ知らないが、問題ない。こっちには最高の薬もあるし、俺も医者だからな」
「そうか、分かった。じゃあ案内しよう。おいでミュウ、ママが待ってるぞ」
ストレイフの言葉に、スコーンは安堵した表情となると、優しくミュウにそう呼びかける。それを聞いて、ハジメに抱きついていたミュウはハッとなって、彼の手を懸命に引っ張り、早く早く!と急かした。
「パパ!みんな!お家に帰るの!ママが待ってるの!ママに会いたいの」
「そうだね…。早く、会いに行こう」
ミュウにとっては、約二ヶ月ぶりの我が家と家族なのだ。無理もない。道中も、マキシマル一行が構うので普段は笑っていたが、夜、寝る時などに、やはり母親が恋しくなるようで、そういう時は特に甘えん坊になっていた。
だがその前に、ストレイフが気づいたように声を上げた。
「おいグリムロック。いつまで寝っ転がってるんだよ?さっさと起きろよな」
「グ…ググゥ…」
いつもならこういう時に指示を出すグリムロックは。先程からずっと横になったままで、ちっとも人間態になろうとしなかった。傍ではシアとティオが心配そうに寄り添っている。
仲間の呼びかけに、グリムロックは弱々しく唸ったかと思うと、お馴染みの変形で徐々に縮小してゆき…
「お…おれ…ぐりむ…ろっく…」
現在の状態である幼児の姿になった。
しかし、この姿を初めて見たストレイフとティオ、ミュウは思わずキョトン?となる。そんな3人を尻目に、シアはぐったりした様子の恋人を優しく抱きかかえた。
「シ、シアよ。その可愛らしい稚児は何者じゃ?随分とご主人様にそっくりじゃが…」
「何者って、亮牙さんに決まってるじゃないですか!忘れちゃうなんてひどいですよ!」
「なっ!!?ご主人様!!?」
ティオが恐る恐る尋ねると、シアはプクッと頬を膨らませて、可愛らしくプンプンと怒りながら優しく彼の頭を撫でる。目の前の幼児のまさかの正体に、流石のティオも驚きを隠せない。
一方、ストレイフはと言うと…
「……………頭痛くなってきた」
「お、おいストレイフ⁉︎しっかりしろ!」
怒涛の展開に、思わず頭を抱えてぶっ倒れそうになり、慌てたスコーンに支えられるのであった。
それからマキシマル一行は、亮牙が幼児化した理由を説明した後、スコーンとミュウの案内に従って彼らの家に向かった。だがその道中は、かなり騒がしいものだった。
「シアばかりずるいのじゃ!妾にもご主人様を抱っこさせるのじゃ!」
「駄目です!ティオさんに抱っこさせたら絶対、亮牙さんにいやらしい事するに決まってますもん!」
「そそそそんな事ないのじゃ!今のご主人様がすご〜く愛らしくて、思う存分乳を吸わせてやりたいくらいじゃが、流石に稚児に破廉恥な真似はせん!そう言うお主こそ、ご主人様の恋人じゃからといって、いかがわしい事をしてはないじゃろうな⁉︎」
「ななな何言ってるんですか⁉︎確かに今の亮牙さんは普段見れない可愛さがあって、思わずおっぱい吸わせてあげたくなっちゃいますけど、これはあくまで母性本能を刺激されるだけですもん!エッチな事なんてする筈ないじゃないですか!」
小さくなった亮牙にメロメロになってしまったティオが、どちらが抱っこするかでシアとしつこく口論を続けているからだ。両者ともにヒートアップして、若干煩悩まみれな本音を漏らしているが、当の亮牙はそんな事つゆ知らず、シアの巨乳を枕がわりにすやすやと眠っている。
そんな二人の会話に一行が呆れながら進んでいくと、通りの先で騒ぎ声が聞こえだした。若い女の声と、数人の男女の声だ。
「レミア、落ち着くんだ!その足じゃ無理だ!」
