どうも皆様、お久しゅうございます。
萃夢想天です。
FGOもどんどん勢いが強まってきておりますね。
二月三月は仕事が忙しくなる時期なので、
どうしても筆が遅くなってしまい申し訳ありません。
可能な限り時間を見つけて書いていきますので、
何卒ご容赦を…!
さて。今回からいよいよ人理修復編に突入!
まずは第三章を軽くダイジェスト風に振り返りながら
我らがオリオンとカルデアの旅を見守っていきましょう。
それでは、どうぞ!
第三特異点オケアノス編・その1
汎人類史三千年を焼却するという大災害【人理焼却】に立ち向かうカルデア一行は、
第一特異点はフランス・オルレアン、第二特異点は大帝国ローマ・セプテムの二つを
攻略し、現在は第三特異点である封鎖終局四海・オケアノスを攻略中である。
そんなカルデアは、オケアノスの海上で特異点の鍵と思しき魔術王の聖杯を所有する
敵性サーヴァント、〝黒髭〟こと【エドワード・ティーチ】と遭遇したが敗戦。
命からがら逃走し、現在は新たに仲間に加わった【アステリオス】と【エウリュアレ】を
連れて、破壊された船の修理を計画していたところであった。
しかし、彼らの前に新たなサーヴァントが姿を現す。
絶世の美貌を携えし白磁の女神【アルテミス】とその恋人にして無双の狩人【オリオン】が
カルデア一行と遭遇。奇妙なことに、オリオンはクマのヌイグルミの姿に変わっていた。
事情を説明し、彼女らを味方につけることに成功したカルデア。人類最後のマスターである
藤丸立香少年の発案とオリオンの案内を受け、ワイバーンの鱗や牙を獲得する。
これにより、【フランシス・ドレイク】の駆る『
いよいよ、カルデアによる反撃が開始される。
「―――問題は黒髭の船さね」
一団を海原へ進ませる船の主ドレイクが頭を無茶苦茶に引っかきながらぼやく。
過去に一度対峙している為、彼我の戦力差を痛感させられているカルデアとドレイクは、
敵側との正面衝突は絶対に避けねばならないという共通認識を抱いている。
これに対し、マシュがドレイクの言に補足する。
「敵性サーヴァントの総数は、敵船団長〝黒髭〟を加えて、四騎が確認されています。
もしサーヴァントの数が変化していなかったとしても、四騎は充分に脅威となります。
下手に遠距離で遭遇すると、砲弾と銃弾に晒され、一方的にこちらが破壊されます」
「
「向こうがこちらの接近に気付かず、こちらが先に向こうを捕捉。尚且つタイミングよく
視界を遮るような嵐がやってくる……そういったレベルの好条件が揃わなければ」
「高望みし過ぎ、ってか。やれやれだねぇ」
机上の空論どころか単なる妄想合戦と言える議論に、エウリュアレが意見を出す。
「……気付かれる前に、私と
「混乱は起こせるかもしれませんが、あちらにもサーヴァントがいます。
特にマスケット銃を持ったあの女性が厄介です。あの銃が宝具であってもなくても、
撃ち合いになってなってしまえば混乱も治まりジリ貧に。決定打に欠けています」
ラッキー狙いのまぐれ案より現実的だが、より現実的な壁に阻まれてしまう。
今度は頭お花畑のスイーツ系女神ことアルテミスがよく考えもせずマシュに尋ねる。
「船がぶつかるより先に誰かが乗り込んで暴れたら混乱するんじゃない?」
「我が女神、それが出来たら苦労はしない。船より早く動け、かつ接近を悟られない
最小の動作が求められるのだ。そんな事が出来る者は……いや、そういう事か!」
「どうしました、オリオンさん?」
アルテミスの提案をヌイグルミのオリオンが否定しようとして、そこで気付く。
オリオンの言葉に反応したマシュに、アルテミスは何故か鼻高々といった面持ちで答えた。
「へへーん! 私って女神様なんだけど、基本的にはオリオンの霊基として召喚されて
いるわけなのよねー! だから、オリオンの力がまるっと備わってる状態なわけよ!」
『……あ、そうだ! そうだよ! オリオンは海神ポセイドンの血を引く半神半人だ!
