どうも皆様、萃夢想天です!
活動報告などで予めお伝えしていましたが、
「動かしても良い」というお言葉を多く
いただけたので、各話各章を変動させて
もらいました。
しおりをはさんでいた読者の方々には
大変なご迷惑をおかけして申し訳ありません。
それでは、短いですが、どうぞ!
回答者・匿名の三女神の末妹
「あなたにとって、オリオンとは?」
「……なんですマスター、藪から棒に」
「いや、ちょっと色々な人に聞き込みをしてて」
「はぁ。なるほど。それは私も答えなくてはならないものですか?」
「あ、いや。答えたくないとかなら、無理には…」
「いえ。忌避や嫌悪の類はありません。読書のついで、というおざなりな対応のうえでの
回答でもよければお答えします。それで問題はありませんか?」
「うん。全然オッケー」
「では。そうですね、オリオンについてと改めて問われても……特段言葉はないです」
「ないんだ」
「同郷の英霊であり、神々との関わりが深いという共通点こそありますけれど。
生前に面識はありませんし、彼が誕生する以前に私は討たれていましたし」
「……その、ごめん」
「謝罪は不要ですよ、マスター。気にしていませんので」
「うん…」
「オリオン。天下無双の狩人と謳われた男。英霊の座にある記録や現界後に閲覧した
文献から得られる情報程度にしか彼のことを知りません。普段も会話とかないです」
「そうなんだ」
「はい。あ、ですが時折、上姉様の無茶ぶりに付き合わされている姿を見かけます」
「え、ステンノが?」
「はい。なにやら下姉様があのミノ―――いえ、アステリオスをいたく気に入っていて
カルデア内でも日頃から一緒に居る姿を見られて、『私もああいうの欲しいわね』と
呟いていました。おそらく、それで彼に白羽の矢が立ったのでしょう。ご愁傷様です」
「あぁ……同じギリシャの男だし、背格好とか体格も近いもんね」
「おまけにこのカルデアでは珍しく、上姉様を虚勢などなくきちんと敬う様子を見せて
いるせいか、随分と上機嫌でした。正直、あんな笑顔の姉様を見るのは初めてで」
「そんなに…?」
「多分、自分を女神として敬いながらも魅力にコロッと堕ちない具合が好感触だったの
ではないかと。魅了されて腑抜けにならない点は良くも、自分に魅了されない点は
納得いかない、みたいな。考えるだけでゾッとします。彼も相当な不運属性ですね」
「それは生前から割とそう」
「…そうでしたね。ん? 生前、といえば」
「どうかしたの?」
「生前、彼は妻を娶ったその日の内に失ったという伝説がありましたね」
「うん。そうだよ」
「……ということは、つまり」
「つまり?」
「彼、ギリシャの男に在るまじく清らかな身のままなのでは?」
「え?」
「いえ、私はああいう筋肉達磨的なビジュアルは好みではありませんが、ええ。
女として、同じギリシャの価値観からしても、世辞抜きに美しい方だとは思います。
それにしても…えぇ? あれで童貞なんですか? 数々の女性との逸話がありながら?」
「えっと……そ、そういう話は聞いた事ない、かな」
「いかにもギリシャ英雄って感じで純情無垢とかアレちょっとコレひょっとしてイケるのでは」
「あの、メドゥーサ?」
「……マスター。すみませんが急用を思いついたので失礼します」
「え、あ、うん」
「では。ああ、すぐ戻ってきますよ。ええ。はい。きっと三十分ぐらいで…」
回答者・匿名の盲目の魔術師
「あなたにとって、オリオンとは?」
「私にとってオリオン様とは、ですか。答えは当然、全て、ですわ」
「………うん。だろうね」
「まぁ! 流石は私をお喚びになられたマスター! 私の想いも既にご承知おきとは!
でしたらどうか! どうかあの御方と私が結ばれるよう取り持ってくださらない?」
「それは、あの、難しいと思うんだけど」
「恋路とは困難なもの。それを踏破し、自らに磨きをかけてこそ乙女というものです!
