翼を失くした少年   作:ラグーン

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 最近お気に入り登録が1400人を突破しました!!みなさんありがとうございますっ!!これからもよろしくお願いしますの意を込めた投稿です!!


第36話 恋する乙女の相談所

 

 

「ヤマト君。こっちにも目を通しておいてください」

 

「キラ君ー。こっちの備品管理にもお願いねー」

 

(……あれ? これ庶務見習いがやる量なのか?)

 

 次から次へと布仏先輩と更識会長から書類を手渡される。

 放課後に教室から出れば、出待ちしていた更識会長に掴まれて強制的に連行され、生徒会の1人として仕事へと取り掛かっている今に至る。

 

「あの、この書類は僕じゃなくて更識会長が目を通すべきじゃ?」

 

「その書類はもう目を通してるから。いつまでも庶務見習いだと体裁も悪いじゃない」

 

「僕はそんな周りの評価とか一々気にしませんけど……」

 

「まっ、それは庶務がやるお仕事の一環なので諦めなさいな。あっ、ついでにデータとして残しておいて、それ」

 

 更識会長にはやんわりと受け流され、結局この書類にも目を通す羽目になってしまった。

 ストライクの整備をしている方がずっと楽だなぁと軽く現実逃避しながらパソコンを立ち上げて仕事へと取り掛かる。

 ちなみ2人の仕事量は少ないどころか、大雑把な見立てだけど僕の倍以上は仕事を捌いてると思う。……生徒会のメンバーもう1人増やすべきじゃない? 

 

「えへへ〜! 差し入れを持ってきたよ〜!」

 

 個々に黙々と仕事をこなしていればのほほんさんが上機嫌に扉を開けて入室してくる。

 彼女の片手には袋が持っていた。多分、更識会長辺りがのほほんさんにお菓子の買い出しを頼んだのだろう。

 

「本音ちゃんも買い出しから戻ってきたから、ちょっと休憩にしましょうか」

 

「でしたら、私はお茶を用意しますね」

 

「私は紅茶をお願いしようかしら」

 

「お姉ちゃん〜。私はココア〜!!」

 

「はいはい。ヤマト君はどうします?」

 

「えっ、あっ、それならコーヒーでお願いします」

 

 わかりましたと柔らかく布仏先輩は微笑み席を立つ。

 目の前のことに集中していて全く周りの話が耳に入ってなかったや。

 小休憩に入る前に、さっきの仕事も入力終えたし更識会長へと声を掛けて不備がないかと確認してもらおうかな。

 

「更識会長。終わったので確認お願いします」

 

「どれどれ……うん、入力が漏れているところもないわ。百点満点の出来よ」

 

 更識会長は肩越しにパソコンへと覗き込む。不備がないと分かれば満足そうに笑みを浮かべる。

 それはそうとちょっと距離が近すぎません? 尻目に見れば、その視線に気づいた更識会長はどうしたの? と微笑する。

 わざとやっているのか、それとも無意識なのか頭を悩ませる。

 

「お嬢様。ヤマト君が困っていますよ」

 

「あらら、怒られちゃった」

 

 見兼ねた布仏先輩が呆れながら助け舟を出してくれる。

 小さく舌を出して離れてくれるけど、この人絶対に反省してませんよね? というか、やっぱりわざとだったのかこの人……。

 

「いつもすみません……最近お嬢様がヤマト君困らせてるようで」

 

「気にしないでください。……慣れましたので」

 

「いっつもキラ君を困らせてるみたいに言われるのは、お姉さん心外だぞー」

 

「……自分の行動を振り返るのオススメしますよ」

 

 出来上がったコーヒーを布仏先輩から受け取りながら、ブーイングしてくる当人を睨めば白を切り口笛を吹き始める。

 裸エプロンで部屋に潜入したり、納得できる理由で女装させられたり、いつの間にか人の部屋をピッキングして侵入してるなど罪状増えてますからね? 

