はい、どうも作者です。みなさんの感想をニチャァとして笑みを浮かべながら楽しく読ませてもらっています。ちなみにヒロイン候補の件ですがあくまで2人と思っているだけで下手したら増えますのでその時は許してください((原作みつつ
えっ、今回の話はなんだって?私は別に某銀髪ヒロインは次話に出るとは言ってないです((
ちなみに私のサブタイトルは特に期待しないでください。ネーミングセンスは壊滅的なので((吐血
「本当によかったんですかー?彼をこのままにして。本当なら病院に入院させないといけないと思いますよ」
「そんなことはとっくにわかっている。だが、それを拒んだのはキラ自身だ。本人が今の状態を良しとするのならば私から強要することはできん」
更識楯無は目が覚めた少年――――キラ・ヤマトがどのような状態なのかを知っているからこそ、織斑千冬に提案を出すが表情を歪め彼女は首を横に振る。更識楯無の言っていることはこの場では正論だ、それは織斑千冬も何よりも感じている。クラス代表戦の最中に突如と現れた無人機により彼は負傷をし、その状態のままISを纏い戦闘へと身を投げた。その場にいた織斑一夏、凰鈴音、キラ・ヤマトによる三名によりこちら側の被害は最小限へと抑えられたが最後に凰鈴音を庇い撃墜。本来ならば入院しなければならない怪我なのだが本人はそれを拒絶し、今は意識を回復して彼がIS学園に入学する前に使ったいた部屋で療養中だ。
「怪我については当然ですけど……キラ君って精神的にもだいぶ瀬戸際だったりするんじゃないんですか?よく今の生活ができてるんだってあの子には感心します。表面上は当たり前のように日常を謳歌してますけど、その裏ではかなり追い詰められてるっぽいですよ?本来なら無理矢理にでもカウンセリングをさせないといけない精神状態では?」
「……PTSDを患っているのは間違いないだろうな」
織斑千冬は意識を取り戻した彼が開口した言葉を思い出す。撃墜された自分がなぜ生き残っているのかと問われた際には彼がそれほど精神を追い詰められていたことに絶句した。彼の世界が戦争をしていて、その戦争へと身を投げたというのは彼の口振りから察することはできた。そして彼にとって大切な人を目の前で亡くしたということも。彼が精神的にも不安定なのを気づいていないわけではなかった、それを侮っていたわけでもない。ただ、彼女の想像以上に彼の心は悲鳴を上げていたのだ。
「……それは重症にも程がありますよ。尚更、入院させないとマズイじゃありませんか。精神が壊れた後だと手遅れになりますよ?」
「……そんなことはわかっている。だが、今目を離してしまえばそれこそキラの精神は壊れてしまうのではないのかと私は思っている。まず、カウンセリングを受けさせたところでアイツが他者に自身のことを打ち明けることは到底考えられん」
キラ・ヤマトが異なる世界の人間だと言うのは限られた人間、織斑千冬、山田真耶といったごく僅かな人間しか知らない。本人もそれをバレることを恐れているか定かではないがその2人を除いて自身から他人へと声をかけることは少なくそれは彼と親しい織斑一夏たちにも同様だ。
(……それにアイツは私たちには自身の世界のことを話はしたがアイツ自身に関わることはごく僅かしか話していない。自分がナチュラルかコーディネイターのどちらかについてもな)
この世界でキラ・ヤマトという少年を一番知っているのは織斑千冬ではあるがそれもほんの一端に過ぎない。だが、織斑千冬にとってはそんなことは些細な問題ではない。キラ・ヤマトがどのような道を辿り、どのような存在であっても彼女は拒絶する気はなかった。傷つきながら誰かを守るために戦いへと再度身を投げた少年を否定することなど。
「織斑先生が彼に過保護になってるのはよーくわかりました。私に理由も聞かせないで貸しを作る程ですから。突然彼の戸籍を作ってくれだなんて言われた時には驚きましたよ。それで?……あの襲撃者は誰によって引き起こされたのかわかったんですか?」
「お前だってあの無人機による襲撃は誰の手によるものかは薄々わかっているだろう?所属不明であり新たなるIS、そしてそのコアは登録不明ときた。この2つが揃った時点で誰の手によって引き起こされたのか答えは明白だろう」