「そうだよ、レミアちゃん。ミュウちゃんならスコーンさんがちゃんと連れてきてくれるから!」
「いやよ!ミュウが帰ってきたのでしょう⁉︎なら、私も行かないと!迎えに行ってあげないと!」
どうやら、家を飛び出そうとしている女性を、数人の男女が抑えているようである。おそらく、知り合いがミュウの帰還を母親に伝えたのだろう。
そのレミアと呼ばれた女性の必死な声が響くと、スコーンに抱っこされていたミュウが顔をパァア!と輝かせた。そして彼の腕から抜け出すと、玄関口で倒れ込んでいる二十代半ば程の女性に向かって、精一杯大きな声で呼びかけながら駆け出した。
「ママー!!!」
「ッ⁉︎ミュウ⁉︎ミュウ!」
ミュウは、ステテテテー!と勢いよく走り、玄関先で両足を揃えて投げ出し崩れ落ちている女性、母親であるレミアの胸元へ満面の笑顔で飛び込んだ。
もう二度と離れないというように固く抱きしめ合う母娘の姿に、周囲の人々が温かな眼差しを向けている。
レミアは、何度も何度もミュウに「ごめんなさい」と繰り返していた。それは、目を離してしまったことか、それとも迎えに行ってあげられなかったことか、あるいはその両方か。
娘が無事だった事に対する安堵と守れなかった事に対する不甲斐なさにポロポロと涙をこぼすレミアに、スコーンは心配そうな眼差しを向けながら近づくと、大きな手でその頭を優しく撫でた。
「落ち着け、レミア。お前は何も悪くない。ミュウは大丈夫だ」
「お父さん…」
「お爺ちゃんの言う通りなの。ミュウは、大丈夫なの」
優しくスコーンにそう諭され、レミアは涙で滲む瞳でミュウを見つめた。ミュウも、真っ直ぐレミアを見つめており、その瞳には確かに、母を気遣う気持ちが宿っていた。攫われる前は、人一倍甘えん坊で寂しがり屋だった娘が、自分の方が遥かに辛い思いをしたはずなのに、再会して直ぐに自分のことより母親に心を砕いている。
驚いて思わずマジマジとミュウを見つめるレミアに、ミュウは、ニッコリと笑うと、今度は自分からレミアを抱きしめた。体に、あるいは心に酷い傷でも負っているのではないかと眠れぬ夜を過ごしながら、自分は心配の余り心を病みかけていたというのに、娘はむしろ成長して帰って来たように見える。
その事実に、スコーンもレミアは、つい苦笑いをこぼした。肩の力が抜け、涙も止まり、その瞳には、ただただミュウへの愛おしさが宿っている。
今度はスコーンも加わり、再び抱きしめ合った三人だったが、突如、ミュウが悲鳴じみた声を上げた。
「ママ!あし!どうしたの!けがしたの⁉︎いたいの⁉︎」
「ああ…。お前を探しているときに、母さんはお前を攫った奴等に怪我させられんだ…」
どうやら、肩越しにレミアの足の状態に気がついたらしい。彼女のロングスカートから覗いている両足は、包帯でぐるぐる巻きにされており、痛々しい有様だった。
スコーンはそう呟くと、悔しそうに拳を握りしめた。ミュウを攫われたこともだが、レミアに歩けなくなる程の重傷を負わされた事も、彼や海人族達があれ程殺気立っていた理由の一つだったのだ。
ミュウは、レミアやスコーンとはぐれた際に攫われたと言っていたが、海人族側からすれば目撃者がいないなら誘拐とは断定できないはずであり、彼等がそう断言していたのは、レミアが実際に犯人と遭遇したからなのだ。
海で異変が起きていたためにスコーンはその対処の関係でおらず、レミアは一人ではぐれたミュウを探していたのだが、海岸の近くで砂浜の足跡を消している怪しげな男達を発見した。嫌な予感がしたものの、取り敢えず娘を知らないか尋ねようと近付いたところ、連中は「しまった」という表情をして、いきなり詠唱を始めたらしい。