 

「甘いものを食べて元気を出すのだよ〜!」

 

「……そうだね。そうするよ、ありがとう」

 

「むふふ〜! よいのだよ〜!」

 

 ニコニコと上機嫌に微笑むのほほんさんに釣られて口元が緩む。

 彼女の微笑みには人を癒す力があるんじゃないかって、こっそりと考えている。

 うーん。こうやって甘いものが合法的に食べられるのは嬉しいんだけど味がしないのが本当に不便だ。

 

「それにしても、ヤマト君のタイピングの速さは凄まじいですね。初めて見た時はとても驚きました」

 

「私もびっくりしたよ〜! お姉ちゃんたちよりも速い人を初めて見たもんー!」

 

「プログラム入力するの得意ですから」

 

「たしか、もとはプログラム方面を学んでいたんだっけ?」

 

「なるほど。それならばあのタイピングの速さにも納得がいきます」

 

「もう少し仕事に慣れてきたらデータ入力関連はキラ君に任せようかなって思ってるから。速い上に正確だし、最後に私と虚ちゃんが不備がないか確認すればいいしね。まっ、適材適所ってやつ」

 

「……任せられた以上は頑張ります」

 

「よろしくね〜。今後頑張り続けたら、お姉さんからとっても嬉しいご褒美あるかもだぞー?」

 

「それは謹んで辞退させてもらいます」

 

 えーと不満そうに拗ねますけど絶対に碌でもないじゃないですか。

 潜入までしてるのだからそれ以上のことをするのには間違いない。

 具体的に例を挙げれば今日この部屋に泊まるなんて言いかねない。その時は容赦なく布仏先輩、更識さん、千冬さんへと報告しますからね? 

 

「そろそろ私はお暇させてもらうね〜。今日はラウラウと予定があるのです!」

 

「そっか。ラウラのことお願いするね」

 

「むふ〜! お兄ちゃん、任されました〜!」

 

 ラウラと予定があると言うが、向かう先はきっと整備室だ。最近ラウラも整備室に居るのは更識さんのISの開発を手伝っているのだろう。

 2人も彼女が何処に向かうのか知っているから何も言わないで見送るのだ。

 ココアを飲み終えたのほほんさんは生徒会室を後にする。

 

「さてと、休憩も終わりましょうか」

 

「そうですね。今日中に終わらせないといけないのはまだ残ってますから」

 

(……更識会長はずっと更識さんと仲直りしないつもりなのかな)

 

 更識さんのISが完成していないのを姉であるこの人が知らないはずはない。

 手伝わなくていいんですか? と喉まで出かけた言葉を呑み込む。

 だって一番手伝いたいのは更識さんの姉である更識楯無のはずだから。

 

「どうしたの? 慣れないことだから疲れちゃった?」

 

「……いえ、少し考えごとを」

 

「それなら早速これをお願いするわねー。今日は用事があるからパパッと終わらせないといけないから」

 

 顔色を窺う更識会長に悟られないように思考を振り払う。それにしても用事があるなんて珍しいや。

 新たに手渡された書類を受け取りながら、胸のつっかえから目を背けるように目の前の仕事へと意識を向けた──

 

 ◇◇◇

 

「ほら、食べやすさと健康も考えて持ってきたぞ」

 

「……ごめん。助かったよ、ラウラ」

 

 生徒会での仕事も終えて食堂に向かっていれば、途中でバッタリとラウラと出会ったので一緒に夕食を共にする。

 慣れない仕事をしてちょっぴり疲れてるのを彼女に見透かされ席の確保任されていた。

 ラウラは味覚がないのも知っているので言葉通り食べやすさ&健康を踏まえた料理を持ってきてくれる。

 

「……どう? その、更識さんのIS開発」

 

「……難航しているな。稼働データで躓いている。それともう一つのシステムデータがな」

 

「もう一つのシステムデータ?」

 

 もう一つのシステムデータが何なのかと尋ねればラウラの表情は更に険しくなる。

 言葉にするのを躊躇っているようで難しい顔をしていたが小さく息を吐いて重々しく口を開く。

 

「……マルチロックオン・システム。兄さんには心当たりがあるだろ?」

 

 予想外の言葉に大きく目を見開く。

 マルチロックオンシステム──それはフリーダムに搭載され、最大40機を同時にロックオンすることが出来るシステム。

 そのシステムのおかげで多くの局面を切り抜けることが出来た。

 そしてラウラが何故それを切り出すか悩んでいた理由も納得がいく。

 

