グリムロックは宇宙最強   作:オルペウス

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半年以上もかかってしまった本章ですが、恐らく今月末には終了出来そうです。本作を愛読していらっしゃる読者の皆様、ご迷惑をお掛けしました。

今回は、久々にキャラ崩壊及び、トランスフォーマー関連のオリキャラが登場します。
また今回は、若干エッチな描写がありますが、他の利用者の作品を参考に、R-18レベルじゃないもの(R-17.9レベル)になるよう気をつけました。ご了承下さい。


復活!グリムロック

 悪食。クリオネに似ているが、遥かに巨大な全長10mの巨体を誇る、魔物の祖先とされる怪物。太古の昔からトータスの海洋生態系の頂点捕食者として君臨し、その名に相応しくあらゆるものを喰らう貪欲さから、まさに「天災」とされた怪物だった。

 しかし今、その怪物は、それ以上の化け物に襲われていた。相手の体躯は遥かに巨大で全長50mは超えており、長い鞭のような複数の触手に、人間の背丈より長い牙を無数に生やした巨大な口を持っている。こちらの方が、より醜悪で悍ましい「災害」と呼べる存在だ。

 悪食は当然反撃するも、その化け物は意に介さず、蛸の墨のようなものを放出する。粘着性の強い液体によって、忽ち悪食の身体は身動きが取れなくなってしまう。そして遂に、その化け物は巨大な口を大きく開くと、まるでゼリー菓子のように一口でバクンッ、と悪食を飲み込んでしまった。

 しかし、悪食は精々おやつ程度にしかならず、まだまだ腹は膨れていないようだ。ふと化け物は、魔力とエネルゴンの反応を察知した。さながら血の匂いを嗅ぎ付けた鮫のように、新たな獲物を見つけたと悟った化け物は、その反応目掛けて一目散に泳ぎ去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海面を照らす淡い光が、天井にゆらゆらと波を作るその空間には、中央に神殿のような建造物があり、四本の巨大な支柱に支えられていた。支柱の間に壁はなく、吹き抜けになっている。神殿の中央の祭壇らしき場所には精緻で複雑な魔法陣が描かれていた。また、周囲を海水で満たされたその神殿からは、海面に浮かぶ通路が四方に伸びており、その先端は円形になっている。そして、その円形の足場にも魔法陣が描かれていた。

 その四つある魔法陣の内の一つが、にわかに輝き出す。そして、一瞬の爆発するような光のあと、そこにはマキシマル一行が立っていた。

 

「……ここは……あれは魔法陣?」

「まさか…攻略したの?」

「どうした?何か問題か?」

「いや、まさかもうクリアとは思わなくてさ…。他の迷宮に比べると少し簡単だった気が…」

「ん、最後にあのクリオネモドキくらい出てくると思ってた…」

 

 どうやら、メイル・メルジーネの住処に到着したようだとわかり、ハジメとユエは少し拍子抜けしたような表情になる。

 

「いや、十分大変な場所だったろ。最初の海底洞窟だって、潜水艇なんて持ってないトータスの奴等じゃ、クリアするまでずっと沢山の魔力を消費し続けるし、下手すりゃいつの間にか土左衛門だ。悪食は充分強敵だったし、物理攻撃が効かないからまた魔力頼りになる亡霊軍団。十分、高難易度だっての」

「むっ、そう言われればそうなんだろうけど…」

「ストレイフに同感だな。まして、トータス人の大半は信仰心が強過ぎるから、あんな反吐が出る狂気を見せられりゃあ余計、精神的にキツいさ…」

 

 ストレイフとスコーンの指摘は、要するにマキシマル一行が強すぎたという事だ。そこまで言われると、確かにグリューエン大火山も最後のディセプティコンの襲撃さえなければ無傷で攻略出来ていたなぁと納得するハジメとユエ。

 一方の亮牙はというと、先程の怒りに任せた戦いで体力を消費し過ぎて、再び幼児の姿に戻っていた。今はぐったりした様子でシアに抱きかかえられており、ティオが羨ましそうに見ていた。

 

「くぅううう〜!シアばかり良い思いをしおって〜!妾もご主人様を抱っこできれば、この乳房を思う存分堪能させ…ハァハァ…」

「俺スラッグ、発情してるとこ悪いけどティオ、置いてくぞ」

 