レミアは、ミュウがいなくなったことに彼等が関与していると確信し、何とかミュウを取り返そうと、足跡の続いている方向へ走り出そうとした。
しかし、もう一人の男に殴りつけられ転倒し、そこへ追い打ちを掛けるように炎弾が放たれた。幸い、何とか上半身への直撃は避けたものの足に被弾し、そのまま衝撃で吹き飛ばされ海へと落ちた。レミアは、痛みと衝撃で気を失い、気が付けば帰りの遅い彼女達を捜索しに来たスコーンに助けられていたのだ。
一命は取り留めたものの、時間が経っていたこともあり、レミアの足は神経をやられていて、もう歩くことも今までのように泳ぐことも出来ない状態になってしまった。当然、娘を探しに行こうとしたレミアだが、そんな足では捜索など出来るはずもなかった。
当然、事情を聞かされて、スコーンは激怒した。幼い孫娘を誘拐され、大事な娘がそんな深傷を負わされたのだから、父親として怒るのも無理もない。彼は自警団や、古くからの友人達に孫娘の捜索を任せると、自身は怒りの矛先を町の人間達へと向けた。
長年、海人族達は海産物の提供などで、歪んだ差別主義を掲げる人間達と穏便に共存を測ってきた。自分もそれを尊重して特に口出しをしてこなかったが、今回の件は海人族に対する明らかな裏切り行為であった。スコーンは怒りに任せて、エリセンの人間達に娘達にした行いの報いを受けさせた。当然、王国の騎士などは応戦してきたが、所詮はただの雑魚に過ぎない。二度と海人族達に手出しなど出来ないよう徹底的に叩き潰し、僅かな生き残り共も容赦なくこのエリセンから追放したのであった。
そんな事情があり、立つ事もままならないレミアだったが、これ以上、娘と父親に心配ばかりかけられないと笑顔を見せて「大丈夫」と伝えようとした。しかしそれより早く、ミュウは、この世でもっとも頼りにしている者達に助けを求めた。
「パパぁ!みんなぁ!ママを助けて!ママの足が痛いの!」
「えっ⁉︎ミ、ミュウ?今、なんて…」
「パパ!はやくぅ!」
「あら?あらら?やっぱり、パパって言ったの?ミュウ、パパって?」
混乱し頭上に大量の?を浮かべるレミア。周囲の人々もザワザワと騒ぎ出した。
「レミアが、再婚?そんな、バカナ」
「レミアちゃんにも、ようやく次の春が来たのね!おめでたいわ!」
「ウソだろ?誰か、嘘だと言ってくれ…俺のレミアさんが…」
「パパ…だと⁉︎俺のことか⁉︎」
「変な事言うな!親分さんにぶち殺されるぞ!」
「おい、緊急集会だ!レミアさんとミュウちゃんを温かく見守る会のメンバー全員に通達しろ!こりゃあ、荒れるぞ!」
「ええい!鬱陶しいわ馬鹿ども!黙らんと一人ずつぶん殴るぞ!」
「「「「「は、はいぃぃぃ!!!」」」」」
どうやら、レミアとミュウは、かなり人気のある母娘のようだ。レミアはまだ二十代半ばと若く、今はかなりやつれてしまっているが、ミュウによく似た整った顔立ちをしている。復調すれば、おっとり系の美人として人目を惹くだろうことは容易く想像できるので、人気があるのも頷ける。厳つい風貌のスコーンの親族とはとても思えない。
刻一刻と大きくなる喧騒に、「行きたくないなぁ」と表情を引き攣らせるハジメ。ミュウが彼をパパと呼ぶようになった経緯を説明すれば、あくまでパパ代わり(内心は別としても)であって、決してレミアとの再婚を狙っているわけではないと分かってもらえるだろうと簡単に考えていたのだが、どうやら、誤解が物凄い勢いで加速しているようだ。
