翼を失くした少年   作:ラグーン

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最近ガンダムSEEDに再熱してまさに勢いで書き上げました((震え声
ISには2度目の挑戦ですので気ままに見てもらえると助かりますっ!それではどうぞっ!


第1話 墜落してきたモノ

 第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦にて、2機のMSが激しい戦闘を繰り広げていた。

『自由』の名を持つフリーダム、『摂理』の名を持つプロヴィデンス。 

 この2機のMSによる、攻防戦の終局を決める戦いは双方の全てを曝け出すかのようだった。

 

「──―あなたは……! あなただけはっ!」

 

『自由』の名を持つフリーダムのパイロットである少年、キラ・ヤマトは声を荒げながらプロヴィデンスへとメインブースターを吹かせながら近づいていくが、それを簡単に許すほどプロヴィデンスは優しくはない。

 プロヴィデンスは最大の武器である無線式全周囲攻防システム『ドラグーン』を使い、フリーダムの接近を妨げる。

 お互いの機体性能は互角。しかし『ドラグーン』を持つプロヴィデンスの方が相性で有利だった。

 意思を持つかのように自在に動く『ドラグーン』はフリーダムを撃墜しようとするが、フリーダムはそれを避け、『ドラグーン』を逆にビームライフルで撃墜していくものの、『ドラグーン』の数が多く一筋縄ではいかない。

 

「いくら叫ぼうが今更……! これが定めさ! 知りながらも突き進んだ道だろう」

 

「……何をっ!」

 

「正義と信じ、わからぬと逃げ、知らず、聴かず!! その果ての終局だ、最早止める術などない!! そして滅ぶ、人は滅ぶべくしてな!!」

 

 フリーダムはプロヴィデンスに肉薄し、ビームサーベルを振るうがプロヴィデンスも複合兵装防盾システムに内蔵されている大型ビームサーベルで応戦し、お互いのビールサーベルがぶつかり合いつばぜり合いの状態になる。

 プロヴィデンスのパイロット、ラウ・ル・クルーゼは運命的に人は滅ぶものだと主張する。

 彼の言葉にキラ・ヤマトは声を張り上げながら否定する。

 

「そんなこと、そんな貴方の理屈っ!」

 

「それが人だよ、キラ君っ!」

 

「違う! 人は……人はそんなものじゃないっ!」

 

「はっ! 何が違う! 何故違う! この憎しみの目と心と、引鉄を引く指しか持たぬ者達の世界で、何を信じる!! 何故信じる!?」

 

「それしか知らない貴方がっ!」

 

「知らぬさ! 所詮人は己の知ることしか知らぬ! 

 

「まだ苦しみたいか! いつかは……やがていつかはと、そんな甘い毒に踊らされ、一体どれ程の時を戦い続けてきた!!」

 

 お互いの言葉は平行線でわかり合うことがなかった。

 キラ・ヤマトとラウ・ル・クルーゼはお互いの言葉を一つ一つ否定をするが、キラ・ヤマトは彼の言葉の一つ一つに思い辺りがあるのか動きが僅かに悪くなる。

 その隙を逃すほどプロヴィデンスは甘くはなく、フリーダムの右足をビームライフルで撃ち抜いた。

 

「フフフフ……ハハハハハハッ! どの道私の勝ちだ! ヤキンが自爆すればジェネシスは発射される! 最早止める術は無い! 地は焼かれ、涙と悲鳴は新たなる争いの狼煙になるだろう!」

 

「……そんなっ!」

 

「人が数多持つ予言の日だ!」

 

「そんなことっ!」

 

 ラウ・ル・クルーゼの口から告げられた言葉にキラ・ヤマトは絶句し、ドラグーンを使われ被弾するがそれは致命傷になることはなく、すぐに切り替えプロヴィデンスの左腕をビームライフルを使い破壊するもが、そのお返しと言わんばかりにビームライフルを握っていた右腕を破壊される。

 

「それだけの業! 重ねてきたのは誰だ!? 君とてその一つだろうがっ!」

 

「——それでもっ! 守りたい世界があるんだっ!!」

 

