「この世界に来て数日経ったんだ……」
僕がこの世界に来て数日が経過した。
この世界の情報についてある程度知り、僕を拾ってくれた場所がIS学園なのは幸運だった。
話を聞いた限り、僕はIS学園のアリーナの遮断シールドを突破しながら墜落したらしい。
その時意識がなくて実感がないけど、とても大変なことをしでかしたと理解した。
「織斑さんも深くは気にするなって言ってたから多分、大丈夫だよね……?」
遮断シールドを突破したことに冷や汗を流しながら呟くと、扉から三回のノック音が聞こえる。
この部屋に僕がいることは2人しか知らないため僕は声を出す。それを合図に扉が開き、そこには織斑さんと山田さんが入室してくる。
「どうやら今日は比較的マシな顔なようだな」
「もうっ、そんな風に言うのは駄目ですよ! 今日も元気でなによりです、ヤマト君」
厳しそうな雰囲気を纏った織斑さんとは正反対で柔らかい雰囲気を纏い僕を観て微笑んでくれている女性は山田真耶さん。
彼女も僕がこの世界の人間ではないと言うことを知っている1人である。
初めは僕がこの世界とは異なる人間だと伝えた時は驚いていたけど、その後はこうやって普通に接してくれている。
「えっと、いつもありがとうございます……僕なんかの話し相手に付き合ってもらって」
「いえいえっ、気にしないで大丈夫ですよ! 困っている子供を助けるのは大人として当たり前のことですからっ!」
「お前をそのまま放置するということにはいかないしな。別世界の人間であるということはISの知識はゼロだろうし、入学する以上は基礎的なものを身につけていないと困るだろう。……まぁ、仮に別世界の人間ではないにしろ、ISを動かせる時点でIS学園に入学するのは強制だった。結果的に見れば、どちらも変わらないということだな」
ISの基礎的な知識を覚えてないと、入学した後に覚えることが大変だと、こうやってお2人には時間がある時にISを含めてこの世界の情報について色々と教えてもらっている。
ISについて学ぶということ自体は苦ではないし、むしろ興味が沸いていたりする。……ISを乗るかどうかは別になるんだけど。
「実はお前に相談があってな。お前に関することでもあるから私や山田先生の独断で決めるわけにはいかない。こればかりはお前の許可が必要だ」
「僕の許可ですか……? でも僕なんかに了承を得るようなことはないと思うんですけど……」
この世界に来て日が浅い僕に織斑さんと山田さんから僕の了承が必要と言われたけれど心当たりは一つもない。
いったいどんなことなのだろうと疑問に思っていると、落ち着いた声で山田さんがゆっくりと説明を始めた。
「このことはキラ君にとっても大切なことなの。実はね、IS学園に入学するには適性検査というものをする必要があるの。詳しくは長くなるから今日は省くんだけど、実はキラ君にその適性検査を受けてもらいたいって思っているんだけど……どうかな?」
「適性検査、ですか……?」
「ああ、お前にはISに触れて──―いや、お前に伝わりやすく言うならばISに搭乗してもらうことになる。適性検査をする際にISに搭乗することは避けられない道だ、悪いがこればかりは私も山田先生もどうすることもできん」
「……っ、それは……」
適性検査をする条件を聞いて僕の身体は硬直する。
ISに搭乗すると言われれば、頭の中ではMSと違うとわかっているのにあの人の言葉が脳裏によぎる。
……今の僕に、MS──いやISに搭乗することができるんだろうか?