彼にとって海は生まれ故郷の同然! 逸話にもある通り、彼は海面を歩行できるはず!』
「そういえば貴方、ポセイドン様の子供だったわね。だから海も歩けるの。凄いのね」
通信機からやけに興奮した様子のドクター・ロマンによるオリオン解説が飛び出してくる。
同じギリシャ出身の女神であるエウリュアレからのお墨付きも貰い、一同の表情がぱあっと
明るいものに変わっていく。そんな中、話題の中心であるオリオンの顔だけが浮かない。
「……それだけと言ってしまえば、それだけの力なのだがな。うん、その、なんだ。
頼りに思ってくれるのは嬉しい限りだが、要はアメンボやアリンコと変わらんのだぞ?
人の姿で召喚されていれば恰好もついただろうに……何故ヌイグルミなのだ?」
一同に背を向け、心なしかそのちまっこい肩を震わせて嗚咽を噛み殺しているオリオン。
ファンシーな愛くるしい風貌から想像できないほどの苦悩を抱える彼に、マシュはおろか
藤丸立香やドレイク、果てはエウリュアレですら同情の念を禁じえなかった。
状況が理解できないアステリオスはオロオロと、「どう、した? どこ、いたい?」と
ヌイグルミを心配する始末。無限に可愛い。いや違うそうじゃない。
結局、アルテミスとオリオンが船を発見次第、接近して乗り込む案が採用された。
「――上か!?」
「ハァイ♪ 今は昼間だけど、夜空の月からこんばんわー!」
〝黒髭〟率いる
その純真無垢な可憐さと豊満な体躯に魅了されたキモヲタ風口調の大男が声を荒げる。
「天使や…天使がおりゅ……。天使みたいやけども……誰ナノジャ!?」
「サーヴァント!?」
「私、オリオンでーす! 特に理由は無いけど、全員射殺しちゃうゾ☆」
大男――〝黒髭〟の問いかけに答えつつも、背負った大弓で即座に配下の海賊を三人
射殺してみせる
一騎……二人一組の女海賊の片翼【メアリー・リード】が脅威の排除に動き出す。
「僕が行く! アン、そのまま射撃続行!」
「分かりました!」
「おほーっ! メアリー氏ぃ! お早くーぅ‼」
「気色悪い声を出さないでくれるか――なっ!」
幅広の刀身が持ち味のカトラスを接近する勢いそのままに振り抜くメアリーだが、
弓を巧みに操って斬撃を回避しつつ取り巻きの海賊を続けて二人貫くアルテミス。
「……ふぬっ、くぅ。ヌイグルミとは、こうも運動に難儀するものなのかっ…」
弓兵と騎乗兵の睨み合いを物陰から〝黒髭〟が固唾を飲んで見守る中、戦場と化した
船上で誰にもその存在を悟られる事なく密かに動く小さな影があった。
誰あろう、オリオン当人だ。ヌイグルミのおててを懸命に動かし、ロープをよじ登り
甲板の片隅へやって着た彼は、目的地を目指すべく周囲の状況へ神経を集中させる。
「見えた! 見えやした船長! もうじき砲弾が届く距離まで接近してきやす!」
「うるせぇ馬鹿野郎! 話しかけんじゃねぇ! 今、謎の美女対メアリー氏という
永久保存版もののウルトラキャットファイトの真っ最中なんだよ! 余計な口を
挟むとぶっ殺すぞ‼ てめぇらも海賊の端くれなら、敵船ぐらい砲弾で沈めろ!」
「へ、へいっ! おい、弾薬庫からありったけ弾ぁ持ってくるぞ!」
なんとも口汚い罵倒の後に、オリオンは目的の物がある場所への手がかりを掴む。
「よし、いいぞ。済まんが案内役になってもらう、悪く思わんでくれ」
ドタバタと船内へ駈け込んでいく海賊の腰布に飛びつき、オリオンは弾薬庫を目指す。
一方、接近戦を繰り広げる事となったアルテミスは、その巨大な弓をブーメランのように
投げつけたり、あるいは大質量の剣のように振り回してメアリーを牽制していた。
メアリーもまた隙だらけの動きを見切って攻撃に転じようとするが、明らかに軌道を無視
して放たれる矢による射撃に阻まれ、思うように攻勢に移れないでいた。
「あら人間さん。私、接近戦に持ち込まれると困っちゃうの」
「見た感じ、アーチャーだろうからね!」
「うふふっ。それもそうなんだけど、私が傷つくのを何より嫌がる人がいるの!