ほら、コノートとかいう国の女王様も仰っていましたよ。『恋はいつでも
「メイヴちゃんェ……アレはまた別というか」
「同じです! 生まれた土地や時代は違えども、恋を抱いた乙女というのは共通!
誰しもが消えぬ炎を胸の中で燻らせ続け、燃え尽きんとしているのですから!」
「そ、そうなんだ」
「はい! マスターが私如きを召喚して、さらには霊基を最終段階へ再臨までして
くださったおかげで! 私は私の原点へ舞い戻ったのです! 恋の炎を宿したあの時へ!」
「あー、えっと、他の話は何かあるかな?」
「オリオン様以外に何を語れと!? 私はオリオン様の為だけに在る女ですのに!?」
「わーお流石は『狂化 A+++』だ、会話なんて通じるはずなかったんや」
「強化? 私の霊基がさらに向上する余地があると?」
「ううん。なんでもない。あ、そうだ! 別の質問してもいい?」
「はい! オリオン様にまつわるものであれば、いくらでも!」
「……伝説とか、後世に残されてる資料とかだと、鍛冶師ケーダリオンと旅したんだよね」
「……はい。ケーダリオン。忘れもしません。彼は、私の終生の友でした」
「色々な伝記や学説があって、その内の一つに貴女がケーダリオンと子を為した、なんて
説もあるんだけど。これって、本当なのかな? 答え辛かったら答えなくていいけど…」
「―――有り得ません。私は、私は、オリオン様の為だけに在る女なのですから」
「ご、ゴメン。怒らせちゃったよね…」
「…いいえ。それにしても、後世にはそんなふざけたお話が残っているのですね。
何処の誰が宣った戯言でしょうか。私の『千里眼(過)』スキルで見つけられるかも?」
「いや、やめてホントお願いだから。見つかったとしても没後何百年だって!」
「あぁ! それもそうですね! 危うく無駄骨を折るところでした!」
「ふぅ…。それにしても、ケーダリオンさんは友達だったんだ」
「はい。彼は私と同じ人に憧れを抱いた、共感できる人でした。
父の反対を押し切って島を飛び出し、神託に導かれるまま女神ヘカテーを訪れ魔術を乞い、
そこからは数多くの修練を積む日々。要領の悪かった私は何年をあの島で過ごしたか…」
「苦労したんだね」
「それはもう。キルケー様にもご迷惑をおかけしました。カルデアでお会いした時に
お礼を申し上げに窺ったのですが、『お前怖いからこっち来るな! 話しかけるな!』
などと無体な言葉で追い返されてしまいまして。ついぞ感謝を伝えられていません」
「あの人が即拒否するレベルなんだ…」
「それにしても。ふふ、ケーダリオンと私に子がいた、ですか」
「そういうのって嫌なのかな。あることないこと後世に伝わってるのって」
「不快な部分もあります。しかしながら、ケーダリオンはそういった邪な思いや下心など
介在する余地もなく私と共に旅をしていました。ご覧のとおり、私は盲目で非力な女。
力で強引に手籠めにすることもできたでしょう。まぁ、彼はしませんでしたけどね」
「信頼し合ってたんだ」
「それはもう。ですので、ええ。有り得ぬ夢想と思ってはおりますが、先の戯言を聞いて
思ったことが一つ」
「なに?」
「……もしも、仮にもしも。オリオン様より先に彼と出会っていたのなら、私は――」
「…………違ってたかもしれない?」
「さぁ。どうでしょうか。少なくとも、私は伝承に刻まれたとおりの存在です。
ただ、後世への伝わり方が随分と歪で散見的なせいか、
形作られているようですが。そこはそれ。オリオン様やマスターのお役に立てるので
あれば、些細な変化です」
「後世のホラー伝承が霊基に影響及ぼしてるのに些細って…」
「ふふ。だって、そんなことでもなければ、私の様な女が英霊として人理に刻まれる事など
有り得ないでしょう。それか、よほどの緊急事態でしか不可能で会った事」
「そう、なんだ」
「ですから。ええ。貴方様には感謝しております、マスター。
だって貴方のおかげで私はまた、あの御方に、オリオン様に逢えたのですから」
回答者・???
