翼を失くした少年   作:ラグーン

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この話が一番過去最多の長さになってしまいました……テンションに身を任せて書いた結果がこれだっ!!((吐血

そしてみなさん某あざといさんが出遅れてると言い過ぎじゃないですか?そんなわけないじゃないですk……あざといさんの霊圧が消えた……?((

※この回は多分キャラ崩壊してると思うので注意して呼んでください(真顔


第16話 三馬鹿

「……これって一応千冬さん公認のデートにはなるのよね?ちょっと向かう先とコイツがいることに大きな問題があるだけで……いや、でもアタシも同行しろって意味は完全にキラの世話係としてじゃ……?」

 

「鈴はさっきからブツブツと呟いてどうしたんだ?」

 

「あ、あはは……多分久々に外に出たからじゃないかな?」

 

(……うん、今の鈴音さんには関わらないようにしよう)

 

僕が外出するからなのか、それとも織斑先生が気を利かせてからなのかの判定をしている彼女から僕はそっと目を逸らす。今日は休日ということもあって僕らはIS学園ではなくその外に来ていた。2人はともかく僕の外出届を受理されたのは言うまでもなく織斑先生で『この世界の文化についてもそろそろ学ぶべきだろう。一夏と鈴音と一緒に外に出てそれを知ってこい』っと言われたのを思い出す。元は一夏が休日に遊びに行かないかと誘われたのが事の発端だ。……どうにしても元の世界には帰る手段がない以上はこの世界の文化についても触れていかないといけないのは間違いない。

 

「……でも、僕が来てもいいのかな?今から向かうのは一夏と鈴音さんの昔からの友達なんだよね。それなのに僕が行っても迷惑になるんじゃ……」

 

「それについては大丈夫だって。事前に弾にはそのこと言ってるし、全然大丈夫だってアイツも言ってたからな。むしろ来てくれって言ってたぞ?」

 

「うわっ、あの馬鹿絶対なんか企んでるわね……いい?何を聞かれても余計なことは言わなくていいわよ。言ったその時はわかるわよね?」

 

「……わ、わかったよ」

 

ニッコリと笑っているはずなのに彼女の目は何一つ笑っていない。むしろ、ちょっとした圧を感じ取れるのは気のせいじゃないだろう。まず、余計な発言判定って完全に鈴音さん基準だよね?僕基準じゃないから迂闊に喋れなくなるんだけど……。

 

「そういえばこの後帰ったらキラも1人部屋になるんだっけ?怪我も治ったようだしな」

 

「うん、この後戻ったら僕が移動する感じだよ」

 

「一夏はともかくキラが1人部屋なんて不安しかないわ……アンタ、ちゃんと朝起きれるわよね?」

 

「さ、流石に遅刻はするつもりはないから大丈夫だよ。これでも僕、遅刻はしてないんだよ?」

 

冗談ではなく本気で心配されているのは流石に胸に堪える。私生活については彼女に信用されていないのは薄々気づいていたつもりだけど……でも、遅刻したことがないのは事実だからね?それについては織斑先生か山田先生に確認してもらってもいいんだよ?

 

「久しぶりだけど、やっぱり一年ちょいぐらいじゃ変わってないわね」

 

「ああ。鈴が知ってる時とは特に何も変わってないぞ。久しぶりだし先に厳さんに挨拶はしていくか?」

 

「そうね。ほら、そこで呆けてるアンタも来る」

 

定食屋であるのか食堂の入り口から2人は入る。こういったお店には全く経験がないこともあり、緊張しながら2人の後を追うように入店する。僕の世界とは異なるお店ということもあって店内を見渡しそうになるが、側からみれば不審な行動であるため流石に慎むことにする。

 

「……なんだ一夏の坊主か。弾なら自分の部屋にいる。だからサッサっと上に――――もしかして、隣にいるのは鈴ちゃんか?」

 

「はい、お久しぶりです、厳さん」

 

「おぉ!元気にしてたか鈴ちゃん!中国に引っ越したと聞いていたから何かあったと心配してたが、こっちに帰ってきたのかっ!!」

 

「……俺の扱い酷くないですか、厳さん」

 

「お、落ち込まないで一夏」

 

鈴音さんと一夏の対応の差で落ち込んだ彼をなんとか慰める。厨房から駆け足気味に近づいてくる姿を見ていたからこそ一夏のダメージは深かった。なんとか一夏が立ち直ることに成功していると先ほどまで鈴音さんと話していた人から鋭い視線で睨まれることに気がつく。

 

「ところでそこの坊主は?鈴ちゃんと一夏の坊主の新しいダチか?」

 

「そうそう。こっちはキラ・ヤマトって子でアタシと一夏の新しい友達です。ほら、アンタも自己紹介する」

 

