グリムロックは宇宙最強   作:オルペウス

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まだまだ仕事が忙しく、中々執筆が追いつかなくて申し訳ありません(>人<;)
今夏には本章は終わらせるよう務めます。

今回は久々に短くなっております。


幻覚の中での戦い

 巨大クリオネ「悪食」から戦略的撤退を図ったマキシマル一行が落ちた場所は、巨大な球体状の空間だった。何十箇所にも穴が空いており、その全てから凄まじい勢いで海水が噴き出すか流れ込んでいて、まるで嵐のような滅茶苦茶な潮流となっていた。

 その激流に翻弄されながらも何とか近くにいる仲間の傍に行こうとするマキシマル一行だったが、潮流は容赦なく彼らを引き離そうとした。ユエの魔法や、水を操る能力を持つスコーンの水流操作が行われなければ、ランダム過ぎる流れに瞬く間に引き離されていただろう。本当なら潜水艇を取り出して乗り込みたいところなのだが、激流の中では無理があった。

 暫くすると、凄まじい激流にさらされ、八人は一緒に、一つの穴に吸い込まれるように流されていった。流されている間、頑丈な身体を持つダイナボット四人が身を呈して他の四人を庇い、岩壁に叩きつけられながらも耐え抜いた。

 そして、水流が弱まったところで上方に光が見えたのに気づいたスコーンが、水の鞭を生み出して七人を掴み一気に浮上した。そうして彼は真っ白な砂浜が広がる海岸線へと上陸を果たすと、仲間達を繋いでいた水の鞭を解いた

 但し、ここでトラブルが起きた。スコーンの水の鞭で引っ張られていた中で、一番身体が小さく軽くなっていた亮牙は、勢い余って高く投げ飛ばされ、やがて重力に従って墜落し、真下にいたティオの胸の谷間へとスポンっと挟まってしまった。

 

「んん〜!!?」

「あんっ♡ああんっ♡駄目なのじゃご主人様〜♡妾、まだ心の準備が〜♡ひゃあん♡そこは弱いのじゃ〜♡」

 

 顔がその爆乳に挟まれてしまい、苦しそうにもがく亮牙だったが、彼が抜け出そうと暴れる事で胸が刺激されるのか、ティオは発情した雌の顔となり、言葉とは反対に胸の谷間でしっかり彼を捕らえて離さなかった。

 当然、そんな馬鹿馬鹿しい状況が続く筈もなく…

 

「ティオさん!亮牙さんが嫌がってるでしょ!やめなさい!」

「ごほぉっ!!?」

「おいグリムロック!お前絶対わざとやってるだろ!!?そんなにお嬢を救いようのない変態にしたいのか!!?」

「おれぐりむろっく〜!!?」

 

 シアが顔を真っ赤にしてティオの顔面を張り倒し、ストレイフが乱暴に亮牙の足を掴んで彼女の谷間から引き摺り出した。張り倒されたティオはビクンビクンと痙攣しながら倒れ込み、亮牙は怒り狂うストレイフにグリグリを喰らい、痛そうな悲鳴をあげる。

 

「今更ながら、お前達も苦労してきたんだな…」

「アハハハ…」

「俺スラッグ、それ程でもない!」

「ん、スラッグ…褒めてない…」

 

 そんな光景を前に、スコーンが同情するような視線を向けながらそう呟き、ハジメはただ苦笑いするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暫くして喧嘩が終わると、エリセンを出る前にハジメから全員に贈られた小型版「宝物庫(極小さい家庭用倉庫程度)」から替えの衣服を取り出して着替えを済ませた一行は。真っ白な砂浜をシャクシャクと踏み鳴らしながらしばらく進み、密林に入った。鬱蒼と茂った木々や草を、皆何事もないようにバッサバッサと切り裂いていく。

 と、その時、ぴこぴこと歩いていた亮牙が突然立ち止まると、パァン!と両手を叩いた。

 彼が両手を開くと、掌には一匹の蜘蛛が握り潰されていた。掌にすっぽり収まる程度の大きさで、合計十二本の足をわしゃわしゃと動かし、紫の液体を滴らせている。この足は、通常のものと背中から生えているものがあって、両面どちらでもいけます!と言いたげな構造だったのだが、潰された今はよく分からなくなっていた。

