あ、コヤンスカヤの正体やらニキチッチなんかとの関わりはすこでした。
さて。2021年も終わり、新たな一年が始まります。
次の一年でFGOがどうなるのか。覚悟を決めて新年を迎えましょう。
それでは、どうぞ!
カルデアから突如として、オリオンが消失した。
この異常事態に対して、司令官代理を務めるダ・ヴィンチが人類最後のマスター・藤丸立香へオリオン奪還作戦の指示を出そうとしたまさにその瞬間。
カルデアのシステムが異常を検知。瞬く間にシステムの一部を掌握され、謎の呼び声による接触を許してしまう。
声の主は敵か、それとも――。
「……これは熱い。今度の新刊の冒頭に使えそうかも」
「割とヤバめな状況でそんなこと考えられるおっきーの精神性、神様的にもボク的にもちょっと引くなぁ」
「ガッちゃん言い方きつくない!?」
後ろで茶番的な掛け合いをするダメ英霊二人を無視して、スピーカーから凛とした女性の声が再び聞こえてくる。
『そこは、人理継続保障機関とやらで合っているかな?』
「いかにも。此処はカルデアさ」
『そうか。では、そちらにオリオンという英霊は居るかい?』
コンソールに奔らせていた指を止め、少々不服そうな顔つきのまま、ダヴィンチちゃんが質問に答える。此処は確かにカルデアだが、その次の質問に藤丸少年は首を傾げた。
「あの、オリオンを攫ったのはあなたじゃないんですか?」
「先輩!」
「……まぁ、いずれ聞くつもりだったからいいけれど。交渉でそう早々と手札を切るものじゃないよってこれから覚えておこうね…」
「ご、ごめん」
先程まで、何者かがオリオンを拉致したのではないかという話を聞いていたせいか、疑いの言葉をかけてしまった。慌てたマシュや額に手を当てて小さく息を吐いたダヴィンチちゃんの反応を見て、「やってしまった」と後悔する藤丸少年。
彼の言葉を聞いた謎の声が少し途切れる。どうやら驚いているようだ。
『いや、彼の言葉も尤もだ。やはりそちらからオリオンは居なくなっているんだね。うんうん、知りたいことは分かった。では今度は君たちが知りたいことを教えようじゃないか』
「おや。気前がいいんだね」
『気前がいいと言うより、此方の不始末である以上は責任を取る必要があると考えたまででね』
「不始末、ですか?」
『語るも恥だが、語らずにいては恥の上塗りになる。ま、一番恥かくのは私じゃなくアイツだしいいけども』
「……?」
相手はオリオンの不在を承知しているようだが、想定していた状況とは異なるらしい。
カルデアとしては、謎の声の主がオリオンを何らかの方法でカルデアからオリオンのみを拉致したのではないか。そう疑っていたのだが、声の主からオリオンの不在を問われてしまった。
ただ、知りたいことを教えると向こうから言ってきている。その言葉を信じて疑問を投げかけてみるしかなさそうだ。
「じゃあお言葉に甘えさせてもらおうか。でもその前に、そっちで握ってるシステムを解放してもらえないかな」
『ん? あぁ、そっか。すまない。じゃあ音声だけ繋がる様に再調整して……これでどうだい』
「おっけー! 切断されてた機能を再接続して! 防壁の点検もすぐに!」
「はいっ!」
スタッフさんがダヴィンチちゃんの号令と共に慌ただしくコンソールを叩く。すると、カルデアの機能が少しずつ回復していった。異常を知らせるアラートや赤色のランプも止まり、落ち着いて話ができる状態に戻った。
「さて……一段落着いたところで、単刀直入に聞かせてもらおう。オリオンをどうにかしてほしい、そう言ってたけど。そちらはどういう状況なのかな?」
『流石は人類の賢人だね。話が早くて助かる』
「褒めても何も出ないよ」
『欲しいのは君じゃなくて、君たちの助力だよ。さっきも言ったけど、オリオンをどうにかしてほしくて君たちに応援を要請してるんだ』
「……話が見えないね。まず事の経緯を説明してもらえるだろうか」
ダヴィンチちゃんの頭脳でも話の先が見通せない以上、平凡な一般人である自分に分かるはずもないと藤丸少年は近くの椅子に腰を下ろす。彼の様子を見ていたマシュもそれに倣い、彼の近くに椅子を持ってきてちょこんと座った。
『分かった。それでは、事の経緯を詳らかにしよう』
謎の声の主はそう告げてから、一連の事情をカルデアに伝えた。
