|・ω・`)コッショリ
『新たなる敵機のデータ詮索。該当するISデータが判明……
「情報収集ご苦労様。VTシステムは情報としては知っていたけど実物は初めて見るけど……ISという形状は保っているものなのね」
色鮮やかな水色のISを纏っている更識会長は口調こそいつもと変わらないけれど冷静に目の前のVTシステムを分析している。そんな最中で装甲が明らかに少ないISを纏っている彼女をマジマジと見てしまう。装甲の薄さを補うものは間違いなく持ち合わせているのは分かるけど……それでも少しぐらい増やした方がいいのではっ?
「もうっ、こんな状況下でもお姉さんに見惚れるのは嬉しいけど時と場合を選ばないと駄目だぞっ?こんな人前では流石の私でも恥ずかしいし……あとで生徒会室か整備室で好きなだけ見ていいから。あっ、それとも次は私の部屋か君の部屋でじっくりとまたお互いを曝け出しちゃう?」
「あっ、いやっ、それは遠慮しておきます……」
わざとらしく頬を赤く染める姿にこんな時でも揶揄うかをやめない事に別の意味で動揺してしまう。いや、更識会長なりに場を和ませようとしたのかも知れないけどもっと他のやり方があるよねっ?危機的な場面を助けてもらえた事を伝えるのべきなのかっと一瞬判断を迷ってしまう。
『……随分と余裕ですね。ロシア代表候補であり、貴女ほどの実力者ならばこの状況の深刻さを重々理解していると踏んでいますが?』
「あら。システムと言うから会話なんて成立しないって踏んでたけど違ったみたいね。やけに感情的なのは無視されてる事が気に食わないからかしら?さっきまで頑張ってた後輩を労う余裕ぐらいはあったりするのよ……実際、私1人でもどうにかできそうだしねぇ?」
目に見えてわかる挑発にVTシステムは完全に更識会長へとモノアイを向けている。そんな自身へと標的を向けさせるような事をなぜっと表情を歪めてしまう。そしてそれを見越していたのか彼女からプライベートチャンネルへ通信が入ってくる。
『VTシステムはよく分からないけどアレが危険なモノぐらいかはわかりますっ!どうして自分を狙わせるよに誘導をしたんですか……っ!?』
『うんうん。純粋に私のことを心配してくれるのは嬉しいけどアレぐらい大丈夫なのは本当よ?観測室で君とアレが戦闘してるのはよーく見てたもの。あんなの本物に比べたら大きく劣ってるわ』
まるで期待外れだと少しだけ退屈そうにため息を溢す。VTシステムの強さはともかくそれを元になった人を更識会長は知っていることに興味が湧くけど今はそのことを聞く暇はない。まず彼女がアレを単独で引き受けようとしていることをどうにかしてそれは止めさせないとっ……!
『いい?ひとまずキラ君は一度織斑君たちと合流して態勢立て直して』
『いえ、このまま僕も更識さんと一緒にVTシステムを止めます。絶対に足手纏いにはなりま────』
『────駄目よ。一度キラ君は引いて態勢を立て直しなさい。君のストライクとVTシステムの性能差は身を持って体験したでしょ?ただでさえ性能が大きく劣ってるのに手元の武装が完璧じゃないのなら戦うようなことはさせないわ。それに織斑君と篠ノ之さんを一度安心させてあげなさい。きっとものすごーく心配してると思うから。ね?』
初めは厳しめに冷たい声から最後には優しい声で諭されわかりましたっと小さな声で納得する他なかった。実際VTシステムと渡り合うには全ての武装を扱わなければならないし、これ以上2人に余分な心配はかけたくなかった。
『……態勢を立て直した後はすぐに援護に戻ります。それまで無理な行動は絶対にしないでください』