だが、ある意味僥倖かもしれないとハジメは考えた。ミュウは母親の元に残して、マキシマル一行は旅を続けなければならない。メルジーネ海底遺跡を攻略すれば、彼女とはお別れなのだ。故郷から遠く離れた地で、家族から無理やり引き離されたミュウの寄る辺がマキシマル一行だったわけだが、家族の元に戻れば、最初は悲しむかもしれないが時間が彼らへの思いを薄れさせるだろうと考えていた。周囲の人々の、レミア達母娘への関心の強さは、きっとその助けとなるはずだ。
「パパぁ!はやくぅ!ママをたすけて!」
ミュウの視線が、がっちりハジメを捉えているので、その視線をたどりレミアも周囲の人々もハジメの存在に気がついたようだ。ハジメは観念して、レミア達母娘へと歩み寄った。
「パパ、ママが…」
「大丈夫だよ、ミュウ。ちゃんと治る。だから、泣きそうな顔しないで」
「はいなの…」
泣きそうな表情で振り返るミュウの頭を優しく撫でながら、ハジメは視線をレミアに向けると、彼女はポカンとした表情で彼を見つめていた。無理もないだろうと思いつつも、ハジメの登場で益々騒ぎが大きくなったので、ハジメ達は取り敢えず、治療のためにも家の中に入ることにした。
「さあ上がってくれ。ほれレミア、しっかりせんか」
「ご、ごめん…お父さん」
スコーンはヒョイと全く重さを感じさせずにレミアを抱きかかえると、マキシマル一行を先導しながらレミアを家の中に運び入れた。
家の中に入ると、スコーンはリビングのソファーへレミアをそっと下ろした。そして、ソファーに座り一行(特にハジメ)のことを目をぱちくりさせながら見つめるレミアの前にかしずき、ストレイフを呼んだ。
「ストレイフ、どうだ?」
「ちょいと待ちな…すまんがお嬢さん、足に触れるよ。痛かったら言ってくれ」
「は、はい?えっと、どういう状況なのかしら?」
突然、攫われた娘が帰ってきたと思ったら、その娘がパパと慕う男が現れて、更に、父と顔見知りらしき男たちや美女・美少女が家の中に集まっているという状況に、レミアは困ったように眉を八の字にしている。
そうこうしているうちに、ストレイフの診察も終わり、レミアの足は神経を傷つけてはいるものの、彼の治療と神水できちんと治癒できることが伝えられた。
「けど、怪我したのがデリケートな場所だからな…。後遺症なく治療するには、三日ほど掛けてゆっくり、少しずつ癒していくのが良いな。それまで不便だろうが我慢してくれ」
「あらあら、まあまあ。もう、歩けないと思っていましたのに、何とお礼を言えばいいか…」
「構わねえよ。お前さんはミュウちゃんの母親で、スコーンの娘何だからな」
「えっと、そういえば、皆さんは、父やミュウとはどのような…?それに、その、どうしてミュウは、貴方のことをパパと…」
「俺も聞きたい事がある。どうしてお前達がこの世界にいる?何の目的で旅をしていたんだ?」
ストレイフが早速レミアの足を治療している間に、マキシマル一行は、事の経緯を二人に説明することにした。
このトータスに隠された真実、狂った神とディセプティコンの陰謀、それを食い止めるべく旅をしている事、その最中のフューレンでのミュウとの出会いと騒動、そしてパパと呼ぶようになった経緯など。
「…成程な。俺がこの世界に来て、この姿になったのは、そんな理由があったからか…」
「俺スラッグ、スコーンは何時ミュウのじいちゃんになったんだ?それにミュウが攫われた時に何かあったのか?」
「ああ、話せば長くなるがな…」
全てを聞き終えた後、スコーンは今度は自分の過去を語り始めた。