自分が
気付けば名もなき微小特異点の中にいたこと。
自力で聖杯を作り出し、それを用いてオリオンを召喚したこと。
そこまで話を聞いたダヴィンチちゃんは、表情を変えた。
「ストップ。ちょっと待ってほしい」
『どうかしたかな?』
「自力で聖杯を作ったってところも気になるけど、オリオンを召喚したってことは、召喚自体は成功したのかい?」
『ああ。召喚は成功した。いや、成功したって言っていいのかなアレは…』
「何か不具合でも?」
『不具合と言うか……うん。召喚されたオリオンが何故かクマのヌイグルミになってたんだよね』
どうしてだろうか、と呟く謎の声。
クマのヌイグルミになってるオリオンなんて、どこを探してもカルデアに召喚されたオリオン以外に居るはずがない。藤丸少年とマシュは顔を見合わせて頷く。
と言うか、ギリシャ最高の狩人がどうしてヌイグルミになっているんだろうか。今更ながら疑問に思う。召喚された時からその姿だったので慣れてしまっていたが、改めて考えるとおかしい。藤丸少年は首を捻る。
「あぁ、じゃあ間違いないね。カルデアのオリオンだ」
『そうか……最後の確認も済んだし、此処から先は直接伝えた方が早いとみた。そんなわけで、君達には私達のいる特異点とやらにまで来てもらいたい。出来るだろう?』
「出来るには出来るけども、事前に情報を出し切ってもらわないとこちらとしてもね」
ダヴィンチちゃんは声の主からさらに情報を引き出そうとしているみたいだ。けれど、相手は今すぐにでも特異点に来てほしいような口ぶりでいる。再三に渡るが、これが罠でないという確証も無い。ここからは慎重にならなければ。
集中して二人の会話を聞こうとしていると、モニターを見ているスタッフの一人が悲鳴のような叫び声をあげてダヴィンチちゃんを呼んだ。
「し、司令官代理! 緊急事態です!」
「またかい!? 今度は何があったの!?」
「それが、カルデア内から次々とサーヴァントの霊基反応が消失しています!」
「――何だって!?」
「いや、違う……これは、霊基反応が、オリオンのいる微小特異点に集まっている?」
スタッフの言葉に驚きを隠せないダヴィンチちゃん。当然、藤丸少年もマシュも驚愕のあまり立ち上がっていた。
どういうことかと問うより早く、モニターに目を向けたダヴィンチちゃんが声を荒げる。
「なんだコレ、どんどん減っていく…!?」
「ダヴィンチちゃん、コレはいったい?」
「…………ん?」
マシュの問いかけにも反応せず、黙々とモニターを睨んでいたダ・ヴィンチの様子が変わる。
何かに気付いたようで、藤丸少年とマシュも脇からモニターを覗き込んだ。
「霊基反応が移動しているのは、どれも……女性英霊のものばかりだ」
「ブーディカさん、カーミラさん、荊軻さん……ドレイクさんに紫式部さんまで!」
「何が起きているんだ…」
表示される情報から読み取れるのは、カルデア内の女性英霊の反応が次々と消失していることのみ。そして、どうやら彼女らはオリオンのいると思しき微小特異点へ向かっているらしいのだが。
ここで藤丸少年があることに気付く。
「でも、居なくなってない人もいるよ?」
「っ……藤丸君ナーイス‼ 反応に網張って、解析開始!」
何気なく発した言葉に万能の天才が食らいつき、消失していく反応に何らかの解析を始めた。それから数人の反応が消えたところで、ダヴィンチちゃんは目を輝かせて顔を上げる。
「見えた、共通点!」
「本当ですか!? いなくなった英霊の皆さんに、共通点があるということですか?」
「いいや、逆だよ。私が調べたのは、
そう言いながらダ・ヴィンチはコンソールを操作し、モニターに表示してみせた。
「残っているのは、ほとんどが男性英霊。それと一部の女性英霊のみ。それで、残された女性英霊にはある共通点が見られた」
「それって、なに?」
「
今度は反応が消えた英霊の名がリストアップされて大きく表示される。
「居なくなったのはマシュの挙げた六名に加え、ジャンヌ・ダルク、マリー・アントワネット、アン・ボニー&メアリー・リード、マタ・ハリ、ゼノビア、清少納言、沖田総司、織田信長……数えたらキリがないけど、その誰もが神性にまつわるスキルを保有していない」
「つまり……無作為、あるいは無差別的な事象ではない?」