「う、うん。えっと……キラ・ヤマトです。よろしくお願いします……」

 

「一夏のダチにしては礼儀正しい方じゃねえか。ジジイの名前なんざ覚えなくていいが、オレは五反田厳だ。まぁ、よろしく頼むぜ、キラの坊主」

 

自己紹介をすれば何故か眼光が鋭くなったのは気のせいじゃないよね……?むしろ、これって完全に目をつけられた気がするのは間違いないよね?何か五反田さんの気に触れるようなことをしたのかと冷や汗が止まらない。

 

「それじゃあ俺たち家に上がらせてもらいますね」

 

「ああ、鈴ちゃんは別にここに居ていいがサッサっとお前らは上に行け。どうせ後で数馬の坊主も来るんだろうが、騒ぐのはいいがほどほどにしとけよ。……鈴ちゃんもやっぱり上に行くのかい?」

 

「一応はあのお馬鹿の弾君にも久しぶりの挨拶ぐらいはしないといけないので」

 

「別にあの馬鹿には挨拶なんざいらねぇと思うがなぁ。……また後でな、鈴ちゃん」

 

すっごくしょぼくれながら五反田さんは厨房へと戻っていく。その一連の流れを見て僕は戸惑っていたら一夏が優しく肩に手を置いてくれて静かに首を横に振る。……つまり、これって見慣れた光景ってことなんだよね。困惑しながらも僕は先程同様に一夏らの後を追う。一度食堂入り口から出て、裏口から入るのはそういった家の構造なのだろうか……?

 

「おっす、遊びに来たぞ、弾」

 

「おっ、やっと来たか。そろそろ待ちくたびれるところだったぜ……そんで、そっちが一夏の言ってた友達か?」

 

「おう。こっちは五反田弾っていって俺の中学生からの友達だ。そんで、こっちはIS学園で仲良くなった友達のキラ・ヤマト」

 

「おう!一夏のダチってことは俺のダチってことだな。よろしくな、キラっ!!」

 

「う、うん。よろしくね、五反田さん」

 

「そんな堅苦しくさん付けはいらないって。弾って呼んでいいからさ!」

 

一夏の友達である五反田――――弾は気さくに笑いながら話しかけてくれる。どうやって話せばいいのかと悩んでいたが、どうやらその必要はなさそうだ。お互いに自己紹介が終わると、それを満足そうに見ていた鈴音さんが口を開く。

 

「さっすがコミュ力についてだけは高い弾よね。一応は久しぶりって言っておくべきかしら?」

 

「一年振りだってのに鈴は全く変わってねえなぁ。その分だと元気にしてるようだから安心したぜ」

 

「当たり前じゃない。そういう弾こそ全く変わってないわねぇ。ちょっと身長が伸びたぐらいでしょ?まっ、日本に戻ってきたし、近いうちアタシの帰国祝いしなさいよ。メンバーもアンタ含めて三馬鹿で別にいいし。あっ、もちろんアンタらの奢りね」

 

全額そちら側の負担と聞いた一夏と弾は凄く納得いかなさそうな視線を向けるがなによっと鈴音さんは逆に睨み返す。こういったやりとりを見ていれば、この3人はやっぱり昔ながらの友達なんだと微笑ましく思う。

 

「それについては数馬も来てから俺らで相談させてくれ……ちょっとバイト代残ってるか後で確認するから」

 

「えっ、お前だけで別にいいだろ……まず鈴的にはお前1人でこと足りるっ!!だから俺と数馬はだな――――」

 

「はぁ?アンタら三馬鹿の中での紅一点であった鈴音様が帰ってきたのよ。弾も出費するの当たり前でしょうが」

 

「なんでだよっ!?いや、確かにお前が帰ってきたのは嬉しいけど、それとこれは――――」

 

「――――なんだ、入ってきてみれば騒がしい。いつからこの部屋はこれほど五月蠅くなったんだ」

 

「げっ、わかったけどアンタも来たのね……」

 

黒髪の眼鏡をかけた1人の男が気怠げに顔を顰めていた。彼の手にはビニール袋がありその中身は今日のために持ってきた菓子などが入っていた。鈴音さんはその姿を見て嫌そうに顔を顰めるものの、その人は鈴音さんの姿を見て納得する。

 

「一夏から聞いていたが本当にこっち側に帰ってきているとはな。……それにしても約一年経っているはずなのに"どこ"も変わっていないようだな、鈴」

 

「なんですってぇ!!変わってるわよ!!そう見えるのは数馬の目が節穴だからでしょうがっ!!」

 

「ははっ、ぬかしおる。この俺がそのことに気づかないわけないだろう。特に変わっていないのはその貧相な胸部装甲だな」

 

「――――コイツ、ぶっ殺す……っ!!」

 

「だ、駄目だよ!?落ち着いて鈴音さんっ!?」

 

完全に目の前の人を殺る気である鈴音さんをなんとか止める。そのことについては人一倍コンプレックスを抱いている彼女を刺激するには充分すぎる言葉だった。一夏と弾はいつものことだと半端諦めてるのか呆れた様子で見ている。ちょっとぐらいは手伝ってくれてもいいんじゃないかな……!?