曰く、あの後故郷であるエジプトまで帰還し、そこでのんびり暮らしていたのだが、同じくスペースブリッジに呑み込まれて流れ着いたのが、今から60年前のトータスだったらしい。そこで海人族の姿となり、海人族達のもとで育った末に、幼馴染として育った海人の女性と夫婦になり、今から24年前に一人娘としてレミアを授かったらしい。それから更に後、レミアも結婚してミュウが生まれ、妻と娘婿との死別という悲劇もありながらも、娘や孫と三人で幸せに暮らしてきた。
だが、ちょうどミュウが攫われたその日、突如としてシャークティコン達が暴れ回ったり、新種の魔物が海で暴れているなどの異変が発生し、海人族達に被害が及ばないよう対処しており、二人の危機に気づいてやる事が出来なかった。帰ってきたら二人は戻っておらず、慌てて捜しに出れば娘が深傷を負わされていたのだ。
話し終えたスコーンは、ストレイフに治療されているレミアと共に、その場で深々と頭を下げ、涙ながらに何度も何度もお礼を繰り返した。
「かたじけない。攫われた孫を助けてくれただけでなく、元凶のクズどもに報復してくれた上に、娘の治療までしてくれて…。本当に、何と礼を言えばいいか…」
「父の言う通りです。娘とこうして再会できたのは、全て皆さんのおかげです。このご恩は一生かけてもお返しします。私達に出来ることでしたら、どんなことでも…」
気にするなとマキシマル一行は伝えたが、二人にしてもミュウの命の恩人に礼の一つもしないでは納得できない。そうこうしているうちに、ストレイフの治療もひと段落着いたので、今日の宿を探すからと暇を伝えると、二人はこれ幸いと、自分達の家を使って欲しいと訴えた。
「どうかせめて、これくらいはさせて下さい。幸い、家はゆとりがありますから、皆さんの分の部屋も空いています。エリセンに滞在中は、どうか遠慮なく。それに、その方がミュウも喜びます。ね?ミュウ?ハジメさん達が家にいてくれた方が嬉しいわよね?」
「?パパ、どこかに行くの?」
「おえぐいうほっふ…」
母の言葉に、近くで幼児化した亮牙と遊んでいたミュウはキョトンとした。と言っても、小さくなった彼を見て「ぐりみいが弟みたいになったの!」と喜びながら、彼の頬をムニムニしていたみたいで、亮牙自身はやっと解放された事にほっとしていた。
どうやらミュウの中で、ハジメ達が自分の家に滞在することは物理法則より当たり前のことらしい。なぜ、母がそんな事を聞くのかわからないと言った表情だ。
「家族の元に送り届けたら、少しずつ距離を取ろうかと思っていたんですが……」
「あらあら、うふふ。パパが、娘から距離を取るなんていけませんよ?」
「いや、それは説明したでしょう?僕達は…」
「いずれ、旅立たれることは承知しています。ですが、だからこそ、お別れの日までパパでいてあげて下さい。距離を取られた挙句、さようならでは、ね?」
「…まぁ、それもそうですが…」
「うふふ、別に、お別れの日までと言わず、ずっとパパでもいいのですよ? 先程、一生かけてと言ってしまいましたし…」
そんな事を言って、少し赤く染まった頬に片手を当てながら「うふふ♡」と笑みをこぼすレミア。おっとりした微笑みは、普通なら和むものなのだろうが、ユエがブリザードを発生させている。
「そういう冗談はやめてくださいよ。スコーンさんだって、会ったばかりの人間をそん「俺は構わんよ」えっ!!?」
「レミアも独り身になってもう5年だ。ミュウも父親がいない分、俺が代わりになってやろうと努めたが、やっぱり父親が必要だと思う事もあったからな。それに、ミュウの恩人で、ここまで気に入られているのならな」