 ティオが艶かしく胸の谷間を強調しつつ、荒い息を吐きながら頬を染めてそんなことをのたまうティオを無視して、マキシマル一行は奥の祭壇へと向かった。もうシアもストレイフも、疲れてきたので全力でスルーしており、スラッグが呑気にそう呼び掛けている始末だ。

 祭壇に到着した一行は、全員で魔法陣へと足を踏み入れる。いつもの通り、脳内を精査され、記憶が読み取られた。魔法陣による記憶の確認により強制的に先程の光景を思い出し、皆が顔を青ざめさせたり、怒りを露わにしていた。

 ようやく記憶の確認が終わり、無事に全員攻略者と認められたようである。八人の脳内に新たな神代魔法が刻み込まれていった。

 

「ここでこの魔法か、大陸の端と端じゃん。解放者め」

「…見つけた、再生の力」

 

 ハジメが悪態をつく。それは、手に入れたメルジーネ海底遺跡の神代魔法が「再生魔法」だったからだ。

 思い出すのは、ハルツィナ樹海の大樹の下にあった石版の文言。先に進むには確かに「再生の力」が必要だと書かれていた。つまり、東の果てにある大迷宮を攻略するには、西の果てにまで行かなければならなかったということであり、最初にハルツィナ樹海に訪れた者にとっては途轍もなく面倒である。マキシマル一行は高速の移動手段を持っているからまだマシだったが。

 ハジメが解放者の嫌らしさに眉をしかめるとともに、何故かシアが頬を赤らめつつ胸元をチラチラ気にしていると、魔法陣の輝きが薄くなっていくと同時に、床から直方体がせり出てきた。小さめの祭壇のようだ。その祭壇は淡く輝いたかと思うと、次の瞬間には光が形をとり人型となった。どうやら、オスカー・オルクスと同じくメッセージを残したらしい。

 人型は次第に輪郭をはっきりとさせ、一人の女性となった。祭壇に腰掛ける彼女は、白いゆったりとしたワンピースのようなものを着ており、エメラルドグリーンの長い髪と扇状の耳を持っていた。どうやら解放者の一人メイル・メルジーネは海人族と関係のある女性だったようだ。

 彼女は、オスカーと同じく、自己紹介したのち解放者の真実を語った。おっとりした女性のようで、憂いを帯びつつも柔らかな雰囲気を纏っている。やがて、オスカーの告げたのと同じ語りを終えると、最後に言葉を紡いだ。

 

「…どうか、神に縋らないで。頼らないで。与えられる事に慣れないで。掴み取る為に足掻いて。己の意志で決めて、己の足で前へ進んで。どんな難題でも、答えは常に貴方の中にある。貴方の中にしかない。神が魅せる甘い答えに惑わされないで。自由な意志のもとにこそ、幸福はある。貴方に、幸福の雨が降り注ぐことを祈っています」

 

 そう締め括り、メイル・メルジーネは再び淡い光となって霧散した。直後、彼女が座っていた場所に小さな魔法陣が浮き出て輝き、その光が収まると、そこにはメルジーネの紋章が掘られたコインが置かれていた。

 

「証の数も四つですね。これで、きっと樹海の迷宮にも挑戦できます。父様達どうしてるでしょう~。早く亮牙さんとの仲を伝えたいですぅ〜」

 

 懐かしそうに故郷と家族に思いを馳せながら、シアは亮牙の頭を優しく撫でる。しかし、先程から彼女の様子がおかしい。何処か仕草が艶かしく感じられるというか、何か自分の肢体、特に胸を意識しているような感じだ。

 そんな事はつゆ知らず、ハジメが証のコインを宝物庫にしまった途端、神殿が鳴動を始めた。そして周囲の海水がいきなり水位を上げ始めた。

 

「うおっ⁉︎また強制排出ってかっ」

「全員、俺に掴まれ!」

「…んっ」

「俺スラッグ、此奴もあのゲリピー野郎と同じか!」

「ライセン大迷宮みたいなのは、もういやですよぉ~」

「水責めとは、やりおるのぉ」

「感心してる場合か!お嬢!」

「おれ、ぐりむろっく!」

 

