Xenoblade2 The Ancient Remnant   作:蛮鬼

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 うん、分かっている。またやらかしたなと思う方がいることは。
 でもこれだけは言いたい……ハマったら書きたくなっちゃうんだよ。
 
 今さらながらのゼノブレイド2×ダークソウル、始まります。


創世期
0.王の眠り


 ——はじまりの火が、消えていきます

 

 

 

 

 ——すぐに暗闇が訪れるでしょう

 

 

 

 

 ——……そして、いつかきっと暗闇に、小さな火たちが現れます

 

 

 

 

 ——王たちの継いだ残り火が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——灰の方、まだ私の声が、聞こえていらっしゃいますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——世界は、終に暗闇に鎖された。

 

 

 延命の果て、腐り果てた火の時代(神々の時代)は幕を下ろし、本来あるべき人の時代が始まったのだ。

 全ては灰より出で、やがて虚ろの底より火が生じた。

 火は多くをもたらし、多くの差異をこの世に生んだ。

 熱と冷たさ、生と死——そして光と闇。

 

 幾星霜の果てに消え失せる運命にあった火は、だが火の恩恵を深く受ける神々の臆病さから無理矢理に永らえ、来たるべき闇の時代は訪れなかった。

 それからの世界は悲劇だった。

 世界の理は歪められ、その歪みから多くの異物が生じ、数多の災禍と不幸を撒き散らした。

 『彼』もその1つ――歪んだ世界の理が生んだ怪物『不死人』の1人。

 

 神々の臆病さと傲慢さより生まれた悲劇の一欠片。

 どこにでもいる呪われ人であった彼は、だが成し遂げた。世界の正しき終焉を。新たなる時代の幕開けを。

 過去に渡り、未来へ流され、尋常ならざる絶望を経てなお、彼は歩みを止めず、ここまで来た。

 ——そしてその歩みも、ようやく止まる時が来たのだ。

 

 

「本当に、よろしいのですね……灰の方」

 

「ああ」

 

 

 世界を闇で鎖したあの日から、もう長い年月が経過した。

 まだ世界には闇は残っているが、それでも僅かに火は灯った。

 『最初の火』ならざる火。王たちが継ぎ、遺した温もりの欠片――王たちの残り火。

 

 火防女の言葉通り、闇の中に小さな火たちが現れたのだ。

 灯された火は標となり、生き残った者たちを導く光となって、この暗黒の世界に在り続けるだろう。

 明けない夜はもうない。いずれ多くの火が灯り、光となって闇を照らし、暗黒の時代も終わりを迎える。

 そしてその先こそ、最初の火に依らぬ輝きを得た時代こそが、真なる人の時代。

 

 その輝かしき黄金時代に、古い時代の遺物は必要ない。

 古きを廃さぬ限り、真の新時代は迎えられぬだろう。故に――

 

 

「私は、この身この魂が滅ぶその時まで、眠りに就く」

 

 

 歪みは正され、世界は不死人という呪いから解放された。——そう思われた。

 だが、膨大極まるソウルを喰らい、際限なく肥大化した怪物たちに課せられた呪いだけは、その限りではなかった。

 あるいは、ソウルを喰らうことに酔い、自ら呪縛からの解放を望んだ結果なのやもしれないが、少なくとも、『彼』の場合はそうではなかった。

 刻まれたダークリングはそのまま。ソウルの業も、取り込んできた魑魅魍魎、英雄豪傑たちのソウルさえも失われずに残っている。

 あの過酷な世界を生き抜くため、費やしてきた全てがこの結果を生んだというのなら――それは、あまりにも酷に過ぎた。

 

 

「貴方は、もう充分に使命を全うされました。何人も果たすことの叶わなかった平和の世を、貴方は実現させてみせたのです」

 

「否。否だ、火防女。まだ平和の世は成っていない。これから成るのだ。生き残った者たち、そしてこれより生まれ出る新たなる人間の手によって」

 

 

 『彼』は再び前を向く。そこに見えるのは、もはや意思なき巨骸――巨鎧の成れの果て。

 最後の旅路、その最果てに立ちはだかった『最初の火』の守り手。

 そしてかつて、グウィン王の後に火を継いだ『彼』の分身とも言うべき存在――『王たちの化身』

 物言わぬ抜け殻と化した、自らの半身とも呼べる巨鎧を前に、『彼』はその顔を悲哀で曇らせた。

 