 ラウ・ル・クルーゼの言葉に声を荒げ叫ぶようにキラ・ヤマトは答えた。

 フリーダムはビームサーベルの柄同士を連結させ、両端からビーム刃を放出し、『アンビデクストラス・ハルバード』形態へと変え、そのままプロヴィデンスへと一直線に突貫する。

 あまりにも無謀なその行動にプロヴィデンスは虚をつかれ、ビームライフルを使うものの反応が遅れた原因でフリーダムには当たらず右腕を切り落とされる。

 

「ちぃ!」

 

「う"ぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

 プロヴィデンスはこのままでは危険だと判断して即座にフリーダムから距離をとり、両腕がないため自身の前にドラグーンを展開するもののフリーダムはそれにすら臆することなく無謀な突貫を続ける。

 先ほどとは違い、フリーダムは頭部、胸部と被弾するが撃墜はおろか止まることすらなかった。

 まるで一人の少女の想いが、彼が乗るフリーダムを守るかのように。そしてプロヴィデンスのコックピットにフリーダムのビームサーベルが直撃する。

 フリーダムとプロヴィデンスの生死をかけた激戦はフリーダムの勝利で決着がついた──しかし、その決着がついた場所は運悪くジェネシスの射線上であり、ジェネシスのγ線レーザーがプロヴィデンスとフリーダムへと無慈悲にも直撃した。

 

 閃光が晴れればそこには先ほどまで激闘を繰り広げ、全ての決着をつけたフリーダムとプロヴィデンスの姿はなかった。

 フリーダムのパイロットである、キラ・ヤマトも当然姿はない。

 

 C.E.(コズミック・イラ)71年9月27日に、地球連合とザフト軍の戦争は停戦した。大きな犠牲を払いながらも戦争は終わったのであった——

 

 

 ◇◇◇

 

 

「ふひーっ、今日も大変です……」

 

「だろうな。本来あり得ないはずのことが起きればこういった業務に追われるのは当然だろう」

 

 山田先生はそうですけど、と疲れた様子で息を吐く。本来ならば新入生のための業務だけですむのだが、想定外の事態が起きてしまった。

 私にとっても頭を悩ませたいことではあるが、その不満を疲れている山田先生に漏らすのは彼女への負担になる。忙しくなった原因が身内である弟だと尚更だ。

 

「男性がISを動かすことになるなんて思ってもいませんでしたよ。しかも、織斑先生の弟さんがですよっ!」

 

「私としては複雑なんだがな……」

 

 山田先生が興奮して鼻息を荒くするが、私としては気分が憂鬱になる。

 ISについては私が口煩く、かつ徹底的に弟の一夏へ情報規制を続けていたのだ。

 一夏がISと無関係でいさせるためとはいえ、我ながら過剰と思える程遮断していたのに、そのやってきたことが一瞬で崩れてしまった。しかもその理由が、試験会場を間違えたである。

 

「くっ! 普通IS学園と愛越学園を間違えるものなのかっ!? あの馬鹿弟はっ!」

 

「お、落ち着いてください織斑先生!?」

 

 不満が爆発して思わず机を叩いてしまい、それを見てアタフタとしながら山田先生は私を宥める。

 机に八つ当たりしたのは悪いが、この行き場のない怒りは何かに発散しなければやっていられるわけない。

 あの腐れ縁であろう、現在逃亡生活をしているメルヘン兎の仕業であるのならばどれほどマシか。制裁を加えられる分、精神的ストレスはある程度は発散できただろうに。

 

「一度休憩をしましょう。根を詰めすぎて身体に悪いですから! 織斑先生、コーヒーいかがですか?」

 

「ああ、いただこう。ブラックでお願いする」

 

「はいっ! 少し待っててくださいね!」

 

 小走りでコーヒーを作りに行く山田先生の背中を見送りながら、椅子に深く座り込む。

 山田先生が口にしたように、根を詰めすぎていては身体に悪い。ただ、今後のことを考えるとため息の一つで到底終わりそうにない。

 

(男である一夏がISを動かしたことにより、世界中でISの適性検査が行なわれていることだろう。これは報道を見て予想がつくとして……問題は一夏の身の振り方だ。『ブリュンヒルデ』の弟という肩書きはアイツの重石(おもし)になるだろうな)

 

