翼を失くした少年   作:ラグーン

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みなさま。大変遅くなりましたが、明けましておめでとうございます!!(土下座)

前書きは不要!!本編どうぞ!!


第31話 天災

 

 

「それでは第一回チキチキ裏取引会議を始めましょう」

 

『なんだよ。そのチキチキ裏取引会議って。まず、もう少しその安直なネーミングセンスをどうにかしろよ』

 

「仕方ないじゃないですか。私も賭けが成功するなんて思っていなくて名前を考えていませんでしたので」

 

 無事にVTシステムの暴走を制圧後、何故か僕らは生徒会室で謎の会議が始まった。どこかで見たことある少女が持つ端末から声が聞こえて、更識会長がその人と親しげ……というより若干棘のある言い合いをしているのを困惑しながら立ち尽くす。

 

(キラはなにか聞かされてるの? 私はなにも教えられずに連れてこられたんだけど……)

 

(ごめん。僕も更識会長からなにも教えてもらってなくて……あの人のことだから理由もなく僕らを連れてくるなんてことはしないと思うから訳があるんだとは思うんだけど……多分)

 

 シャルとヒソヒソと話すが、どうやら彼女も生徒会室に連れてこられた理由は知らないらしい。理由もなく連れてくるなんて事はないと思うけど、なんとなくその辺は信用できないのがあの人だ。面白そうだからとかで、なんとなくで連れてきたのでは? っと疑惑を抱いてしまう。

 

(……あとね。あまり……無茶とかはしないでね。見ててずっと怖かった……キラが怪我をするんじゃないかって……)

 

(……ごめん。だけど、ボーデヴィッヒさんを放っておくことなんて、どうしてもできなくて)

 

(今日もなにか理由があったからだとは分かってるけど、これ以上は私の我儘になっちゃうから。私からもうなにも言わないけど……この後鈴から沢山怒られると思うからちょっと覚悟した方がいいかもね。あの様子だと小言では終わらないんじゃないかなぁ)

 

 複雑そうな顔から一転して苦笑いを浮かべているシャルの言葉にどっと冷や汗が溢れてくる。彼女の怒りが沈むまでは姿を見せないようにしようかと考えるが、見つけるまで追いかけてくるんだろうなーっと達観してしまう。

 

「コホン。キラ君とシャルロットちゃんがイチャイチャしてても、私は別にいいけど今は控えてくれると助かるわー。これからちょっと、大切なお話になるから」

 

「い、イチャイチャなんてしていませんよっ!! そ、それよりも私たちはどうしてここに連れてこられたんですか」

 

「言ってなかったかしら? シャルロットちゃんはもしもの時を考慮して、少なくともお客さんが帰るまでは私のそばに居てくれた方が助かるの。混乱に乗じて、2人を実力行使で狙ってくる可能性があるから。今回は外部からも沢山観客が集まったから、その中に亡国機業(ファントム・タスク)へと協力している人間側いるだろうしねぇ」

 

「それで僕の方は……?」

 

「ほら、戦闘の途中で聞いたでしょ? 例の賭けのこと。それを実現可能な人が今私と話をしている人なの。私の独断で君のISデータを手渡すわけにはいかないじゃない」

 

「それはわかりましたけど……どうしてそのことを生徒会室で話を?」

 

「情報を最低限の人数に留めておきたいから。盗聴もされてないかは事前に確認をしてるし、防音だから外部から盗み聞きされることなんてないわ。なので、これから話すことを他の人間が知っていたら、それはこの場にいる誰かが情報漏洩したってことだからよろしくねー♪」

 

 ニコニコと微笑みながら言ってるけど遠回しに脅迫してるよね? ストライクの情報を徹底的に隠蔽することを協力してくれるのはとても助かるけど……その為に誰かを傷つけてでも守らなくてはいけないっと考えれば複雑だ。

 