 

「その新時代に、過去の残滓は必要ない。呪印を刻まされたこの身には、未だあの燻りと渇き――『最初の火』と『深淵』の残滓が宿っている。

 古き時代の残滓、その窮みとも呼ぶべき代物が、表舞台にいつまでも在り続けるわけにはいかぬのだ」

 

「……」

 

 

 『彼』の言葉に、火防女は何の言葉も返すことができなかった。

 当然だ。本来歩むべき道たる『火継ぎ』ではなく、『火の消失』という選択肢を提示したのは、他でもない火防女だ。

 その切っ掛けこそ『彼』が持って来た瞳だったが、瞳を得てその新たなる未来を見出したのは火防女自身。

 最終的に決めたのは『彼』であっても、彼女もまた先人たちの積み重ねて来た犠牲を無為と帰した咎人なのだ。

 故に彼女は何も言えない。例え『彼』がこれより味わう、果てしない孤独の苦痛を理解していても。

 

 

「……すまない。最後まで、迷惑をかけた」

 

「いいえ……いいえ。貴方が、これより味わう苦痛に比べれば……」

 

「苦痛、か。……孤独ではあるが、そうは思わんな」

 

 

 彼が振り向くその先。未だ闇が多くを支配する世界の中で、それでも確かに灯る火たち。

 いつかきっと、それは増えるだろう。増えて増えて、大きくなって、きっと太陽のように眩い大火を成すだろう。

 それは、あの時代に生まれた多くの不死人たちが望み、終に見ることの叶わなかった光景に違いない。

 

 

「せめて、その眠りが安らかなものであるよう……私もこれより、努めて参ります」

 

「そうか。……では、始めよう」

 

 

 がしゃり――と、鎧を鳴らして『彼』は巨鎧の前へと進み出る。

 半壊した巨鎧の前面は開け、少なくとも人一人分程度なら入れるくらいの余裕はある。

 その内に収まると、『彼』は手にした剣を胸部に突き立て、容赦なく己が心臓を貫く。

 吐血と共に、己の身体が崩れる感覚を覚える。肉の一片までが灰に変わり、ソウルと消えていく。

 だが失われゆくソウルは巨鎧に溶け、風に攫われる筈の灰はそのまま巨鎧の内側に残り続け、やがて同化していく。

 

 壊れた巨鎧は、ソウルと不死人の肉体を取り込んだからか、破損した箇所は見る見る内に再生し、成れ果てだった巨鎧は、かつての火の守護者たる偉容を取り戻した。

 

 

『——火防女よ。後を、頼む』

 

「はい――どうか安らかに、灰の方。……いえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

『——始祖王■■■■■様』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——古い時代、今ある人が生まれるよりも遥か昔の頃

 

 

 ——火によって永らえ、腐り果てた世界があった

 

 

 ——だがいつの頃か、火は1人の不死によって消され、闇が世界を覆った

 

 

 ——遥かなる闇の中で、やがて小さな火たちが生まれ、多くの新しい命が誕生した

 

 

 ——旧き時代の生き残りたちもそこに在ったが、火を消し、新たな時代の幕開けを担った不死の姿はどこにもなかった

 

 

 ——密かに死んだか、あるいは放浪の旅に出たのかは定かではない

 

 

 ——だが知る者は、彼の行方を探ることを禁じ、その名だけを云い伝えることを決めたという

 

 

 ——その者、名を“灰”(スタクティ)

 

 

 

 

 

 

 

 ——始祖王スタクティと言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——見つけたぞ、これだ

 

 ——何だこりゃ、随分とバカデカい……4mはあるぞ

 

 ——運び出すのはキツそうだな。だが、是が非でも此方の手中に収めておかねば……。

 

 ——ま、オカルトでも、縋るものが手元にあるだけマシだからな

 

 ——ああ。……では運び出すぞ

 

 

 

 

 

 ——『無限のエネルギー』。それが真実であればいいのだが……。

 

 

 

 

 




 舞台は旧人類が居た頃より始まります。

 絡めるためにかなり無理な繋げ方をするかもしれませんが、大目に見て頂ければ幸いです。

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