「……適性検査をする時に戦ったりするんですか? 誰かに引き金を向けるようなことがあるのなら僕には、無理です……」
「ISには絶対防御があるためお前が考えているようなことが起きる可能性は低いとしてもか?」
「……すみません。戦う必要がないのなら誰かに引き金を向けなくていいのならそうしたいんです。……もう戦わなくていいなら戦いたくありませんし……それに今の僕はその引き金を引けるモノがないんです……」
もはや見慣れた天井を見上げながら僕は絞り出すような声で呟いた。
この世界は僕のいた場所とは大きく違う。平和でとても過ごしやすい場所だ。
あの時から守りたい人たちがいたから戦った、戦うことが嫌だったけど守りたいものを守るために。
だから迷っていた。争いの世界で銃を撃ち続けた僕がこの平和な世界で必要なのか、何をすればいいのか見出すことができないでいる。
「すみません……適性検査で誰かと戦うんでしたら遠慮させてもらいます。こんな自分勝手な理由で断ることにはなるんですけど……」
「いや、お前が何かしらを抱えている状態なのは初めからわかっていた。あくまで確認のようなものでもあるためお前が断るのはわかりきっていたことだからな」
「うん、織斑先生の言う通り、ヤマト君が気に病む必要がないからね。本人が嫌がることを極力無理強いはしたくないのが私たちの本音だもの。それに今のヤマト君に必要なのはきっと心の休息だと思うの」
織斑さんと山田さんの優しさはこんな僕に向けられていると思うと申し訳なさと苦しみがこみ上げてしまう。
時間を作ってくれること自体にも申し訳ないのに、これ以上2人に甘えている状況は他者から見ても情けないの一言につきる。
そんな自分が何ができるかと、考えれば思い浮かぶのは適性検査を受けること。
心の中で受けるべきだと、銃を握る必要はないと鬩ぎ合う感情を吐き出すように息を吐き、退出しようとしていた2人を止める。
「あのっ! 織斑さん、山田さん、待ってくださいっ!」
「どうしたの? ヤマト君」
「どうした、ヤマト」
「……やっぱりその適性検査をやろうと思います。さっき断っておいてこんなことを言うのはおかしいと思うんですけど」
「それは私たちとしては助かるけど……本当に大丈夫なの、ヤマト君? 無理しなくていいんだよ」
「それでもやりたいと思うんです。……いつまでもお二人に甘えている状況は駄目だと思いますし、お二人の負担を軽減しないとダメだと思うんです。ISとMSの明確な違いを知っておいても損がないのは間違いないですから……」
自身に無理矢理ISを操縦する理由を作ることで感情を納得させる。
ISとMSの違いを把握しておく必要があるのは事実だ。
これ以上お二人に甘えていると言うのも情けないの一言に尽きてしまう。
それに少しでもいいから2人の負担をせめてでも減らそうとするのが僕にできる恩返しだ。
「これは最後の確認だが本当にいいんだな? 一度やると言った以上はやり遂げてもらうぞ」
「はい。やると言った以上は撤回するつもりはありません。……それに僕が纏っていたMS──いえ、ISについても知る必要がありますから」
僕が纏っていたと言われているISについて確認したいこともある。
フリーダムなのか、それとも別のモノなのか把握しないと。
僕の意思が硬いとわかった織斑さんは山田さんに指示を出し、それを聞いた山田さんは先に部屋を出て行く。
「山田先生には先に向かってもらって準備してもらうことにした。とりあえずヤマトは私についてこい。お前にも準備してもらう必要がある。それに渡さないといけないものもあるしな」
「えっと、僕はこの部屋から出て大丈夫なんですか?」
「その点については心配するな。生徒には秘密にしているが教員全体にはお前の存在はバレている。遮断シールドをぶち破って墜落してきた時点で隠蔽などできるものか。恐らくだが勘のいい生徒も何かがあったというのはわかっているだろうよ。しかしその原因が男性操縦者、しかも異世界からの訪問者とは微塵も想像はできないだろうがな」
「あ、あはは……」
織斑さんの言葉に僕はただ乾いた笑顔を浮かべるのが精一杯だった。
嫌な汗が吹き出してしまったのは許してほしい。
織斑さんは気にするな、と最後にそう伝え移動するらしく僕はその背後を置いていかれないようについていく。