だからね、私は絶対、ぜーーったいに、攻撃されたりするわけにはいかないのよ。
まぁ神性スキルがあるからほとんど安全なんだけど、えへへ。私、愛されてるー☆」
「女海賊を前にいきなりノロケ話とは、自殺願望でも持ってるのかな!」
「まっさかー。ま、そんなわけでー、逃げちゃうわ。ちょうど準備も出来たみたいだし」
「何を―――まさか!?」
軽やかに宙を舞い、距離を取ったアルテミスに肉薄しようとするメアリーだったが、
視界の端から飛び出す小さな影に気付き、彼女の言葉の真意を数秒の間に思考する。
そして、彼女の企てに勘付いたのだが、全てが遅過ぎた。
メアリーが振り返ると同時に、船の弾薬庫が激しい轟音と熱を撒き散らし、爆発。
射撃に意識を集中させていた相棒のアンの手を引いて遠ざけるメアリーと、寸前で
爆破を読んでいた参謀役の【ヘクトール】は爆風や粉々になった木片を回避する。
「オアーーーッ!? 拙者のカワイイ船がーーーッ‼ 黒髭コレクションがーーーッ‼」
逆に、炎と光を一身に浴びてなお甚大な被害に滂沱の涙を垂れ流す〝黒髭〟だった。
「上手くいったわね! さっすが私のダーリン♪」
「し、死ぬかと思った…! 弾薬庫で導火線に着火して全速力で離脱とか…!
ええい、こんな事は頼まれても二度とやらんぞ! 例え人理を救う為でもな!」
「やん! とか言ってるけど、やる時はやる男なダーリン最高! 大好き!」
「愛の言葉はまた後で存分に聞かせてもらうとしよう! 今は逃げるぞ!」
「はぁーい!」
隙あらばイチャつくアルテミスとオリオン。末永く爆発しろ。いや爆発したんだわ。
短いあんよとおててを振り回して逃げるオリオンをさらっと胸元へ収納してから、
アルテミスは満面の笑みで〝黒髭〟の船を離脱。カルデアの作戦は成功を収めた。
「う、う……」
「大丈夫です、アステリオスさん。エウリュアレさんは死んだりしません」
アルテミスとオリオンによる奇襲作戦が功を奏し、竜種の殻や鱗で強化した黄金の鹿号での
文字通りの突貫が炸裂。文字通りの乱戦に持ち込み、敵との総力戦に挑んだカルデア一行。
その結果、女海賊【アン・ボニー&メアリー・リード】、敵船長【エドワード・ティーチ】
撃破に成功。これにより、第三特異点の修復完了への障壁が取り除かれたかに思われた。
しかし、そこで〝黒髭〟傘下で参謀役だったはずのヘクトールが裏切り、聖杯を奪取。
さらに、カルデア側の戦力であるエウリュアレを攫われた挙句、逃走を許してしまう。
すぐさまヘクトールの後を追うドレイクの船。道中、エウリュアレを救い出そうとして
ヘクトールに挑み、逆に深手を負わされてしまったアステリオスが怒りを煮え滾らせる。
「えう、りゅあれ、たすけに、いく」
「……お気持ちは分かりますが、今は傷を癒すことに専念してください」
「いや、だ!」
「ですが、貴方の傷は治癒魔術でも回復に時間を要するほど深いものです!