『ええ。無理は絶対にしないって約束するわ。あっ、一つお願いがあるんだけどさっきまで使ってたナイフを私が使用できるように
払い落とされたアーマーシュナイダーを回収してくれるのは正直有り難かった。窮地に陥った時には何度も助けられた身としては手元に戻ってくるのは精神的にも楽になるから。
更識会長が使えるように
「てっきりあの子のことを執念深く追撃するかと思ってたけどあっさりと逃しちゃうのね。よかったのかしら?彼を堕とす機会はもう2度とこないのに」
『私がストライクを狙えば僅かに生まれる隙を狙い貴女が肉薄してくる可能性が高いと判断したまで。現に私が少しでも動けば背後から奇襲をかけていたでしょう。それにあのISの搭乗者は私を撃つ覚悟がまるでない。性能差も先程で完全に把握しました。それならば今は脅威にはなり得ないと放置しただけです』
「あらあら。VTシステムの元になった人はどんな相手だろうとどんな状態だろうと油断もせずけして侮るようなことはしないはずよ?むしろ、その逆で誠意を持って全身全霊で相手をするはず。……本当に貴女はあの世界最強を元にして造られたシステムなのかしら?実はその更に偽物の可能性も捨て切れないわねぇ」
『……いいでしょう。そのような見え透いた挑発に敢えて乗りましょう。私がかのブリュンヒルデを元に造られた存在であることを、その体に徹底的に叩き込みます』
無事にキラが離脱すると同時に2人の戦闘の火蓋が切られた。最強の名を冠する元に造られたシステムと最強を冠する者の激戦。それは生半可の素人では割り込むことなど不可能な領域。
まず先に動いたのは更識楯無だった。両手には得物はなく無手で落ちている武器を真っ先に確保に行く。もちろんVTシステムもただ黙って彼女の槍を回収させる訳もなく立ち塞がるが、それを無視するように僅かに離れた場所に落ちているアーマーシュナイダーを即座に回収する。
『自らの槍ではなくそのような小型のナイフを回収を優先するとは。リーチと火力を持ち合わせているこの槍を回収していれば多少は貴女の勝算も上がったでしょうに』
「あら?ナイフの利便性をどうやら知らないようね。それなら今からそのナイフがどれだけ使い勝手がいいか教えてあげる」
VTシステムは蒼流旋を回収させないように立ち塞がる。この槍が更識楯無のメインウェポンなのは察しており、これさえ回収させないように死守をすれば勝機はこちらにあると判断をした。
実際VTシステムは一撃必殺。両手に持つ接近ブレードが体に少しでも擦ればその後は逃される事もなく相手は理不尽にも敗北が約束されてしまう。そんな相手に彼女は臆する事もなく不敵に笑いながら小型のナイフ一本で見事に捌いて見せていた。
システムとして無駄なく合理的に敵を排除するVTシステムは対照的に更識楯無はこの場は自ら輝かせるステージのように舞い踊る。彼女の装甲の薄さを考えれば掠めるだけでも致命傷に繋がりかねないのに顔色一つ変えず、ギリギリまで引き寄せて躱す。
まるで手足のようにナイフを巧みに扱うその姿は完成されていて一切無駄はなく猛撃を防ぎ、反撃、そして時に自ら仕掛けるタイミングは洗礼されている。気紛れにそれでいて猫のように身軽に動きながらも彼女の持つナイフは真っ直ぐと敵を捉えている。
「────もっと本気でやらないと私は捕まらないわよ?ほーら、鬼さんこちらに来なさいな」
『言われなくとも……っ!!』