見慣れない風景なため様々なところに視線を移して、再度自分がどんな場所にいるのかを再認識する。
「本当に別の世界なんですね……」
「私にとっては見慣れた風景の一つだがな。けれどお前にとっては新鮮なもののようだな。……元の世界が恋しいか?」
「……そう、ですね。この世界を知って、僕の世界が本当にあの人の言う通りだったとしても恋しくはあります。大切な人や友達がいますから……でも、これでいいとも思っているんです。僕はあの世界では存在しないほうがいいですから」
元の世界が恋しくないというわけじゃないけれど、あの世界に戻りたいと言われてしまえば首を縦に振るのを躊躇ってしまう。
元の世界にいて最高のコーディネーターとしての存在と出生がバレてしまえば、あの世界が再度どうなるかは想像も出来ない。
それに率先してあの世界に戻る手段を探そうとも思っていない。
もちろん大切な人や友達がいるのは本当のことだ。だけど……その場に彼女はもう何処にもいない。
「……今の僕の考えが駄目なのはわかってはいるんです。だけど、今の状況もこの世界のことも元の世界のこととかも、何も考えたくはないんです……」
「……私はお前がどのような道を歩んだのかは想像はできん。しかし、お前に必要なのは休息なのは間違いない。ここ数日間しか付き合いがない私でもわかるほどにな」
振り返りながら真っ直ぐに僕を見つめながら織斑さんはそう言った。
そうなのだろうか? いや、きっと織斑さんが言うからきっとそうなんだろうと思う。
周りのことはおろか、自分のことですら正しく把握できていない今の僕よりも正しいだろう。
「さて、先を急ぐぞ。この場で立ち止まっていれば誰かに見られる可能性が更に高くなるからな」
伝えたいことは伝えたと言うこともあり織斑さんはそそくさと歩く。
僕は無言で肯定して、先ほどと同じように後ろをついていく。
体感的数十分間歩いて、目的地らしき扉が視界に入り織斑さんが近づけば自動に開く。
その光景を見て、アークエンジェルとエターナルを懐かしく思いながら後を続いて入室する。
「少しばかり遅くなってしまったな。すまない、山田先生」
「いえいえっ! こちらもつい先ほど準備が終わりましたので、ちょうどいいタイミングでした」
山田さんと織斑さんの話を聞きながら、不自然に思われない程度に周囲を見渡す。
2人以外にもこの学園の教員がいるようだが、特に僕のことを気にしている様子もなく作業に取り掛かっている。
特に嫌な視線を向けられなかったことに安堵していると、2人の話が終わったのか山田さんは心配する様子で声をかけてくれる。
「キラ君、これが最後の確認になるけど本当にいいんだね? 無理にやろうとしているんだったらやらなくていいんだよ?」
「……はい、大丈夫です。やらないといけないことをやるだけですから」
「うん……だったら私からもう何かを言うことはないかな。はい、これがキラ君のISスーツだよ。更衣室に案内する前に先に渡しておくね。これはキラ君のものでもあるから」
「僕のですか……?」
僕のものと山田さんに言われるけれど心当たりがない。
丁寧に畳まれているモノを受け取ってみるとどこか見たことあるカラーリング。
いったいっと思っていれば一つだけ心当たりが思い浮かぶ。
でも、確信したわけでもないため、更衣室にたどり着いて確認した方が良さそうだ。
「それじゃあ行こっか。私についてきてくださいね」
穏やかに微笑みながら山田さんは先に行く。
僕はその後をついていき一度ここから退出をして、歩いてすぐ近くに更衣室がそこにあった。
扉の前で待ってるから、と山田さんは言い僕は頷いて更衣室に入る。
「更衣室にしてはそれなりに広いんだね……それにモニターもあるんだ」
更衣室の内部にモニターがあることに不思議に思うけど、わからない以上は気にする必要はないかな。
外では山田さんが待っていることもあるし急いで着替えないと。
さっき渡されたモノを広げて確認すると、予想していた通りのものがそこにはあった。
「うん……やっぱり僕のパイロットスーツだ」
この世界に来る前のことを思い出せば簡単に予測がつく。
まず意識を取り戻した時はこれを着ていたじゃないか。
色々と頭の中で整理しないといけないことも多かったから、すっかりと忘れていたかの……。