「……現在消息不明のISの生みの親である、篠ノ之束ですか。IS学園のセキリティをなんの下準備もなく掌握できるのは"天災"と呼ばれた彼女ぐらいですもんね。ですが、どうして彼女が襲撃を企てたんですか?大切な妹さんがいたはずなのに」
「……さてな、私もアイツとは腐れ縁にも等しいが考えていることを把握しているわけじゃない。それに箒の行動については束も完全に想定外だったろうよ。あの無人機は音に反応するように優先的に設定されていたのだろう。その結果、箒がスピーカーを使ってしまったことによりあのような惨事になった……あくまでも私の憶測だがな」
「どうにしろ私には天災と呼ばれている人は考えは理解できませんよ。ただ、個人としては大切な妹さんがいたのに襲撃したことについてはお馬鹿さん、なんじゃないかと思いますけどねぇ?」
"天災"がこの場、もとい消息不明をいいことに更識楯無は広げた扇子に達筆な文字で「お馬鹿」と書かれており、織斑千冬は彼女の胆力に呆れを通り越して感心する。仮に本人がこの場で居たら喧嘩程度ではすまなかっただろう。まぁ、彼女がなぜ今回こうも、かの天災に辛辣である理由は大方察している織斑千冬は全力で無視を決め込むことにした。
「まぁ、襲撃者については推測で語っても意味はありません。……織斑千冬さん、彼、キラ・ヤマトはいったい何者なんですか?私の記憶が正しければ適性検査を除き、ISの搭乗はアレが初めてなはずですよね?なのに彼は"初心者"としてはあるまじき行動を幾つかしているんですよ。中継室からアリーナへと佇んでいた敵の武器を狙撃、そして破壊。その後は命を落としてもおかしくない状況でありながら、自身が戦闘を行うのはさも当たり前のように介入。さらに足手まといになるどころか無人機の撃墜に至り、戦闘が終わるまでは冷静に最後まで戦ってみせた」
「…………」
「ああ、あとは途中で何事もなくフランス代表候補である、シャルロット・デュノアの得意技も使っていましたよね?……無人機による被害を必要最小限で抑えてくれたのは感謝していますけど、彼個人のことを警戒することについては別です。やけに戦いに場馴れしていたように感じたのは私の勘違いではすみませんよ?」
先ほどとはまるで別人のように冷たい声で更識楯無は赤い瞳を細める。彼女としては彼がこの学園に害をなすものなのかを知る必要がある。一部ではあるが彼女のその裏の顔を知っている織斑千冬ははっきりと口にする。
「その違和感は自分で直接確かめろ。私の口からは答えられることは何もない。……だが、これだけは先に念を押しておく。アイツの口から強引に自身のことを喋らせるつもりなら私は黙っているつもりはないぞ」
「……それは、一教師としてですか?それとも……1人の大人としてでしょうか?」
「それについては答える義務はない。アイツを警戒するなとは言わない、それがお前にとっても必要なことだと理解している。だが、アイツは誰とも変わらない普通の奴だというのを覚えておけ、いいな?」
「……ええ、わかりました。心に留めておきます。それでは私はこれで失礼させてもらいますね?あっ、その前に一つ。新しく転校生が来るらしいですけど……それについてはもちろんご存知ですよね?」
「……ああ、わかっている。それについては私が全て引き受けるつもりだ」
織斑千冬の言葉を聞き満足したのか更識楯無は退出する。元よりその転入生とは彼女にとっても縁が深い1人だ。一年といった短い期間ではあるものの教官として、1人の大人として接したのをよく覚えていた。……だからなのだろうか、彼女はどうしようもなく一抹の不安に駆られるのだった――――
◇◇◇
「本当に病院に入院しなくて大丈夫ですか?キラ君の怪我は本来ならば入院しないといけないんですよ?」
「お気遣いありがとうございます、山田先生。でも、入院するほどじゃないから大丈夫です。これくらいならまだ何とかなりますから」
数日間の休養にて何とか頭の包帯は取れたけど左肩の脱臼はそうもいかず包帯で完全に固定されている。山田先生がこうも心配しているのは、本来は入院しなければならない怪我であるもののそれを拒んだことが原因だ。入院するかどうかについては悩みはしたものの、僕自身の存在が露見する恐れがあるため入院について他に理由を考え断ることには骨が折れたよ……。