使う武装、この状況に於いて自らが有利であると踏んでいたのに今だに更識楯無を捉えきれない。被弾覚悟で強引に責め立てればナイフによる攻撃など致命傷にはならないと理解してながらも、システムである彼女が最適解の行動へと移せないのは一撃全てに殺気を当てられているからだ。取り込んでいる
焦燥感に襲われていたVTシステムは見え透いた挑発に感情的になり僅かに前進をして蒼流旋から離れてしまった。そしてその瞬間を更識楯無はずっと待ち望んでいた。VTシステムの振われた一撃を最小限の動きで躱し、するりっとその横を瞬間的に加速して通り抜ける。VTシステムが急いで反転するがその時にはすでに彼女の手には蒼流旋が握られていた。
「さーて、それじゃあ第二ラウンドといきましょうか?今度は侮ってたらそのまま倒しちゃうつもりだからその辺はよろしくねー?」
この場に似合わず陽気な声で更識楯無は笑みを浮かべる。その言葉に嘘偽りのないモノだと感じ取ったVTシステムは対話を放棄し、無言で二刀の接近ブレードを構え仕掛けた。
「……凄い。更識さんが戦う姿はこれが初めてだけどこれほどだなんて」
一度膠着した戦いは再度始まった。対ビームシールドの回収をしながら先程の一連の戦闘は目が離せなかった。もしもの時に備え、いつでも介入できるように片時も目を離さなかったがそれは杞憂で終わる。彼女自身が学園最強だとよく口にしていたがそれは嘘偽りもないと思う。実際さっきの戦闘の流れから考えるにVTシステムを対処するのは彼女一人で充分すぎるほど。
(……このまま一夏たちと合流しよう。その後に更識さんを援護すればどうにかできるはずだ)
「────キラっ!!大丈夫かっ!?」
「────キラっ!無事かっ!?」
VTシステムに取り込まれた彼女を助ける手段を更識会長はあるようだから、それまでに一度2人と合流しようと考えていたら2人が血相を変えて近づいてくる。更識会長が増援として駆けつけてくれるまで足止めに専念をしていたからそこまで危ないことはしていないつもりだったけど……。
「ごめん。余計な心配をかけたかな?でも、2人の方こそ大丈夫なの?あの時────」
「────人の心配や気遣いより自分の体をもっと気を使えよっ!俺らは無茶とか言えるようなことしてないけどキラは違うだろっ!?あんなのを真っ向から戦ってる方がずっと無茶してるだろっ!」
「僕はこれでも体は丈夫なんだ。少しぐらい無理しても平気だから」
常人よりも体が丈夫なのは今までの戦いの中で証明されているし、何よりそんな風に造られているからっと内心で自嘲してしまう。そんな事を説明するわけにもいかないため一夏から嘘をつくなっと目で訴えられるけど本当に大丈夫だと伝えれば渋々納得してくれた。このまま2人にはこの場から離れるようにっと口にする前に俯いて両肩を震わせている箒さんが目に入る。
「箒さん大丈夫?やっぱりどこか体を痛めたんじゃ────」
「────何が体は丈夫だ大馬鹿者っ!!そんなものは私は知らんっ!!最初は壁に吹き飛ばされて暫く動かなかったではないかっ!……ええいっ!なぜお前のISは
今すぐこの場でISを解除しろっと言いそうな凄い剣幕で箒さんに詰められる。MS戦だったら間違いなく初撃で全てが終わってたけどISでは絶対防御がある以上あの一撃ならシールドエネルギーがあるまでは死にはしない。無駄だと分かりながらも装甲の上から怪我をしていないか触って確認してくる箒さんが少しばかり不思議に思う。
「本当に怪我はしていないから大丈夫だよ?この通り全然平気だからさ」
「キラの場合はそれが真であっても直接確認できるまで安心できるものかっ!前に重症なのにISを纏って戦いの中へと行ったではないかっ!……怪我をする原因を作った張本人が言うのは可笑しな話だと思うが……あんなことはもう2度とするなっ……」