「これが僕の唯一持ってきたモノだと思うと味気ないかな……」
トリィでもいてくれればと思うけど、贅沢なことは言ってられない。
急いでパイロットスーツに着替え、一度鏡の前に立ち変なところがないか確認する。
いつもの見慣れた白を基調し緑寄りの青と黒を配したもの。ヘルメットない以外変わったところもなく、僕は更衣室から出て山田さんと合流する。
「すみません、遅くなってしまって」
「全然大丈夫だよ。むしろ早くて少しびっくりしちゃってるぐらいだから」
「……そうなんですか?」
僕としては先ほどの着替えは遅い方だと思っていたけれど。
アークエンジェルにいた頃は襲撃されることが多かったからパイロットスーツに悠長に着替えている時間なんてなかった。
少しでも僕が遅れてしまえば沈められてしまうといったプレッシャーもあったが。その辺も原因なんだろうって自己完結することにする。
これ以上考えれば、また彼女のことや昔なことを無意識に思い出しちゃうから。
「それでは行きましょう。織斑さんを待たせるわけには行きませんから」
「そうだね。織斑先生時間とかには厳しいから、少しでも遅れたらたっぷりとお説教されちゃうしね」
織斑さんに怒られている姿を想像しているのか、それともその姿を見たことがあるのか山田さんは少しばかり顔が青ざめている。
確かに織斑さん雰囲気がナタルさんに似ていることもあるからその姿が僕も容易に想像ができてしまう。
声はミリィに似ている気がしたんだけど……。山田さんとお互いに苦笑いを浮かべて急いで先ほどの場所に2人で戻ることにした。
「予想よりも早い帰りだったな、2人とも」
「そ、それはよかったです……」
「あ、あははは……」
山田さんがそっと胸を撫で下ろす姿を見て織斑さんは怪訝な表情を浮かべている姿を見て僕は苦笑いを浮かべて誤魔化す。
何があったのか気になっている様子ではあるが、織斑さんは特に聞いてくることもなく話を続けていく。
「まあいい。それよりもヤマト、お前にもう一つ渡さないといけないものがある」
「……はい、それが何なのかは分かっています」
「察しが良くて助かる。私についてこい、山田先生この場を頼むぞ」
「はいっ! わかりましたっ! キラ君、頑張ってねっ!」
山田さんから声援をもらって、織斑さんと共に目的の場所まで向かう。
織斑さんに案内された場所は、当然見知らぬ場所で初めて見る光景なんだけど、アークエンジェルやエターナルのようにMSを発進するカタパルトに似たものがあった。
「えっと、ここは……?」
「ここは第3アリーナ・Aピットだ。まぁ、今後使う可能性のあるかも知れない場所と覚えていてくれれば構わん」
「そうしておきます……」
「アリーナを貸し切りにできるのも時間の問題のためさっさと本題に入らせてもらうぞ。お前にはこれを渡すためにここに来た」
織斑さんの手元には一つのブレスレットがあった。
白を基調として赤と青を配しているもの。そのカラーリングに心当たりがある。
まさかと思い息を呑みながらそのブレスレットを受け取る。覇気のない声で僕は確認するため織斑さんに聞く。
「これが、僕のISなんですか……?」
「ああ、それがお前のISだ。今は待機状態になっていてブレスレットに見えるが正真正銘のISだよ。調べたわけではないが、気絶している時の様子を見るに、お前のISは既に
「……わかりました」
装着すると言われてもそんなイメージは簡単には思い浮かばない。
なので、MSに乗る時を想像しながら瞼を閉じれば、何かに包まれる感覚──初めからこの身体の一部のような錯覚に襲われる。
けれどそれに違和感よりも一体感を感じ、なにより”誰かに優しく包まれる”ような感じで次に僕が目を開けたその時は既にISを纏っていた。
「改めて見ればISというには些か異質だな。背にはカスタム・ウィングらしきものは見当たらない。ヤマト、何かしらの違和感を感じるか?」
「……いえ、大丈夫です。確かにMSの時とは違うのには戸惑いはありますけど。それにやっぱりこのMS──いや、ISは君だったんだね……」
織斑さんの言葉で僕を今纏っているISの正体が分かった。
初めて僕がMSを操縦する理由になり、パイロットになった機体。
ある意味で、ううん、きっと僕にとってこのISは良い意味でも悪い意味でも共に歩んだMS。