 

「離しなさい、キラっ!!コイツだけはアタシのこの手で仕留める必要があるのっ!!あの憎たらしい眼鏡をかち割ってやるぅ!!」

 

「ふははっ、頭に血が昇れば猪突猛進の鈴が止められる姿は中々愉快だ。だが、安心しろ。世の中にはお前のような貧しい胸にも一定数の需要はある。まぁ、逆にいえばその一定数の需要にしか受けないということでもあるが」

 

「うがーっ!!好き放題言ってくれるわねっ!!今すぐ離しなさい!!」

 

「だ、だから落ち着いてっ!?一度冷静になって――――」

 

「アップルパイにはアップルが入っているが……ペチャパイには何が入っているんだ?」

 

「――――何も入ってないわよっ!!ころすぅ!!そしてアイツを殺して私も死ぬっ!!」

 

「君も君で煽らないでくれないかなっ!?」

 

僕が鈴音さんを止めていることをいいことに火に油を注いでくるので流石に悲鳴に近い声でツッコミを入れてしまう。結局鈴音さんが落ち着くまで数分ほどの時間がかかり、その間僕はずっと彼女を止めていたこともあってグッタリと疲れきっていた。

 

「……あのブチ切れた鈴を止めようと思う勇気があるのはお前ぐらいだぜ、キラ」

 

「……ああ、お前がナンバーワンだ、キラ」

 

「……褒めてくれるより、止めるのを手伝ってくれた方が嬉しかったよ……」

 

「実際鈴のやつを止めるとは大したものだ。こんな状態ではあるが俺は御手洗数馬だ、お前の名前はニュースや新聞で嫌というほど知っている。キラ・ヤマトだろう?。一夏の友達なら俺の友達というわけだ、よろしく頼む」

 

「……う、うん……よろしく頼むね……」

 

すっごくマイペースな人だなっと思うけど悪い人ではなさそうだ。一夏と弾が止めなかったのも日常茶飯事だったからなのだろう。……でもね、それはそれで教えてほしかったよ……。

 

「あー、もぅ、アンタは怪我治ったばかりなんだから無理しなくていいっての。ほら、大丈夫?」

 

「「「お前が言うな」」」

 

「わ、わかってるわよ!!てか、数馬はこっち側でしょうがっ!!」

 

「……僕としては全員同罪なんだけど……」

 

一夏と弾も同罪だよ……むしろ数馬が一番の重罪だよ。数馬から飲み物を受け取ってなんとか一息つく。こんな風に友達と馬鹿騒ぎしたのはいつ振りだっけ……?IS学園にいる時でこれほど馬鹿騒ぎはしていない筈だ。……うん、ヘリオポリスでみんなといた時ぐらいだ。

 

「こんだけ人数がいるんなら大乱闘でいいだろ?とりあえず久々だし軽くならそうぜ」

 

「よしっ、今日は俺の独壇場にしてやるからな。数馬さえ倒せばあとはどうとでもなるはずだ!」

 

「ふんっ、一夏にしてはやる気があるようだな。しかし、お前が俺に勝つの不可能に近い。なぜならば俺は強いからだ」

 

「馬鹿、一夏っ!数馬のやる気を出すような台詞言ってんじゃないわよっ!!あー、もぅ!やる気出す前に潰せばワンチャン勝てる筈だってのに!……よしっ、キラ、アンタ手を貸しなさい」

 

「い、いや、僕はやり方知らないから……」

 

「いいの!操作方法ぐらいはアタシが教えるから!こういうのは戦いは数だって骨の髄まで教えてやんのよ!!」

 

完全にその台詞は実は20代後半の人が言うようなやつだよね?数馬の強い発言は正にその通りで正に独壇場の一言に尽きる。圧倒的なその強さに初めてであった僕は呆気なく一番最初に敗れた。

 

「アンタは少しぐらいキラに手加減ぐらいしてあげなさいよっ!!」

 

「馬鹿め、勝負事に手加減など相手に失礼だろう。ほら、次はお前の番だ、鈴」

 