 凄まじい勢いで増加する海水に、マキシマル一行は潜水艇を出して乗り込む暇もなく、あっという間に水没していく。咄嗟に、また別々に流されては敵わないと、ビーストモードに戻ったスコーンの身体に全員がしっかり掴まり、ダイナボット以外の四人は宝物庫から酸素ボンベを取り出して口に装着した。

 そしてその直後、天井部分がグリューエン大火山のショートカットのように開き、猛烈な勢いで海水が流れ込む。マキシマル一行も、その竪穴に流れ込んで、下から噴水に押し出されるように、猛烈な勢いで上方へと吹き飛ばされた。

 おそらくメルジーネ海底遺跡のショートカットなのだろうが、おっとりしていて優しいお姉さんといった雰囲気のメイル・メルジーネらしくない、滅茶苦茶乱暴なショートカットだった。しかも、強制的だった。意外に、過激な人なのかもしれない。

 押し上げられていくマキシマル一行は、やがて頭上が行き止まりになっていることに気が付く。しかし彼らがぶつかるといった瞬間、天井部分が再びスライドし、一行は勢いよく遺跡の外、広大な海中へと放り出された。この瞬間、マキシマル一行は、メイル・メルジーネは絶対、見た目に反して過激で大雑把な性格だと確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海中に放り出されると、直ぐ様スコーンは猛スピードで海面を目指す。その最中、ユエが空間魔法を応用した「界穿」を発動、ワープゲートの膜が出現し、スコーンはその中を突き抜ける。

 

ズバァアアアアアアッ!!!

 

 凄まじい勢いで海上へと到達したスコーン。直ぐにハジメが潜水艇を宝物庫から取り出すと、ハッチを開いて乗り込んでいく。続いてユエ、ティオ、シアと亮牙、ストレイフ、スラッグが乗り込み、最後にスコーンが乗り込むため人間態となろうとした時だ。

 

「ッ!!?何か来るぞ!」

 

 スコーンは水の流れから、何かが近づいてくる事を敏感に察知し、仲間達にそう叫ぶ。海中を見ると、小魚の大群が、まるで何かから逃げるように大慌てで泳ぎ去っていく。

 魚群が逃げてきた方角を一行が確認すると、何か巨大な物体が海中を突き進んでくるのが見えた。雰囲気からして生物なのには変わりないが、鯨にしては大き過ぎる。

 やがて、海面を盛り上げながら、何かが浮上した。何十mはあろうかという長さの触手だ。悪食のゼリー状の触手とは違い、イカやタコに似たフォルムだが、吸盤の代わりにマジックテープのように無数の棘が生えており、先端は銛のように鋭く尖っている。

 そんな悍ましいフォルムの触手が計6本、まるでオルクスのヒュドラのようにマキシマル達へと向けられると、次の瞬間、その先端から何かが放出された。

 

「ッ⁉︎不味い!」

 

 咄嗟にスコーンは潜水艇に体当たりして、仲間達がその物体に直撃するのを防いだ。だが、代わりに彼は逃げ遅れ、触手から放たれたそれが直撃してしまった。

 

「グッ、なんだこりゃ…⁉︎身動きが取れん…!」

 

 スコーンに纏わりついたのは、一見すると墨のようだった。しかしイカやタコのそれとは異なり、まるでトリモチのように粘着力が強い。それが身体に纏わり付き、パーツの隙間にまで侵食した結果、変形するどころか身動きすら思うようにできない始末だ。

 すると巨大な触手の一本が、身動きが取れなくなったスコーンに絡みつくと、まるで蛇が獲物を仕留めるかのように締め上げ始めた。メキメキと凄まじい威力で締め上げられ、スコーンが苦しげな悲鳴を上げる。

 

「させるか!」

 

 だが、猛スピードで突き進む潜水艇から、無数の魚雷が射出された。一度に射出された魚雷の数は12発。普通に考えれば十分な破壊力だが、ハジメは明らかに敵の強さがヤバいものだと勘付いていた。本来なら手を緩めず潜水艇に搭載されている魚雷の全てを連続して射出したかったが、スコーンが捕まっている今、下手に攻撃は出来ない。

 

ドォウ!ドォウ!ドォウ!ドォウ!