「多分そうだと思う」
『いや、その通りだ。これはあのオリオンがしでかしたことでね』
消えた英霊の名を挙げ連ねていくと、声の主が断言する。
サーヴァントの皆が消えていくのはオリオンの仕業だと明言されたが、信じがたいと藤丸少年は思った。
英霊オリオン。彼は究極的なまでに紳士的な男性だ。
男として生まれたからには、オリオンを目標とすべしという格言すら現代に残っているほどの存在である。無論、歴史や伝承にさほど明るくない藤丸少年ですら名前に聞き覚えがあるレベルの大英雄。そんな彼が、どうして女性ばかりを狙うのか。
繋がりが見えてこない。隣で無言のまま考えを巡らせているマシュも同じだろう。それほどまでにオリオンは信頼を得ていた。不埒な真似をするタイプではないと、確信を抱かれていた。
ところが、そうではないと声の主は一蹴する。
『サーヴァントとなった私達が召喚したせいか、それとも自作した聖杯の影響なのか。原因は定かではないが、どうもオリオンに何らかの異常が起こったようなんだ。少なくとも私達の知るオリオンも、高潔で清廉たる精神の持ち主だったと記憶しているからね。だから、そうなってしまった原因の調査と異常の修正をお願いしたいんだ』
「それで不始末が何やらと言っていたわけか。それで、具体的な異常というのは?」
『先も言ったが、そこからはもう見てもらった方が早いと思う。と言うわけで、早いところ来てもらいたい。これ以上犠牲者が増える前に…』
不穏な雰囲気を感じさせる言葉を漏らす謎の声。そう言えば、まだおそらく彼女と思われる存在の名前すら聞いていなかった。
藤丸少年はダ・ヴィンチが切り返すよりも早く名を聞いた。
「あの、勿論オリオンを救けに行くつもりで入るんですけど。あなたの名前を教えてもらえませんか?」
『名前? あぁ、そうか。まだ名乗ってすらいなかったね。これは失礼した』
そこから声の主は、あーでもないこーでもない、と唸ってはたっぷり時間を使って返事をした。
『私自身の名を持ち出すと少々厄介なのでね、現在の状態での仮初めの名で良ければ明かそう』
「構わないとも。英霊にはそれぞれ諸事情がついて回るものだし」
「……自分をモナ・リザに改造した人が言うと説得力が違うね」
「はっはっは、褒めるな藤丸君!」
いや褒めてないが。そう言いたげな表情の藤丸少年の方を酔っぱらいの親戚のようにバシバシと叩いて笑うキャスターのサーヴァント。ホント倒錯的な変態だな万能の天才って奴は。
カルデアのふんわりとしたノリを聞き届けてから、声の主はその名を明かす。
『では――我ら三柱の女神束ねし其の名は、【テレイア】』
古代ギリシャ語で『貞淑』を表す言葉を冠する、アルターエゴのサーヴァントはそう名乗った。
「――と、いうわけで。オリオン救出作戦、再始動だ!」
声の主ことテレイアとの話し合いを経て、特異点の修復及びオリオンと続けざまに消えた女性英霊の救出任務がより正確な情報を得たことで練り直された。
当初はオリオンをカルデアに取り戻すだけで良かったが、新たに女性英霊の回収とオリオンの身に起こった謎の異常を正常化させなくてはならないという部分が追加された。
だが、いざ特異点に向け出動といったところで問題が発生する。
「……ダメです。想定通り、レイシフト安定しません」
「やっぱりか。うーん、そうなると向こうが拒んでると見た方が良いね」
レイシフトによる特異点修復。可能な限りカルデア所属の英霊を同行させる予定でいたのだが、思わぬ落とし穴が見つかる。
なんと、神性スキルの保有者はレイシフトの適性が得られず弾かれてしまう事態が発生した。それだけでなく、男性の英霊にも同様の現象が起こった。
「あたしを拒否るなんてイイ根性してるじゃない…こほん。ええ、残念ですが仕方ありませんね」
「ンー。ソーリー、マスター。私では力になれないみたいデース」
「姦淫の罪であればこの天秤で裁かなければなりませんが、法廷に持ち込めないなんて……歯痒いですわ」
竜を(拳で)諭した聖女マルタ、南米アステカ神話の女神ケツァルコアトル、正義と法の公平さを象徴する裁定者アストライアの三騎は、レイシフトに弾かれたことに悔しさを滲ませる。