『どうでもいいから。さっさっとお前が完成させてほしいISのUSBをくれないー? GAT-X105、STRIKEのさー。お忍びだし、くーちゃんも早く帰らないと危険なんだから』

 

「そちらの事情は察しますが、こちらにも確認と契約を結ばない限り易々と手渡すことはできませんので。どうも、その態度ですと自己紹介もする気はなさそうなので勝手にやらせてもいただきます。今私と話をしている人は篠ノ之束さん。……そうね、キラ君に簡単に説明するならISの生みの親ってところかしら?」

 

「し、篠ノ之束……っ!? えっ、えっー!?」

 

 まさかISの生みの親である人にストライカーパックの開発を頼み込むことになるだなんて驚きを隠せない。それにしても篠ノ之ってもしかして……? うーん。でも、同じ苗字の人はいると思うし偶々なのかな? 

 

『うるさいなぁー。私用で来ただけで騒がしくする必要ある? お前もだよ。騒々しくなるの分かってるのに、紹介する必要なんてないだろ。それぐらい分かってるだろ?』

 

「それでこっちの子は……できれば自己紹介をしてもらえるとお姉さん助かるかなーって」

 

「────はい。私はクロエ・クロニクルと申します。今回はこの場に来ることができない束様の替わりに、私が失礼させていただきます」

 

「……いくら"天災"でもこんないい子を誘拐だなんて許されませんよ? 表に出てきて自首した方がいいんじゃないですか?」

 

『失礼だなー!! 誘拐なんてするわけないだろっ!? くーちゃんは私の立派な家族ですぅー!! ……はぁ、なんだろ。お前と話すのほんっと疲れるし、腹立つんだけど?』

 

「褒め言葉として受け取らせてもらいますね。それでは和んだこともありますので、本題に入らせてもらいますねー。これは確認ですが……取引については応じてくれると判断していいんですよね?」

 

『私が出した条件をクリアしたから応じてやるよ。時間を測りながら、らーちゃんを助け出すのを見届けたわけだし。内容は、えーっと、未完成のストライクの完成だっけ? ただ完成させるだけなら、別に天才である私の手を借りる必要を全く感じないけど。……それで? なにが目的なの?』

 

「見届けたって。……まぁ、その発言は今回は聞いていないことにします。そのことについては、私からではなくご本人の口から聞いてください。まぁ、貴女が思っているような内容ではないと思いますので」

 

 突然と話をふられることに驚いて、なにを話せばいいのかと困惑してしまう。篠ノ之束さんと更識会長の取引についてはなに一つ知らないんだけど、とりあえずストライクを完成させたい理由を正直に話したらいいんだよね? 

 

「えっと……僕はストライクのパイロット、キラ・ヤマトです」

 

『自己紹介なんて別にいいから。されたところで覚えるつもりなんて全くないし。それで、なんでお前はISを完成させたいわけ? 戦闘は見てたけど、別に技量がないわけじゃない。ある一定の戦闘できるのなら今の状態でも充分だろ』

 

「だけど、それ以上の戦闘はできません。それだと、大切な人を友達を守るためには到底足りないんです。……気持ちだけでは、守れないのは知っているから。……失いたくないんです。大切な人を、友達をこれ以上は」

 

 ハッキリと覚えている守れなかった人たちの最期を。だからこそ誰も失いたくない。あんな悲劇を繰り返さないためにもストライカーパックは必要なんだ。

 

『あっそ。ご大層な理由をせいぜい見失わないようにするんだね。私はお前の持つ、ストライクをこの手で完成させられるのならそれでいい。この私が知らなかったその正体不明のISを』

 

「あっ、念を押しておきますけど、そのデータを使って"悪戯"しようならその時は命の覚悟をしておいてくださいね」

 

『……へぇー? この私に脅迫するんだ?』

 

「脅迫? いいえ。忠告ですよ。そのデータを悪用を企てるのならその命をどのような手段を選ぼうと奪います。GAT-X105STRIKEの機密はそれほど守らないといけないもの。ですので悪用、情報漏洩はやめてくださいねー」