初めから勝敗は決まっていたと言わんばかりに数馬が最後まで勝ち残りそれを全員恨めしそうに見るが、勝ち残った彼はそれを逆に鼻で笑う。そしてやれやれと肩を竦め数馬は眼鏡をくいっと上げながら口を開く。

 

「さて、いつも通りにハンデをしてあげてもいいが?残機1でお前たち全員を相手してやっても構わん」

 

「やってやろうじゃねえか、この野郎っ!!」

 

「その驕りを絶対に後悔させてやるからなぁ!!」

 

「うわっ、流石にその見え透いた挑発に乗るなんて本当単純ねアンタら……」

 

「なんだ、怖じ気づいたのか、貧乳」

 

「はぁ!?やってやろうじゃないのっ!!今すぐにでもぶっ飛ばしてやるわ!!」

 

その一言で呆れていた鈴音さんも完全にその気にさせてる辺り容赦ないなって戦慄する。これは僕もやらないと挑発されそうなため大人しく一夏らのチームに入る。……まぁ、結果は言わなくてもわかっちゃうよね?

 

「……しっかしよぉ、お前ら2人は羨ましいよなぁ!!あの花の楽園で名高いIS学園に入学できてよぉ。くそぉ、俺だってISが操縦できれば……っ!!一夏とキラ、どっちか俺と変わってくれ!!」

 

「だから変われるもんなら変わってるって……今はマシだけど最初の頃なんて居心地悪かったからな。なぁ、キラ」

 

「うん、最初は凄く視線が集まってたからね……行動の一つ一つをまるで別の生き物を見られてるような感覚だったよ……」

 

「くそっ!それはお前らが今恵まれてる環境にいるから文句が言えんだよ!!男ならなぁ、誰もが一度は体験したいことなんだよぉ!!」

 

「おい、その中に俺を含むな。俺は別にIS学園など興味も微塵もない。同世代やたかが1、2歳、上の女などに興味などあるものか」

 

弾が本気で悔しがっている反面、数馬は興味なさそうに呟く。そもそも弾がIS学園に憧れている点は多分別の理由で鈴音さんはそんな弾を冷たい視線で射抜いていた。

 

「仮に弾がIS動かせて入学できたとしても、いいところで気さくな奴で印象止まりよ。アンタが思ってるほど女はチョロくないのよ」

 

「ぐっ、そんなのわかんねえだろ!?くそぉ、キラっ!!一夏はIS学園ではどうなんだっ!!特に異性関連!!」

 

「……ああ、うん……そうだね、少なくとも3人ぐらいは想ってると思うよ……」

 

「クッソタレェェェェ!!なんでだっ!?やっぱり顔なのかっ!!キラぁ、数馬っ!!今日から俺らは非モテ同盟を組むぞっ!!」

 

「……また馬鹿の嫉妬心が爆発したか」

 

目から血涙が出そうなほどに赤くなっているところを見ると弾がどれほど一夏関連で苦労したから伺える。数馬はめんどくさそうな顔をしているが否定しないところを見ると一夏の現状に不満はあるのだろうか?……僕は別に気にしてはいないけど……でも、恋路関係で巻き込まれることは嫌かなぁ。

 

「モテている一夏には俺らの気持ちなどわかるまいっ!『えーっ、弾君は確かにカッコいいけど一夏の方がタイプかな』っとか『今度一夏君を遊びに誘いたいから予定教えてくれないかな』っとかなぁ!!俺だって女の子と遊びてえよぉ!!」

 

「お、おう……?なんか、すまん……?」

 

「あのさ、アンタのどうでもいい実話なんて知ってるから興味ないけどキラも割と今モテてるわよ?まず元からシャルロットと仲良かったしあと、のほほんさんだっけ……?それに最近整備室でよく話してる子もいるでしょ?最近活躍したからねぇー」

 

「……はっ?」

 

「一夏と同じIS学園にいる時点でキラがモテることなど想像できるだろう?一夏が爽やか系なら、キラは守ってあげたい系には人気だろうな。やれやれ、これだから馬鹿は……」

 

「それにぃ、千冬さんやその副担任の山田真耶だっけ?その人にも結構気に掛けられてるわよね。頻繁に職員室とか行ってたらしいし」

 

「……鈴、その山田真耶という女性の年齢は?」

 

「さぁ?でも、見た感じ千冬さんと同じくらいじゃない?」

 

「貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!!あの千冬さんに気に入られるとはどんな方法を使った答えろぉ!!職員室に行って何をしているっ!進路相談室にでも行って2人きりの特別レッスンなど受けているわけではあるまいなっ!!なんなら、その山田真耶女史も入り、3人だけの個別指導などしているのかっ!!さぁ、はけぇ!!」

 

「キラぁぁぁぁぁ!!お前は、お前は俺たちのことを裏切らないって信じてたんだぞっ!!なのに、なのにお前はっ!!」

 

「そんなことをしてるわけないじゃないかっ!?まず鈴音さんも明らかにワザと言ったよねっ!?」

 

「……ちょっと面白そうだなって思って、つい」

 

笑いを堪えてる鈴音さんを心の中で恨み本気で胸ぐらを掴みそうな勢いで近づいてくる弾と数馬を相手することに専念する。一夏の時よりも明らかに殺意を抱かれてるのは気のせいじゃないよねっ!?特に数馬の殺意は割と本気な気がするんだけどっ!?

