もしも、オリオンがクソ真面目な堅物だったら   作:萃夢想天

21 / 39

まだもうちょっとだけ続くんじゃよ





「あなたにとって、オリオンとは?」 その5

 

 

 

 

あなたにとって、オリオンとは?

 

 

 

 

 

回答者 ・ 匿名の竜殺しにして戦士たちの王

 

 

「あなたにとって、オリオンとは?」

 

「返答。当方にとっての彼の狩人への印象。之を貴殿は問うているのだな、マスター」

 

「うん。というか、普段から交流ってあるの?」

 

「肯定。当方は日頃より、かの三つ星の狩人と交流している」

 

「へぇー。なんか意外だね」

 

「生まれた国も時代も違う我らであるが、志す一念における共通項がある」

 

「え、なんかあったっけ?」

 

「肯定。当方も彼も、共に――妻を愛している」

 

「………あぁ。なるほど」

 

「いや、狩人殿のみならず。中華大陸を平らげし覇王殿とも、この共通項を獲得している」

 

「そっか、項羽もね。納得だわ」

 

「理解が得られて何よりだ。当方は我が愛、ブリュンヒルデを。覇王殿は不死の仙女殿を。

 そして三つ星の狩人殿は……いや。之は当方の口から語るべきことではあるまい」

 

「う、うん。オリオンの奥さんについては色々、ね」

 

「肯定。之に類似する話を選択した際、共にカルデアにて現界している月の女神殿の脅威度が

 急激に上昇することが確認されている。故、迂闊に口にすることは非推奨行為とされる」

 

「まぁそれは皆、分かってることだよ」

 

「了解。情報を再入力。非推奨行動の徹底を確認」

 

「うーん。しかし想像できないなぁ。項羽にオリオンにシグルドって…」

 

「否定。稀にではあるが、血斧王殿や騎士団長殿も加わることがある」

 

「うえぇ……エイリークも混じるの? ちょっと混沌過ぎ……騎士団長って?」

 

「当方と同様、無限に等しい叡智を讃えし槍兵英霊だ。真名は【フィン・マックール】殿」

 

「ああ、そっか。あの人も奥さんは何人かいても平等に……いや、うん。やめとこ」

 

「疑問。マスター、貴殿は何故に苦虫を噛み潰したような表情をされるのか」

 

「掘り出さない方がいいこともあるんだよシグルド。フィンは特に」

 

「そう、なのか。了解した。彼に対する情報の一部修正を検討する」

 

「いや、まぁ、うん。でも、意外と知らないことが多いなぁ」

 

「此処に召喚される英霊は多い。その仔細全てを貴殿が把握することは困難だ」

 

「うーん。それもそっか。あ、シグルドたちは奥さんに関してどんなことを話すの?」

 

「返答。覇王殿は奥方との馴れ初めを。血斧王殿は狂気を跳ね除け奥方を自慢している。

 フィン殿は、うむ。多彩な話題を円滑にまとめてくれている。だが狩人殿は……」

 

「オリオンは?」

 

「……己の遍歴を恥じ入るように語っていただけているのだが」

 

「だが?」

 

「最後には必ず月女神殿が『浮気相談してるんだー! ダーリンのバカー!』と乱入し、

 狩人殿を拉致して帰っていくのでな。彼の話をしっかり聞けた試しがない。無念だ」

 

「えぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回答者 ・ 匿名の抜山蓋世覇王

 

 

「私にとってかの御仁は、人間でいう尊敬の概念に値する人物と言えよう」

 

「まだ何も言ってないよ⁉」

 

「……これは申し訳ない。毎度のことながら、主導者と私の間に流れる時間は異なるようだ。

 我が未来演算のよる予知が、オリオンなる英霊に対する所感を述べるよう求められることを

 予見した。それ故、事前にかの人物に対する私の所感を考えていたのだが。ううむ」

 

「あ、そういうことか。ゴメンね」

 