 

 更織会長は軽口で言ってるけど、それを冗談で言っていないのは目を見ればわかる。僅かに感じとれる殺気は自分に向けられたわけではないのに息を呑んでしまう。

 

『注文が多いなぁ? 鼠でも周りをうろうろされるのは目障りだから約束は守ってやるよ。注文通りにこの後受け取るデータ通りに作ればいいんだろ。一応聞いておくけど完成させてほしいし期限とかあるわけ?」

 

「可能なら早くお願いします。正直に言えば今すぐにでも欲しいんです」

 

『現在大切な作業中だから、それが終わり次第作ってやるよ。この私が直々に完成させるなんて、生きている内には2度とないからその幸運を噛み締めて生きていくんだね』

 

「はぁ……それではそちらのクロエちゃんにUSBをお渡ししておきますのでサッサっとご退場お願いしますー。もう一度念を押しておきますが、くれぐれもデータの悪用はなさらないでくださいね」

 

 うるさいなーっと抗議が聞こえれば再度ため息を吐く。クロエと名乗った少女の僅かな動きも警戒しながら近づき、更識会長は彼女の手にしっかりとストライクの情報が入っているUSBメモリを渡す。

 

「貴女もこれを失くさないように気をつけてね?」

 

「はい。束様に必ずお渡しすることを約束します。それでは私はこれで失礼させていただきます。……そして、本日はありがとうございました。今度はゆっくりとお話しできると嬉しいです」

 

 僕らに浅くお辞儀すると少女は生徒会室を退出する。扉を閉める直前に僕の方を最後に視線を向けていたような気がするのは気のせいだったろうか? 

 

「はぁ……今日は流石に疲れちゃったわ。特に精神的に。あの天災と最強を相手にするのは2度と御免ね」

 

「……すいません。僕の我儘に付き合わせてしまって」

 

 本当は取引に持ち込むのも全部僕1人でやらなくちゃいけなかったのにほぼこの人に丸投げするかたちになっていた。

 申し訳なさで顔を顰めていると、慰めるように更識会長は大丈夫よと小さく笑う。

 

「君の身の安全を上げるのに一番効率が良かったから気にする必要なんてないのよ? それに自分でも言ってたじゃない。大切な人を守るために必要なんだって。その為なら協力は惜しまないわ。特に信頼できる人間なら、ね?」

 

「……ありがとうございます」

 

「……むぅ」

 

「あっ、えっと、もちろんシャルロットのことも信頼してるよ?」

 

「……分かってるけど。むぅ」

 

 納得いかなさそうに両頬を膨らませて上目遣いで睨んでくる。ストライカーパックの件はどちらかと言うと更識さんからの提案で、身の上の話をする事になったのはあの時は自暴自棄にもなっていたというか……。

 更識さんに目線で助けを求めると仕方がないわねっと呆れ気味に笑う。なんとなくだけど、このことを貸しだって言われそうだなぁ……。

 

「はいはい。そこにいるキラ君を追い詰めるよりも、このまま3人でお茶でもしましょうか」

 

「お、お茶ですか!? でも、生徒会でもない私がお邪魔するのは……」

 

「いいのよ。生徒会長がお茶をしようって言ってるんだから。私はシャルロットちゃんと親睦を深めたいしねぇ。……ほら、キラ君のことちょっと教えるわよー? ちょっと面白いことを最近したのよ。知りたい?」

 

「もちろんです!!」

 

 遠慮していたシャルがその一言で食い気味に参加を決意する。助け舟を出したつもりなのに逆に追い込まれているのは気のせいだと目を背けながらも、そのまま逃げ出せることもなくお茶会に参加することになった。

 

 

「それじゃあ。また明日ね、キラ」

 

「うん。また、明日」

 

 夕食も近くなりお茶会が終えて生徒会室から、シャルの部屋まで彼女を送っていく。彼女が部屋に入るまで見届けて、今日一日彼女の身に何事もなく終わったことに一安心かな。来賓の人は既に学園からは去っていたとは言われているから外部から接触されることはないだろう。