「……うん。なるべくそうならないように努力はしてみせるよ」
「あの時のように約束をするとは言ってくれないのだな……」
「……ごめん。こればかりは約束は守れそうにないから」
「……自身の体が怪我をしようがそれを惜しんで戦う選択を選ぶようになってしまった事があったのは薄々察してはいた。どうやら私が言うだけでは無駄なようだから、そのことは後で鈴に報告させてもらうからな」
「……それだけは切実にやめて欲しいかな」
「……やっぱキラって鈴には頭上がらないんだな……」
一夏から不憫な目で見られるけど仕方ないじゃないか。話し合い(物理)に確実に持っていかれてしまう未来しか浮かばない。まず既に鈴からは生きろっと言われているのにそんな事を再度するとバレてしまえば何を言われるか予想がつかないし、まず下手をすれば気が済むまで世話をするというあの話が更に飛躍しかねない気がする。
「うんうん。その様子だとそこの3人組は無事を確かめる事ができたようね」
「あっ、更識会長……」
一度離脱してきた様子で満足そうに頷きながら更識会長が合流する。損傷した様子はなく、先ほどまでVTシステムと激闘を繰り広げていたはずなのに息一つ乱れていない。念のためと思いVTシステムの方へと視界を向けるが砂煙でその場に止まる影があるが今すぐこちらに突貫してくる気配は感じない。
「このナイフ今のうちに返しておくわね。また取りこぼしても次は簡単には回収されないように立ち回れると思うから気をつけるのよ?」
「……はい。以後気をつけます」
「よろしい。さて、箒ちゃんはともかく、織斑君とは一応初対面になるのかしら?私は生徒会長の更識楯無よ。これからよろしくね?」
「いえ、俺の方こそよろしいお願いします」
「うんうん、男の子って感じで元気があっていいわね。こんな状況じゃなかったらこのまま雑談に入りたいけど誰かさんがそれを許してくれないのよねー。ほら、みんな構えて。そろそろくるから」
何がくるのかと一夏が訪ねようとする前に標的にされていると警告音が鳴る。次の瞬間に砂煙の中から約20を超えるワイヤーブレードが襲ってくる。なぜ突然と相手の武装が増大している疑問は後にして各自飛ばされてきたワイヤーブレードへの回避に移る。
(僕と更識さんに飛ばされたワイヤーブレードは10枚ぐらいか……っ!一夏と箒さんのフォローしたいけど下手に動くと2人を巻き込む事になるっ!)
2人のフォローに入りたいのは山々だけど下手に向かえば巻き込むことになってしまう。幸い2人に向けられた数はそう多くはなく息の合った2人なら対処ができると信じ、自由に動きやすい空へと逃げる。
「くっ……やっぱりエールストライカーがないストライクだと振り切るのは無理かっ!」
速度を活かして振り切れるのは現時点で無理だと判断し、急旋回をして逆にワイヤーブレードの方へと突っ込む。僅かにある合間を速度を緩めずギリギリの状態ですり抜けながらビームサーベルを使い数枚切り裂く。足を止めれば捕縛されてしまうのは身を持って体験をしているからこの速度を落とすわけにはいかない。一夏らの方が心配でときおり見るが何とか2人も今のところは無事のようだ。
───どうして私ばかりこんな目に合わなければならない……私は、私は生きたいだけなのに……私だって本当は普通がよかった……っ。
(この声はラウラ・ボーディヴィッヒさんの……?頭の中に直接流れ込んでくる。彼女の記憶を見た時と同じ現象なのか……?)