 

「グォオオオオオオッ!!?」

 

 そんなくぐもった衝撃音が鳴り響き、狙い違わず正体不明の怪物に直撃した。流石の怪物もこれには怯んだらしく、触手で締め上げていたスコーンを放り投げて解放する。

 同時にこの爆発により、害虫に紛れていた怪物の姿が潜水艇の面々に出現した。全長は50m以上はある巨体で、外見は恐竜時代より遥か昔の海を支配した古代魚・ダンクルオステウスに似ている。だが、本来胸鰭が生えている箇所からは、鰭の代わりに6本の長大な触手が生えており、腹部には蟹に似た一対の節足が生えている。人間の背丈ほどもある長い牙を備えた口のある頭部には、ちょうど額あたりに、マキシマル一行には見慣れた紋章が、さながら刺青の如く刻まれていた。それを見て、ストレイフが悪態をつく。

 

「此奴、ディセプティコンの生物兵器か!!?」

 

 そう、現れた怪物の正体はディセプティコンの新たな生物兵器、サルベージ兵オクトパンチだ!

 先程の魚雷の攻撃を受け、オクトパンチはその琥珀色の不気味な目で潜水艇を睨みつけると、怒りの雄叫びを上げた。

 

「ゴァアアアアアアアアッ!!!」

 

 水中だというのに、凄まじい唸り声が船内にも伝わってくる。思わず耳を押さえる一行だが、ハジメは敏感に、その声に魔力が宿っている事を感知した。何かヤバい攻撃が来る、ハジメの予感は的中した。

 

「ッ⁉︎な、流れが強くなってる!」

 

 突如として、先程まで穏やかだった海流が、まるで意志を持ったかのように強くなる。そしてそのまま、オクトパンチを中心に、巨大な渦が生み出されたのだ。ハジメは舵を切って脱出しようとするも、海流の方が強過ぎて、飲み込まれないようにするのがやっとだ。

 更に厄介な事に、招かれざる客達までもがやってきた。シャークティコン達だ。攻略前の一戦の復讐に来たのか、単にオクトパンチのおこぼれに預かろうと目論んだのか定かではないが、まるで血の匂いに引き寄せられた鮫の大群のようだ。

 ハジメは魚雷を発射して応戦するが、如何せん数が多過ぎるし、何より渦の中心に飲み込まれないよう潜水艇の制御で手一杯だ。次第にその攻撃を掻い潜ってきた何体かのシャークティコンが、潜水艇の上部に登ってくると、ずんぐりむっくりしたロボットモードに変形、尾から変形したモーニングスターで船体を殴打し始めた。

 

「畜生!ユエちゃん、上空と船上に『界穿』を頼む!俺とスラッグで食い止める!」

「ん!任せて!」

「俺スラッグ、任せろ!」

「妾も加勢するのじゃ!」

 

 ストレイフがそう提案し、すかさずユエが『界穿』を上空と船上に発動し、それぞれにストレイフとティオ、スラッグが飛び込む。正史に比べて魔道士としてのスキルが上がり、『界穿』も素早く発動出来るようになっていたユエだが、流石に連発はきつかったらしく、魔力枯渇に陥って崩れ落ちかけた。咄嗟に傍のシアが支え、魔晶石から魔力を取り出し補充していく。

 一方、上空100mに飛び出したストレイフとティオはすかさずビーストモードと竜化を施して、渦の中心にいるオクトパンチや集まってくるシャークティコンを攻撃する。だが、オクトパンチは鞭のように6本の触手をしならせては殴りかかり、粘着力の強い墨を絶え間なく放出してくるため、思うようにダメージを与えられない。おまけにシャークティコンはどんどん湧き出ては潜水艇に群がってくる。船上に出たスラッグがダグザを振り回して応戦するが、どれだけ殴り倒しても次々と海中から這い出てくる始末だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ!やっぱりディセプティコンどもの仕業だったか…」

 

 一方、オクトパンチの墨に拘束されて身動きの出来なくなったスコーン。彼自身はなんとか渦に飲まれずに済んだが、元凶であるディセプティコンの生物兵器が仲間達を追い詰める光景を目にし、悪態をついた。

 海に住む、海人族達とは異なる種族の友人達から、最近得体の知れない化け物が暴れ回り、魚や鯨、果ては魔物までも食い尽くさん勢いで捕食しているという話は聞いていた。自分でも探してみて見つけられなかったが、今回襲ってきた化け物を見て確信した。奴が犯人で間違いないと。

