もしも、オリオンがクソ真面目な堅物だったら   作:萃夢想天

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オデュッセウスとの共通項あると言われて
「なるほどな」と納得した萃夢想天です。

あと、おまけ編その3にある記述の一つに
オリオンの宝具に関するものがありましたが、
ご指摘を受けましたのでその部分を少々
変更させていただきました。
ありがとうございました。

そんなわけで、またおまけですが、どうぞ!





「あなたにとって、オリオンとは?」 その4

 

 

 

 

 

あなたにとって、オリオンとは?

 

 

 

 

回答者 ・ 匿名の冒険譚の体現者

 

 

「あなたにとって、オリオンとは?」

 

「オリオン? ああ。ギリシャ随一の狩人と誉れ高き、夜空の綺羅星なる男か」

 

「生きてた時代が近かったんだよね?」

 

「そうだな。直接の面識は無かったが、同じギリシャの空の下に生きた者同士だ」

 

「当時のこととか、カルデアで対面してからの印象でもいいから、何かない?」

 

「何か、か。ふむ……そうさな。彼とは実に気が合う。生前に俺たちが仮に出会っていれば、

 得難い友として友誼を結び、喜びを分かち合っていたことだろう。そう思わせる男だった」

 

「あー、分かる気がする。二人とも根が真面目だけど天然なところあるよね」

 

「天然? オリオンは天然自然の中で狩人として生きたが、俺はそこまでではないぞ」

 

「そういうとこだよ」

 

「???」

 

「オリオンもちょっと抜けてるんだよね。確かに気は合いそう」

 

「マスターの言わんとする意味がよく分からんが、まぁ彼とはカルデアでもよく話すな。

 あぁ。あと、ヌイグルミの彼も本来の姿である彼も、どちらも私に助けを求めに来る」

 

「助け?」

 

「ヌイグルミの彼はよく、反転した純潔の狩人殿に寝床へ拉致されるようでね。

 なんでも『抱き枕代わりにされるのは構わないが、後が怖い』と言って泣きついてくる」

 

「……容易に想像できる絵だ」

 

「本来の狩人たる姿の彼も、衣服を破かれた状態で飛び込んでくることがよくあるのだ」

 

「えぇ…」

 

「月女神アルテミスに毎度破かれているようでな。曰く『そろそろ我が身の貞操が危うい』と

 冷や汗交じりに呟いていたよ。彼の生前、そして彼の逸話を考えると、助勢は当然だろう」

 

「オリオン、苦労してるんだね…」

 

「ああ。彼は俺では及びもつかんほどの苦労の連続を生きている。労ってやってくれ」

 

「いや、オデュッセウスも大概でしょ」

 

「……いや。俺の冒険は確かに苦難の連続だった。しかし、希望は在り続けていた」

 

「希望って、もしかして」

 

「うん。我が最愛の妻、ペーネロペーのことだとも。彼女が俺を待っている。そう信じ続けて

 いたからこそ、俺は最後まで旅路を諦めなかった。けれど彼の場合はそこが俺と異なる」

 

「……そっか。オリオンの奥さんは…」

 

「そうだ。彼が契りを交わした妻シーデーは、女神ヘラによって冥府に幽閉されてしまった。

 あそこは死の神ハデスが治める冥界より下方にある故、最高神以外では手が出せない領域。

 生きながらに死を超える痛苦を味わい続ける場所に、彼の妻は縛り付けられたままなのだ」

 

「………」

 

「愛しい妻を奪われる。俺では想像もつかぬ怒りと悲しみが、彼を苛んだことだろう。

 しかし彼はそれでも、神への深い敬いを捨てなかった。正直、その精神性には脱帽する」

 

「神様に奥さんを奪われても、神を恨まなかった。伝説にもそうあったよ」

 

「俺も、彼も。ともに己の愛に対し、どこまでもひた向きに、真っ直ぐに生き抜いた。

 微塵の後悔もない人生だったと断言できる。けれどそれは、俺には妻がいたからなんだ。

 もしも彼と同じように妻を失っていたなら……あの冒険を乗り越えられなかったかもな」

 