辛いことばかりが押し寄せてきて何度も嫌になりかけていたのに、そんな僕を最後に守ってくれた機体。
また乗れることができるなんて思っていなくて感情に浸っていると、織斑さんが少しだけ心配した様子で話しかけてくる。
「やけに静かだが本当に大丈夫なのか? もし違和感があるのならば遠慮なく言っていいんだぞ」
「いえ、そういうわけじゃないんです。今纏っている機体が懐かしかったんです。僕がパイロットになった理由で、僕が最初に乗ったMSでしたから……」
「……そうか、ならば私から言うことは特にない。アリーナに行くのならそこのピット・ゲートに進め。そうすれば出撃できる」
「わかりました。ここまで案内してくださってありがとうございます」
「気にするな。後に生徒の1人となるのなら当然のことをしているまでだ。そして先に伝えておくが今回は戦闘行為をやるつもりはない。だから安心してISを動かすことについて意識を向けろ」
戦闘をする気がないと言われたけれど本来は違うんだってわかる。
きっと山田さんと織斑さんが色々と気を使って今日の適性検査を準備したんだ。
本当にこんな僕に気を遣ってくれて申し訳ない。2人の気遣いを無駄にするわけにはいかないため、今だけは余計なことを考えずISを操縦することだけに意識を向ける。
(うん……やっぱりMSを操縦する時と全然違う。操縦すると言うより身体の一部って思った方がいいのかもしれない。まずは歩くことを考えよう)
僅かに緊張しながら片足を前に出せば違和感を感じることなく一歩進む。
そのことに安堵をして、いつものように歩いて急ぐことなく着実にピット・ゲートを目指す。
ISを纏った印象は搭乗よりも纏っているという感覚に近い。自分の身体の一部だと思った方がきっといいのだろう。
ピット・ゲートに身体を預け、態勢を整えて一呼吸を置く。昔を懐かしむように以前も口にした口頭を言う。
「キラ・ヤマト、ストライク行きますっ!」
かつてストライクに搭乗していたのを懐かしみながらスラスターを吹かしつつアリーナへと出撃する。
MSとは違う感覚に戸惑いはあるものの、危なげなく着地を成功する。
まずはISとMSの違いを冷静に分析する。
「やっぱりコックピットに搭乗した時の感覚と全然違う。それにこのハイパーセンサー、だっけ? これがメインカメラと同じ役割と考えると今後は僕自身の目で補う必要もあるのか……?」
深く考え込む前にその考えること自体を破棄する。
僕がISに搭乗したのはあくまでMSの時との違いを明確にするためであって戦闘をする前提で乗ったわけじゃない。
余分なことを考える必要はないんと、僕自身に言い聞かせていると通信が入り山田さんの声が聞こえてくる。
『キラ君、聞こえていたら返事をしてもらって大丈夫かな?』
「は、はい。通信は良好ですよ、山田さん」
『それならよかった。キラ君の様子は私たちがきちんと見ているからまずは武装確認からしちゃおっか。口にするか想像するかできっと武装確認はできるはずだよ』
「わかりました」
山田さんの指示に従い僕はストライクの武装確認を始める。
MSの時を考えればこれは少しばかり不便かもしれない。
現在展開可能な一覧が現れる。武装は使い慣れていたモノが搭載されていた。
「……ストライクの状態だったから不安だったけどこれがあるからマシなのかな?」
最悪アーマーシュナイダーだけなのを覚悟していたけど、他の武装があるのは運が良かった。
展開した武装はビームサーベルと対ビームシールドだが、武装一覧を確認したかぎりアーマーシュナイダー二本、高エネルギービームライフル、ストライクバズーカ、そしてイーゲルシュテルンの弾数も表記されており、想像していた以上に武装については豊富だった。
欲を言えば、ビームサーベルはもう一本ほど欲しかったけど仕方のないことだと諦めよう。
『どうだ。武装把握の確認は終わったか、ヤマト』
「はい、終わりました。僕の想像してたより多くて驚きましたけど大丈夫です」
『んっ、それならば次に移ることにする。まぁ、次に移ると言ってもそう身構えることはない。お前には今から目の前に見えるだろう的を撃って貰うことにする。ハイパーセンサーで見えるだろう?』
「はい、確認はできました。でもあれって……ただの本当の的ですよね?
