神崎さんは分かりやすい。   作:バナハロ

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昨日はお騒がせしました。毎度毎度誤字る上にしくじってすみません。


話が終わってから気付いたけど、お前も男の子の身体ペタペタ触ってただろ。

 とりあえず、蘭子とプールに行くことになったわけで、駅前に待ち合わせした。

 ……のだが、なんかすごく気分が悪い。だってあいつ、俺よりもブラザーをカッコ良いって言うんだもん。かなりムカつくでしょ。

 や、そりゃ分かるよ。冷静になれば、師匠であるブラザーが俺よりカッコ良いのは当たり前だ。

 ……でもさ、俺の事の方が長く見てるんだから、そこはやっぱりこう……俺の方がカッコ良いって言ってくれないと……。

 とにかく、今日は蘭子に俺の方がカッコ良いって思われるように、厳格な態度で……。

 

「……ま、待たせた! 我が剣よ!」

「や、全然待ってないよ。……それより、蘭子のその私服、かなり魔王っぽくて良いと思います」

「え、そ、そう? まぁ、その通りだな。このドレスは我が魔王として顕現する時のみに着用する正装よ……!」

「俺の剣道着みたいなもん?」

「え? あ、いや……貴様で言う剣道着ならば、我にとってはステージ衣装だ。……我が正装は、他の誰で喩える事も出来ん」

 

 む……なるほど。カッコ良……って、違う! 俺がカッコ良いって見惚れてどうすんだバーカ! 

 ここは、男として厳格な態度で接するって決めなければ……! 大丈夫だ、俺の思う「男」はちゃんと考えてある。要するに、男らしくって事だ。

 

「じゃあ、行くぞ。蘭子」

「あ、う、うむ!」

 

 そう言うと、蘭子の手を引いて駅に向かった。こういう時、女性を先導するのが男の役目って聞いたしな。実際、俺のような侍は誰かに従うより自身の道は己で決めた方が良いって分かっているし。

 蘭子はキョトンとした顔で、改札を通る俺を眺めていた。フッフッフッ、俺の男らしさに気付いたようだ。そうだ、俺はブラザーなんかより余程、カッコ良い。

 と、思ったら、蘭子はフッと微笑んだ後、微笑みながら聞いてきた。

 

「そう言えば、我が剣。次の大いなる戦の準備は整っているのか? 新たな必殺剣は……」

「あ、そうそう! 聞いて蘭子、ようやく見えてきたんだよ! 新しい仕掛ける必殺技! 付け焼き刃にならないように練度を高めてる最中で……!」

 

 プールに向かった。

 

 ×××

 

 さて、更衣室を通り過ぎて、女子更衣室の前。この日のために、ブラザーが俺に買ってくれた海パンを持ってきた。学校指定の海パンで行こうとしたら、頼むからやめてと止められました。

 それと、なるべくプールに入らない時はシャツを着ていた方が良い、との事で半袖のシャツも羽織ったし、準備万端だ。

 とにかく、今の所、男としてちゃんとカッコ良さを演出出来てると思うし、プールの間もキチッとすれば……蘭子もちゃんと俺に……。

 

「待たせた、我が剣!」

「ああ、全然、待ってな……」

 

 思わず、言葉を失った。黒のビキニに、ピンク色のリボンが付いた、まさに蘭子が好きそうな水着、と言った感じの水着だった。

 勿論、バカ似合ってる。けど、なんだろう。それ以上に、気になる所が……。

 

「蘭子って、おっぱい大きいの?」

「…………は?」

 

 あ、やべっ。言ってから後悔した。や、でもだって……俺と同い年なのに母ちゃんと一緒でおっぱい膨らんでて、谷間があって……え、中学生なのに大人に見えるんだけど……。

 ……って、違う! 蘭子、顔を真っ赤にして胸を隠しちゃってる! 