「主導者が謝意を示す必要はあるまい。我らの知覚し得る時間の差異を演算に追加せずにいた

 私の欠陥であった。どうか許されよ」

 

「いや、こっちこそゴメン。それで、オリオンを尊敬してるってことだよね?」

 

「然り。私はあくまで装置に過ぎぬ身。虞という得難き妻を得たものの、人間の有する愛情を

 真の意味で実行できているか。この疑問への解答は我が演算機能を以てしても不可能だ。

 しかし、人は老い、朽ちる生命。どれほどの愛を有していようと、やがては離別する宿命」

 

「…………」

 

「私は装置。そして我が妻は不老不死の仙女である。人とは異なり、永遠無窮に存在可能。

 そして生命と同様に、人間の感情もまたいずれ形を保てず、朽ち、滅ぶものに変わりない。

 そこに愛憎の差異はなく。等しく潰える。だが、オリオンという人物は違った」

 

「どう違うの?」

 

「生前に妻や恋人という関係性を獲得し、死後に英霊へと昇華されてなお関係性を維持継続

 している者は多数存在している。北欧の竜殺し然り、印度(インド)の王子然り。されどオリオンは、

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。これは、異常だ」

 

「い、異常って…」

 

「当然の帰結である。オリオンの妻たる女は、遥か古代にて既に死後の世界に等しき場へ

 幽閉されたという情報が記録されている。更に詳細な情報では、オリオンは婚姻を結んだ

 当日に妻と離別している。私や竜殺しのように、愛を累積する時間を共有してはいない」

 

「それは……」

 

「甚だ疑問だ。我が演算機能を活用し、私と虞が出逢った当日に愛という感情を芽生えさせ、

 以降の時の流れでその想いを抱き続けることが可能か否かを算出したが、結果は……」

 

「出たの?」

 

「……解は得た。現在の結末に至った私には残酷にして不快な解ではあるが」

 

「………」

 

「否、である。私は、そうした前提条件の下において、虞への愛情維持を不可と結論付けた。

 彼女を妻として迎える可能性も予見したが、現在の私が抱く好感度上限と同値には至らず。

 不可解、理解不能、計測不可能。オリオンなる人物の精神性は、私の未来予知の埒外だ」

 

「項羽でも分からないんだ…それはそれですごいことかもしれないけど」

 

「人知の及ばない思考領域を〝凄い〟と形容するのであれば、その感慨は正しいものである。

 しかし、私の未来予知ではあの英霊の異常性を測れない。これは、由々しき事態である」

 

「え?」

 

「砂上の楼閣。偽りの安寧。崩壊の兆候から目を逸らして宣う、仮初の〝平和〟など。

 それらすべて、忌むべきものに他ならない。断じて許容することはできない。故に」

 

「………まさか」

 

「あらゆる想定外を駆逐する。確率の埒外を断絶する。それが、私という装置の役割」

 

「ま、待って項羽。落ち着いて、ね?」

 

「―――英霊オリオン。()()()()()()()()()()()()()。速やかに粉砕すべし。覇ァッ‼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回答者 ・ 匿名の不老不死の仙女

 

 

「……………あの、この度はご迷惑をおかけしました」

 

「まったくよ! アンタ、項羽様に何を言ったの⁉ めちゃくちゃ荒ぶってたじゃない‼」

 

「それはまあ古の覇王の血が騒いだ的な…」

 

「好きで中国大陸を切り取ったわけじゃないわよバカタレ! って、そうじゃなくて」

 

「あ、落ち着いた」

 

「切り替えが早くなるのよ、不老不死にもなると。まぁ項羽様の件はおいておきましょう。

 それで、何か話があって私を呼び出したんじゃないの? 違うなら呪い殺してやるけど」

 

「間違った場合の代償がデカい! あ、いや、大丈夫。ちゃんと話があるから」

 