「……そうだね。フリーダムのマルチロックオンシステムを応用すれば、更識さんのISが完成させるのに近づけるはずだよ」

 

「だが、フリーダムに関係するとなれば……」

 

「……うん。僕はこの世界でもフリーダムに関係するデータや情報は誰にも渡すつもりはないよ。それがラクスから託された、僕の責任だから」

 

 今の貴方へと、僕の願い、僕の行きたい場所へと必要だからと彼女──ラクス・クラインからフリーダムを託された。

 この世界でも僕はフリーダムに関する情報は誰にも渡さない。それはどの世界に行こうとも決してその意思は揺らいではいけないんだ。

 

「だから、ごめん。僕は力になれないよ」

 

「謝罪する必要はない。むしろ、その決意に変化がないのに私は好ましいよ」

 

「それに今はストライクだからさ。マルチロックオンシステムを搭載されてないストライクなのに、急に僕がシステムデータを応用したのを渡すのは不自然だろうし……」

 

「ストライクにどのようなシステムが搭載されているのか知っているのは兄さんだけじゃないか。誰にも触れさせてないだろうに。案外バレないんじゃないか?」

 

「いや、まぁ、そうだけどさ……」

 

「なに、ヒソヒソと話してんのよアンタら」

 

 ISに関係することなのでコソコソと話していれば、夕食を持ち訝しんで眉を顰める鈴へ声をかけられ、その隣にはあははと苦笑いを浮かべてるシャルの姿が。

 空いている僕の隣の席にシャルが座り、ラウラの隣に鈴は座る。

 

「私と兄さんが親しいのは周知の事実だろ? これぐらい普通だ」

 

「おかしいから! アンタらの距離感は絶対におかしいから!」

 

「……鈴も人のこと言えないと思うよ?」

 

「うぐっ……」

 

 小さな声でボソリと呟いたシャルの一言に鈴は言葉を詰まらせる。

 それは、ほら、アタシはと珍しく強気に返せてない鈴に視線でアンタも何か言いなさいよと訴えられる。

 急に巻き込まれたなぁと諦めながらも、彼女が満足するまで面倒を見させろと言ったのを頷いた僕にも責任はあるし。

 

「ほら、鈴は織斑先生に頼まれたのもあるからさ」

 

「そ、そうそう。織斑先生にちょっとお願いもしたから、それでコイツの面倒見るのサボっちゃうと怒られるから仕方なくよ! うん、仕方なく!」

 

「……ふーん」

 

「ふっ、愉快なものだな」

 

「そこの他人事だと思ってる自称妹!! もとはアンタが事の発端でしょうが!」

 

「あー、もう、2人とも喧嘩は駄目だよー!」

 

 鼻で笑ったラウラの態度が気に入らず再度突っかかる鈴とこれ以上は喧嘩に発展するとシャルが仲裁に入る。

 すっかり鈴とラウラから意気投合していて微笑ましい。2襲撃した件についてはラウラが2人に謝罪をしている姿を見かけたのでこの様子だと解決したのだろう。

 

「……お前の周りは相変わらず賑わっているな」

 

「ええ。お2人の喧嘩は遠くからでもよく聞こえていましてよ?」

 

 そこへ呆れた顔をした箒さんとセシリアさんも合流してくる。

 いつの間にか一夏を除いたいつものメンバーが揃ってきたなぁ。

 

「一夏は箒さんとセシリアさんと一緒じゃないの?」

 

「少し遅れるから先に食堂に向かっていてくれと言われてな。アイツの席を確保も先に来たといったところだ」

 

「ええ。そしたらキラさんの周りが賑やかしいのでご同伴に預かろうと思いまして。よろしいでしょうか?」

 

「うん。全然大丈夫だよ」

 

「ありがとうございます」

 

「すまないな。助かる」

 

 箒とセシリアさんなら特に断る理由はないしね。これが知らない人だったらさっきまでISの話をしてたからちょっと警戒してたけど。

 いつものメンバーが集まったので話は自然と最近話題の校外特別実習へと変わっていく。

 

「そういえばアンタは水着持ってるの?」

 

「水着? 持ってないよ」

 