「んぎぎぎぎ! あんにゃろう、男の夢にして禁断の固有結界を実現しようとしてやがる! コイツぁとんだ特異点じゃねぇか、あーんもうズルいズルい! 拙者もハーレム島で可愛いおにゃのこといちゃらぶちゅっちゅしたーい!」
「いやはや。まさかオリオンに先を越されるとは。予想外のダークホースというのは、いつの世にもいるものだな」
「そうとも言えんぞカエサル。趣味嗜好は個々人にあろうが、女の選り好みはいただけん。どうせなら丸ごと全部味わい尽くすほどの気概が無ければな、ガッハッハ!」
「おぉ、おおおお…ッ! なんてこった畜生! 断りもなく俺の
そしてこちらは男性英霊のごく一部。オリオンに出し抜かれたと血涙を流す者もいれば、ろくでもない因縁をつける者もいる。お前らも男ならオリオンを見習ってもろて。
ただ、こうなってくると戦力が激減してしまう事実に目を向けねばならない。
神性スキルは、同じ神性スキル保有者でなければ大きなダメージを与えられない。オリオンはヌイグルミであっても神性スキル保有者。つまり、神性を持たない英霊で挑んでも勝負にならない可能性がある。
おまけに男性英霊は基本的にレイシフト不可。残っている女性も、神性保有者は弾かれる。打つ手は皆無に等しい。
「あと適性検査をしてないのは…?」
メンバーのリストを見ながら頭を掻くダ・ヴィンチ。残されたサーヴァントの中で、レイシフト適正を試していない者があと数名残っているのを確認する。
そのうちの一人が先程から管制室の隅に居るのを思い出し、ちらりと様子を覗き見る。
「…………………」
月の女神アルテミス。オリオンの霊基を間借り(大半を強奪)して現界した、狩人と相思相愛の神霊サーヴァント。彼女はギリシャのオリュンポス十二神である為、間違いなく神性スキルの保有者だがオリオンと同一に召喚されている関係上、レイシフトの網をすり抜ける可能性はある。
しかし、今の彼女は抜け殻の様な精神状態になっている。
「うーん。無理矢理に、とは流石にね?」
可能性が最も高いとはいえ、精神的に不安定な彼女がレイシフト成功したとしても戦力に数えられるだろうか。特異点修復である以上、人類最後のマスターである藤丸少年の命を守る盾となり得る英霊の存在は重要だ。その為にも戦えるサーヴァントを選出したい。
そう思いながら名簿に目を落とす。そこに残された名前は、あと二つ。
「――オリオン様がいらっしゃると聞いて‼」
「オリオンを取り戻す戦力をお探しと聞きまして‼」
「……俺は妹の付き添いだ。何かを望もうとするなよ」
管制室で張り切っているのは、オリオンと同郷の英霊。
双子座となった神と人の兄妹、ディオスクロイ。
酒神の孫娘にして白仮面の老婆伝説の真実、メロペー。
カルデアでは最早恒例となった夏の水着霊基となったバーサーカーのメロペーは、カルデアを二、三周ほどしてオリオンを探しているところを引っ張って来た為、マシュと男性英霊が息を切らしている。
「じゃあ時間も押してるし、ちゃっちゃと適性測っちゃおう」
「制限時間なんてあったんですか?」
あるよ。年明けまでに投稿したいからね(本音)。
「いや、特にないけどテレイアが言ってたでしょ。これ以上犠牲者が出る前にって」
「どういう意味でしょうか?」
「それを知る為にもレッツ適性検査!」
万能の天才にも疲れはあるのだろう。ちょっとテンションがズレてきたダヴィンチちゃんを心配そうに見つめながら、レイシフト適性を計測する装置を起動するマシュ。数秒の沈黙の後、結果がモニターに表示される。
「結果……どちらもクリアです!」
「よっし! とりあえず二騎は確保だ!」
「やりましたね兄様!」
「ああ、そうだな(虚無顔)」
「私はオリオン様の婚約者ですし、当然では?」
検査結果に対し、それぞれのコメントがこちら。ディオスクロイは妹の未だかつてない暴走で目が虚渕作画になってるし、メロペーは「いつもの」状態。もう何なんだお前ら。
メロペーの発言について、カルデア職員は某蛇少女と同等ランクの対応プロトコルを推奨されている。触らぬ神に何とやら、というやつだ。そうだねって言って誤魔化すのが正攻法である。
色々と不安要素は残るが、マシュと二人で特異点に放り出す最悪の展開は避けられた。一先ずの安心に息を吐いたダ・ヴィンチは、改めて作戦概要を伝える。