 

「僕も戻ろうかな。それにストライクの整備もやらないと」

 

「──うんうん。アンタが元気で自分のISを整備する気なのはよーくわかったわ」

 

 いつの間にか鈴が隣に立っていた。ニコニコと微笑んでいる姿を見て余計に冷や汗が出てくる。嫌な予感がして今すぐこの場から駆け出したい衝動をグッと堪えてなるべく平静を装う。

 

「……今から僕ちょっと用ができたから。また、明日ね」

 

「だーれがその見え透いた嘘に引っ掛かるのよ!! ほら! アンタの部屋に行くわよ!!」

 

「……いや、ほら、ちょっと部屋は散らかってるから場所変えたらどうかな!」

 

「それなら公衆の前で説教ね。正座してもらうから。……それともこの場で今すぐお説教してもいいけど?」

 

「……そ、それは勘弁してもらいたいかな」

 

「潔く諦めることね!! 今日は誰がアンタを起こしに来たのかを忘れるんじゃないっての。まず、散らかすほど手荷物なんてないでしょうが。ほら、サッサっと行くわよ。いつまでも廊下で話すのも目立つんだから」

 

「目立つのが嫌ならこのまま自室に戻ったほうが────」

 

「────なにか言った?」

 

 先を歩き始めた鈴はニッコリと微笑みながら振り向く。目元が笑っておらず、これ以上言い訳を並べれば実力行使もやむ得ないと拳を握っていて全力で首を横に振る。逃げられないようにか左腕を掴まれて、そのまま僕の部屋まで彼女に連行されていく。部屋の前に辿り着き、解錠して室内に入る。逃げようがないから解放されると思っていた左腕はいつまでも解放されず、それよりも掴まれている力が僅かに強くなった気がする。

 

「り、鈴?」

 

「……今回だって理由があるのわかってるけど、あんまり心配させるんじゃないわよ。……この馬鹿」

 

「……ごめん。大丈夫。僕は大丈夫だから、鈴」

 

「……んっ。今日はその言葉は信じてあげる。怪我して戻ってきた日には覚悟しておいてよね! アタシはちょっと今から自室に戻って取ってくるものがあるから、アンタは大人しくいること。いなくなったら絶対に許さないから」

 

 震えていた声は嘘みたいに変わり、弾んだ声で鈴はそのまま一度退出していく。手持ち無沙汰にもなり、椅子に座り言われた通りに鈴が戻ってくるまで大人しく待っていることにする。

 戻る時に鈴の部屋に寄ればよかったかな等と考えているとガチャリと扉が開き両手に袋を持った鈴の姿が。僕が椅子に座って待っている姿を見て満足そうに彼女は頷く。

 

「うんうん。大人しく待っていたようね。ちょっとキッチンを借りるわねー」

 

「別にいいけど……?」

 

 すると鈴はそのままキッチンで調理を開始する。普段使用しない場所であって、その場所で誰かが料理をする後ろ姿は新鮮だ。ほぼ素人である僕から見ても慣れた手つきで調理しているのは感嘆のあまり声を出しそうになる。

 

(……どうしてここで料理なんか? 一夏の為なら直接行ったほうがいいんじゃ?)

 

 なぜ僕の部屋で料理を始めたのか理由を考えるが思い浮かばない。一夏の為なら、それこそ彼の部屋に直接行ってやった方がいいわけだし。だって彼女は僕が味覚を感じていないのは知っている。

 

「えっと、一夏の為ならそれこそ一夏のところに行ったほうがいいんじゃないかな?」

 

「きょ、今日はいいのよ! とりあえずアンタは他のことでもやってれば!」

 

 声が上擦ってたような気がするけど、それを聞いたらなんとなく怒りそうな気がするからやめておこう。なにか理由があるのは間違いなさそうだし端末で適当に作業でもしていよう。

