翼を失くした少年   作:ラグーン

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よしっ、これで先月分の投稿もチャラだ、いいね?えっ、いつもより分量が多いだって……?細かいことはいいんだよっ!よしっ、閉廷!ちょっと私は今からマキオンやるんで……((

みなさんの感想は本当励みになります。むしろこれを書く源だよ……けどね、評価君、君は駄目だ……胃が痛くなる((真顔


第10話 2人目の幼なじみ

「おはよ――――ってキラ大丈夫……?どこかやつれてるようだけど……」

 

「う、うん……大丈夫だよ。これは単純にちょっと疲れているだけだから……」

 

教室でシャルロットさんに心配されるけど別の意味で疲れているだけだから。鈴音さんが悪い人じゃないのはわかってるけど……流石に一夏のことで毎回聞かれるのは堪えるよ。

 

「あっ、キラキラー。おはようー」

 

「うん、おはよう。昨日はありがとうね、のほほんさん」

 

「ううん、私は特に何もしていないよー。デュッチーと仲直りできたのはキラキラ自身の力だよ。……モッピーとはどうだった?」

 

「……箒さんとは仲直りできなかったよ。ごめんね、手伝ってもらったのに」

 

「……そっか。うんっ、キラキラとモッピーが仲直りできるように私も手伝うよー!」

 

「もちろん私も手伝うからね。あの時のことは私にも責任があると思うから」

 

この2人には頭が上がらなくなりそうだなっと昨日から思ってきている。僕自身がどうにかしないといけなかったのにのほほんさんは無関係でありながら手を貸してくれて、シャルロットさんはこんな僕の助けになると言ってくれた。

 

(……けど、やっぱり2人にも僕が違う世界の人間だって教えることはできないよ。それに僕のこの力がバレてしまったら……)

 

彼女たちがどれほど優しいのかわかっていても僕自身のことを打ち明ける勇気はなかった。何かの弾みで僕がこの世界の人間ではないこと、そしてこの力のことを知られればまたあの時のように異端児として見られれてしまえばとても耐えられる自信はない。あの時はストライクのコックピットに逃げ込めばよかった……だけどこの世界ではその逃げ込める場所なんてない。

 

「おっす、キラ。……難しい顔してるけどなんかあったか?」

 

「あっ、うん、特になんでもないよ。一夏こそおはよう」

 

「あら、みなさんごきげんよう。キラさん、今朝はきちんと朝食を取りましたか?昨日も途中でパーティーを抜けたとお聞きしましたので……少しばかり心配いたしましたのよ?」

 

「今日はきちんと朝食を取ったから大丈夫だよ。これ以上は流石に織斑先生に迷惑をかけるわけにはいかないからね」

 

「まぁ、千冬姉の言う通り朝食はきちんと食べた方がいいぞ?キラって結構ぼうっとしてることが多いしな」

 

「そうかな?僕自身はそんなつもりはないんだけどなぁ……」

 

「今回はわたくしも一夏さんに同意しますわ。理由はなんであれどキラさんはもっと自身の自己管理をすべきだと思いますわよ。体は健康が一番なのは間違いないのですから」

 

セシリアさんと一夏の言っていることは正論であるため苦笑いで誤魔化してしまう。けど、当分は少しづつ私生活を改善していくつもりだ。……うん、慌てないで少しづつ変わっていこう、これ以上改善しなかったら織斑先生に出席簿で修正されそうだし。

 

「あっ、そういえばみんな知ってるー?新しい転校生が来たって噂ー」

 

「転校生?そりゃ、またなんで?まだ学校始まって数週間ちょいしか経ったないだろ?」

 

「ええ、わたくしもその噂は耳にしましたわ。あくまで噂ですので信憑性に欠けますが……」

 

「うーん、私も確かに聞いたけど確か二組にだったよね?」

 

(……それって間違いなく鈴音さんのことだよね。まだ、鈴音さんが昨日来たことは一夏に伝えない方が絶対にいいよね……)

 