「そ、そうなんだ。キラ水着持ってないんだ……」

 

 何気なく鈴が聞いてきたのでもっていないと答えればシャルがちょっとだけソワソワと落ち着きのない様子。

 みんなもなんとなくシャルの様子に察したようで若干居心地の悪そうに目を逸らす。

 

「これは他意はなく興味本位な質問だ。水着は買うのだろう? 1日とはいえど自由時間があるのだからな」

 

「……うーん、まぁ、一応……?」

 

「なんですの、その曖昧なお返事は。誰かに聞かれなければまさか買う予定はなかったおつもりで?」

 

「……まぁ、うん、そうだね」

 

「初めは買う予定なかったのに改めたわけね。珍しいじゃない。……で、誰に諭されたわけ? ちょっと小言を言われたぐらいで改めないでしょ」

 

「……織斑先生から」

 

「ああ、教官ならば納得だな……」

 

 シャル以外からコイツはと残念なものを見る目で見られて肩身が狭い。

 うっ、だってこの世界の通貨なんて持ち合わせはないから仕方ないじゃないか。それに水着に着替えて楽しんでと言われても、今更どんなふうにはしゃげば良いのか分からないんだよ。

 

「……そ、そのね。水着買うつもり、なんだよね?」

 

「えっ、うん。一応はね」

 

「それなら私も臨海学校に備えて買い出しに行く予定だったから、そのね、えっとね……一緒にお買い物に行かない?」

 

「それならば私も兄さんと──」

 

「この! 妹なら空気ぐらいは読みなさいよっ!!」

 

 指を組みモジモジと器用に動かしながら、頰を薄らと赤くしてシャルは上目遣いで伺ってくる。

 ラウラが何か言おうとしてだけど鈴が力づくで彼女の口元を抑えているのを内心で感謝する。

 

「それなら一緒に行こうか。1人で行くのは正直心細かったから」

 

「うん!! 一緒に行こう!! 約束だよ!!」

 

 一緒に行こうと頷けば、嬉しそうに満面な笑顔でシャルは僕の手を握ってくる。

 彼女がここまで喜んでくれるとは思ってなくて少し驚いてしまう。

 顔に出てしまってたようで、それに気づいたシャルは我に返り恥ずかしそうにごめんねと謝りながら手を離す。

 

「……不思議ですわね。数十分前のわたくしの行動を恨みたくなってきましたわ」

 

「……奇遇だな。私も同じ意見だ」

 

「……私も兄さんと一緒に出かけたかったぞ」

 

「わ、悪かったわよ。ほら、今度誘えばいいじゃない。今日はシャルロットに譲ってあげなさいよ」

 

「……えへへっ。キラとお出かけかぁ」

 

 2名ほど遠い目をしてるけど触れないのが一番だ。俗に言う触らぬ神に祟りなしというやつだ。下手に触れると一夏に対する鈍感さの日頃の鬱憤を吐き出されかねない。

 

「……はぁ。気を取り直して、キラに相談があるんだがいいか?」

 

「相談……? えっと、内容によるけど……」

 

「主に一夏についてだ」

 

「あっ、ごめん。ちょっと今から用事を思い出したから、また今度で」

 

「ま、待て! そんなお前に対して愚痴やら鬱憤やらを吐き出そうとは思っていない! ええい! なぜこの時は即決即断なのだ!! お前は!!」

 

 気を取り直した箒さんに相談があると言われ、嫌な予感を感じたが案の定一夏について。

 絶対に面倒くさいことになると判断をして席を立ち上がろうとすれば必死に箒さんに止められる。最後に若干忌々しそうに言われるが巻き込まれたくないと思うのは、それでも間違いじゃないんだ……。

 

「……誰かに肩入れしてくれって相談なら僕は受け付けてないからね」

 

「安心してくださいまし。今回はそのようなご相談ではありませんので。……ちなみに個人に肩入れしたくない理由をお伺いしても?」

 

「……絶対に巻き込まれるし、面倒くさいからかな」

 

「うわっ、アンタも弾と数馬と似たようなオーラ出さないでよ……」

 