 早く加勢に行きたいが、身体に纏わり付いた墨のせいで身動きが取れない上、シャークティコン達も大量に湧き出ている。此方も()()が必要だ。

 

「すまん。娘と孫の恩人達の危機なんだ。再びお前達の力を貸してくれ」

 

 スコーンはそう呟くと、海中に響くように低く唸った。さながら、鯨が仲間に助けを呼ぶような声だ。

 彼は賭けた。この世界で出来た、新たな友人達の加勢を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方シアは、魔力の枯渇したユエの介抱を終えると、何やら集中するかのように目を閉じて、次の瞬間には目を見開いた。

 

(やっぱり、あれを倒すには、私が亮牙さんを元に戻さないと!)

 

 固有魔法「未来視」の派生「仮定未来」で見た光景。それは最愛の恋人が、今の幼児の姿から元の青年の姿に戻り、今自分達が戦っている怪物を討つものだった。そして、彼を元に戻すには、()()()()()()()()()が必要である事を。

 シアは意を決して、操縦に集中するハジメと、魔力を回復中のユエに話しかけた。

 

「ハジメさん!ユエさん!勝利の法則が見えました!私と亮牙さんに任せてください!」

「本当⁉︎けど今の亮牙じゃ、流石に無理過ぎるでしょ⁉︎」

「大丈夫です!私達を信じてください!皆さんにもあと少しだけ持ち堪えるよう伝えてください!」

「ん、シアがそこまで言うなら、信じる。でも、どうするの?」

「さっき手に入れた私の新しい力で、亮牙さんを元に戻します。…ただ、ハジメさんに頼みがあるんですけど…」

「頼みって何⁉︎」

「わ…私がその力を使ってる時は、こっちを見ないでくださいね////」

「?う、うん…」

 

 恥ずかしそうに顔を赤く染めてそう告げるシアに、ハジメは一瞬キョトンとしつつもそう答え、外で戦う仲間達にあと少しだけ耐えるよう念話を飛ばした。

 一方シアは、船室の隅で未だぐったりしている亮牙の傍に歩み寄ると、彼を抱きかかえて近くの座席に座った。亮牙は疲弊した状態ながらも、心配そうな表情で彼女を見つめる。

 それに対してシアは────

 

シュルッ

プルン♡

 

「おれぐりむろっく!!?」

 

 なんと、チューブトップに似た服をずり下げ、自慢の巨乳を亮牙の眼前に曝け出した。

 突然の事に顔を真っ赤にして驚く亮牙だったが、シアは聖母の如く優しく微笑みながら語りかけた。

 

「怖がらないで、亮牙さん。私を信じて、私のおっぱい吸ってみてください////」

 

 若干恥ずかしそうにしながらも、まるで実の母親のように優しく自分の乳房を亮牙の口元に近づけるシア。色香はあるものの、いやらしさなどは感じられない、慈愛に満ちた雰囲気だ。

 最初は動揺していた亮牙だったが、やがてくんくんと鼻を鳴らした後、シアの乳房にはむっと吸い付いた。思わず「んっ…////」と息を漏らすシアだが、直ぐに落ち着きを取り戻すと、そのまま授乳を続けた。

 すると驚いた事に、彼女の乳房から甘い液体が溢れ出し、彼の口内に流れ込む。びっくりする亮牙だったが、あまりに甘美なこの液体に直ぐに夢中になり、赤ん坊のように吸い続ける。これまで幼児化してからオーアしか口にしていなかったのが、嘘のような光景だ。

 すると、徐々に亮牙の体内に変化が起き始めた。グリューエン大火山での戦いからかなりダメージを受けていた彼の内部器官が、シアの母乳を飲み続けると共に、まるで嘘のように回復し始めたのだ。

 これこそシアが再生魔法を取得した事で新たに獲得した能力「癒乳」である。本来ならまだ妊娠していない彼女から母乳が出る筈ないのだが、幼児化してしまった亮牙に母性本能を刺激され続けた中、再生魔法の取得と共にプロラクチンやオキシトシンといったホルモンが活発に分泌された結果、治癒能力を秘めた母乳を分泌できるようになったのだ。

 やがて満腹になった亮牙は「けぷっ」と息を鳴らすと、そのままシアの膝から降りるが、直ぐに変化が起きた。身体が幼児のものから徐々に大きく逞しい青年のものと姿が変わってゆく。

 

「ふぅ〜────

 

 

 

 

 

────戻ったー!!!