 何れにせよ激しく気持ち悪いのに変わりはなく、亮牙は潰した蜘蛛を払った。この蜘蛛は魔石を持っておらず、普通にキモくて毒を持っているだけの蜘蛛だった。

 そのまま進んでいく一行が密林を抜けると、その先は岩石地帯となっており、夥しい数の帆船が半ば朽ちた状態で横たわっていた。そのどれもが、最低でも100mはありそうな帆船ばかりで、遠目に見える一際大きな船は300mくらいありそうだ。

 マキシマル一行は思わず足を止めてその一種異様な光景に見入ってしまったが、いつまでもそうしているわけにも行かず、気を取り直すと船の墓場へと足を踏み入れた。岩場の隙間を通り抜け、あるいは乗り越えて、時折、船の上も歩いて先へと進む。どの船も朽ちてはいるが、触っただけで崩壊するほどではなく、一体いつからあるのか判断が難しかった。

 墓場にある船は共通して激しい戦闘跡が残っており、戦艦であるのは明白だった。どの船も地球の戦艦(帆船)のように横腹に砲門が付いてはなかったが、スッパリ切断されたマストや焼け焦げた甲板、石化したロープや網などから、大砲がない代わりに魔法を使っていたようだ。

 そしてその推測は、マキシマル一行が船の墓場のちょうど中腹に来たあたりで事実であると証明された。

 

うぉおおおおおおおおおおおおおおお!

ワァアアアアアアアアアアアアアアア!

 

 突然、大勢の人間の雄叫びが聞こえたかと思うと、周囲の風景がぐにゃりと歪み始めた。驚いて足を止めた一行が何事かと周囲を見渡すが、そうしている間にも風景の歪みは一層激しくなり、気が付けば、マキシマル一行は大海原の上に浮かぶ船の甲板に立っていた。

 周囲に視線を巡らせばそこには船の墓場などなく、何百隻という帆船が二組に分かれて相対し、その上で武器を手に雄叫びを上げる人々の姿があった。

 流石の彼らも度肝を抜かれてしまい、何とか混乱しそうな精神を落ち着かせながら周囲の様子を見ることしかできない。そうこうしている内に大きな火花が上空に上がり、花火のように大きな音と共に弾けると、何百隻という船が一斉に進み出した。マキシマル一行が乗る船と相対している側の船団も花火を打ち上げると一斉に進み出し、一定の距離まで近づくと、そのまま体当たりでもする勢いで突貫しながら、両者とも魔法を撃ち合いだした。

 

ゴォオオオオオオオオ!

ドォガァアアン!

ドバァアアアア!

 

 轟音と共に火炎弾が飛び交い船体に穴を穿ち、巨大な竜巻がマストを狙って突き進み、海面が凍りついて航行を止め、着弾した灰色の球が即座に帆を石化させていく。

 マキシマル一行の乗る船の甲板にも炎弾が着弾し、盛大に燃え上がり始めた。船員が直ちに、魔法を使って海水を汲み上げ消火にかかる。

 戦場。文字通り、このおびただしい船団と人々は戦争をしているのだ。放たれる魔法に込められた殺意の風が、ぬるりと肌を撫でていく。その様子を呆然と見ていたマキシマル一行の背後から再び炎弾が飛来した。放っておけば彼らに直撃コースだ。

 ハジメは、なぜいきなり戦場に紛れ込んだのか?などと疑問で頭の中を埋め尽くしながらも、とにかく攻撃を受けた以上戦うまでとドンナーを抜き、炎弾を迎撃すべくレールガンを撃ち放った。炸裂音と共に一条の閃光となって飛翔した弾丸は、しかし、全く予想外なことに炎弾を迎撃するどころか直撃したにも関わらず、そのまますり抜けて空の彼方へと消えていってしまった。

 

「なに⁉︎」

「俺に任せろ!」

 

 もう何度目かわからない驚愕の声を上げるハジメだが、スコーンが前に出て、水の障壁を作り出した。ハジメとしては、確かに魔法の核を撃ち抜いたのにすり抜けた正体不明の攻撃など避けるに越したことはなかったのだが、スコーンがその場に留まろうとしたので、仕方なく「金剛」発動し炎弾に備える。女性陣の前には、残るダイナボット三人が立って防御の構えをとった。