「それではレイシフト同行者も絞れたということで、もう一度作戦内容を振り返るよ」
「お願いします」
「よろしい。では」
どこからか眼鏡を取り出して装着したダヴィンチちゃん。
「まず、レイシフト後は現地協力者と思しき【テレイア】と合流。その後は彼女と特異点の情報を収集、オリオンの状況を向こうと此方で逐一共有し合う。ディオスクロイとメロペーでどこまで出来るか分からないが、消えた女性英霊を此方へ戻せるよう可能な限り接触、場合によっては戦闘で一度倒してもらいたい」
「神性が無いとはいえ、一筋縄ではいきませんね」
「フッ…神の資格持たざる有象無象に、我らの歩み止められるものか」
「ではそちらはお任せしますね。私はオリオン様にこの当世の水着をお披露目に行きたいので」
「「「……………」」」
作戦概要と言ってるのにこの体たらく。目から光が消えてるけど今日もカルデアは元気です。
「そして、女性英霊の回収と並行してオリオンの異常の原因調査を行う。そちらは主にこっちでの解析に懸かってると思うから、スタッフの皆で頑張ろうね!」
「よろしくお願いします」
「レイシフト準備完了。いつでも行けます!」
ダヴィンチちゃんからのスタッフへの激励をバックに、藤丸少年はカルデア謹製の戦闘スーツに身を包む。そのままレイシフトをする為のコフィンの前に立ち、スタンバイを完了する。
システム・オールグリーン。存在証明、問題なし。
「それでは、レイシフト開始!」
ダ・ヴィンチの号令に合わせ、コフィンが起動する。
藤丸立香、マシュ、ディオスクロイ、そしてメロペーの四人の姿が青白い霊子に解けていく。
そして時代を超越するほんの僅かな一瞬、バーサーカー霊基の水着をまとい
「お先に失礼しますわ、
一方的に、積憤をぶつけるように。
悪意に塗れた暴言を吐き捨てたメロペーの姿は、もう消えていた。
オリオンの神話に登場する彼女や、白仮面の老婆伝説の彼女の姿を知るカルデアスタッフは、アルテミスに対してどんな思いを抱いているのか察してはいた。メロペーも「狂化:A+++」スキル保有者とはいえ、マスターとオリオンのいる手前ではアルテミスに剥きだしの敵意を見せることはなかった。
だが本心では、彼女への憎しみは煮え滾ったままだった。
あまりにも強烈な、呪詛にも似た宣戦布告。
シンと静まり返る管制室に、か細い女の声が響く。
「―――って」
霊基が励起状態に移行。神霊級サーヴァントの魔力反応が急上昇しているとモニターに表示されているが、誰一人として画面を見ていない。それもそうだろう。その反応の発信源が目の前で幽鬼の如く立ち上がっているのだから。
「―――ですって」
ゴゴゴゴゴ……‼
もうアラートが鳴りっぱなしだが、そんなことはお構いなし。
文字通りに女神の尊厳を完膚なきまでに叩きのめした相手に、黙っていられるほど女神という存在は優しくない。
美しく無垢なる月女神であるはずの彼女は、もう地獄から亡者を引き連れてきた修羅だと言われても信じてしまうほどに恐ろしい形相をしていた。
「なんですってぇぇーーーーッ‼」
ああ、哀れオリオン。知らないのか、月女神からは逃げられない(確定事項)
阿修羅すら凌駕する存在と化した月女神だったモノは怒髪天を突く勢いで空を仰ぎ、奇声を張り上げてダ・ヴィンチへ駆け寄る。
「今スグ、私ヲ、ダーリンニ会ワセナサイ‼」
「あっ、ハイ」
恐いもの知らずな科学者気質の天才も、神に逆らう勇気はない。言われるがままに装置を起動し、先に特異点へ向かった藤丸少年達の後追いをするようにアルテミスを送り出した。
「…………ふぅ」
強大な嵐が過ぎ去った。
誰もがそう思い、心底からの安堵の息を溢す。
「いやぁ………女って怖い!」
お前が言うな。という視線を受け、ダヴィンチは乾いた笑いで誤魔化した。
いかがだったでしょうか。
何とか年内に最後の投稿をすることが出来ました。
本当はオリジナル異聞帯を書く予定だったんですが、間に合わなくなりそうだったのでこちらの投稿を急ぎました。
さて、この季節感皆無の水着回。
予定ではあと1、2話で終わる予定です。
その後は当然、アトランティス編を開始します。
どうぞ2022年も、よろしくお願い致します。
良いお年と、福袋をお迎えください!
ご意見ご感想、並びに質問や批評などお気軽にどうぞ!