「オデュッセウス……」

 

「ギリシャに生きた男として。妻を愛する者として。俺などは足元にも及ばぬ存在だ」

 

「そんなことはないよ!」

 

「ふふ……そう言ってくれるか、マスター。だが、俺は妻がいたから立ち上がれた男さ。

 きっとペーネロペーの身が既に亡いものであったなら。俺の旅はきっとアイアイエー島で

 終わりを迎えていたに違いない。強い男だ、彼は。俺が真に目標とする生の先駆者だ」

 

「……オリオンが、目標」

 

「妻を失い、それでもその愛を損なわぬ気高さ、深い博愛。それを彼は己の力としている」

 

「オリオンの宝具【冥府にて咲け、柘榴の花(セ・アガポル・スィージゴス)】のこと?」

 

「未だ彼の愛が在る証明と言えよう。俺はそんな彼に―――最大限の敬意を表する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回答者 ・ 匿名の大魔女

 

 

「あなたにとって、オリオンとは?」

 

「なんだい急に。この大魔女を部屋に呼び出したかと思えば、睦言の代わりに男の話?

 はぁ。君はもっとムードとかロマンチズムを学ぶべきじゃないかい、ピグレット?」

 

「ただの質問にムードもへったくれも要らないでしょ」

 

「そりゃそうだけど。ったくもう。ちょっと身構えた私の方が莫迦みたいじゃないか」

 

「え?」

 

「なんでもない! で、オリオンについてだったかい?」

 

「うん。簡単な印象とかを聞かせてほしいなって思って」

 

「とは言ってもねぇ。特に交流もないし、それこそ生前に面識だってなかったし」

 

「本当に何もないの?」

 

「あのねぇ。私を便利屋か何かと勘違いしていないかいピグレット?

 そりゃ私は万能に近い魔術を修めし大魔女さ! でも、知らないことも出来ないこともある」

 

「まぁ、それはそうだけど」

 

「んー。印象、印象ねぇ。ギリシャの男にしては相当に珍しいタイプだってくらいかな」

 

「と言うと?」

 

「ほら。神代に近い古代ギリシャの男なんてのは、強くてナンボみたいな輩が基本的で、

 魔術を修めて変に賢人ぶるアホも残りの大部分を占めてたのさ。私の嫌いなタイプだよ」

 

「やっぱり当時の価値観からズレてたのかな」

 

「ズレてたってより、先取りし過ぎてたっていう方が正しいのかもしれないなぁ。

 今でこそオリオンの逸話を見聞きして、彼のことを高潔な紳士だってもてはやしているが、

 古代ギリシャの常識に当てはめたら……うん。頭のおかしい奴と思われても仕方ないね」

 

「そんなに⁉」

 

「そんなにさ! 神に気に入られて加護やら神器やらを賜る程度なら、他にもいたよ!

 でも、ほとんど事故みたいな勘違いで両目を焼き潰されたのに復讐しないんだぜアイツ!

 ぶっちゃけイカレてるって私も思うよ! 私ならあらゆる手段を用いて呪い殺してたね!」

 

「張り合わなくてもいいでしょ……」

 

「奥さんを最期まで大事に想ってたってのは、乙女としてはかなりポイント高いけども。

 それでもさ、〝復讐〟だって立派な英雄譚、冒険譚の一つとして彩られて然るべきものだ。

 なのに彼はそれをしなかった。自身が海神の子であると知った後も、生き方は変わらない」

 

「………」

 

「普通さ。自分が神の血を引いてるって知ってたら、自慢なり宣言なりするもんなんだよ。

 莫迦みたいに笑いながら『我は誰それの神に連なる勇者である』みたいな感じでね。

 一応聞いておくけど、オリオンの逸話の中にそういった部分があったりした?」

 

「ない。なかったよ」

 

「だろ? そういう意味では、正しく狂ってはいたんだろうさ。難儀な性格だよホント」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回答者 ・ 匿名のアマゾネス女王

 

 

「あなたにとって、オリオンとは?」

 