頭の中に直接流れ込んでくるのは彼女の声。捕縛された時に似たようなことがあったけどそれと同じ現象だと結論づける。一方的に彼女の心の中を読み取るようで余りいい気分はしないけどこれが彼女の本心なんだ。
(……普通がよかったんだよね。兵器として造られるんじゃなくて、強さだけを必要とされるんじゃなくて……ただ当たり前の1人の人間として生きていたい。そんな当たり前の人生を彼女は欲しいんだ……)
僕らはその普通とは大きくかけ離れた存在で身勝手な理由で造られた。戦う中で自分をコーディネイターとして産んだ両親を恨んだこともある。その後に人の理想として造られた存在と知った後ではその感情は消えるどころか増えている。今となってはコーディネイターとして産まれていた方がずっと良かったと。ナチュラルにもコーディネイターにとっても僕という存在は在ってはいけないだから……。
(でも、彼女は違う。僕はもう引き返すことは許されないけどあの子はこれからその未来を歩めるはずなんだ)
そう望まれて造られたとしてもその通りに生きていく必要なんてない。未来を選ぶのは他の誰でもなく彼女自身の意思。彼女が平坦な日常を歩みたいと言うのならその意思を尊重すべきだ。
砂煙が晴れたVTシステムの姿を空中から目視できるようになれば少しばかり取り込まれたラウラ・ボーデヴィッヒさんの姿が一部露見していた。あの黒い液状のモノを武装を構成する分へと無理して回しているからだろう。
「アレならちょっと強引な手段をとればキラ君の手でも助けることができると思うわよ?今は武装の構成に半分ぐらい回してるようだから」
「……確実に一撃で彼女を救う方法があるのならそれを選ぶべきです。それよりもVTシステムがどうしてあんな風に手段を選ばないような戦い方を?」
「……やっぱりそこ聞いちゃうよねぇ。ごめんなさい。それについては完全に私のミスよ。VTシステムが取り込んだあの子にあそこまで感情を向けてるなんて予想していなかった。ちょっと煽りに煽って追い詰めたら更に手段を選ばなくなっちゃったのよねぇ……造られた経緯は違うけど、身勝手な理由で人間に造られた共通点がシステムを駆り立ててるってことかしら?これ推測だからあまり当てにはしないでね?」
お互いの背後をフォローする様にワイヤーブレードを対処しながら背中越しで話を続ける。更識会長の推測はおそらく正しい。そこに更に付け加えるとすれば彼女の強く生きたいという感情を読み取ったから。あんな姿になろうと勝利という結果を貪欲に求めているのだ。
『……いい加減あなた達は鬱陶しい。そろそろ我が搭乗者の兵器としての価値を上げる為に礎となれっ!!』
「なにが鬱陶しいだっ!!俺にとってはお前が千冬姉の動きと同じ剣を持っている方が何倍も鬱陶しいんだよっ!!お前が何者とかそんなのは今は後回しだっ!!千冬姉の猿真似をしながらそんな事言うなら次は俺が相手になってやるっ!」
「やっぱ姉弟ってことかしら。VTシステムが誰を元に造られたのか動きとかで気づいたんでしょうねぇ」
「……待ってください。VTシステムを元になった人ってまさか……っ?」
「キラ君の想像している通りよ。VTシステムは織斑千冬の戦闘データを元にして造られているわ。あの人、世界最強って肩書きを持ってるから。お手軽に強くなれる手段があるなら、やっぱり世界最強の力を使いたくなるじゃない?造られた理由は流石に知らないけどロクでもないことでしょうね」
VTシステムの元となった人が織斑さんである事に呆然としてしまう。冷静に思い出していけば入学当初はクラスメイトが黄色い悲鳴を上げていたのを考えれば織斑さんが世界最強というのは誰もが知っている常識的な知識らしい。この世界での世界最強という立ち位置はイマイチ分からないけど……。
『……なるほど。先ほどからヤケに騒々しいと認識していましたが白式の搭乗者は彼女の肉親ですか。まさかこの場に彼女と血の繋がった者がいるのは僥倖というもの。貴方を堕とし、我が搭乗者の方が実の弟よりも優秀であると証明させます』
「出来るもんならやってみろよっ!俺はお前みたいな奴になんか絶対に負けねえっ!!」
「馬鹿っ……!?このタイミングで売り言葉に買い言葉をするな……っ!?」
