もしも、オリオンがクソ真面目な堅物だったら   作:萃夢想天

17 / 39

文字通り、おまけです。





おまけ編
「あなたにとって、オリオンとは?」 その1


 

 

 

 

 

あなたにとって、オリオンとは?

 

 

 

 

回答者 ・ 匿名の英雄船団長

 

 

「あなたにとって、オリオンとは?」

 

「オリオン? ああ、あのデカブツか。まぁ狩人としては超一流なんじゃないか?」

 

「それだけ?」

 

「だけって言われてもな……確かにアイツと近しい時代を生きた身ではあるが、交流があった

 わけでもないんだぞ。風の噂で耳にしたことぐらいしか分かりゃしないのは当たり前だろ」

 

「他にも何か、抱いた印象とかは?」

 

「印象ねぇ。最初こそ、図体がデカいだけのハリボテ野郎かとも疑った。実際は違ったが。

 強い、速い、気高い。男に必要な三拍子を丸ごと備えた、完全無欠の体現者さ」

 

「憧れた?」

 

「バカを言え。確かにオリオンはスゲェよ。それは俺……いや、私だって認める。

 けどな、相手が悪過ぎる。なにせコッチにはヘラクレスがいたんだぞ? 比較になるか!」

 

「オリオンはヘラクレスより弱い、と?」

 

「当然だな。ヘラクレスは、あの大英雄は。並の英雄が一生懸けても成し遂げられない偉業を

 十二回も達成してみせた、英雄の中の英雄なんだぞ! 狩人が相手になるもんかよ!」

 

「なるほど……」

 

「ヘラクレスと対等に並び立つ英雄がこの世にいるものか! 最強とはヘラクレスを指す!

 だが、そうだな。どんな猛獣魔獣も一捻りで仕留めたとかいう逸話が本物だとしたら…」

 

「だとしたら?」

 

「………ヘラクレスですら手古摺ったと聞く神獣ネメアーも、もしかしたら……」

 

「やっぱり認めてるんじゃないか」

 

「うるさい! ちょっとだぞ、ホントにちょっとだけな! ヘラクレスより下だけどな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回答者 ・ 匿名の半人半馬の賢者

 

 

「あなたにとって、オリオンとは?」

 

「ひどく曖昧な問いですね。主観において、かの狩人をどう思うか、と」

 

「あなたに弓の技術を教えた師は、アルテミスだと聞きましたが?」

 

「ええ、はい。間違いありません。私は月女神アルテミス様に弓と狩りの技術を乞いました。

 内容は伏せさせていただきますけどね。アレは教えて分かる類の方法ではないので」

 

「そ、そうですか」

 

「しかし、オリオンについて……ふむ。これでもギリシャに生を受けし男であり、

 弓の腕を誇る者でもありますから、一度腕前を競ってみたいとは思っています」

 

「弓の巧さ、とかですか?」

 

「機会があれば是非。無論、彼の技術の高等さは理解していますが、それでも」

 

「どちらが上か、ハッキリさせたいとか?」

 

「……否定はしません。私は大神クロノスが子にして、ケンタウロスの賢者たる身。

 このように生まれ、あのように生き、こうして世に刻まれた自身を誇りに思っています」

 

「……………」

 

「対抗意識と呼べるほど苛烈なものではありませんよ。ただ、そう。ほんの少しだけ…」

 

「少しだけ?」

 

「ギリシャ(いち)と称えられる腕前が彼だけでない、と。証明したい男心があるのですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回答者 ・ 匿名の純潔の狩人

 

 

「あなたにとって、オリオンとは?」

 

「……いきなり呼びつけて何を尋ねるかと思えば」

 

「皆に聞いてるから、恥ずかしくないよ」

 

「そういう問題ではない。はぁ………それで、オリオン様についてだったか?」

 

「オリオン様?」

 

「あっ、ちがっ……ンン! オリオンについてだな」

 

「うん。どう思ってます?」

 

「そうさな。私も狩人だから、意識しなかったと言えば嘘になる。ずっと気になっていた」

 

「ほほう?」

 

「変な顔をするな! 言っただろう、狩人として気になっていたのだと。それだけだ。

 それに彼は私が奉ずるアルテミス様が唯一、伴侶にとお選びになった真の男たる者。

 気にするなという方が難しいだろう。だからカルデアでお会いできて光栄だった」

 

「アタランテも同じ時代にいたんでしょ?」

 

「十年近くズレてはいたがな。それでも風に乗って噂は伝わっていた。ただ……」

 

「ただ?」

 

「………その噂のどれもが女絡みでな。かの高名な狩人とてギリシャの男に変わりないと

 失望したこともあった。しかし、そのどれもよく聞けば彼に非のない話ばかりだった」

 

「そうなんだ」

 

「そうさ。彼は道を行くだけで女を虜にしていくほど逞しく、それでいて並の男英雄らの

 ような下劣さは微塵も感じさせない高潔さをまとっていたと。まさしく理想の存在だ」

 

「理想?」

 

「あっ、い、いや……………こ、これから話すことは、誰にも口外するな。良いか⁉」

 

「わ、分かった。約束する」

 

「信じるぞ………理想というのは、その、彼が私の父であれば、という……」

 

「あぁ……なるほど」

 

「何がなるほどかは分からんが。英霊になってから彼についての逸話や知識も数多く

 触れることができた。それを得て私は確信した。あれこそが私の理想とする男性像だと!」

 

「…………アキレウスが聞いたらショックだろうなぁ」

 

「なぜそこで韋駄天小僧の名が出る? まぁとにかく、品行方正で義に厚く情に脆い、

 暴力を嫌い、脅迫を疎み、姦淫を拒む。女神の伴侶にして清廉、高潔なる至高の男。

 それこそが私の中のオリオンだ。結婚してすぐ冥府に堕ちた妻を最期まで忘れずにいた

 優しさもポイントが高い。考えれば考えるほど、彼が私の父であってくれたら……」

 

「でもアタランテにもヒッポメネスって旦那さんが」

 

「奴の話はするな」

 

「ごめん」

 

「分かればいい。で、オリオンとは、だったか? 私にとっては目標そのものだ」

 

「目標そのもの」

 

「ああ。狩人としても、伴侶としてみるべき男としても。あれを最上級とせずなんとする」

 

「……最上級というか、夜空の星座になってるもんね」

 

「それも含めてだ。たしか後世では、不可能であることを『月を撃ち落とす(シュート・ザ・ムーン)』と言ったな?」

 

「英語圏の諺だったかな」

 

「彼はそれを成し得た。月女神アルテミス様の御心を見事に射止めて見せたではないか」

 

「まぁ、確かに」

 

「であれば、だ。同じ狩人である私にも、出来ない道理はあるまい」

 

「………え?」

 

「ふふふ。月よりも遥か遠い、夜空の三ツ星(トライスター)。撃ち落としてみせようではないか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 









なんか興が乗って書いちゃった。
このおまけは続くか分かりません。


本編の方も、しばらくは書かないかな…?
異聞帯の方を先に終わらせてから書きたいし、
そっちの方がちゃんと集中できるしね!


ご意見ご感想、並びに質問や批評などお気軽にどうぞ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。