(……実際イージスの自爆に比べたら軽い方なのは本当だからね。目立った怪我が肩の脱臼ぐらいなのはストライクが僕のことをまた守ってくれたのかな……?それとも……)
自分がスーパーコーディネイターだから?そんな考えが脳裏によぎるがすぐに振り払う。きっとストライクが再度守ってくれたんだと自身に何度も言い聞かせる。その様子を怪我がまだ痛んでいるのかと山田先生は慌てるが僕は大丈夫だと何とか笑って誤魔化す。
「……本当にごめんね。本来ならあの襲撃に対して私たち教員が対処しないといけない問題だったのに。それなのに対処することもできなくて、そしてキラ君にこんな怪我を負わせてしまった。本当にごめんなさい……っ!」
「あ、頭を上げてくださいっ!僕はただやらないといけないことをやっただけなんです。それに戦うことについては僕は馴れていますから」
元の世界でMSで身についてしまった技術はこの世界でも遺憾なく発揮された。そして今回で『ストライク』の存在が公になった以上は専用機は持っていないと誤魔化し続けるのは無理だ。怪我が治るまではISを操縦することはできないがそれ以降は無理であろう。
(……それにアレが無人機だというのなら、また誰かがそれを使って襲撃してくるのかもしれない。その時は僕が倒さないと……)
人が搭乗していない無人機相手ならまだ戦える。最大の欠点である『ストライク』の火力不足の件は早急に解決しないと。本音を言えば『エールストライカー』を最優先にしたいが無人機の装甲を一撃で突破できるのは『アグニ』か『シュベルトゲベール』だけだ。……やっぱりストライカーパックがないのは不便だよ。
「明日からはキラ君はいつも通り過ごして大丈夫だけど……怪我が痛むようだったらその時はいつでも言っていいからね?それとなんだけど……うーん、こっちについては鈴音さんと一緒の時がいいかな。それじゃあ、キラ君の部屋まで行こっか」
「はい、わかりました」
鈴音さんに用事があるようだけどいったいなんだろうか……?彼女はクラスが違うこともあるから一組の副担任である山田先生が用事があるのは珍しいことだ。やっぱり放課後だということもあるのか生徒とすれ違う。……視線が集まってるのは専用機のこともあるんだろうなぁ。
「鈴音さん、今大丈夫ですかー?」
「はい、大丈夫です。……退院おめでとうっで一応あってるわよね?」
「……そうなんじゃないかな?」
僕と山田先生を彼女は部屋に迎え入れれば、僕の顔を見て疑問に思いながらもそう口にした。確かに病院へと入院していたわけじゃないし……うーん、細かいところは別にいいんじゃないかな?
「鈴音さん、時間を割いてもらってごめんね。でも2人には説明しないといけないことがあって」
「まぁ、これぐらいなら別に大丈夫です……けど、アタシとキラに用事ってなんですか?アンタも知らないんでしょ?」
「うん、悪いけど心当たりはないかな。山田先生、いったいどういった用件ですか?」
「えっとね、今2人は同棲してるけど最近キラ君の部屋が準備できたの……だけどキラ君は今怪我をしている状態だからそれを1人にするにはいかないかなって。だから、鈴音さんがよければキラ君の怪我がもう少し良くなるまで一緒にいてくれないかな?」
「僕は1人で大丈夫ですよ。片腕が少し使えないぐらいなら――――」
「アンタは怪我人なんだから遠慮しないっ!……わかりました。キラの怪我が治るまではアタシが面倒を見ます」
「本当にいいの?嫌だったら断っても大丈夫だからね?」
「大丈夫です。それにコイツにはアタシにも貸しがありますから。面倒見るぐらいなら別にいいです」
「引き受けてくれてありがとうね。それじゃあ、もう少しの間だけどキラ君のことお願いね、鈴音さん。私はこれからお仕事に戻るからまた明日ね、キラ君」
「こちらこそありがとうございました。また明日からお願いします」
山田先生は最後に微笑みながら手を振ってこの部屋を後にする。ここ数日間はずっと前に使用していた部屋にいたから少しこの部屋が懐かしいや。前の時よりも綺麗に感じるのは鈴音さんが掃除してくれていたからだろうか?