のほほんさんの一言がきっかけで話が広がっていく中で僕は冷や汗がどっと流れる。昨日の放課後に会ったことに、このタイミングで口が滑ったら鈴音さんに後でタダじゃすまないような気がするので適当な相槌で乗り越えよう……再会することを楽しみにしているのは話していてよくわかったしね。……まぁ、かなり別の方面でも殺気立っていだけど。

 

「……どちらにしろこのクラスに転入してくるわけではあるまい。その噂が事実かどうであれ一夏が気にする必要はないだろう」

 

いつものメンバーが僕の近くで話しているということもあるだろうけど気まずそうではあるが箒さんも会話の輪へと入り込んできてくれる。少しだけ僕と目を合わせてくれたということは拒絶されていないと少しだけ前向きに捉えていいのかな……?

 

「モッピー、おはようー!ほらほら、キラキラも」

 

「う、うん……おはよう、箒さん」

 

「……ああ、おはよう、キラ」

 

のほほんさんの気配りもあって僕と箒さんはぎこちないがお互いに挨拶を返す。まだ完全には拒絶されていないことに僕は内心でほっと安堵する。まだ話をすることができる、それが今の僕にとっては何よりも大きな収穫だ。一夏とセシリアさんは理由を知らないこともあり気にしているようだけど、2人が聞いてくる前にのほほんさんは再度その噂へと話を切り替える。

 

「ふふんー、実は言うとですね。のほほんさんはその噂の転校生の有益な情報を得ているのだよー。なんとー、その転校生は中国の代表候補生らしいんだよー!」

 

「……中国の代表候補生ですか……シャルロットさん」

 

「……うん、その情報が確かならちょっとマズイかも」

 

「えっと、それの何がマズいんだ……?」

 

「――――そんなこと単純な話よ。新しく中国の代表候補になった子は国内で過去最短で代表候補として上り詰めた。それもたったの一年でね。そしてその二組に一年で上り詰めた専用機持ちがクラス代表になったってこと!」

 

「鈴……?お前、鈴か……?」

 

教室内ではなく入り方の方から声が聞こえる。そこには腕を組み入り口を塞ぐように佇む彼女がそこにいた。多分、これがやりたかったんだろうなっとシミジミと思いながらも僕はあくまで知らないふりをする。一夏が驚いているところを見て鈴音さんは満足そうでふふんっと鼻を鳴らす。

 

「そっ、中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ。アタシが二組のクラス代表になった以上はアンタに優勝を諦めてもらうわ」

 

「何カッコつけてるんだ?まったく似合わないぞ」

 

「はぁ!?なんてこと言ってくれんのよ、アンタは!!」

 

(……一夏、流石にその一言は駄目だと思うよ……)

 

なんというか一夏はやっぱり少し鈍いところがあるというか……なんというか。鈴音さんにもう少し他の言葉をかけてあげるべきだったと思うよ。だけどこの二人のやり取りで一夏と鈴音さんが知り合いなのがわかり、そして親しげに話してるところを見て約2名から威圧を感じるのは気のせいだと思いたい。

 

「――――おい」

 

「なによっ!!アタシは今からあの馬鹿を――――」

 

「ほう?あの馬鹿を……なんだ?言ってみろ、鈴音」

 

「ち、千冬さん……え、えっと、そのぉ……」

 

「はぁ、SHRの時間ださっさと自分の教室に戻れ。あと、昨日まではともかく、今日から織斑先生と呼べ。いいな?」

 

「は、はい!わかりました!し、失礼しました!」

 

目の前で鈴音さんが絶対に超えられない壁を目撃した気がする……過去織斑先生になにかされたのだろうか?ちょっと気になるけど流石にプライバシーに関わるからあまり聞かない方がいいだろう。一夏と鈴音さんの関係が気になり教室内がザワザワと騒がしくなる前に織斑先生の一言で静寂がおとずれる。そして今日のISの授業と学習が始まるのだった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「……ううっ、少し私も疲れたかも……」

 

「あ、あはは、お疲れ様、シャルロットさん」

 

「もう、キラも2人を宥めるの手伝ってよぉ。私1人だと大変なんだからね……」

 