 しかし、ハジメ達の心配は杞憂に終わり、スコーンの水の障壁はしっかり炎弾を防いだ。ハジメは訝しそうな表情となり、まさか射撃ミスか?と首を捻って、再度、飛来した炎弾に向かって発砲してみた。今度も、パーセプターを装備した彼の目には、確かに魔法の核を撃ち抜いたように見えたのだが、やはり弾丸は炎弾をすり抜けて明後日の方向へ飛んでいく。

 

「まさか…」

 

 それを見て、攻撃の有効性についてある程度の推測を立てたハジメは、別の攻撃方法を試してみることにした。飛来する炎弾を防ぐため、スコーンがもう一度水の障壁を張ろうとしたのを制止して、ハジメは、ドンナーに「風爪」を発動した。そして回避と同時に「風爪」で炎弾を斬り付けると、今度は炎弾をすり抜けることもなく真っ二つにすることが出来た。

 

「どうやら、ただの幻覚ってわけじゃないけど、現実というわけでもないようだ。実体のある攻撃は効かないけど、魔力を伴った攻撃は有効らしい…」

「つまり、これは現実じゃなく『直接作用できる幻覚』ってとこか。全く、本当にどうなってんだか…」

 

 ハジメの推測に、厄介な状況だとストレイフが溜息を吐くが、直ぐに一行は不穏な気配を感じとり身構える。周囲を見渡せば、雄叫びを上げながら、かなり近くまで迫ってきた相手の船団に攻撃する兵士達に紛れて、いつの間にかかなりの数の男達が暗く澱んだ目で、彼ら八人の方を見ていた。直後、男達はマキシマル一行に向かって一斉に襲いかかってきた。

 

「全ては神の御為にぃ!」

「エヒト様ぁ!万歳ぃ!」

「異教徒めぇ!我が神の為に死ねぇ!」

 

 そこにあったのは狂気だ。血走った眼に、唾液を撒き散らしながら絶叫を上げる口元。まともに見れたものではない。

 相対する船団は、明らかに何処かの国同士の戦争なのだろうと察することが出来るが、その理由も分かってしまった。これは宗教戦争なのだ。よく耳を澄ませば、相対する船団の兵士達からも同じような怒号と雄叫びが聞こえてくる。ただ、呼ぶ神の名が異なるだけだ。

 常人ならその狂気に気圧されそうだが、歴戦の戦士達には屁でもなかった。

 

刃裏双皇(バリゾウドン)!」

 

 今度はストレイフが飛び上がると、発狂した兵士達目掛けて攻撃を繰り出した。今回は、両腕をビーストモードの翼へと部分的に変化させ、純粋な魔力の塊を斬撃の如く解き放った。「魔力操作」の派生「魔力放射」と「魔力圧縮」によって放たれたそれは、通常であれば対象への物理的作用は余りなく魔力そのものを吹き飛ばすという効果をもつ。魔力が枯渇すれば人も魔物も動けなくなるので、ある意味、無傷での無力化という意味では使える技術であり、ストレイフは竜人族との暮らしで、組み手や暴れる仲間を制圧するために編み出していた技だ。

 過酷な戦場では生温い技だが、今回は役に立った。ストレイフの剛腕から放たれた魔力の斬撃は、一瞬で空を駆け抜けると、狂気を瞳に宿しカットラスを振り上げる兵士を上下真っ二つに両断した。それだけに留まらず、更に背後の兵士達にも直撃し、その体を一瞬で霧散させた。

 

「みんな!飛ぶよ!」

「おれ、ぐりむろっく!」

「ん!」

「はい!」

「了解じゃ!」

「おう!」

「分かった!スコーン、掴まれ!」

「すまん!」

 

 狭い甲板の上で四方から囲まれるのも面倒なので、ハジメはそう呼び掛けると「空力」を使い一気に飛び上がった。仲間達も一斉に飛び上がり、飛行能力のないスコーンをストレイフが抱え上げた。