「とりあえずなんか飲む?いつまでも立ってるわけにはいかないし。リクエストあるなら作るけど……」
「それなら鈴音さんのオススメでいいよ」
「んっ、了解。アンタは椅子に座って待ってなさい」
言われた通り椅子に座って待っておくことにする。この部屋に戻ってきても現状やれることは何もない。療養も何かをしていたのかと言われれば特にやっていなかったけど……むしろ、何もやれなかった分余分なことを考えてばかりだった。
「はい、とりあえず緑茶にしておいたわ。オススメと言った以上は飲めないはナシだから。まっ、その時は無理矢理にでも飲ませてあげるけど」
「熱々のお茶を無理矢理飲ませるのは勘弁かな」
鈴音さんから緑茶を受け取り息を吹きかけ冷ましながら口をつける。暑さは感じるけれどやはり味を感じないことに一瞬顔を顰めてしまう。療養中に治ってくれればよかったけど、やっぱり味覚を感じることはない。せっかく作ってもらったお茶を味わえないことに罪悪感に苛まされればジッと彼女は僕の顔を見ていた。
「……えっと、僕の顔に何かついてるかな……?」
「頭の包帯は取れたんだなって。……まぁ、アタシの気のせいなら別にいいだけど、アンタ少しやつれた?いや、療養してたからやつれるのは当然なんだけどさ。なんというかアンタの場合は他が原因な気がするのよねぇ」
「……っ、気のせいなんじゃないかな?僕としてはどちらかと言えば健康に過ごしてたつもりだよ」
彼女のまとを得た言葉に一瞬息を呑むが笑って誤魔化す。今までも寝ていれば悪夢は毎日のように見るが、最近はその夢を起きていてもハッキリと覚えていることが多い。そしていつ襲撃者が現れるかもしれない脅威に療養中は寝付ける方が珍しかった。
「アンタがそう言ってんならそうなんだろうけど。まっ、とりあえずは今後ともよろしくってことで。ふふんっ、大船に乗ったつもりでいなさいっ!」
「……水を差すようになるけど、本当にいいの?あの時のことを気にしてるんだったら別に大丈夫だよ?僕は、僕のやれることをやっただけだから」
「ほんっと水を差すタイミングね……ええ、それについては否定しない。キラがアタシを庇って撃墜されたって罪悪感は今でもあるし、なんならそれが主な理由よ」
「……それだったら――――」
「あー、もうっ!それならこう言えば納得するっ!?アンタの世話役を引き受けたのはアタシ自身のためっ!!あと怪我人は大人しく人の厚意を断るなっ!!いいわねっ!!」
「う、うん……」
「……納得したならいいわ」
ビシリっと指を刺しながら、有無も言わせない彼女の迫力に僕はただ首を縦に振ることしかできなかった。これ以上断れば彼女に油に火を注ぐことになるだろう。
「……ごめん」
「だからなんでアンタが謝るのよ。そこはありがとう、でしょ?」
「……ありがとう」
「うん、よろしい。アンタは自分の怪我を治すことだけを考えてなさい。アタシができる範囲なら身の回りはするからさ。とりあえず今からアタシは食堂行くけど、キラはどうするの?」
「今日は食堂は遠慮しようかな。どうも視線がちょっとね……」
「あー、それは納得。そんならアタシが食堂の人に説明してなんか持ってくるわ。とりあえず和食でいいでしょ?」
「うん、お願いするよ」
鈴音さんは食堂に向かいこの部屋は僕1人になる。残りのお茶を飲み干して、あとは何をしようかと呆けていれば扉越しから鈴音さんの声が聞こえてくる。
「キラー、悪いけど開けてくれない?今両手塞がってるからさー」
「う、うん。食堂から戻ってくるの早くないかな……?」
「そりゃね。ここで食べるつもりで持ってきたわけだし。1人だけ食べるのは味気ないじゃん。今日はアタシも付き合うわよ。ご飯は大人数で食べた方が美味しいでしょ?」