 今でも手軽に出来る作業をしていると、微かに食欲をそそるような香ばしい匂いが。この匂いはっとディスプレイから目を離すと、テーブルに出来上がったであろう料理を彼女が運んでくる。

 

「鈴音の特性麻婆豆腐お待たせしましたってね! こっちのめちゃくちゃ赤いのがキラの分よ」

 

「……僕に? でも、僕は味が分からないから食べるわけには……」

 

「物は試しって言うじゃない。辛い料理はまだ試したことないから分からないでしょ? 味付けも濃いめにしてるし、もしかしたらってあるじゃない。……本当に嫌なら、断ってもいいのよ?」

 

「……ううん。鈴が作ってくれたんだから頂くよ。それにお腹は空いてるしね」

 

 眉を下げて不安げに見てくる鈴の姿はあまり見たくない。それにお腹が空いていたのは事実だ。食欲が満たされるのならこの際はなるべく割り切ることにしよう。鈴も椅子はと座り、じっと僕のことを見ているのは多分食べるのを待っているからだろう。

 見るからに辛そうな麻婆豆腐。スプーンで掬い、いつものように期待せずに機械的にゆっくりと口の中へと入れる。

 

「……あっ」

 

 呆然としながら小さく言葉を漏らす。先ほど口の中に入れた食べ物から痛みと僅かに感じられる辛さと味付け。久々に何かを食事しているという実感に衝撃を受けてスプーンを手から離して床へと落とす。

 

「……鈴。味が、するんだ……分かるんだ……君の作った料理の、味が、分かるんだ……っ」

 

「当たり前じゃない。なんたってこの鈴音様が丹精込めて作った料理なんだから。冷めたら味はちょっと変わるけど……ほら、こっち来なさいよ。アタシしかいないんだから、今のうちに吐き出しときなさい。ほんっと、溜め込んでばっかりなんだから」

 

 見かけた彼女が近づいて優しく頭を抱きしめてくれる。静かに泣き続ける僕を鈴はなにも言わない。僕が泣き止むまで彼女はずっと優しく抱きしめ続けた────

 

 ◇◇◇

 

「……ここ、は……」

 

「────ここは医務室だ。やっと目を覚ましたか。この大馬鹿め」

 

「……教官。……っ!!」

 

 目を覚ました少女──ラウラの疑問に答えたのは彼女の意識が回復するまで同伴していた織斑千冬だった。尊敬している師とも呼べる人物の声を聞き上半身を起こそうとすると体は思うように動かず全身に痛みが走る。

 

「無理に体を動かすな。そのまま横になっていろ。命に別状はなかったが、体に大きく負担がかかっていたらしい。暫くは安静にしておくようにだそうだ」

 

「……私は敗れたのですね。禁忌の力へと手を出しながら敗北したのか……哀れだな、私は」

 

 意識を覚醒させれば医務室に運ばれている己の姿にラウラは自嘲する。タッグトーナメントで、敗北するという現実を受け入れられず目先の禁忌の力に手を出しても敗北を喫した。

 呆然と天井を見上げるラウラに千冬は声を掛けることもなく静かに見守る。数分の沈黙。先にその沈黙を破ったのは意外にもラウラであった。

 

「……教官。私にとっては力が絶対でした。力があれば生きていける。存在そのものを許される。教官のように強くなれば、私を誰もが人として見てくれるのだと……ですが……」

 

「……力だけを追い求めることに疑問を抱いているということか。その疑問を抱いたタイミングはいつだ? 少なくとも、タッグトーナメント前まではそうではなかったはずだろう」

 

「VTシステムに取り込まれている間に。とある男の記憶をずっと見ていましたから……」

 

(……相互意識干渉クロッシング・アクセスか? 会話や意思疎通などはできるが。いや、今は問題は誰の記憶を除いたかだ。……一夏ならば楽観視できるが、おそらくは……キラだろうな)

 