「そうしたいのは山々だったけど僕だと多分逆効果になる気しかしなくて……」

 

主に口が滑った場合の時とかってそっと目を逸らす。多分今から巻き込まれるのは間違いないから言い訳をするのも諦めてるけどね。時と場合によるけれど諦めることも大切なこともあるんだよ……。

 

「2人とも席を確保してもらって悪いな。キラの分はこれでよかったよな?」

 

「そしてこちらがシャルロットさんの分ですわ。こちらでよろしかったですわよね?」

 

「こちらこそ頼んでごめんね。……それに今日は席確保の方が比較的楽だと思ったからね」

 

「……えっと、今日のキラってなんか悟り開いてない?」

 

悟りを開いたというより諦めていると言った方が正しいかなぁ。一夏から昼食を受け取ってなるべく巻き込まれないことを密かに願っておく。するとお互いに威嚇をしながら箒さんと鈴音さんも席につく。その際に一夏の近くに座ることで一悶着あったけど……。

 

「……それで?一夏、そろそろどういう関係か説明してほしいんだが」

 

「そうですわっ!先ほどから一夏さんとは親しそうにしていることに断固として説明を求めますわ!」

 

「……あー、キラがどうして悟りを開いてるのかは分かったかも。んー、でも私も一夏とはどんな関係かちょっと気になるかな」

 

「ふふんっ、そんなに知りたい?アタシと一夏の関係」

 

3人からの一夏との関係性を聞かれて自慢げに笑みを浮かべると箒さんとセシリアさんの纏う空気が重くなる。……あっ、このスープ美味しいなぁ、また今度頼んでみようかな?半端現実逃避気味にスープをかき混ぜていたら一夏の一言でその空気は呆気なく消え去る。

 

「?そんなのただの幼なじみだよ。そうだよな?」

 

「……ええ、そうねっ!た・だ・の!幼なじみよ!この馬鹿っ!!」

 

「な、なにをいきなり怒るんだよ……」

 

「……幼なじみ?一夏、どういうことだ?」

 

怪訝そうに一夏のことを睨む箒さんに一夏は鈴音さんとの関係を説明する。要するに箒さんが引っ越していった後に鈴音さんが引っ越してきたらしい。僕の場合はアスランが幼なじみになるのだろう。……アスランは大丈夫だろうか?ううん、カガリが側にいてくれるからきっと大丈夫なはずだ。

 

「ほら、前に鈴にも話しただろ?こっちが箒。小学校からの幼なじみで、俺の通っていた剣道場の娘」

 

「へぇ、アンタがあの箒ねぇ。……初めまして、これからよろしくね?」

 

「……ああ、こちらこそよろしく」

 

目には見えていないはずなのに2人の間には火花が散ってるなぁ。正直予想していた展開だからこそ僕は無言でスープをかき混ぜる。……今すぐ教室に戻ってもいいかな?

 

「このわたくしの存在を忘れるのは困りますわっ!中国代表候補、凰鈴音さん!」

 

「あー、えっと、……確かセシリア・オルコットだっけ?イギリス代表候補の?」

 

「なんなんですのっ!?その如何にも他人から聞きましたみたいな反応っ!?それに絶対わたくしのこと忘れていらっしゃったでしょ!?」

 

「ソンナコトナイワヨー。まぁ、アンタもこれからよろしくってことで。同じ専用機持ち仲良くしていきましょ?」

 

「ぐぬぬぬっ、初めの棒読みが納得はいきませんが……ま、まぁ、わたくしは寛大ですのでそれぐらいは見逃してあげます。ええっ、同じ専用機持ちとして仲良くしていきましょう?」

 

……ごめんね、オルコットさん。その内通者は僕なんだ……鈴音さんに一夏と親しい女性の名前を言えって言われたから。罪悪感に打ちひしがれて何度も無言でスープをかき混ぜる。……僕はどうしてこんなところに来てしまってるんだろうか?