鈴音さんは満面の笑みを浮かべていた。多分、僕を気遣ってわざわざここで食事をとることにしてくれたんだろう。罪悪感に苛まれるがここでまた謝れば彼女の厚意を否定するものだ。
「冷める前に食べるわよ。いただきます」
「うん。いただきます」
僕の夕食は肉じゃが定食で食べやすさを選んでくれたんだろう。彼女は中華料理なのだろうか?それを美味しそうに食べている姿は微笑ましい。味覚を感じていないのはまだ誰にもバレていないのは幸運かな。
「ジッと人の食べてる姿を見てなによぉ?一口もあげないわよ」
「量としては自分の分で手一杯だから安心してほしいかな」
「アンタぐらいの歳なら普通は成長期のはずだと思うんだけど……まあ、いいわ。そういえばだけどさ、アンタっていつ専用機を貰ってたの?」
「……つい最近かな?特にみんなから聞かれることもなかったからね」
「ふーん」
それ以降は興味がなくなったようで鈴音さんは食事に戻る。そんな彼女を見ながら内心でほっと安堵した。『ストライク』のことを聞かれるのはわかっていたけど、完全に気が緩んでいるタイミングだったこともあり答えるのが遅れてしまった。……鈴音さんが興味ないことはとことん無関心なのは運がよかったかも。
「ごちそうさまっと。んー、アンタはもう少し食べるのに時間かかりそうだから、先にお風呂行ってきて大丈夫かしら?食べ終わったら適当にそのままにしていていいわよ」
「あ、うん、わかったよ」
「あと、シャワー浴びることなんだけど、できるだけアタシが部屋にいる時にしてもらえると助かるわ。そこら辺はちょっと目を離している内にされると怖いのよねぇ」
「それぐらいなら全然大丈夫だよ。僕としてもそっちの方が助かるしね」
「んっ、悪いわね。本当はアタシの方が合わせないといけないのに」
「ううん、気にしないで。食堂と浴室の方は時間が指定されているからしょうがないよ」
浴室の方はまだ一度も使ったことないけど、食堂と同じように時間が指定されているのは覚えている。そこら辺は大変だなっと他人事のように思ってしまうのは部屋に設置されているシャワー室で足りているからだろうけど。鈴音さんを見送った僕はなんとか夕食を完食して自分のベットに仰向けになる。
(……ああ、そういえば長らく空を見てないんだっけ。今から外に出れば夜空が見れるかな……)
空を見上げるのは僕にとってはもはや日課だった。放課後は部屋に戻って気絶するように眠るか、遅くなるまで屋上で空を見上げるのどちらかだ。放課後になったら、一夏たちの放課後の訓練に顔を出すほどの意欲と体力は残っていない。空を見上げているのはその時は自身のことや他のことを考える必要がないからといった一種の逃げなのだろう。
「今戻ったわよって……もしかして寝てる?」
「……あっ、うん、おかえり。ちょっと疲れたから横になってただけだよ」
「なんかアタシが部屋に戻ってきた時はキラって寝てるかいないのどちらかよね。いない時はふらっと戻ってきてるし……アタシと同棲する前は食堂でアンタの姿を見かけないのは当たり前だったらしいじゃない。放課後とかどこほっつき歩いてんのよ」
「そうでもないよ?多分、探したらすぐわかる場所にいるつもりではあるから」
実際一箇所に止まっているだけだからね。放課後になれば屋上は基本的には人がいないのも原因だとは思う。それ以外のことについては特に事実だから否定するつもりはないけど。……そしてこれは多分だけど織斑先生には僕の行動パターンは把握されている気がする。食事のことはともかく、遅くまで空を見上げることについては黙認してくれてるのかな?