『威勢だけは褒めましょう。貴方がなぜ先ほど私と対等に戦えた理由は既に先ほど解析は終わりました。射撃武装が一切装備されていないだろう白式はこれで終わりです』
「更識さんっ!ワイヤーブレードの対処を全部お願いしますっ!!」
「ちょっと、キラ君っ!?」
更識さんの驚いた声が初めて聞けた気がするけど今は後回しだ。白式に近接武装しかない事はとっくに解析済みだったようで両肩にカノン砲を構成されている。確かに一夏のISは単一仕様能力で当たりさえすればイレギュラーが起きなければ勝利は揺るがない。けど、一度バレてしまえば再度接近するのが困難だ。白式の単一仕様能力はボーディヴィッヒさんとの戦いでバレているはず。そして織斑さんの弟と理由で確実に白式を堕とす手段をとるだろう。完全に構えに入っている以上は多少の妨害程度ではカノン砲の発射は止められない。接近しようにも止めるには間に合わない距離。
迎撃を仕向けられたワイヤーを避けながら急降下。ストライクバズーカを即座に展開して発射された砲弾の速度と角度を計算。直撃する前に全て撃ち落とす。庇うように前方へと着地、VTシステムへと銃口を向ける。
「直前に撃ち落とされたのかっ?まさか、やったのって……」
『私の邪魔をするのはまた貴様か。ストライクっ!!』
「一夏はなにがあっても絶対に堕とさせはしない。彼には帰りを待っている沢山の人がいる」
一夏を守る約束を絶対に破るわけにはいかない。彼が堕とされ命の危険に陥れば大勢の人がその姿を見て悲しむことになる。一夏を想っている彼女らにそんなつらい気持ちを抱いて欲しくない。……特に鈴が悲しんでいる姿は見たくない。彼女は笑っている姿が一番似合っているから。
『理解不能。機体性能という絶対的な差があるのは身を持って体験したはず。それなのに貴方は私を相手に立ち塞がると?』
「それでも僕は戦う力がある。守るための力が。……本当は戦う必要なんてないはずだよ。だって君が戦う理由は彼女のため。それなら……っ!」
『それ故に戦闘する必要がある。現在各国の権力者、研究者や開発者が揃っている。彼女が求められているのは兵器としての結果。今の状況はその結果を世界へと示すには絶好のシチュエーションです。そして好都合なことにこの場には世界最強の肉親、ロシアの代表候補、2番目の男性操縦者がいる。あなた方を堕とせば彼女がいかに兵器として優秀であるかを示すこともでき、これほどの功績を残せば処分という選択は消え去るでしょう』
「君は彼女が本当に求めているものを知っているはずだっ!そんなやり方では解決なんてしないっ!!力だけでは本当に守らなくてはいけないことを……やらなくちゃいけないのを見失うだけだっ!」
『だが力がなければ守れないのも事実。これが一番最善な方法であり、彼女が生きていける道だ。ならば貴方は背負えるのか?あの子が兵器としてではなく1人の人間として求められる居場所を作ることを』
生きていく上でならそれが最善だと理解できてしまうから。他者に求められ、それで結果を出し続けることができれば処分という道は逃れ、一定の価値を認められ生きていく事は可能なのだろう。居場所を作れるのかとVTシステムの問答に言葉が詰まるとそれを否定するように一夏は飛び出す。無数のワイヤーの嵐を危なくげに掻い潜りながら肉薄し、お互いのブレードが激しくぶつかり合う。
『実力差を理解できずに飛び込むのは白式のパイロットですか。自ら撃墜されにきたのですか?手間が省けたものです』
「実力差は分かってるさ……!!それでも俺はお前に負ける気はねぇ!!……俺は2人が何かを知ってて、それで言い合ってるのは分かる。事情の知らない俺は聞いてても分からないことばかりだ。だけど、お前が言ってるのが間違ってるのは分かる!!居場所は誰かに任せて作るものじゃねえ。自分で作るもんだ!!」
『……世迷言を。それは恵まれた環境にいる者が辿り着く回答。貴方たちのその戯言が正しいというのなら私を撃墜してみせなさい!!』
「ああ、やってやるよっ!!」
白式を一つの脅威と認識している
2人に僅かに距離が開いたタイミングに割り込もうとしたその時に突然と
「キラァァァァァァ!これを受け取ってくれ!!」