 

「……ぜぇ、ぜぇ……鈴を抑えてた時点でわかっては、いたが体力あるじゃ、ねえか……」

 

「……はぁ、はぁ……文武両道である俺から逃げれるとはなぁ……キラ、お前のことを少々侮っていたようだ……」

 

「……そ、それなら本気で襲ってくるのはやめてくれないかな……」

 

「あのなぁ、お前ら暴れんなよ?厳さんに怒られても俺は知らねえからな」

 

「そん時はお前も同罪に決まってんだろうがっ!!元はお前がモテるのが悪いんだよっ!!」

 

「……もう、僕は巻き込まれるのは御免だからね」

 

「……馬鹿には付き合ってられん」

 

一夏と弾でもう一戦ありそうな雰囲気なため僕と数馬は巻き込まれないように距離を取る。今日でこれだけ疲れるなんて思っていなかったよ……襲ってきた2人を相手したから喉が渇いたと思っていると鈴音さんから飲み物を渡される。

 

「はい、馬鹿2人の相手お疲れさま。見ている分には中々面白かったわよ?」

 

「……僕としてはいい迷惑だったよ」

 

「ごめんごめん。IS学園で見たことがないアンタが見れて新鮮だったわよ?でも、こうやって何も考えないで馬鹿やるのも大切だと思うわよ?特にアンタの場合はさ」

 

「……あはは、毎日は流石に勘弁かなぁ」

 

「……ほぅ、珍しいな。鈴が一夏以外の男に気にかけるのは」

 

「はぁ?別に友達を気にかけるぐらい当たり前でしょ。それにど変態のアンタに気を使うとか絶対に嫌っ!」

 

「馬鹿め、俺ほど紳士的な男などいるものか。それに俺が性的興奮を覚えるのはお姉さん系だ。断じて同世代に興奮することはないっ!」

 

「だからそういうのを平然と言うから変態だって言ってるんでしょうがっ!!」

 

……ああ、こっちでももう一戦始まる気配がするよ。一夏と弾は完全にゲームで白黒つけるようなのかさっきから白熱した声が聞こえてくるし。主に弾の恨言ばかりだけど。はぁ、この2人を次は止めないといけないのかぁ。

 

「お兄っ!さっきからご飯だって呼んでるじゃん!!それにさっきからうるさ――――」

 

「あっ、蘭じゃないか。久しぶり」

 

「いっ、一夏さん……っ!?」

 

突然と扉が蹴飛ばされる勢いで入ってきた子は恐らく弾の妹さんなのだろう。髪の色もバンダナを巻いているところを見ても。そして彼女の様子と鈴音さんが若干不機嫌になった気がしたところを見てある程度察することができる。

 

「……なに、アンタは蘭を見てるのかしらー?ほら、飲み物ほしいんでしょ?アタシがついであげるし、飲ませてもあげるわよ。とびっきりのサービスしてあげる」

 

「い、いや、もうこれ以上はいら――――」

 

「……どうやら今日は鈴からの貧乏くじを引かされるのはキラのようだな」

 

数馬は止めるどころか巻き込まれないようにこっそりと離れ、ニコニコとした鈴音さんは遠慮なく飲み物をぐいっと飲ませてくる。タップしても止まる気配がないのは完全なとばっちりだよね!?

 

「……んぐっ!?」

 

「ほーら、頑張れ♡頑張れ♡」

 

「……言っている言葉は最高なはずだがシュチュエーションが最悪だな。しかも、炭酸飲料ときたか……」

 

「……鈴とキラは何やってるんだ?」

 

「……馬鹿野郎、キラは犠牲になったんだよ。犠牲の犠牲にな……」

 

「……ごほっ、ごほっ……こ、これ以上は本当に無理だから……」

 

「よーし、よく飲めたわね。偉い♡偉い♡」

 

「「うわぁ……」」

 

炭酸飲料を一気飲みさせられた反動で咳き込んでいれば、その無理矢理飲ませた張本人である彼女は優しく背中をさすってくれる。流石の数馬と弾もそれにはドン引きしたのか引き攣った顔だった。結局僕の咳が落ち着くまでは数分程の時間が必要だった。その後は弾の部屋に上がる前に立ち寄った食堂入り口から入ると弾は露骨に嫌そうな声を出す。