『そうだ。適性検査に必要であると判断したため用意した的だ。問題がないのならアレを射撃で撃ち抜いてもらいたいが、大丈夫か?』
「……多分、大丈夫だと思います」
『そうか。ならば撃つタイミングはお前に任せる』
「はい」と、震えた声で返事をし一度呼吸を落ち着かせる。
高エネルギービームライフルを展開をすれば、ズシリと重い感覚を手から感じる。
今の僕は高エネルギービームライフルを握っている。
その現実に胸の奥から何かが込み上げそうになるが、頭を左右に振りかぶり振り払う。
(……的を撃つことくらいならっ!)
大きく息を吐き両手で高エネルギービームライフルを構える。
本来は片手で充分だけど、震える片腕で支えるのは無理だと判断した。
あくまで的を撃つだけで終わるんだ。もう一回だけ引き金を引くだけでいいんだ。
でも、再び撃てるのかと、疑問が浮かんでしまい、引き金にかけていた指が鉛のように重くなり動かせない。
(……やると決めたんだったらやり遂げるんだ。自分から言った以上はやり遂げないといけないだろ……っ!)
「っ、うわぁぁぁぁぁ!!」
自分を鼓舞するには情けない声を出しながら、高エネルギービームライフルの引き金を引いた。
ただ終わることだけを考えて一心不乱に的を狙い撃ち続ける。
全ての的を撃ち終えたのは織斑さんの制止の声で気づいた。
荒い呼吸を繰り返しながら、高エネルギービームライフルをゆっくりと下げる。
(……撃ったんだ。僕は、撃ち終わったんだ……)
やり遂げたという脱力感、そして引き金を引けてしまった自分に憂鬱になる。
この場が宇宙であったら、そのまま無重力に身を任せて宇宙空間を漂うようにしていただろう。
「……すみません。これで適性検査は終わりで大丈夫ですか?」
『……ああ、わかった。あとは戻って休んでいてくれ。後で私が様子を見に行く』
わかりました、と辛うじて声を出すことができスラスターを動かし、指示された場所を目指しおぼつかない着地を成功する。
ISを解除して生身の身体に戻ったことを確認して更衣室を目指す。
その途中で誰かとすれ違った気がするが、俯いていたということもあり誰なのか分からず更衣室に入る。
自分の服が入っているロッカーに背を預け力なく座り込む。
「……力だけが、僕の全てじゃないんだ……」
いまだにエネルギーライフルの重みがある両手を見つめそのまま蹲る。
あの人の言葉がフラッシュバックをする。
僕の口から出た弱々しい否定の言葉は、更衣室に響くことはなくかき消えていった。
はい、次回から多分本編開始ですね!初めから本編かけは私にはできないので許してもらいたい(白目
うーん、正直視点を変更しようかと悩んでいますが変えたら全て書き直さないといけない絶望があるため悩んだいますが……その時はその時デスネ。とりあえずキラ君のメンタルはアバウト状態なのでなるべく戦うことはしないでしょう(フラグ
それでは次回の更新は未定ですが気長にお待ち下さい!誤字&脱字の報告をお待ちしておりますっ!