 

「そして、アンタがフランス代表候補のシャルロット・デュノアね。……うん、アンタとは普通に仲良く友達になれそうだわ。気軽に鈴でいいわよ」

 

「なんか私の時は雑じゃないかなぁ……まぁ、いいけどさ。うん、よろしくね、鈴。私もシャルロットで大丈夫だよ」

 

「それでアンタはなにスープを無言でかき混ぜてんのよ」

 

「……気のせいじゃないかな?」

 

「なーにが気のせいよ。アンタが最低限な生活しないとアタシも千冬さんに怒鳴られるんだから。ご飯ぐらいは真面目に食べなさい、いや食べろ」

 

鈴音さんにジロリと睨まれて僕は何度も頷く。そんな僕を見てよしっと納得して彼女は自分の食事に戻る。僕と鈴音さんがまるで面識があるかのようなやりとりに疑問を持ったシャルロットさんが口を開く。

 

「あれ?もしかして鈴とキラって知り合いだったの?」

 

「あくまで昨日からだけど。キラが昨日私を学園で案内してくれたのよ。千冬さんに頼まれたって言ってたのは本当のことだったしね」

 

「へー、だから昨日の放課後キラはすぐに教室から出て行ったのか。んっ、そういえばだけど鈴は何で今転校してきたんだ?」

 

「あー、それね。アタシは正確にいえば転校じゃなくて入学手続きが遅れただけよ。ちょっとお母さんが体調崩したからそれの看病でね」

 

「えっ、お袋さん大丈夫なのか?親父さんはどうしたんだよ?」

 

「お母さんは大丈夫、今はピンピンしてるわよ。……お父さんはちょっとね、その時いなかったから。ほら、アタシの家のことよりアンタな方はどうなのよ?久しぶりに会ったんだからさ、今日の放課後にちょっと話さない?」

 

楽しそうに話していた鈴音さんの表情に一瞬陰りが差すけどすぐに違う話を切り出す。けれど、先ほどよりかは空元気のように見えるけど……それに踏み込めるのはきっと一夏だけだ。

 

「――――悪いが一夏は私とISの特訓をするため放課後は埋まっている」

 

「そうですわ。クラス対抗戦に向けて特訓がありますの。今朝の宣戦布告を忘れたとは言わせませんわよ?それにわたくしは専用機持ちとして一夏の特訓相手として必要な存在ですから」

 

「ほら、キラもきちんと食べないと体がもたないよ?はい、私の分を少しあげるね」

 

「い、いや悪いよ。僕は別にこれで足りてるし……」

 

「そこのお二人はナチュラルに部外者ぶるのをやめてくださいましっ!?」

 

「あはは、私はちょっと今日の放課後は予定があるから一夏の訓練には手伝えないからさ、ごめんね」

 

「僕はISを持っていないから手伝うこともできないからね……」

 

僕とシャルロットさん今日は手伝えないことを伝えれば味方が2人減ったこともあり彼女はぐぬぬっと唸るがこればかりはどうしようもできない。まずIS持ってない僕がアリーナにいても逆に邪魔になるだろうし……。

 

「ふーん、それならその特訓が終わったら行くから、空けといてね。それじゃあね、一夏!」

 

「あっ、待てよ!……ったく、最後まで人の話を聞かないで行きやがった」

 

「……当然だが、一夏は訓練が優先だとわかっているだろうな?」

 

「一夏さん。今日からビシバシ鍛えますのでよろしくお願いしますわね」

 

「……うん、キラが朝からずっと心ここにあらずな理由がよーくわかったよ」

 

「……僕としてはなるべくフォロー入れたいのは山々なんだけど、馬に蹴られたくはないからね」

 

シャルロットさんと共に一夏に強く生きてっと静かに祈ることにする。僕は誰かに肩入れするというより……人に恋路をアドバイス等をする資格はない。そんな僕は一夏に詰め寄るセシリアさんと箒さんをみて苦笑いをする。

 

「……ちなみにキラ、お前にも話があるからな?」

 

「……ええ、キラさん。今は時間は空いていますわよね?」

 

「……うん、とりあえず2人には冷静に僕の言い分も聞いてほしいかな」

 