「うふふ、だそうですよ、パパ?」
ブリザードが激しさを増す。冷たい空気に気が付いているのかいないのか分からないが、冗談とも本気とも付かない事をいうスコーンとレミア。「いい度胸だ、ゴラァ!」という視線を送るユエにも柳に風と受け流している。親子揃って大物なのかもしれない。
結局、マキシマル一行は、スコーン宅に世話になることになったのであった。
「さて、取り敢えず問題は、グリムロックの今後だな…」
「?おれ、ぐりむろっく?」
一応の落ち着きを見せた後、ストレイフがそう呟いた。当の亮牙本人は、シアに抱っこされながらキョトンとした様子だ。
「俺が調べた限り、コイツがこうなっちまったのは、火山のエネルギーを吸収し過ぎたのが原因だ。そのせいで、ブレインサーキットや他の回路がオーバーヒートを起こして、全体的にバグが発生しちまってるんだよ」
「俺スラッグ、じゃあさっきのスコーンとの喧嘩はどうやってたんだ?」
「恐らく、本能の赴くまま暴れていただけだろう。辛うじて記憶回路は無事みたいだが、ちゃんと俺達を理解できてるのか…」
「…ん、亮牙、このまま元に戻らない?」
「まあ、グリムロックの事だ。暫く経てば、回復すると思うが…」
明日からは、大迷宮攻略に向けて、しばらくの間、損壊、喪失した装備品の修繕・作成や、新たな神代魔法に対する試行錯誤を行わなければならない。だが、肝心のリーダーは以前の戦いで無茶をし過ぎたため、若干不安が残る。先程の戦いからして一見問題なさそうだが、今後はどうなる事か、一行は頭を悩ませた。
「その攻略とやら、俺も参加させてくれないか?」
「「スコーン?」」
「おれぐりむろっく?」
そこへ、スコーンが協力を申し出た。その言葉に、スラッグとストレイフ、ついでに亮牙も驚いた。
「良いのかスコーン?お前にはミュウちゃんやレミアさんがいるのに…」
「確かに二人のことは心配だが、ディセプティコン共なんてもっと危険な奴らまでこの世界に来てるってなら、黙ってるわけにはいかんからな。…それに、今のグリムロックは本調子じゃねえんだろ?俺の実力はお前らが一番よく知ってるし、こう見えても俺は海人族の男衆のまとめ役だ。戦力にはなるぜ」
「俺スラッグ、スコーンも加わるなら頼りになるな!」
「それに、そこの少年が、孫の恩人なんだろ?娘まで助けて貰ったんだ。それくらいの恩返しはさせてくれ」
そう呟くと、スコーンはミュウをあやしているハジメに優しく微笑んだ。情けは人の為ならずとはまさにこの事だろう。ハジメは照れ臭そうに苦笑した。
ふと、シアが気づいたようにスコーンに問いかけた。
「あ、あの!スコーンさん!ちょっとお聞きしたい事があるんですが…」
「ん?どうした?」
「そ、その、先程伺った話からすると、貴方とレミアさんは血の繋がった親子なんですよね?」
「ああ、この子は俺と血の繋がった娘だぞ。妻がお腹を痛めて産んでくれた子だ」
そう言いながらレミアの頭をくしゃくしゃと撫でるスコーン。レミアは「お父さん!お客様の前で子ども扱いしないで下さいよ!」と、若干不満げた。
それを聞いて、シアは嬉しそうに亮牙を抱き締めると、目から涙を溢した。それを見て、ユエと亮牙が心配そうに問いかける。
「ん、シア、どうしたの?」
「おれ、ぐりむろっく?」
「だ、大丈夫ですぅ。ただ、ずっと気になってた事がはっきりしたのでホッとしたんです。私、亮牙さんの赤ちゃんを、産んであげられるんですね!」
「ん、良かったね」