「ふん。私だって暇じゃないんだから、さっさと話しなさい」

 

「じゃあ。あなたにとって、オリオンとは?」

 

「……はぁ? オリオン? え、あのアーチャーの? いきなり何よ」

 

「簡単な所感とかでいいから」

 

「所感って……なに? まさかアンタ、この私に項羽様を裏切れってんじゃないでしょうね」

 

「違う違う違う! 待って、本気で殺しに来そうな目はやめて!」

 

「誤解を生む発言は慎みなさい。よりにもよってこの私が、項羽様以外の男なんかに気を移す

 わけがないじゃない。人間は愚かなのは知ってたつもりだけど、ここまでだとは想定外よ」

 

「あの、ゴメン。本当にそんなつもりじゃ…」

 

「……はぁ。うるさいバカ。お前が他の人間とは違うことくらい判別はつくわよ。バカ」

 

「二回も言わなくても」

 

「何度でも言ってやるわよバーカ。で、あのアーチャーについて何を聞こうっての?」

 

「あー、その、ちょっとした聞き取り調査みたいなもので…」

 

「???」

 

「虞っちゃんパイセンには不利益はないから。きっと。多分。メイビー」

 

「どんどん怪しくなってるじゃない! 流石に世俗に疎い私でも、あのアーチャーに関しては

 変に関わったらマズイのは知ってるっての! 誰が好き好んであんなのと関わるかバカ!」

 

「え? でも、愛しの項羽(だんなさま)はオリオンとよく雑談してるって」

 

「――は?」

 

「シグルドもエイリークもフィンも、たまにラーマも混じって嫁トークしてるってさ」

 

「あ、あぁ。なんだ、そういうこと! それならそうと先に言いなさいよバカ!」

 

「めっちゃ嬉しそう」

 

「嬉しくなんかないわけないわよバーカ! アーホ! 人間マジ愚か! ホント愚か!」

 

「パイセン、語彙力までポンコツになってきてるよ…?」

 

「うっさい! ったく。それにしても、ふーん。あの筋肉ダルマについてねぇ」

 

「なんかない?」

 

「何もないわよ。興味すら無いんだし」

 

「やっぱそうかぁ。ダメかぁ」

 

「おい後輩。人の顔見ながらダメとか言うなっての」

 

「あ、ゴメン」

 

「………あ」

 

「?」

 

「そういえば少し気になることはあるのよね」

 

「え、あるの?」

 

「なんでアンタが驚いてんのよ。まぁいいわ。あのアーチャー、アルテミスとかっていう女が

 主な霊基の奴と、オリオン自体が主な霊基の奴と、二人いるのよね?」

 

「あー、うん。そうだよ。知らないと混乱するのは分かる」

 

「やっぱりそうなのね。じゃあ、女の方のアーチャーにくっついてるクマのヌイグルミって」

 

「オリオンです」

 

「…………そう」

 

「納得するんだ⁉」

 

「それ以外にどう反応しろってのよ‼ んんっ! で、男の方のアーチャーなんだけど」

 

「本来のオリオンの方?」

 

「アイツが再臨を最後まで重ねて得た霊基の姿でいる時、()()()()()()()()()()()()?」

 

「―――それ、は」

 

「……言い辛い事みたいね。それくらいは分かるわ。いい、この話はおしまい」

 

「いや、それは」

 

「あのねぇ。そりゃ私は人間なんか大嫌いだし、どうなろうが知ったことじゃないわ。

 けど、お前だけは特別なのよ。後輩。そんな顔するような話題、続けられないわよ」

 

「……ゴメン。それを話そうとすると、思い出しちゃうから」

 

「……はぁ。難儀なものね、汎人類史最後のマスターってやつも」

 

 

 

 

 








おまけ編で本編に対する伏線を突っ込むスタイル。


本編は来週までお預けかもしれません。ゴメンね。


ご意見ご感想、並びに質問や批評などお気軽にどうぞ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。