 

「あ……や、違くて……ごめん、今のは……!」

「……えっち」

「ち、違うって! や、でも……え? だって、同い年だよね俺と?」

「中学生は身体に変化が出る頃だよ!」

「へ、変化って……あ、そういや部員の奴もチ○毛がどうのって……」

 

 頬にでっかい紅葉が出来た。

 

 ×××

 

 男を見せるどころか、別の男を見せてしまった。ああ、反射的にとはいえ……まさかあんなこと言うとは……。なんだっけ? せ、せくはら? って奴だよな……。

 

「あ、あの……蘭子……」

「ツーン……」

 

 ……ダメだ。聞いてくれない……。プールに来たのに、プールに全く入れなかった。蘭子も拗ねて上着羽織っちゃってるし……。

 まぁ……でも、俺が悪いよね。何とかして機嫌を直してもらわないと……。

 とりあえず、何故、蘭子が怒っているかを考えるんだ。そりゃ勿論、おっぱいのことを言ったから。ブラザーの話によると、女の子は胸が大きいことを誇りたい人が多いし、実際、男は大きいおっぱいが好きらしい。

 だが、身体のことを他人に指摘されるのは、たとえ嬉しいことでも「嬉しさ」より「恥ずかしさ」が勝るのだろう。俺も「え、お前まだ下の毛生えてないの?」とか言われるとムカつくし……いや、これは男に言われてもムカつくな……。

 と、とにかく、そういう事なら、俺は蘭子をやらしい目で見ていないことを訴えれば良いんだ。

 

「ら、蘭子! 俺、確かにおっぱい大きいなんて言っちゃったけど、別にいやらしい目で見ていないから! 例え胸が小さかったとしても、蘭子は蘭子だから……」

 

 反対側の頬に、も一つ紅葉が出来た。

 

 ×××

 

 それからさらに10分が経過した。まだ水の中に入れてはいない。

 ……俺は、何を間違えたんだろう……。さっきより蘭子、怒ってるし……なんなら、上半身はパーカー、下半身はラップタオルを纏っているまである。

 蘭子がそれをすると、ダサさよりも魔王っぽさが全面に出てしまうわけだが、それ以上にお前暑くないの? と少し不安になる。

 ……ていうか、暑がってるな。水に入ってないのに汗が浮かんでいる。

 

「蘭子……ホント、俺は変な目で見てないから、暑いなら脱いだ方が……」

「ツーン……」

 

 ……うーん、ダメだ。せめて、飲み物でも買ってきて、暑さを和らげてやるか。情けない話だけど、俺にはそれしか出来ない。

 

「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」

「ツーン……」

 

 何回言うねんそれ。まぁ良いけど。……ていうか、俺がこの場を離れると外すんだ。そこまで暑かったんなら無理しなきゃ良いのに……。

 とりあえず、財布はロッカーにあるので、一度そこまで戻り、必要な数だけ小銭を持って自販機に向かった。

 

「はぁ……何が良いかな……」

 

 ラインナップはコーラやら水やらお茶やらコーヒーやらとなんでもある。……でも、その、何? 蘭子の好みってなると……やっぱ、ブラックコーヒーか? でも、それは蘭子の趣味であって好きな味かと言われると……。

 ……ま、なんでも良いか。炭酸で冷たいのならなんでも飲むだろうし。元々、今は冷たい物を買って行こうって話だったからね。

 自販機で飲み物を購入し、改めて蘭子の元に戻ると、蘭子は金髪の男三人に囲まれていた。金髪かぁ……俺も小学生の頃、ベジータに憧れて頭に黄色の絵具塗りたくってキレられたなぁ……。あの人達も同じかな。

 

「なぁ、この子、神崎蘭子じゃね?」

「そうじゃん。え、一人でここにいんの?」

「てか、本物ってやっぱ可愛いな。な、一人なら俺らと遊ばね?」

 

 何話してんだろ。もしかして、蘭子の知り合い? アイドルの友達の友達とかならない話じゃないのか? 

 ……背丈からして……高校生くらいか? てことは、ブラザーと同い年くらいかぁ……。俺の1.5倍は身長あるな……。

 でも、超サイヤ人に憧れてあの髪色にしてるんだとしたら悪い人じゃなさそうだし、俺と遊ぶくらいなら大勢で遊んだ方が蘭子も楽しいんじゃ……。

 

「わ、我には共にこの楽園へ舞い降りた堕天使がいる! だから、貴様らと遊ぶつもりは無い!」

 

 ……あ、でも俺を選んでくれるのか……。……うん、蘭子がそう言うなら俺も合流した方が良いか……。ていうか知り合いじゃないみたいだし。

 そう思って呑気に近付くと、男達は急に笑い出した。

 

「プッハハハハ! リアルにこの口調なんだこの子!」

「やべぇ、ツボった! いてぇ!」

「キャラ作りだったんじゃねぇのかよ! あはははっ……オエッ!」

 

 ……なんか、感じ悪ぃなあの野郎ども。サイヤ人に憧れたんじゃなかったのか? 