 ハジメが先に物見台にいた兵士を蹴り落とし、四本あるマストの内の一本にある物見台に着地した。他の面々も同じマストに掴まったり、上空を飛んで船上を見下ろした。

 下方では狂気に彩られた兵士達が、血走った眼でマキシマル一行を見上げている。今の今まで敵国同士で殺意を向け合っていたというのに、どういうわけか一部の人間達が彼ら八人を標的にしているようだった。しかも、彼らを狙う場合に限って敵味方の区別なく襲ってくるのだ。その数も、まるで質の悪い病原菌に感染でもしているかのように、次々と増加していく。

 一瞬前まで、目の前の敵と相対していたというのに、突然、動きを止めるとグリンッ!と首を捻ってマキシマル一行を凝視し、直後に群がって来る光景は軽くホラーだ。

 

「俺スラッグ、反吐が出るくらい気持ち悪い空間だな…」

「同感…。けど、どうすれば抜け出せるんだ?」

「ん…どこかに脱出口がある、とか…?」

「けどユエさん、海のど真ん中ですよ?」

「ふむ、船のどれかが脱出口になっておるのでは…?」

「…お嬢、見た感じ、ざっと六百隻くらいあるぞ。一つ一つ探すのは無理だ。沈んだ船もあるだろうし、戦争が終わせた方が手っ取り早い」

「成る程、取り敢えず殲滅した方が手っ取り早いな」

「おれ、ぐりむろっく!」

 

 スコーンのその容赦ない意見に、シアに抱っこされた亮牙は賛成!と言わんばかりに叫ぶと、ちょうどマストのロープを使って振り子の要領で迫ってきた兵士数人を、魔力の塊である火炎弾を口から放出して霧散させた。更にハジメが撃ち放った紅色の弾丸を「魔力操作」の派生「遠隔操作」で誘導し、更に飛来した炎弾を迎撃していく。

 真下では、そこかしこで相手の船に乗り込み敵味方混じり合って殺し合いが行われていた。マキシマル一行が攻撃した場合と異なり、幻想同士の殺し合いでは、きっちり流血するらしい。

 甲板の上には、誰の物とも知れない臓物や欠損した手足、あるいは頭部が撒き散らされ、かなりスプラッタな状態になっていた。どいつもこいつも「神のため」だの「異教徒」だの「神罰」だのと戯言を連呼し、眼に狂気を宿して殺意を撒き散らしている。

 兵士達の鮮血が海風に乗って桜吹雪のように舞い散る中、マストの上にいるマキシマル一行にも、いや、むしろ彼らを狙って双方の兵士が執拗に襲いかかった。

 その度に、火炎弾や紅色の弾丸が縦横無尽に飛び回り、敵の尽くを撃ち抜いていく。更にはマキシマル一行の周囲を衛星のようにヒュンヒュンと飛び回って、攻性防御の役割を果たす魔力弾もあった。

 それでも、狂気の兵士達は怯むどころか気にする様子もなく、特攻を繰り返して来た。飛翔の魔法で何十人という兵士達が頭上から、そして、隣のマストやマストにかかる網を伝って兵士達が迫って来る。見れば、マキシマル一行の乗る船にやたらと攻撃が集中しており、ハジメのパーセプターには、ハジメ達に向かって手を掲げる術師達から最上級クラスの魔力の高まりが見えていた。

 ハジメが、何とか狙撃してやろうかと考えたその時、上空へと飛び上がったスラッグがダグザに大量の魔力を溜め込み、強力な技を解き放った。

 

「天満大自在天神!!!」

 

 直後、スラッグを中心に大量の落雷が一気に戦場に降り注いだ。

 落雷は、絨毯爆撃の如く大量に降り注がれ、その範囲は半径1kmに及んだ。そして、その雷が領域内の兵士達全員に降り注がれ、敵味方の区別なく全てが体を霧散させて消え去った。無論、殆どの戦艦も容赦なく破壊されていた。

 

「フハハハハ!俺スラッグ、大活躍!」

「「「「「「せめてやる前に何か言え(ですぅ/なのじゃ)!!!」」」」」」

「おれぐりむろっく!」

「俺スラッグ、お前達なら大丈夫だと思った!すまん!」

 

 得意げに高笑いするスラッグに、他の七人から文句が飛び交う。咄嗟にユエとティオが障壁を張ったので良かったが、下手したら黒焦げだ。対するスラッグは、仲間達なら大丈夫だと理解していたのでやや苦笑いしながら謝罪した。