「っ!?ほ、箒っ!?」
名前を呼ばれた事により振り返れば彼女はその手に持つ葵を僕にへと力強く投擲した。あまりにも大胆すぎる行動、そしてISの補佐があるとはいえそれなりに重いはずの武器を投げた事実に目を開いて驚いてしまうがなんとか掴み取る。
「私はまた、お前に頼むことしかできない。……これ以上戦闘に参加できない私の代わりにアイツと一緒に戦ってくれっ!!」
なぜっと聞くよりも早く彼女は答える。よく見れば彼女の打鉄は損傷が大きくこれ以上無理に参加をすれば強制解除されかねない。本当はこの場で誰よりも彼の助けになりたいのは彼女のはず。投げ渡されたこの葵にはきっと沢山な想いが込められている。
箒さん想いを受け取り不安を少しでも取り除くように大きく頷く。体を前へと向ける際に一連の流れを見ていた更識会長が彼女を守るために地上へと降りる姿を見たから、きっと大丈夫だろう。
少しでも一夏の負担を減らすため接近しながらビームライフルを数発撃つ。妨害された事に忌々しげにモノアイをこちらに向ける。目を逸らしたのを一瞬の隙と思った一夏は袈裟斬りをするが、想定内と刀身で巧みに受け流し、空いている片手で腹部をそのまま力強く柄頭で殴打され声を漏らす。
「やらせない……っ!!」
『ほう。火力不足を武装借用することで補ってきましたか。どうやらやっと重い腰を上げたようですね。……だが、あの時の気迫、殺意をまるで感じないっ!!』
「……くっ!!」
『性能差を理解しながらもまだ出し惜しみを続けるかっ!!その程度の想いで、綺麗事を吐き続けるしかできないその口でっ!!誰かの"居場所"を作ることができるとでも!!守れるとでもっ!?』
────帰りたくない……あんな冷たくて、寂しい場所よりも……暖かくて、楽しくて……そしてキラの傍にいたい……傍にいたいよ……助けて……キラっ。
戦闘の最中に静かに泣き震えた声で居場所を切に求めた
激情に駆られるのではなく自らの意志でSEEDを使う。対艦刀シュベルトゲーベルのように力任せに扱うわけにはいかない。相手の動きを、行動を観察するんだ。
「……後悔だけはしたくない。そのために今はっ!!」
(……っ!?この男雰囲気が変わった。殺意は感じない。だが、あの時とは変わらぬ気迫を感じる。これがストライクのパイロットの本気かっ!)
「キラだけじゃねえぞっ!!俺のことも忘れるんじゃねぇ!!」
『まとめて相手をしてあげましょうっ!!そして同時に終らせてあげます!!』
双方の想いを背負い激しくぶつかり合う。二刀のブレードを振るう速度は更に速くなり、その力は更に増す。それをお互い足りない部分をカバーするように2人で攻める。状況はほぼ互角、ほんの少しでも気を緩めばそこを叩き込まれて破れるだろう。だけどそれは相手も同じことなはず。
「キラっ!!」
「うん!任せて、一夏!!」
『……っ!即席のコンビなどと侮りはしていましたが、認識を改めましょう。厄介なコンビネーションだっ!』
(こうやって連携をして一緒に戦うのは初めてなはずなのに……どうして一夏がやろうとしているのを僕は漠然として分かるのだろう?)
無人機の時は共に戦いはしたが共闘というよりも個々で役割を分担していた。こうやって肩を並べ連携をするのは初めてなはずなのに、次に行動を移すのがなんとなく分かってしまう。SEEDを使っているから……?
一夏は僅かに後退する。おそらく次の一撃に全てを賭けるつもりなのだろう。それならばその決定的な隙を作るのが僕の役割だ。
『このタイミングでビームサーベルを使いますかっ!!だが……っ!!』
「ぐっ……!!その、動きは……っ!?」
ビームサーベルを使い、黒い泥で構成していた刀を一つ無力化するがお返しに葵を持っていた左手を即座に作り上げたのか、右足に付いた鋭いブレードで蹴り上げられ葵は天高く空を舞う。あまりにも酷似しており、イージスを彷彿させるその動きにあの死闘を思い出すが、歯を噛み締め即座に振り振り払う。お返しにビームサーベルで斬り上げバランスを崩したVTシステムを強く押し蹴る。それと同時にエネルギー切れという警告音が鳴り響きフェイズシフトダウンが作動する。被弾したのと、最後にビームサーベルを使ったのが決定的になったのか……っ!