 

 

 

 

 

 そして遂に、我らが主人公・灘亮牙が完全復活を遂げたのである!

 

「よ…良かったですぅ〜」

 

 恋人が元に戻った姿を確認し、安堵するシア。だが、今回新たに得た力は、流石にかなり体力・魔力を消耗するものだったらしい。彼女は曝け出したままの胸元を隠す間も無く、そのまま座席から崩れ落ちそうになる。

 だがそれに気づいた亮牙が、優しくシアを抱きかかえると、彼女のチューブトップをずり上げて服装を直し、自分の上着を羽織らせた。

 

「ありがとなシア。俺のために頑張ってくれて」

「えへへ、亮牙さんのお役に立てて何よりですぅ…」

「ゆっくり休んどけ。直ぐに片付けてくる」

 

 そう告げた亮牙はシアの頭を優しく撫でると、背負っているポーチから神水の入った瓶をシアに手渡し、自身は愛刀・マグマトロンを片手に、戦場へと突入する準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、外で戦うストレイフ、ティオ、スラッグは苦戦を強いられていた。

 有利な空中から攻撃を繰り出すティオとストレイフだったが、オクトパンチは100m近い6本の触手を鞭のようにしならせ、更に粘着力の強い墨を絶え間なく吐き散らしてくるため、それらを必死に避け続けなければならない。もしどちらかが直撃すれば、忽ち渦に飲まれるかシャークティコンの餌食になって海の藻屑だ。

 そのシャークティコン達も、潜水艇に大量に襲来するのを、船上に出たスラッグと操縦するハジメが必死に撃退するが、あまりに数が多過ぎる。おまけに陸場が船上しかないため、スラッグも本来の姿に戻ることが出来ない。

 そうした戦況の中、遂にティオが一本の触手に捕まり、凄まじい怪力で締め上げられる。

 

「ぐ…ぬぅ…!」

「「お嬢!」」

 

 苦しげな声を上げるティオに、ストレイフが駆けつけようとするも、他の触手に妨害されて近づくことが出来ない。オクトパンチは巨大な口を開くと、ティオを締め上げた触手を口元へと近づけ、彼女を捕食しようとした。

 

大亡葬(ダイナソウ)!!!」

 

ズバァァァァンッ!!!

 

「グギャアアアアッ!!?」

 

 だが次の瞬間、光の膜が現れたかと思うと、何かが回転しながら飛び出してきて、ティオを締め上げる触手を叩き斬った。激痛に悶えるオクトパンチの悲鳴が響き渡り、触手から解放されたティオは力尽きて竜化を解いてしまい、そのまま墜落しそうになる。

 だが、そうはならなかった。光の膜から出てきたその人物が、元の爆乳美女へと戻ったティオを抱えて、落下を防いだ。無論、その正体が亮牙だ。

 

「ご、ご主人様⁉︎元に戻れたのか⁉︎」

「おう。心配かけたな。それともまだ奴との触手プレイを続けたかったか?」

 

 驚愕するティオに、亮牙は軽口を叩きながらそう答えると、彼女を左腕で抱きかかえ、目の前の敵を睨む。対するオクトパンチは、触手の一本を斬り落とした亮牙に怒りの矛先を向け、残る触手の先端で貫こうとする。

 

噴龍水槍(アクアジャベリン)!!!」

 

 だが、突如として亮牙達の後方から出現した水の槍が、オクトパンチの触手の攻撃を相殺する。スコーンだ。どうやら、オクトパンチの墨から解放されたらしい。

 そのまま泳ぎ近づいてくるスコーンの頭上に亮牙は降り立つと、軽く彼の頭を小突いた。

 

「遅えぞ、スコーン」

「すまん、意外と奴の墨に手こずってな…。だが、()()を呼んできたぞ」

()()?」

 

 その一言に亮牙が首を傾げていると、此方に近づいてきたシャークティコンが、海中から飛び出した何かに吹き飛ばされた。何事かと海面を覗くと、シャークティコン達とは違う何か大きな生き物が、大量に海中を泳いでいる。