……やっぱり薄々思ってたけど2人が見逃してくれるわけないよね。僕自身も内通者としての後ろめたさもあって甘んじて2人から鈴音さんに何をリークしたのか根掘り葉掘り問いただされるのだった。

 

「3人とももうアリーナに向かったのかな」

 

「あの様子だと今日の一夏は相当しごかれるんじゃないかな。ちょっと見捨てたのに罪悪感があるけど……」

 

放課後になれば一夏は2人に引きずられるようにアリーナへと連行されていった。うーん、2人の一夏への気持ちは見ていたらわかるんだけど当の本人はそのことに気づいていない。……うーん、薄々思ってたけど一夏って鈍いのかな?

 

「そういえばだけど、キラって専用機はまだ来てないの?そろそろ専用機のオファーは来てもおかしくないと思うけど……」

 

「特にそう言った話は来てないよ。そう言った話があるなら織斑先生か山田先生から話があるはずだしね。それに……僕はISに搭乗したいとは思ってないから……」

 

「……そう、なの?」

 

「うん、僕には必要のないものだから。……あっ、えっと、ごめん……みんなの前では言っちゃいけないのはダメだとわかってたんだけど……」

 

「ううん、気にしないで。……私もさ、ISに乗り続けているのは居場所みたいなものだから」

 

「居場所……?それって――――」

 

シャルロットさんの言葉の意味を確認する前に彼女のポケットから電子音が聞こえてくる。急いでそれを取り出して連絡先を確認した彼女は息を飲みごめんねっと一言だけ伝えて教室を後にする。……携帯を見た時彼女が苦しそうで何かに怯えているように見えたのは気のせいだっただろうか?一瞬だったから僕の見間違いかもしれない。

 

(……どうして彼女はISが居場所だなんて言ったんだ……?)

 

なぜ彼女がそんな風に言ったのかわからない。けれどそれは彼女の本心なのではないんじゃないかってそう思ってしまう。似たような経験があるからこそ彼女のその言葉が僕の思い違いだって信じたい。一抹の不安を感じながら僕も教室を後にして寮の部屋に戻ることにする。とても屋上へと向かう気力はわかなかった。

 

◇◇◇

 

 

(……あれ、僕は何をしていたんだっけ……?)

 

自分がなぜベットで横になっているのか一瞬わからなかったが、授業が終わった後に全てから逃げるように眠りについたのを思い出す。体に気持ち悪いほど汗がベタついた感触があるということはまた何か嫌な夢を見たのだろう。

 

(……今何時だろう……?ううん、別にそんなことはどうでもいいか……)

 

起きてすぐだからなのか嫌な夢を見たのが原因かはわからないけど、目が覚めてもどんな些細なことでも行動する気力がわかない。せめて電気はつけようと酷く気怠げな体に鞭をうち電気をつけ時計を確認すれば八時を過ぎていた。

 

「……夕食の時間過ぎちゃったか……別にいいか、特にお腹が空いたわけじゃないし……」

 

昼食でそこそこ食べたから今日は別に食べる必要はないだろう。それに最近はどうも食べ物の味覚がわからなくなってきている。口に入れても味がわからないこともあって食べることも最近は義務的にやっている気がしてならない。

 

「……また寝ようか。鈴音さんが戻ってきた後にシャワーを浴びれば大丈夫なはずだから……」

 

汗が気持ち悪いけどシャワーを浴びたところでもう一度寝れば汗をかく時点で骨折り損だ。それならまた寝てまとめて洗い流したほうが効率的だ。もう一度ベットの中に潜り込もうとしていると扉が勢いよく開き、いきなりのことで視線をそちらに向ければ泣いている鈴音さんがそこにいた。

 

「……っ……ばかぁ、一夏なんてもう知らないんだから……っ!!」

 

「鈴音さん……?」

 

「……っ!?な、なんでここにアンタがいんのよぉ!!」

 

「……ごめん……」

 

酷く理不尽な怒鳴られ方をされたのはわかっているけどとてもそれを指摘するような雰囲気にはなれない。彼女が目を晴らして泣いていることもあるけど、彼女から怒りと悲しみが感じとれる。けど、流石に彼女のことをこのまま放置するわけにもいかない。