 相変わらず破天荒かつ能天気なスラッグに仲間達は呆れながらも、新たな敵が迫ってきたのでそれに対処するため、再び戦闘に入った。

 物理攻撃が一切通用せず、どのような攻撃にも怯まない狂戦士の大群と船の上で戦わなければならないという状況は、普通なら相当厳しいものなのだろうが、ここにいるのは全員文字通りの怪物軍団。

 二国の大艦隊はその後、30分もしないうちにマキシマル一行に殲滅されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…うぅ、流石にしんどかったな」

「私も、同感ですぅ…」

 

 最後の兵士達を消滅させた直後、再び、周囲の景色がぐにゃりと歪み、気が付けばマキシマル一行は元の場所に戻っていた。

 やはり殲滅で正解だったかと、安堵の吐息を漏らした直後、ハジメとシアは疲れ切った表情でその場に座り込んだ。

 

「おれ、ぐりむろっく?」

「大丈夫ですよ亮牙さん。ちょっと疲れちゃって…」

「うん、僕もまだまだだね…」

 

 心配そうに亮牙が歩み寄り、二人の背をさする。シアとハジメは、背中に伝わる優しく温かい感触が心地よくて、次第に疲弊した精神も収まっていくのを感じた。

 亮牙が宝物庫から取り出したジュースを皆に配り、素直にコクコクと飲むと活力も戻ってきたようだ。その様子を見て、安心した表情でストレイフが口を開いた。

 

「まぁ、無理もねぇ。長年戦士だった俺達ですら反吐が出る光景だった。人間ってのはあそこまで盲信的で狂気的になれるもんなんだなって思ったよ。…とにかく、少し休憩しようぜ。みんな相当暴れたし回復すべきだ」

「…ん。あの光景…やっぱり、ここの廃船と関係ある?」

 

 ハジメの近くの岩場に腰掛け休んでいたユエが問いかける。ティオは、少し考えたあと推測を話した。

 

「おそらくじゃが、昔あった戦争を幻術か何かで再現したのじゃろうな。…まぁ、迷宮の挑戦者を襲うという改良は加えられているみたいじゃが…あるいは、これがこの迷宮におけるコンセプトなのかもしれぬな」

「コンセプト?なんだそりゃ?」

「おお、スコーン殿は知らなかったのぅ。グリューエン大火山もそうじゃったが、大迷宮にはそれぞれ「解放者」達が用意したコンセプトがあると思うのじゃ」

「お嬢の推測通りなら、ここのコンセプトは『狂った神がもたらすものの悲惨さを知れ』ってところか?」

「俺スラッグ、同感」

 

 ストレイフの推論に、ハジメとシアは先程までの光景を思い出して再び、疲れた表情となる。

 これまでの旅で荒事に慣れた筈の二人が精神を苛んだのは、兵士達の狂気だ。狂信者という言葉がぴったり当てはまる連中の言動が、思想が、そしてその果ての殺し合いが気持ち悪くて仕方なかったのだ。

 狂気の宿った瞳で体中から血を噴き出しながらも哄笑し続ける者や、死期を悟ったからか自らの心臓を抉り出し神に捧げようと天にかかげる者、マキシマル一行を殺すために弟ごと刺し貫こうとした兄と、それを誇らしげに笑う弟。戦争は狂気が満ちる場所なのだろうが、それにしても余りに凄惨だった。その全て「神の御為」とほざいていたのだから、尚更だ。

 それでも、いつまでもこうしているわけにはいかない。二人はそれぞれ、自分の頬を叩いて気を引き締め直すと立ち上がった。

 

「心配させてごめん皆。僕はもう大丈夫!」

「私も大丈夫ですぅ!」

「おれ、ぐりむろっく!」

 

 気を取り直した二人の姿に、亮牙達は安堵すると、一番遠くに鎮座する最大級の帆船へと歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 




感想、評価お待ちしてます。

本作での雫について現在検討中なのですが、読者の皆様はどんな展開が良いですか?

  • 光輝の被害者だし救済してあげて(泣)
  • 取り敢えず主要メンバーのヒロイン入り
  • 救済する必要なし。悲惨な末路にしろ
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