 

「……うげぇ」

 

「……ん?」

 

「なに?お兄はなんか文句あるの?あるならそこで数馬さんと一緒に食べれば?」

 

「……泣けるぜ。これが妹からのとってもありがたい優しさだぜ?」

 

「なにナチュラルにアタシをいなかったことにしてるのよ。それとも蘭ちゃんは見てなかったのかしらぁ?」

 

「あっ、鈴音さんいたんですね。小さくてよく見えなかったんです。ごめんなさい」

 

2人の間に火花が散っているのは見間違いではないはずだ。ここでも一夏の恋路に関わることになるのは流石に予想外だよ……他のお客さんの邪魔にならないようにひとまず先に着く。そこには人数分の昼食が置かれていて弾が言うには余り物らしい。

 

「……俺は嫌だからなぁ。一夏が義弟になるなんて嫌だからなぁ」

 

「……本当にその点については俺とて同情する」

 

「……強く生きることは大切だよ、弾」

 

冷めないうちに昼食を取ることにする。弾は完全に涙を流しながら食べているけど義弟になるのはまだ可能性の話だから気を強く持って欲しい。

 

「あっ、そういえば蘭にはキラのこと紹介してなかったっけ。こっちは弾の妹の五反田蘭で、そしてこっちが俺の友達のキラ・ヤマト」

 

「……よろしくお願いします。キラさん」

 

「うん、よろしくね。五反田さん」

 

流石に彼女のことを名前呼びするのは気が引けるので名字で呼ぶことにしよう。まず彼女としては一夏から名前呼びされる方が絶対喜んでいるだろうし。すると自己紹介をジッと見ていた鈴音さんが何か不満そうに口を開く。

 

「……キラ、今度からアタシのことさん付けはなしね。ずっと思ってたけど堅苦しいから、そろそろ名前呼びしなさい。てか、鈴でいいから、わかったわね?返事は」

 

「……えっ!?う、うん、わかったよ……」

 

「……んんっー?おい、数馬、これってどういうことだと思う?」

 

「……さてな、俺たちはキラと鈴のやつがどれほど仲がいいのか分からん。だが、鈴は一夏のことが今でも好きであるのは蘭の登場で判明しているからな」

 

ヒソヒソと小声で2人は話しているようだが、流石にその会話を聞き取ることができなかった。鈴音さん……ううん、鈴はやけに満足気だし……どうしたんだろ?

 

「そういえばだけどよ、IS学園は全寮制なんだよな?部屋ってどんな感じなんだ?やっぱりキラと一夏が一緒の部屋にいたんだよな?」

 

「うん?違うぞ。俺は最近は1人部屋になったけど前までは箒と一緒だった。それにキラは鈴と同じ部屋だぞ」

 

「……ホウキ?え、えっとそれって女性の方ですか……?」

 

「おう、幼なじみの1人でな」

 

「は、はぁぁぁぁ!?お前ら、つまりそれって男女同じ部屋で過ごしてたってことか!!そしてキラと鈴は現在進行中で同じ部屋で寝てるってことかっ!?」

 

「弾、うるせえぞぉ!!飯ぐらい黙って食いやがれっ!!」

 

厨房の奥から厳さんの怒声が飛んできて弾は渋々声のトーンを下げて話を続ける。数馬は全く興味なさそうに食べているところを見ると本当にこの手の話は興味がないんだね……。

 

「なんだ、その羨ま、いや、けしからん状態はっ!!キラの同居人が鈴の時点で置いておくとしてっ!!」

 

「そこの馬鹿後でこの家の庭に来なさい。絶対に土の中に埋めるから」

 

「で、でも、もう1人部屋なんですよね?」

 

「おう、流石にな。部屋の準備ができなかったのが原因だったからな。キラの場合は怪我したのが原因でその期間が延びただけだし」

 

「……ふむ、それなら鈴がヤケにキラを意識している理由に納得がいく。同居している状態なら他者への興味が薄い鈴でも嫌というほど意識はするだろうからな」

 

今まで話の輪に入ってこなかった数馬は納得したように僕と鈴を交互に見る。そんな彼を彼女は、はぁ?っと何を言っているのかわけがわからないといった視線で見る。

 

「なに馬鹿なこと言ってんの?アタシは義理を通しているだけよ。アタシがキラを意識してるとかあり得るわけないじゃない。基本自堕落だし、情けない奴だし……まぁ、結構気が利くし、愚痴の時は不満は言うけど文句は言わないで聞いてくれるし、たまにほんとたまーにカッコいい時とかはあったけど。それでもコイツのこと意識するとかあるわけないじゃない」