 

「え、えっと、これ使っていいよ。僕は部屋を出るから落ち着いたら呼んでよ」

 

「……別にそこまで気を使わなくていいわよっ……でも、ハンカチはありがと……っ」

 

ハンカチを渡してそれを受け取った彼女はそれで涙を拭き取る。鈴音さんも徐々に落ち着いてきたようで自分の泣いている姿を見られたこともあって居心地が悪そうにしている。

 

「やっぱり僕は出て行こうか?今日ぐらいなら僕は他の場所で過ごすからさ」

 

「……んっ、お願いだから今のアタシに気を遣わないで。あと、さっき理不尽なこと言ってごめん……」

 

「いいよ、アレぐらいは特に気にしてないよ。先にシャワーでも浴びてきなよ、今よりかは頭がスッキリすると思うから」

 

「……そうするわ」

 

鈴音さんは気怠げにシャワー室へと向かう。突然なことに未だに驚いてるけど……多分、一夏となにかあったんだよね?鈴音さんがここに来たのって昨日からで流石に他の人とトラブルを起こしたのは考えにくい。数十分ほど経つとシャワー室から頭にタオルを被せた鈴音さんが出てくる。

 

「えっと、温かい飲み物も用意したけど……飲むかな?レモネードだけど……」

 

「……そうね。もらっとく」

 

「…………」

 

「…………」

 

お互いにまだ知り合って一日しか経っていないこともあって部屋は静寂に包まれる。僕じゃなければ気の利いた言葉を言えたかもしれないけど僕にそんな芸当はできない。数秒か?それとも数分間の静寂を破ったのは僕ではなく鈴音さんだった。

 

「……話とか聞いてこないんだ、アンタ」

 

「……気にならないかって言われたら嘘だけど、誰にだって話したくないことがあるのは僕自身わかっているから」

 

「……そっ、アンタが案外気の利いた奴なのはわかったわ。……あー、グチグチ情けなく泣き喚くのはアタシには合わないわ。キラ、アンタは愚痴くらい付き合ってくれるわよね?」

 

「うん、鈴音さんが少しでも楽になるのなら付き合うよ」

 

気を取り直した鈴音さんの口からなぜ自分が泣いていたのか話す。要するに彼女は一夏と小学生の頃に約束したことがあるけれど一夏はその約束を間違えて覚えたらしい。

 

「――――ってこと。あー!今思い出したら腹立ってきたっ!戻ってもう1発叩いてこようかしらっ!」

 

「お、落ち着いてよ。一夏だってきっと混乱してるはずだからさ」

 

「……わかってるわよっ!!それで?」

 

「えっと、それでってなにがかな……?」

 

「アンタの意見も聞かせろって意味よ」

 

「……正直に言っても怒らないのなら言うけど……」

 

「怒らないから言って。まず部外者のアンタに怒ったらそれこそ八つ当たりじゃない」

 

本当に意見を言っていいのか躊躇ってしまうけど今この場で言わない方が怒られる気しかしない。あまり人の恋路には関わりたくないが流石にこれはしょうがないよね……?

 

「これはあくまでも僕の意見だけど……一夏も確かに悪いとは思うけど鈴音さんにも悪いところはあると思うな。約束を覚え間違えている一夏もだけど……小学生の頃に約束をしたことをきちんと覚えておくのは案外難しいと思うよ」

 

「……わかってるわよ。そりゃ、カッとなって叩いたのはアタシだし……確かに冷静なったら小学生の時に約束したのを覚えとけって言ってるのがめちゃくちゃなのはわかってる。けど、毎日おごってくれるって勘違いすんのは流石に文句の一つや二つは言いたくなるわよっ!!あん時だってそれ言うのがどれほど恥ずかしかったかっ!!」

 

「でも、鈴音さんはそんな一夏のことが好きなんでしょう?」

 

「は、はぁ?べ、別にあんな奴のことなんか……っっ!そうよ、好きよ、文句あんの!?アタシはあの馬鹿一夏のことが好きよっ!」

 