 

「てかさ、てかさ、中坊のわりに胸デカくね?」

「普通にアリだよな」

「な、マジで遊ぼうぜ」

「っ、い、いや……離せ!」

 

 あ、あの野郎……蘭子の逆鱗に触れるようなことを……。そうか、俺はさっき、あんな気持ち悪いことを言っていたのか。もう少し、で……でー……デリカット? だっけ? を持つことを覚えよう。

 ……さて、のんびりしてる場合じゃないな。蘭子、もう泣きそうだし。

 顔を赤くしてしまっている蘭子と、金髪バカ三人の間に入って、蘭子の手首を掴む1人の手を掴んだ。握力48キロで。

 

「離せよ、あんた」

「……あ?」

「あっ……き、桐原くん……!」

 

 ギリギリと手を絞めると、金髪の手の力が緩み、蘭子の手を離す。それと同時に蘭子は俺の背中に隠れ、俺は金髪野郎の手を振り払い、上着のシャツを脱いで蘭子に羽織らせた。

 

「チッ、なんだよ。マジで連れがいたんか」

「でも、まだガキじゃん。やっちまう?」

「バカ、こんなとこで警察の世話になるつもりか?」

 

 金髪の男達は立ち去っていった。なんだ、喧嘩ならやってやるつもり……いや、無理だな。多分、ボコられるから蘭子を連れて一緒に逃げるしかなかっ……。

 

「っ……!」

「うおっ……ら、蘭子⁉︎」

 

 っくりしたぁ……急に背中に抱きつかれたから……。……あれ、ちょっと待って? なんか、背中に柔らかい感触が……。あれ、これもしかして……。

 って、あかんあかん! だから、さっきのクソボケどもと同じになるつもりか! たとえおっぱいであっても、興奮するな! 何も感じるな! 

 ……よし、落ち着いた。うん。背中にスライムが当たってると思えば何の問題もない。……それより、何かあったのか? 

 

「どうした? 蘭子」

「……ごめんなさい」

「何が?」

「その……意固地になって、酷い態度とったから……」

 

 ……ああ、その事か。

 

「いや、気にしてねえよ。俺の方こそ悪かったよ。おっぱい大きいとか言って」

「……微妙に反省できてない」

「え、ど、何処が⁉︎」

「次から、もうどんな事を言うのでも『おっぱい大きい』とか言っちゃダメ」

「あ、な、なるほど……」

 

 確かに、なんかもう言葉の響きが良くないよね。飯中に運動音痴をウンチって表現するのと同じってことか。

 

「わ、分かったよ……」

「うん。……それと、ありがとう。助けてくれて」

「や、それは当たり前のことっていうか……」

「よし、落ち着いた」

 

 俺の背中から、蘭子が離れる。それでようやく、蘭子と顔を見合わせた。

 

「では、参ろう。我が剣、ようやくオアシスで羽を休める刻よ!」

「だな。遊ぼう。ていうか、暑過ぎて禿げそう」

「う……実は我も……」

 

 そう言って、蘭子は俺の上着を脱いだ。一応、荷物の置き場って事で置いてある場所に、二人の荷物をまとめて置いた。

 再び露わになった蘭子の水着姿を見て、思わず息を飲んだ。なんつーか……やっぱり、綺麗で……。

 

「……桐原くん?」

「っ、あ、あー……蘭子」

「何?」

「その……水着が、綺麗とか……似合ってるとか……そういうのも、禁止?」

「……ふえっ⁉︎」

 

 ボフンと茹でたこのように顔を真っ赤にする蘭子。あががっとしばらく固まったと思ったら、アワアワと両手を虚空に彷徨わせる。

 が、やがて落ち着いて考えが纏まったのか、顔を赤くしたまま頷いた。

 

「……それは、OKで……」

「了解。じゃあ、似合ってるよ。蘭子」

「えへ……えへへ……」

 

 この後、めちゃくちゃプールで遊んだ。

 

 

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