 一夏が簡単に折れることはないのは知っていても、『ブリュンヒルデ』の弟という肩書きが重石になるのは間違いない。

 アイツには普通に日常を過ごしてほしかったんだが、とまたため息を吐いてしまう。

 そしてタイミングよくコーヒーを持ってきた山田先生が戻ってきて彼女からコーヒーを受け取り、新入生関連から話を再開する。

 

「この調子ですと、男性の操縦者は織斑先生の弟さんだけになるんですかね?」

 

「その点はわからないとしか言いようがない。ただ一夏以外の男がISを動かしたと言う報告は日本、世界からも今のところ報告されていない。隠蔽しているのならば話は別になるが……まぁ、隠蔽はほぼ不可能に近い。その線はないだろう」

 

「隠蔽する方が、国としてデメリットが大き過ぎますからね。男性操縦者というのはどの国でも喉から手が出るほど欲しいですから」

 

「どちらにしろ私たちがやらないといけないことに変わりない。ISをファッションの一つや二つと思っている新米共に、その危険性について叩き込むことだからな。性別など関係あるものか」

 

 新しくIS学園に入学してくる以上は、誰であれISについての知識とその危険性を叩き込むことに変わりはない。

 新たにISを動かした男が現れれば、このIS学園に来ることは確定なため教員の1人としてやることに変更はない。

 女だろうが男だろうが差別することなく、ISというモノがどのようなものかを教えるのが仕事だ。

 

(……新たに男性操縦者が出るのならば、一夏の精神的にも楽になるかも知れんな)

 

 一夏の今後のことを考えながらコーヒーを口に運ぼうとすると、突如地響きのような音が響いた。

 気が緩んでいたこともあり、一瞬何が起きたのか事態が飲み込めなかったが即座に頭を切り替える。

 IS学園が襲撃される、ということは恐らくはないだろうが、もしもの可能性は否定できない……。特に気紛れで襲撃するかもしれないあのメルヘン兎辺りが。

 

「山田先生、先程の音の方角はアリーナだ! アリーナの被害情報はっ!」

 

「は、はいっ! えっと……使用していた生徒はいませんので生徒の怪我人はありませんっ! アリーナの被害情報については遮断シールドを突破されているようですっ!」

 

 山田先生の声には緊張が走っておりそれは無理もないと結論づける。アリーナの遮断シールドを突破されているということは侵入されたのと同義だ。誰がそんな馬鹿なことを、と思うが今は考える時間が惜しい。

 

「山田先生は他の教員を引き連れて、IS装着後にアリーナへ向かうように。もしもの可能性もあるため準備は怠らないようにしてくれ」

 

「織斑先生はどうするつもりですかっ!?」

 

「なに、私は少しばかり先に馬鹿の顔を見に行くだけさ」

 

 山田先生が必死に止める言葉が聞こえてくるものの、無視してアリーナへと直行する。生徒がアリーナにいなかったのは幸運であるが侵入された事実に変わりはなく、すなわち生徒たちが危険な状況下にあるということだ。

 

(……それに、束が暇つぶしにやってきた可能性もある。その時は私1人で何とかすればいいが、どちらにしろ問題事だな)

 

 恐らく私の今の表情は人に見せられないだろうな。と内心で苦笑しながら、目的地であるアリーナへと辿り着く。

 まずアリーナの遮断シールドの確認のため上を向けば、確かに遮断シールドを貫通しているのだが……その突破方法が襲撃ではなく、たまたま墜落したという感じであり眉を顰める。

 

(……少なくとも束でないとわかったが、まだ情報が少なすぎる。さて、いったいどこの大馬鹿がこんなことをしでかした?)

 

 IS学園に突入してくるという大馬鹿者の顔を見るために晴れない煙へ一歩一歩近づく。

 すでに移動している可能性を考慮するべきなのだが、アリーナの遮断シールドの破られ方からして侵入者はまだこの煙の中にいる。

 近付いていくうちに煙は少しづつだが晴れていき、案の定何かが倒れているシルエットが見えてきた。

 

(ISに乗っているのなら、すぐにこちらへ気づくはず。なのに動く気配がないとみると……気絶しているのか?)