私もマスターも、エウリュアレさんを必ず助けます! ですから、安静に…!」
「いやだ! きず、へいき! オレ、かいぶつ、だから! いた、く、ない!」
唯一魔術が使えるマスターの立香少年とマシュが懸命にアステリオスを宥めるものの、
効果は薄い。しまいには2メートルを超える巨躯が理性に乏しいバーサーカーらしく
暴れ出そうとする。どうにか抑えようとするマシュたちの前に、小さな影が立つ。
「静まるがいい、アステリオス。遠くかつては迷宮の怪物と呼ばれた者よ」
「うゥ…? おり、おん…?」
「オリオンさん…」
立香少年とマシュを庇うように背を見せたのは、ヌイグルミとなったオリオン。
男として憧憬を抱かずにはいられない英雄の介入に、アステリオスも平静を取り戻す。
話を聞ける状態になったことを確認したオリオンは、渋みの聞いた低音で語る。
「今しがた、『自分は怪物だから平気だ』という戯言が耳に届いてな。
本心からそう言ったのか、アステリオス? それとも言葉など狂乱の前には無駄か?」
「……ぅ。オレ、きず、へいき。えう、りゅあれ、まって、る」
「そうだ。かの女神は助けを待っているだろう。だが、それは
「ウゥ…ッ‼」
英霊アステリオス。彼は古代ギリシャにおいては、牛の酪農により栄えたミノス王の血を
継ぐ者でありながら、牛の頭と人の身体で生まれ落ちた、根っからの怪物である。
誰からも愛される事のなかった彼は、一度入ったら二度と出られぬ迷宮へ放り捨てられ、
そこで迷い込んだ者を殺して喰らう迷宮の怪物……ミノタウロスへ変貌を遂げる事となる。
最終的にミノタウロスは英雄テセウスに討伐され、彼の伝説を彩る一部として生涯の幕を
閉じる。なんとも憐れで、救われない怪物。誰もがミノタウロスの伝説をそう解釈する。
しかし彼は今、怪物ミノタウロスではなく、王の子アステリオスとして此処に在る。
それを履き違えるな、と。オリオンは暗にそう言っていた。
「思い出せ、そして忘れるな。お前はギリシャの何処にでもいる怪物なんかじゃない。
お前は英雄だ。紛れもなく、人理を救ける者として人類史に刻まれた英霊なのだ。
此処にいるお前は何だ?
「ぅ、おぉ…! お、れ、オレ、は! オレは!」
「………」
「オレ、は、あす、てり、おす! かい、ぶつ、だけど、かいぶつ、じゃ、ない!」
「……その通りだとも」
先程とは違う、覇気に満ちた咆哮をあげるアステリオスに、オリオンは豪胆に叫ぶ。
「お前は
怪物としての過去があろうが、誰かがお前を怪物と罵ろうが、お前は変わらずお前だ!
……忘れるなよ
「ぅ、うん!」
そう言い放ったオリオンは、アステリオスの巨体をよじよじと登り、掌に収まる。
壊してはならない大事なものを持つように、アステリオスはオリオンを乗せた手を眼前へ
持ち上げる。ヌイグルミと角の生えた赤目の大男が、無言のまま見つめ合う。
「男と男の約束だ、アステリオス。お前の女神は必ず助ける。だから、休め」
「……うん! おとこ、と、おと、この、やくそく、だ!」
神代に生きた狩人と、英雄に討たれた怪物の、清廉な誓いが結ばれた瞬間であった。
いかがだったでしょうか?
短いようですが、三章を全部まともに書いてたら
それこそ時間が足りないなんてもんじゃないので…。
とりあえず、こんな感じで書いていくつもりですが、
もっとじっくり書いてほしいとかの要望が多ければ
考え直すかもしれません。考え直さないかもしれません。
それでは次回を、御楽しみに!
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