 

「……ふむ、その本人であるお前が言うのならそうなんだろうな」

 

「……おいおい、こりゃちょっとマジで……?」

 

なによっと彼女が睨めば数馬と弾は何もないと首を横に振る。何故か数馬と弾から何度も背中を叩かれる理由が湧かないで疑問が浮かんでしまう。時折りチラチラと厨房の方から視線が送られるのも気になるけど……。五反田さんがIS学園へと入学するといったことによりもう一騒動有ったものの無事(?)に一夏が面倒を見るという約束を取り付けた彼女は喜んでいた。なお、弾は本気で泣いていて、鈴はめちゃくちゃ不機嫌になったりしたけど……。

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 

昼食は食べ終わり次は何をしようかと話していると、僕らが食べ終わったことに気づいた厳さんが厨房から出てくる。

 

「おい、食べ終わったのなら上に行くか外に遊びに行くかサッサっと選べ。もちろん、蘭と鈴ちゃんはいつでもここにいていいからな」

 

「……でたな、厳さんの2人贔屓」

 

「まぁ、確かにこれ以上は仕事の邪魔になるだけだしとりあえず上いこうぜ」

 

「おう、サッサっと三馬鹿どもは上に行きやがれ。そして、キラの坊主、お前にはちょっと片付けを手伝ってくれ」

 

「おい、爺さん。片付けなら俺が――――」

 

「いいからお前らはサッサっと上に行け」

 

弾の言葉を遮るところを見ると、どうしても僕を手伝わせたいのだろうか……?厳さんが話を聞き入るところがないのを見てみんなは先に部屋に戻る。鈴が心配に見てきたのは単純に僕が片付けをできるのか疑われているからなのだろうか……。

 

「悪いな急に呼び止めてよ。だがよ、どうしても確認してぇことがあるんだ」

 

「……えっと、確認したいことですか?僕と鈴は別に普通の友達ですけど……」

 

「そりゃ、お前と鈴ちゃんの関係性は一から十まで根掘り葉掘り聞かせてもらうが今はそうじゃねぇ。俺はよぉ、この道で何十年も生きてきたから自分の料理や、客がなんて思って食ってるのか当てれるそこそこの自信がある。……キラの坊主、お前よ、味してねえだろ?」

 

「……っ、それは……」

 

「このことは誰にも言うつもりはねぇ。正直に白状しちまえ、別に怒ってるわけじゃねえからよ」

 

「……そう、です。すみません……」

 

「……そうか。やっぱおめぇ味がしてなかったか……」

 

僕は俯きながら正直に白状をする。厳さんは怒るところがむしろ悲しそうに表情を歪める。食べるときに味がしていないことを呆気なくバレてしまった事実に僕は頭が真っ白になっていてなんと声を出せばいいのかわからない。

 

「味がしねえのはいったい、いつからだ?」

 

「……最近です。気づいたらそうなっていました……病気とかではないと思いますけど……」

 

「……そのことは一夏の坊主や鈴ちゃんは知っているのか?」

 

「……2人や、僕の友達はこのことは知りません。誰にも言っていませんから」

 

力なく僕は首を横に振る。このことは誰にも教えるようなことはしていないし、千冬さんや山田さんにも味覚がないことについては伝えていない。

 

「おめえよぉ、それは親は知ってんのか?」

 

「……僕は1人ですから両親はいません」

 

「……悪い、流石に不用心すぎたな」

 

「……いえ、大丈夫です」

 

正確に言えばこの世界に両親がいない、という意味ではあるがそれを教えるわけにはいかない。本当の親の顔は写真しか見たことがないことを考えれば、いないというのは強ち間違いではないけど……仮に僕を造った両親がいたとしても僕はきっとその人たちを親と認めることはできないだろう。何故、僕のような存在を造ったのか、そしてこの力のせいでどれだけ苦しい思いをしたのか……きっとそれを感情に身を任せてぶつけてしまう。

 

「……おめえよぉ、つらくねえのか?」

 

「……大丈夫です。慣れていますから……苦しいのも、つらいことも、悲しいことも我慢するのには慣れていますから……」

 

「……馬鹿野郎が、なにが慣れているだ。今すぐ鏡でも見てきやがれ。坊主、お前は今にでも泣きそうな面をしてんだろうが。いいかっ、確かに人間はつれぇことや苦しいこと、悲しいこと我慢することはできる。だがなぁ、どうやってもそれに慣れるってことはねえんだよ。仮にそれができても、どんだけ長く生きようが、それに慣れちまったら駄目なんだよ」

 