 

 その可能性も視野に入れておこう、と心に留めておき、遮断シールドを突破してきた大馬鹿者を私の視界に入れた時に煙は晴れる。

 そこには全身装甲(フルスキン)に身を包まれ倒れている人間がいた。

 

全身装甲(フルスキン)タイプか。少なくとも専用機と考えた方が良さそうだな……。しかし、これは本当にISか?」

 

 倒れているISの姿に私は怪訝な視線を向ける。

 全身装甲(フルスキン)が別に珍しいというわけではないのだが、ISの特徴的な一部である飛行用の翼(カスタム・ウイング)は見当たらない。

 装甲は色合いが抜け落ちたかのようなメタリックグレーだ。先程専用機と口にしたものの、少なくとも私の知っている限りこのISを所有していると思われる国、そして人物、全て心当たりがない。

 

「反応がないということは、本当に気絶しているようだな。やれやれ……事情聴取は暫く後になりそうだ」

 

 なぜこのIS学園内アリーナへ墜落したのか、話を聞けるような状況でないことにため息を吐く。

 少なくとも目を覚ますまでは拘束する必要があるのだが……意識を失ってることを配慮しなければならない。

 目を覚ますまで私が監視していればいいだろうと結論付けていると、ISがエネルギー切れでも起こしていたのか半強制的に解除され、私は次に姿を見せたISの操縦者に唖然とする。

 

「……これはとんだ空からの落とし物だな。よもや──第2の男性操縦者とは」

 

 未確認のISの中から現れたのは、白を基調に緑寄りの青と黒を配したISスーツのようなものを着用している少年だった。

 グッタリとした様子で顔色が悪いところを見ると、ただ事でないのがわかる。

 とりあえずこの気絶している少年を横になれる場所に連れて行こうとすると、ISを身に纏った山田先生が数人の教員を連れてきて合流する。

 

「織斑先生、大丈夫ですかっ!!」

 

「ああ、余計な心配をかけてしまったな山田先生。私は大丈夫だが……思いもよらない空からの落とし物を考えると頭を抱えたくなる」

 

「落し物……? どういう──って、その倒れている子が遮断シールドを突破した子ですか? ……え、えっと、ちょっと待ってください、もしかしてその子……男の子……?」

 

「そのとおりだ、山田先生。どうやら第2のIS男性操縦者が見つかったようだぞ。ここIS学園の校門からではなく、遮断シールドを突き破るというとんだはた迷惑な訪問でな」

 

「え、えぇぇぇぇ!?」

 

 アリーナ中に山田先生と教員たちの驚いた声が響くが無理もあるまい。しかし……今後更に増えるだろう仕事量を考えると益々憂鬱になってくる。

 いずれにしろ意識を失っている少年から話を聞かなければならないため、私は倒れている少年を自身の背中へと担ぐ。

 

「その子大丈夫なんですか……? 意識を失っているようですし、顔色も悪そうですけど……」

 

「呼吸は安定しているから大丈夫だろう。1、2時間ほど様子を見て起きる気配がなければ病院にでも連れていけばいい。すでに遅いとは思うが生徒たちにバレるわけにはいかないし、隔離する形でこの少年を監視しよう。すまないが手伝ってもらえるか、山田先生」

 

「はいっ! 私で良ければ手伝いますよ!」

 

 山田先生が協力してくれるのは非常に心強い。

 私より彼女の方が少年を看病するにあたり適任だろう。それにしてもこの少年は少しばかり軽すぎるんじゃないか? 

 年齢はパッと見た限り一夏に近いはず。すると背負っている少年は魘されるように譫言を口にする。

 

「……ぼく、は……君、を……守れ、なかった……」

 

(……どうやら背負っているものがあるようだな)

 

 本当に拾い物としては厄介ではあるものの、弱っている少年を見捨てるほど私は冷徹な女ではない。

 この少年がどれほどのモノを背負っているか分からないが……少なくとも今はゆっくりと休ませることにしようと、密かに私は思ったのだった。




次回からキラ君の視点で話を進めていきたいと思います。私はキャラ視点でしか話を書くことができないのだよ……すまない、本当にすまない。それなので独自解釈やらが大きく出るのでその時は許してくださいっ!

次回の更新は未定ですが気長にお待ちください!
(誤字&脱字の報告いつでもお待ちしております)
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