 誰の記憶までは曖昧にしているがバツの悪そうに顔を歪めている姿を見れば、短い時間とはいえど戦い方を教えていた間柄。誰の記憶を見たのか推測するのは簡単だった。

 教え子の心境の変化は教師、もとい元教官としては手放しに喜びたいがその要因がキラ・ヤマトなると眉を顰める。

 勘違いはされたくないが、織斑千冬はキラ・ヤマトのことは当然信頼している。しかし、彼の背負い続けている戦争の記憶は彼女の想像できる範囲を逸脱している。軍人として在り方を求められ続けている少女に、どのような影響を及ぼすのかはいくら最強と呼ばれる千冬でも予測はできない。

 

「……教官。私はどうすれば良いのでしょうか……生きていく中で私はなにをしていけば……」

 

「それを今から探していっていいんだ。誰かに敷かれたレールの上を歩むのではなく、自分のやりたい事を探し、歩み、生きていけばいい」

 

「で、ですが……私は────」

 

「────お前は兵器などではない。産まれた理由は歪でも、それでもお前は兵器ではなく1人の人間、ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 表情を曇らせていたラウラに千冬は昔と同じ言葉を投げる。昔同じように少女が自分の存在を思い悩んでいた時に千冬は兵器ではなく1人の人間だと、教官としてではなく1人の大人として同じ人間として諭した。

 

「3年間はこの学園に通うんだからな。どんな人生を歩みたいのか、なにをしていきたいのか大いに悩め。己の人生は己で決め、歩み進んでいくものだ。解が出ないのなら1人で悩むのではなく、親しい者を人を頼り相談しろ。悩むのはいいが、度を過ぎた問題を1人で抱え込みすぎるのはよくないからな」

 

「ですが……教官の手を煩わせるには」

 

「まったく……お前も面倒見がかかる教え子だ。安心しろ。生徒の進路相談は教師の立派な仕事の一つだ。教え子を路頭に迷わせる教師などいるものか」

 

 再度口を開こうとしたラウラを千冬はニヤリと笑いながら頭を撫で遮る。内心はラウラがどのような影響を受けたのか警戒していたが、今の少女の悩みを聞けばそれは杞憂であった。

 

「しばらくはゆっくりと休んでおけ。お前も目覚めたことだし、今日はもう行くが明日また来る」

 

「……わかりました」

 

 ラウラの頭を再度わしゃわしゃと撫でる。照れくさそうにしている彼女の姿を見て満足した千冬は医務室を後にする。

 千冬は無理を言って意識が回復するまでラウラに側にいた。この後の事務処理を考えるとため息を吐きたくなるが、ラウラのある言葉を思い出していた。

 

(……力を手に入れることに渇望していた奴を疑問を抱かせるほどか。なぁ、お前はその記憶をいつまで1人で背負い続けるつもりなんだ)

 

 この場にいない少年の姿を脳裏へと浮かぶ。いずれは聞かなければならないなっと独り言を呟くと突然と電子音が鳴り響く。ポケットに入れていた携帯を取り出してディスプレイを見れば、その名前に千冬は僅かに目を見開く。軽く周囲に人がいないことを確認して電話に出る。

 

「────久しぶりですね。ヒビキさん」

 

『────うん。久しぶりね、千冬ちゃん』

 

 千冬の携帯のディスプレイに通話している相手の名前はこう出ていた。織斑ヒビキっと────

 





本来はお年玉として出す予定が全然無理でしたね!!めちゃくちゃサボってたツケだ!!切腹。これは切腹だよ!!言い訳するなら、リアルが忙しかったのも………()

とりあえずこれでラウラ編は終わりじゃ!!終わりなんじゃ!!一番難航してた!!ぶっちゃけ全部書き直すか悩むぐらいには難航してた!!(クソ発言)

さぁ、ラウラ編が終わったから夏だ海だ!!に行きたいけどまだ終わってない子がいるから……日常回するったらするの!!日常回をやるんだ!!私!!

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