「……っ……」

 

「お前さんが何かを抱えてるってのは老いぼれたジジイだからわかる。お前のよ、その顔はまるで戦争で大切なもんをなくしてきた奴にそっくりだ。……悩んでるんなら今、吐き出していけ。アイツらには到底言えないことなんだろ?」

 

「……わから、ないんです……僕自身が今何をしないといけないのか……どうして今生きている意味も……全部わからないんです……」

 

厳さんは僕の言葉を無言で受け止めてくれる。何度も何度も自分の中で感じていたモノを初めて他人に打ち明けてしまえば、溜まっていたものは止まることなく吐き出してしまう。

 

「……すみません、見苦しいところ見せてしまって……」

 

「別に構わねえよ、吐き出せって言ったのは俺だからな。キラの坊主、また苦しくなったらここにこい。老いぼれたクソジジイはアドバイスはできねえが話ぐらいは聞いてやるからな」

 

「……ありがとうございます」

 

「ほれ、そろそろ弾たちの所に戻ってこい。アイツらのことだからまた馬鹿騒ぎしてんだろ。……キラの坊主、これだけは伝えておく。どんだけつらくても、苦しくても生きろ。……それがお前さんにとって酷かもしれねぇ。けど、お前さんが生きていることに喜んでくれる奴ってのは絶対にいる。この老いぼれたクソジジイもその1人だってのを忘れるな」

 

「……はい」

 

僕が生きていることに喜んでくれる人がいる、厳さんは真っ直ぐと僕を見ながらそう言ってくれた。僕という存在はあの人の言う通り存在してはいけないはずなのに、厳さんのその真っ直ぐな言葉に心が僅かに軽くなった気がする。

 

「遅かったじゃんか。とりあえず今から外に遊び行くことになったけど大丈夫か?」

 

「ごめんごめん。うん、外に行くのは大丈夫だよ」

 

弾の部屋に上がれば外出することに決まったのか弾が外に行くための準備をしている。五反田さんがいないということは多分自分の部屋に戻ったのかな?これから外に遊びに行くことに楽しみと不安を抱えてしまうが、多分大丈夫だよね……?

 

「……ねぇ、キラ」

 

「……?どうしたの、鈴?」

 

「……ううん、なんでもない……」

 

話しかけてきた彼女はどこか落ち着きがなく見えるけどどうしたんだろう?みんなは特に気にしていないようだけど……うーん、僕の気のせいなのだろうか……?この後ゲームセンターに行って数馬VS弾&一夏のホッケー対決があったものの、その結果はもちろん数馬の圧勝で幕を閉じた。

 

◇◇◇

 

 

時刻は午後6時過ぎで僕はIS学園でこの部屋から撤去するための荷物整理をしていた。もっとも荷物といっても本当に必要最低限のものしかないんだけだね。ゲームセンターの時からでもあるけど、IS学園に戻って来れば鈴から何故か視線を送られてくる。いつもその時はすぐに話しかけてくるのに。

 

「……うん、こんなものかな?今まで迷惑かけてごめんね、それと今日までありがとう」

 

「……こっちこそね。アンタとの生活そこそこ楽しかったわよ」

 

元気がなさそうだけど大丈夫だろうか?基本彼女の機嫌が悪くなるのは一夏関連ぐらいだったからどうも思い浮かばない。……後でそれとなく一夏に鈴を気にかけてあげるように伝えておこうかな。

 

「それじゃあ、僕はそろそろ移動するよ。えっと、また明日……?」

 

「なんで自分で言っておいて疑問を持ってるのよ……あのさ……なんかあったらアタシのところに来なさい。アンタだったら面倒ぐらいは見てあげるから……」

 

「そ、そういうわけにはいかないよ。僕はもう大丈夫だし、それに鈴としては一夏の方が――――」

 

「いいからっ!……なんか、あったらアタシのところに来なさい。わかった……?」

 

「う、うん……」

 

「……うん、ならいい。明日の朝までは起こしに行ってあげるから」

 

不安そうな顔から一変して鈴さんは安堵したのか表情が嘘のように柔らかくなる。本当にどうしたのかな……?彼女がこうも気にしてくれるのに少し引っかかりを感じながらも僕はこの部屋を後にした――――





はい、これでメンタル回復は終わりです。次はやっと眼帯銀髪っ子が登場だよ、やったねっ!!つまり、あざといさんが動き始める合図でもあるヨ!!……とりあえず怖いんで後でキャラ崩壊タグつけときます……え?数馬君はああなったのはオレは悪くねぇ!オレは悪くねぇ!!

はい、脱字&誤字報告いつもありがとうございます!!そして感想もとても嬉しいです!!これが人の温もり((
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