 

「「「「「い〜と〜まきまき、い〜と〜まきまき、引い〜て引い〜て、とんとんとん♫」」」」」

「ハァッ!!?」

 

 現れたのは、マンタそっくりのエイだった。しかも何故か言葉を喋っている。そんなエイ達が、シャークティコン達よりも大量に、何百匹もやってきたのだ。

 エイ達はそのまま、オクトパンチに体当たりをぶちかましたり、翼のような長い鰭でシャークティコン達を切り裂いて返り討ちにしていく。先程まで優勢だったオクトパンチもシャークティコン達も、完全な不意打ちを受けて怯み、押しやられていく。

 予想外のエイ達の加勢に、亮牙は思わず驚愕の声を漏らす。仲間たちも目を丸くしているし、潜水艇にいるシアは「あの時のエイさん!!?」と驚愕に目を見開いていた。

 

「スコーン…援軍って此奴らか?」

「ああ。俺の友人である、回遊の民・デプスチャージ族だ。ミュウが攫われた時も捜索を手伝ってくれた、頼もしい奴らだ」

 

 どうやらこのエイ達・デプスチャージ族は、スコーンの友人らしい。前にシアがライセン攻略後に喋るエイを見たと言っていた時は見間違いだと思っていたが、どうやらスコーンに頼まれてミュウを捜索していた個体だったようだ。

 マキシマル一行が驚愕と関心を抱いているうちに、デプスチャージ族達は、シャークティコン軍団の大半を撃退していった。オクトパンチも、小柄過ぎる彼等の攻撃に翻弄されて疲弊し、一行を飲み込まんとしていた大渦も弱まってきている。その勝機を見逃すマキシマル一行ではない。

 

「ティオ、もう一回竜化出来るか?」

「うむ。なんとか出来そうじゃ」

「スコーンはあのタコ野郎の動きを封じてくれ」

「おう、任せろ!」

 

 亮牙の指示に、ティオは再び竜化すると、彼を背に乗せてスコーンの頭上から飛び立った。一方スコーンは、オクトパンチに向き直り、先程のお返しと言わんばかりに攻撃に転じた。

 

龍河鞭攻(フラッドストラップ)!!!」

 

ザバァアアアアッ!!!

 

「グォオオオオオッ!!?」

 

 スコーンが口から吐き出した大量の水が、まるで意志を持ったかのように、巨大な縄となってオクトパンチの身体に絡みつく。オクトパンチは逃れようともがくが、水棲生物であるこの怪物の力をもってしても、ダイナボットの繰り出す技から逃れることは出来なかった。

 触手までもが動かすことが出来ず、苦しみ悶えるオクトパンチがふと上空を見上げると、何かが此方目掛けて凄まじいスピードで墜落してきた。

 落ちてきたのは、上空高く舞い上がったティオの背から飛び降りた亮牙だ。彼はマグマトロンを逆手に持ち直し、グリューエン大火山で手に入れた熱エネルギーを刀身へと宿していく。

 

「丸焼きにしてやるよ────

 

 

 

 

 

────豪炎大剣(フレアソード)!!!

 

グサァアアアアアッ!!!

 

「ゴガァアアアアア〜ッ!!?」

 

 強烈な炎の刃で、亮牙はオクトパンチの脳天を貫いた。オクトパンチは断末魔の悲鳴を上げるが、刀身から注がれた凄まじい熱エネルギーは容赦なくこの怪物の脳内を焼き尽くしていく。

 

ゴォバァアアアアア!!!

 

 凄まじい衝撃が迸り、オクトパンチの頭部が風船のように爆発した。海面はその余波で荒れ狂い、飛び散った肉片が雨のように降り注がれる。

 荒れる海の中で、衝撃をやり過ごした潜水艇は、オクトパンチのいた方へと近づいていくと、頭を吹き飛ばされたオクトパンチの無残な亡骸が目に入った。やがてスコーンの水の鞭が解け、巨大な亡骸はそのままゆっくりと海中へと沈んでいく。先程までマキシマル一行やデプスチャージ族と争っていたシャークティコン達は、戦闘を放棄するとオクトパンチの亡骸に群がって、そのままバクバクと屍肉を食べ始めた。こうしてディセプティコンの生物兵器は、シャークティコンに貪られながら海底へと姿を消していった。