「オリオンだと? アルテミス様の伴侶に選ばれし、夜空の三つ星(トライスター)のことか」

 

「うん。ちょっと聞いてみたくて」

 

「ハッ! この私に、ギリシャの男を語れと? 命知らずも極まったなマスター!」

 

「やっぱり嫌だよね、全く関係ない人だとしても……」

 

「そうだな。どうあっても我が目に好ましく映ることはあるまい」

 

「ダメか……ごめん、邪魔しちゃったね」

 

「待て。女王の話はまだ途中だ、そう急くものではないぞ」

 

「え、え?」

 

「特別に語ってやろう。なに、体を休める最中の無聊を慰める小噺程度にな」

 

「あ、ありがとう…?」

 

「さて。オリオンか。あの男について私が知ることはほとんど皆無と言っていい。

 信奉する月女神アルテミス様がお選びになった唯一の男。それくらいしか知らん」

 

「じゃあ、軍神の血を引く身としてはどうなの?」

 

「……ほう? 私とアレのどちらが強いか、気にかかるのかマスター」

 

「実はちょっとだけ」

 

「無論、私だ! あの男は確かに狩人としての高みに座する者ではあるのだろうがな、

 しかし私は戦士にして女王! 神の血を引く者とて、私は軍神。奴は海神の血だぞ!

 比べるまでもない! 戦いという分野において、アマゾネスを率いた私に敗北は無い!」

 

「ちょ、ちょっと落ち着いて。それくらいでいいから…」

 

「如何に膂力に優れようとも、それだけで勝ち負けは決まらぬ! 戦いとはそういうもの!

 ああ、ちょうどよい! 奴の事を思い出して体が温まってきたぞ! 休憩はここまでだ!

 マスター、そこにいろ! 今からあのギリシャ男と雌雄を決してきてやるからな!」

 

「あっ! ま、待って、ペンテシレイ……ア……行っちゃった」

 

「―――おー、おっかねぇおっかねぇ。危うく撥ねられるとこだったぜ」

 

「あ、ヘクトール」

 

「いよぉ。しっかしマスター、今のはなんだい? あれ、ペンテシレイアの嬢ちゃんだろ?

 やたら漲ってそうなご様子だったが……まさか、あの韋駄天野郎のとこ行った⁉」

 

「違う違う。オリオンのことを聞いたらさ」

 

「あー、なるほど。そりゃあんな形相で戦いに行くわけだ」

 

「何か知ってるの?」

 

「ん? いや、前にシミュレーターでよ。オリオンがペンテシレイアに話しかけてたんだ。

 俺は嫌な予感がしたんで退散しようとしたんだが、間に合わずに巻き込まれちまって」

 

「……何があったの?」

 

「それがさ。事もあろうにオリオンの旦那が『美しいとは何なのか尋ねたいのだがよいか』

 なーんて言ってくれやがって。一瞬で平和なシミュレーション空間が地獄に様変わりよ」

 

「……オリオンはホント、そういうとこあるよね」

 

「あるなぁ。ま、暴れ散らそうとする女王サンを腕っぷしだけで抑え込んだ旦那の方も

 おかしいんだがな。あの図体で関節技やら何やら使うとは思わなくてビビったもんさ」

 

「もう大体のことには慣れたつもりでいたけど」

 

「俺も。って、こんなとこでのんびりしてたらエライことに―――」

 

「ダーリンのバカー! 浮気者ぉー‼」

 

「誤解ですぅぅぅぅぅッッ‼‼」

 

「……………」

 

「…………んー、と。まぁ、アレだ」

 

「……………」

 

「納まるまで書庫にでも避難しておきますか」

 

「……賛成」

 

 

 

 

 








殺意だろうがなんだろうが、
「お前しか見えない!」状態の女がいたら
アルテミスセンサーに引っかかるよねって話。


次回をお楽しみに!


今後の書き物について

  • ifオリオン~第一部三章
  • ifオリオン~第二部五章(ネタバレ注意)
  • ifオリオン番外編
  • ifシグルド
  • 他の何か
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