「―――お待たせ」
「いえ。待つことには慣れております。苦痛など感じません」
「そうなの? あ、はいコレ」
「コレが……あの人に関するデータ、ですか」
「うん。それと頼まれてたのもね」
「ありがとうございます、マスター」
「ううん。気にしないで」
「はい。そうですか。コレが、人理に刻まれた彼を知る者らの客観データ……」
「みんなから許可はとってあるから大丈夫」
「感謝します。それでは、情報のインプットを開始します」
「……それにしても、大丈夫なの?」
「大丈夫、とは?」
「だって君って、オリオンの霊基に混じって現界してるんでしょ?」
「マスターの憂慮を検知。つまり、私が彼から離れ、独立している状態について
危惧なさっているのですね」
「言い方はアレだけど、だいたいそう」
「御心配には及びません。彼の所在と現在の状況は間借りしている霊基から隠密に
監視可能です。こちらがあちらに気付くことはあっても、その逆は有り得ません」
「じゃあ、いまオリオンはどうしてるの?」
「検索……確認。現在、彼はルーラー・マルタ、ルーラー・ケツァルコアトル、そして
ルーラー・アストライアの三騎のサーヴァントに、追いかけ回されています」
「どういう状況なんだ」
「不明。共有霊基より事態の展開を予測……完了。
どうやらシミュレーターでの模擬戦闘を行った際、三騎のルーラーサーヴァントに
彼の戦闘能力、技巧、肉体美を褒めそやされ、いわゆるスパーリング行為を要求された
ものの断った為、現状に陥ったようです。まるで獲物を駆り立てる肉食獣の如く」
「あぁ……ちびっこ組とアタランテ・オルタにヌイグルミのオリオンが取り合いっこ
されてんのと同じ感じのアレかなぁ」
「同じ感じのアレ、であると推測されます…………」
「どうかしたの?」
「い、いえ。問題ありません。活動に支障をきたすレベルの誤作動はなく…」
「何かあったんだね」
「……はい。胸が、苦しく感じられます。締め付けられるような、殴られるような」
「それって、オリオンについて考えたから?」
「不明、です。私は、私が何故あの人間を注視してしまうのかが分からない」
「…………」
「マスター。これは、この不可解で煩雑な塵芥の如きエラーは、『恋』なのですか?」
「え…?」
「分かりません。私には分かりません。カルデアに召喚され、本機アルテミスが主体での
霊基で召喚された存在も確認しました。ですが、彼女は何も教えてくれません」
「聞いたんだ。アルテミスに」
「はい。彼を見る度に鳴り響くエラーの停止方法を尋ねたところ、本機アルテミスは
笑いながら言いました―――『貴女も私なんだから、言わなくったって分かるわ』と」
「アルテミスらしいね」
「理解できません。理解不能、です。未知の現象への対処方法が不明です。
マスター、マスター。私は、あの人と、オリオンとどう接したら良いのでしょう?」
「……それは俺にも答えられない。君が、君自身の答えを見つけなきゃいけない」
「私自身の、答え?」
「うん。君はもう、神様でもその端末でもない。サーヴァント・オリオンの霊基の一部。
彼在っての君ってだけじゃない。君は君だ。こうして俺と話しているのは君個人だ。
だからきっと見つけられるよ。君だけの答えが、いつかきっと、必ず」
「………情報のインプット完了。感謝します、マスター」
「ううん。また何かできることがあれば言ってね」
「はい。ひとまず私は、彼の下へ戻ります」
「うん……頑張ってね」
「了解。私は、私。神代の狩人
支援する超々高高度星間距離稼働狙撃衛星としての任を、全うします」
「一緒に戦うのも、答えの一つだから」
「はい。私はもう、孤独に待つだけの私じゃない。彼と共に歩む、私ですから」
二部五章アトランティスの伏線です(クソ正直)
それではまた、お楽しみに!
ご意見ご感想、並びに質問や批評などお気軽にどうぞ!