「それじゃあ、僕もシャワー浴びてくるよ。これ以上遅くなったら本当に寝ちゃいそうだからね」
「シャワー浴びる前に寝てる時はアタシが叩き起こしてあげるから安心しなさい」
「うん、叩き起こされるのは朝だけにしてほしいかなぁ」
鈴音さんは有言実行する性格だから夜の時も叩き起こされるのは避けたい。むしろ、夜の時の方が加減しなさそうだから余計に勘弁したいよ……そんなことを考えながらシャワー室へと行き包帯をなんとか取り冷水を頭から浴びる。お湯の方がいいだろうが結局この行動も事務的にやっていることに過ぎない。
(……左肩の脱臼は確か1、2週間ぐらい治るのにかかるんだっけ)
左肩を眺めながらぼんやりと完治する期間を思い出す。それまでは鈴音さんに負担をかけてしまうのはやっぱり心苦しい。それに毎日のように悪夢に魘されている以上は彼女の睡眠を妨げているのではないだろうか?……彼女の口からは一度たりともそれについて触れてきていないけれど。
(……明日からはまたいつも通りか。上手く笑えればいいけど……)
お見舞いに来てもらっている時は上手く笑えていたはずだから明日からも大丈夫なはずだ。ぎこちない笑顔を浮かべなければみんなに心配をかけることはないのだから。シャワー室から出てシャツを着ていれば、再度左肩へ包帯を巻かないといけないことを思い出し、それが少し面倒に感じるけど仕方ないか……。
「……はぁ、これなら包帯なしの方がいいかもね。固定するだけなら別に――――」
「なに、馬鹿なことを言ってんのよアンタ。ほら、シャツを着たならサッサっとこっちくるっ!」
半端強制的に鈴音さんに引っ張られて、椅子へと連行されれば彼女の手には包帯があった。1人でやるにはできないからやってくれることは正直助かるけど……鈴音さんって大雑把な所があるから少し不安になる。
「すっごい失礼なことを考えてないでしょうね」
「そ、ソンナコトナイヨ……」
ギロリと睨まれた僕は明後日の方向に視線を向けて誤魔化す。ほんの少し包帯を巻く力が強くなったのはきっと気のせいだよ……うん。
「……庇ってくれて本当にありがとね。あんな偉そうなこと言っててさ、最後は反応できなくて……」
「お見舞いに来た時も言ったけどさ、あの時は仕方がないよ」
「……ううん、違うの。あの時アンタが庇ってくれた時にホッとした自分がいた。それでもしキラが庇ってくれなくて、あのまま自分に直撃したらって想像したら今でも怖い……直撃してたらあの時アタシは――――」
「――――大丈夫、大丈夫だから。どんなことがあっても、何が起きても守るから。君を、鈴音さんを僕が守るから」
「な、なに言ってんのよ……きゅ、急にそんなこと……っ、あー、もぅ、はい、終わりぃ!!」
「いっつつつ……と、突然叩かなくてもよくないかな……」
「あ、アタシは今から食器を戻してくるからサッサと寝てなさいっ!いいわねっ!!」
突然と背中を強く叩かれ痛みに悶えてしまう。何かまずいことでも言ってしまったのかと聞く前に鈴音さんは食器を持ってあっという間に部屋を出て行った。……とりあえず大人しく寝てた方がよさそうかなぁ――――
◇◇◇
『どうやら無事に第2操縦者の餓鬼の方は目を覚ましたらしいぜぇ。アイツからの情報だから確かだろうよ、嘘だった場合にあっちにも確認させるか?』
「いいえ、大丈夫よ。仮にそれが嘘だったとしても最終的にはISのデータさえ手に入れればいいもの」
『それは違わねぇ。どちらにしたって目を覚ました以上は最低限仕事をするように指示してんだ』
「……あまりいじめ過ぎたら駄目よ?偶然とはいえど私たちの存在にまだ気づいていない貴重な情報源なんだから」
『ああ、それはわかってるさ。あの餓鬼にはたっぷりと仕事をしてもらうまで使い潰すつもりはねえよ』
とある一室で連絡を取りながら端末を触っている1人の女性がおり、長身で豊かな金髪を持ち、その身を纏う赤いドレスは妖艶さを更に際立たせる。彼女が端末を使い見ている記事はIS学園が何者かに襲撃されたことについてでありそれを興味深そうに見ていた。
「それにしてもIS学園に堂々と襲撃者が現れるなんてね。これは少しばかり調べた方がいいかしら」