「なら、次はきちんと鈴音さんのその気持ちを真っ直ぐと伝えたらいいと思うよ。一夏はむしろそれぐらいしないと鈴音さんの気持ちに気づかないんじゃないかな。僕よりも付き合いが長い鈴音さんの方が一夏が鈍いのはわかってるでしょ?」

 

「んぐっ……そんなのわかってるわよ。……アイツがどんだけ鈍いのか。けど、告白してさ、それで振られたら一夏とどんな顔で話せばいいのかわからないじゃない……」

 

「……そうだね。僕は結局は部外者だから、必ず成功するって言えない。でも、これだけは覚えていてほしいな。想いを……ううん、なにも伝えることができないで別れる方がよっぽど後悔するってことは。……僕が偉そうに言えることじゃないんだけどね」

 

……なにも伝えることができないで別れることの方が酷く後悔する。僕はフレイに最後に伝えることもできなくて、彼女との約束も最後まで守ることもできなかった。鈴音さんの言葉を借りれば約束を守れない男の方がよっぽど最低だ。

 

「んっ、覚えておく。……答えにくかったら答えなくていいけどさ、アンタはいたの?好きな人」

 

「……うん、いた。僕にとってその人はなによりも大切で守りたい人だった。彼女がいてくれたらそれだけでよかったんだ」

 

「……情けなさそうなアンタが守りたい人ってどんな子だったのよ。けど、そんだけ好きなら告白すればよかったじゃん。今からでも遅くないんじゃない?」

 

「……彼女はもう僕の手の届かないところに行ったから……だから、みんなにはそんな後悔はしてほしくないんだ」

 

「……みんなってことはあの2人もってことね。そこはアタシにはって言う雰囲気でしょうが」

 

「あ、あはは……それについては僕はみんなの中立かな。……あまり個人に加担しすぎると痛い目をみそうだしね」

 

実際今日はその痛い目を見たしね、と昼の時の思い出したくない悪夢がチラつく。鈴音さんはその時にはいなかったからその意味がわかっておらずキョトンとしていたけど。

 

「まっ、愚痴に付き合ってくれてありがと。アンタって結構いい奴なのはわかったわ。てかさー、アンタ今日夕食は食べたの?」

 

「うっ……」

 

「その反応は絶対食べてないやつでしょ。……はぁ、あの千冬さんが頼み込むのも納得がいくやつだわ。さっきの愚痴聞いてくれたお礼でなんか軽めなものなら作ってあげる。……ただ、アタシが泣いたってのは絶対にあの馬鹿にはチクるんじゃないわよ?」

 

「えっと、その理由は?」

 

「そんなのアイツの口から謝らせたいに決まってるじゃん。女の子の涙は安くはないのよ」

 

これは一夏にさりげなくアドバイスするのも無理そうかなぁ。でも、一夏がなぜ鈴音さんが泣いていたのか自力で答えに辿り着けるのかと言われれば目を伏せたくなる。……今回ばかりは僕もフォローができないかなっとキッチンに立つ鈴音さんの背中を見ながら思うのだった。





えっ、詰め込み過ぎだって?いや、ちょっと深夜テンションで書いたらこんなことになりました。後悔はしてないけど、反省はしてます。……いや、ちょっと鈴音ちゃんかけてテンション上がってるのは否定しません。えっ?モッピーとキラ君の和解したの?だって?してませんよ、恋する乙女の力はそんなこと気にする暇はない時があるからね、しょうがないね(白目

けど和解が近いのは先に言っておきます。いつまでもギクシャクさせるわけにもいかないんで。てか、箒さんにも仕事あるんで。えっ、ちょっと1人不穏な空気出してないかって?キノセイダヨー、ホントホント。まぁ、次回は一気に飛ばしてクラス対抗戦やります。ぶっちゃけ書くことはこれで書いちゃったんで((

はい、それではいつもの誤字&脱字報告お待ちしています。訂正がありがたいです……そして、感想も願わくば((
あっ、ただ評価は本当投げないで……胃が痛くなるので((真顔
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