実はシア、亮牙と結婚を前提に交際を始めてからずっと、亮牙との間に子どもを産んであげられるのかを気にしていたのだ。愛し合っているとはいえ、種族が大きく異なる故に、ちゃんと彼との子を作る事ができるのか、ずっと不安だったのだ。亮牙は例え子どもが出来なくても責めたりしないと言ってくれていたが、やはり女性として、愛した男の子を産んであげたいという気持ちは強かった。
そして今回、レミアとミュウがスコーンの血の繋がった娘と孫だという事実を知り、ずっと抱えていた不安が解消されてホッとしたのだ。同じ女として、愛した男と子を成したいという気持ちはユエにも充分理解でき、優しく微笑みながら彼女の頭を撫でた。
「ぬふふふ♡なら妾もご主人様の子を産めると言う事なのじゃな!ならば話は早い!さあご主人様〜♡妾と一緒に寝ようぞ♡思う存分楽しませて上げるのじゃ!」
「おれぐりむろっく?」
「ってティオさん!さり気なく何しようとしてるんですか!!?亮牙さんは今子どもなんですよ!いい歳して何考えているんですか!!!」
「なっ!!?愛の前に歳など関係ないのじゃ!それにシアはいつも毎晩ご主人様に可愛がって貰っておるではないか!妾だって、ご主人様にあ〜んな事やこ〜んな事をしてもらいたいのじゃ!」
事情が飲み込めずキョトンとしたままの亮牙を尻目に、ティオが変態丸出しの発言をしながらよからぬ事をしようとし、それに気づいたシアが怒って猛反論する。
いつもながらのどうしようもない喧嘩が始まり、ハジメとユエは呆れながらも、今の亮牙はこの二人と一緒に寝かせるべきではないと強く感じた。スラッグは「良いぞ〜!やれ〜!」と呑気に囃し立て、ストレイフは頭を押さえてレミアに謝罪する。
「…ホントすみません。うちの姪とグリムロックの馬鹿が…」
「いえいえ。それにしてもお父さんのお友達さん、モテモテね」
「んみゅ!あのねママ、ぐりみぃね、普段はお爺ちゃんなみに大っきいの!だけどとっても甘えん坊さんで、いっつもシアお姉ちゃんのおっぱい飲んだりしてるの!」
「…成程、グリムロックが元の姿とやらに戻ったら、ちょ〜とオハナシしなけりゃならないようだな…!」
ミュウの悪気のないカミングアウトに、スコーンはより一層顔を真っ赤にして、盟友が回復した時のことを考える。より一層カオスな状況だ。
「……………もう熱が出る(泣)」
「ストレイフ、気をしっかり持って…」
レミアに頭を下げたまま、悲しげにそう呟くストレイフに、ハジメもユエも同情せずにはいられなかった。
〜用語集〜
・ダイナボット海陸戦士スコーン
身長:ロボットモード時87フィート(約26.5m)、人間時213cm
ビーストモード:全長170フィート(約51.8m)、体高59フィート(約17.9m)
ダイナボット最後の一人で、背中が帆ではなく無数の棘となったスピノサウルスに変形する。故郷は勿論、スピノサウルスの発掘地かつ『リベンジ』の戦場となったエジプト。
トータスへの転移は60年前で、現地の女性との間にレミアを授かった。即ち、ミュウの祖父。
役職はG1の密林戦士・スラージを参考にしたオリジナル。外見は他の海人族と異なり、真鯛やカサゴのように赤みがかって刺々しい。
・グリムロックの幼児化
元ネタは『モア・ザン・ミーツ・ジ・アイ』での、脳障害によるグリムロックの幼児退行から。
感想、評価お待ちしております。
本作での雫について現在検討中なのですが、読者の皆様はどんな展開が良いですか?
-
光輝の被害者だし救済してあげて(泣)
-
取り敢えず主要メンバーのヒロイン入り
-
救済する必要なし。悲惨な末路にしろ