『ああ、それについて一応は聞いたが特に目ぼしい情報はなかったぜ。前に報告した通り、第二操縦者の方の専用機を確認した程度だ。無人機については教員どもが回収して、どこに隠されてるかは検討もつかねえってよ』
「あの子からの第二操縦者であろう専用機を確認した時点で情報としては充分よ。……でも、知ってる?実はこの襲撃の記事の前にも、一度IS学園に同じようなことが起きてるのよ」
『確か学園側は生徒の訓練によって起きたって言ってたやつか?それがどうかしたのかよ?』
「私の確かな情報だと、遮断シールドは内側からではなく外側から突破されたらしいわ。それもなんの前触れもなく……そしてその後にこの世界で2人目のIS男性操縦者が現れた。これって偶然かしら……?」
通話越しからの声は女性の疑問に対して『確かになぁ』っと呟き疑問が生まれる。その騒動は本当に生徒らの訓練によって起きた事故なのかと。その女性は一度疑問を持ってしまえばその答えを自らの手で解明しなければ気がすまない。
『それよりもよぉ、Mはともかくあのクソ野郎も好きに動かしていいのかよ?どう考えたって腹ん中隠してるタイプだろ』
「……けど、実力は確かよ。なんたってあのMを正面から完膚なきまでに叩き伏せたのは見ていたでしょ?それが自ら力を貸してくれるのは正直助かるわ」
『……ちっ、手を貸すと抜かしながら行動する気配は散々なかったくせに突然行動し始めたからな。なにを企んでるかわかったもんじゃねぇ……あのクソ野郎の企みがわかったら私の手で潰しても構わねえよなぁ?』
「ええ、その時は貴女に頼むわ」
通話越しからでも感じる殺意には彼女は止めることが無理であろうと判断をする。しかし、彼女がそう思うのも無理もないかもしれない。散々手を貸す素振りを見せなかった"男"はある記事を見た後に嘘のように積極的に動くようになったのだから。
「そうね、"フランス"のあの子から男性操縦者の専用機データをどちらか強奪した報告がきたら貴女は戻ってきなさい。そろそろ長い潜入は疲れたでしょ?戻ってくる際は特になにもする必要はないわ。あとは時間が進めば勝手に潰れていくだけだもの」
『そりゃ、違いねぇ。それにしてもあの餓鬼も可哀想だよなぁ。父親から男性操縦者のデータを盗んでこいは実は嘘だってことを知ることができなくてよぉ!大切な大切な娘と接し方がわからない馬鹿な奴らで助かったぜっ!!そのおかげでこうやって私たちが付け込むことができたんだからよぉ!』
先程までの殺意は嘘のように消え愉快そうに笑うのは彼女の悪い癖なのかもしれない。しかし、あの少女に同情するかと言われれば彼女たちの答えはNOだろう。たった一人の少女の人生がどうなろうが気にする必要もないのだから。
「……それじゃあ、私もそろそろ動こうかしら。Mもあの男も当分はアメリカでやることがあるもの。IS学園にそろそろちょっかいかけてあげないとねぇ?」
『それなら別にこの後私がやればいいんじゃねえのかぁ?』
「ふふっ、悪いけどこれは私がやりたい仕事なの。それにあの男が積極的に動いた記事に写ってる彼のことも気になるし、ね?」
まるで狂ったように高笑いをしていたあの男の様子を彼女は思い出す。彼女にとってはあれ程の実力を持ちうる男が拘るこの記事に写っている少年の存在が気になってしまった。通話を切り彼女はその少年の名を静かに呟く。
――――キラ・ヤマト君ねぇ?
いや、本当は某フランスの子の話を書きたかったけど無理ですした……許してぇ!ぶっちゃけ前回は変なテンションで投稿したので記憶が曖昧なんですよねぇ。まっ、是非もないよネ!はい、とりあえずキラ君のメンタル回復第一でした、次はキラ君のメンタル回復第二が主になるかと思います。銀髪ヒロインの登場はもう少し先そうですね、よしっ!
ちなみに今のキラ君って割と自分の精神状態は把握してるようで把握してないんですよね。本人的にはちょっとしんどい程度だったりします。なお、現実は非常なんですが((
それでは誤字&脱字の報告お待ちしていますっ!感想も毎度ありがとうございます!とても励みになっておりますので!!それでは次回の更新も気長にお待ちください!