 戦いが終わった事を悟った一行は、刻一刻と静まっていく海面に油断なく視線を巡らし、敵にとどめを刺した亮牙を探す。そして遂に、海中から顔を出したスコーンの頭上に乗りながらも、マグマトロンを握った右手を掲げる彼の姿を確認する。

 

「「「「「エ〜イ、エ〜イ、オ〜!!!」」」」」

「「「「「「「「オー!!!」」」」」」」」

 

 その姿に呼応するかの如く、一体も欠ける事なく戦い抜いたデプスチャージ族が勝鬨を上げる。その声はこの大海原に大きく響き渡り、マキシマル一行も負けじと勝鬨を上げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




〜用語集〜
・サルベージ兵オクトパンチ
 ショックウェーブが変成魔法により生み出した生物兵器の一つ。全長はクイックストライクやジェットストームより遥かに巨大な90mで、外見は古代魚ダンクルオステウスに似ているが、胸鰭の代わりに全長と同じ長さの触手が6本生えている。
 貪欲な捕食動物で、凄まじい食欲に任せて何にでも襲いかかり捕食してしまう。悪食ですらその魔の手にかかり餌食となった。
 武器は無数の乱杭歯が並んだ巨大な顎と、全長程もある触手。この触手の先端は銛のように尖っており、吸盤の代わりに無数の棘が生えている。更に触手の先端から粘着力の高い墨を放出して獲物を拘束したり、海流を操作して巨大な渦潮を作り出して獲物を引き摺り込む。
 名前の由来はプリテンダーのサルベージ兵オクトパンチから。近年では『アドベンチャー』や『パワーオブザプライム』のソラスプライムのデコイアーマーとして登場している。
 デザインや戦闘スタイルは、『ゴッド・オブ・ウォー:アセンション』に登場した怒りの女神アレークトーのカリュブディス形態を参考とした。

・デプスチャージ族
 トータスの在来種族。外見はマンタそっくりだが、何故か「いとまきのうた」をよく口ずさんでおり、「エ〜イ」という鳴き声を発する。しかもかなりのハスキーボイスで、ハジメは内心「CV梁田○之かよ!!?」とツッコんでいた。
 とは言え戦闘能力はかなり高く、シャークティコン程度なら容易く撃退出来る。武器は刃のように鋭い鰭。
 スコーンとは古くからの友人であり、海で起きていた異常を彼に伝えたのも彼らである。また、ミュウが攫われた時はスコーンの依頼で彼女の捜索も引き受けており、ライセン攻略後にシアが出会したのはそのうちの一体。
 名前の由来は勿論、『ビーストウォーズメタルス』に登場したサイバトロン海上司令官デプスチャージ。ちなみにデプスチャージは実写映画2作目『リベンジ』に登場予定だったらしく、身長140フィート(約42.672m)に達する大型キャラとなる筈だった。
 この事から、本作ではデプスチャージの名前を出そうと初期の段階で考えており、最終的にBW同様にマンタとし、『ONE PIECE』でジンベエがジンベエザメと話せるのを参考にスコーンの友人というポジションとなった。リーさんは犠牲になったのだ…。

・癒乳
 本作オリジナルのシアの能力。再生魔法の派生能力で、高い再生・回復能力のある母乳を分泌して、飲んだ者を癒す事ができる。
 元ネタはエジプト神話の女神ハトホルが目を負傷したホルス神を自らの乳で治療したという神話と、万能薬となる乳を出す兎の未確認生物・ジャッカロープから。
 本章ではこれまで以上にシアにおっぱい連呼させたのは、これの伏線だったりする(苦笑)

・大亡葬
 亮牙/グリムロックの剣技。回転しながらマグマトロンを振り下ろして敵を斬り裂く。
 名前の由来と元ネタは、ダイナソー(Dinosaur)と、ビッグマムの「マーマ急襲」から。





感想、評価お待ちしております。

本作での雫について現在検討中なのですが、読者の皆様はどんな展開が良いですか?

  • 光輝の被害者だし救済してあげて(泣)
  • 取り敢えず主要メンバーのヒロイン入り
  • 救済する必要なし。悲惨な末路にしろ
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