『これで終わりのようですね……っ!!』
(ここしかない……っ!!)
色が抜け落ち、ビームサーベルも維持できなくなったのをエネルギーが無くなったのだと判断したのか、それとも押し蹴られたことが癪に触ったのか上段からブレードを振り下ろす。
決定的な隙を作るのはこのタイミングしかない。ビームサーベルを手放し、振り下ろされた接近ブレードを両掌に挟み受け止める。相手の動きは最小限に、それでいて武器だけを無力化できる最善の手段。
『なっ……っ!?真剣白刃取りをISでの戦闘に扱うなど……っ!?』
「────ここだぁぁぁぁぁ!!」
『しま────』
背後から躍り出た一夏のその一撃はVTシステムへと直撃。纏わりついていた黒い泥は再生することもなくその傷から崩壊していき、ラウラ・ボーディヴィッヒさんの姿を目視できるようになり、支えがなくなり地面へと倒れる前に受け止める。
『……よも、や……私が、敗北するとは……ストライク、のパイロット……後は頼みますよ。私に勝利、したのだから……』
「……わかった。彼女をできる限りのことで守ってみせる」
『……理想という、存在である貴方に頼むのは嫌ですが……馬の骨に、頼み込むよりかは、マシです……頼みましたよ……キラ・ヤマト……』
点滅を繰り返していた赤いモノアイは完全に事切れた。それにVTシステムが最後に理想という存在と言葉にしていたのはどうして……?気絶しているボーディヴィッヒさんへと視線を移す。取り込まれていた彼女ならなにかを知っているかも……目を覚ました時に話ができるといいけど。
「……その子、大丈夫そうなのか?」
「うん。呼吸とかは安定してるから時間が経てば目を覚ますんじゃないかな」
「……まぁ、目を覚ましてもらえないと困るけどな。まだ2人には謝ってもいねえし」
チラリと様子を見てくるのは彼なりにこの子のことを心配しているからだろう。その姿にクスクスと静かに笑みを浮かべてしまい、それに気づいた一夏は誤魔化すように頰をかく。
戦闘も終え、徐々に近づいてくる2つのスラスター音に僕らは振り向くと、涼しげな表情を浮かべた更識会長と心配そうに浮かない表情の箒さんが合流する。
「一夏!!キラ!!大丈夫かっ!?」
「おう。俺は見ての通り無傷ではあるから安心しろって。キラの方が負担は多かったはずだし……」
「僕も全然大丈夫だよ。今は先に彼女を先生に任せないとね」
「そ、それもそうだな。……2人が本当に無事でよかった」
涙ぐむ箒さんの姿を見て一夏とお互いに顔を見合わせる。心配して顔を覗き込む一夏になんでもないっとそっぽを向き誤魔化す箒さんの姿はとても微笑ましい。
「……まったく、男の子2人は自分勝手に行動するんだから。結果的にはなんとかなったからよかったけど」
「……あ、あはは。すいません……」
「まっ、今回は大目に見てあげましょう。あの天災の時間指定もギリギリクリアしたことだしね。……途中からどうやら君も自らの意思で本気で戦ってたようだし。けど、あまり無理はしないこと。いいわね?自分が思っている以上に心の傷は深いはずだから」
「……はい。肝に免じておきます」
「んふふっ、君の素直なところ大好きよ。さーて、そこのイチャイチャしてる2人とも、撤収するわよー!!」
「なっ、なっ!?い、イチャイチャついてなどいない!!こ、これはだなっ!!」
2人には聞こえないように耳元でそっと忠告してくれる。今回自らの意思でSEEDを割れたのは偶々だろう。直前まで結局使うことを躊躇っていたのだから。
最後にわざとらしく箒さんを揶揄う更識会長の姿を苦笑いを浮かべながら一緒にアリーナを後にした────
大変遅い更新で申し訳ないです……っ!これでVTシステム編は終わりとなります!!次はその後の後日談的な感じをやりますわね!!本当ですよ!!これからちまちま更新再開していきますのでよろしくお願いしますっ!!