 これほど弾と数馬の協力が欲しいと願ったことはないよ。2人が居れば一緒に主に弾が率先して俺が知るかよ! と恨めしそうにしながら断ってくれただろうに。

 

「……大袈裟に相談などと言った私が悪かった。単に同性としてあの唐変木の鈍感に対して一言、二言話を聞きたいだけだ」

 

「なるほど……それぐらいなら、まぁ、答えられるけど……」

 

「その、一夏さんはわたくしたちをきちんと異性としては意識していらっしゃるのか、キラさんからの見解が欲しいんですの」

 

 セシリアさんから懇願されてうーんとつい唸ってしまう。

 最近似たような愚痴を聞かされたなぁと織斑さんの姿を思い出しながらもあくまで僕から見てからだけど、と前置きをして話す。

 

「意識はしてるとは思うよ? ただ、みんなのことを異性の友達として見ている部分があるから、無意識に意識しないようにしてるんじゃないかな」

 

「それはあるかもね。恋愛に興味がないわけではなさそうだし……その、みんなを単純にそういった対象で見ないようにしてる説が有力なのかも」

 

「だから、一夏には真っ直ぐと気持ちを伝える方法が一番だよ。鈴には一度言ったけどね」

 

 覚えている鈴はうっと気まずそうに声を詰まらせる。あの様子はどっちかというと、泣いてるのを見られたのを思い出してるんだろうなぁ。

 好きだという感情は抱いているのに、好きという2文字を大好きな人へ言葉として気持ちを贈るのが難しいのは知っている。

 ただ、やっぱり彼女たちにはあの時に伝えていれば良かったのだと後悔は抱いて欲しくないんだ。

 

「……その、意外でしたわ。あの、ハッキリと想いは伝えるべきだと言われるとは思っておりませんでしたので」

 

「想いは言葉にしないと伝わらないから。単純に一夏は鈍感なんだからそれぐらいが丁度いいんじゃないかなって、僕からの一つの意見かな。それは一夏が好きなみんなの方が心当たりは多いだろうし」

 

「……要するにシャルロットを見習い、サッサっと告白しろと言うことだ」

 

 興味なさそうにラウラが呟けば3人がうっと顔を顰めて言葉を詰まらせる。

 この話になってからラウラはずっと気にかけてくれて視線を向けてくる。大丈夫の意味を含め、軽く微笑めば哀しそうな顔を浮かべるがそれも一瞬で何事もなかったようにいつもの顔に戻す。

 

「──悪い遅くなった!!」

 

 話が一区切りつけば丁度良く一夏が夕食を持って席に着く。

 突然と一夏が現れたため話が聞かれてなかったのかと3人が動揺をするが、その様子を見て首を傾げる一夏を見てホッと安堵する。

 

「それじゃあ、僕は食べ終わったから先に失礼するね」

 

「えっ、そうなのか? キラと一緒に食べたかったのに……」

 

「今日はごめんね。時間があったら今度一緒に食べようね」

 

「おう! 約束だからな!」

 

「私もこの後少しばかり人と会う約束があるため失礼する。行こう、兄さん」

 

 一夏と今度一緒に食べる約束をして、ラウラに引っ張られるように連行される。

 食堂を出れば掴まれていた腕を離して、彼女は心配するように僕の顔を伺う。

 

「……本当に大丈夫なのか?」

 

「心配してくれてありがとうね。……思い出してたんだ。出撃する前に、彼女が、フレイが僕に何を言おうとしてたんだろうって」

 

「兄さん……」

 

 左腕の待機状態のブレスレットであるストライクをそっと右指で撫でる。

 あの時に僕らはお互いに何を言おうとして、伝えたかったのか。それを知れなくて、言えなくて最後は2度と出会えなくなってしまった。

 僕らがあの日の約束を果たすにはあまりにも遠くなりすぎた。もう2度と叶うことのない約束へと。

 

「この後人と会う約束をしてたよね。ごめんね、余計な時間を使わせちゃって。僕は部屋に戻るから」

 

「兄さん……っ!」

 

 ごめんねと謝りながら歩けば背中からラウラに抱きしめられる。

 彼女の体は僅かに震えていて、それが僕のことを心配してくれてるんだってハッキリと伝わる。

 

「……行くな。行かないでくれ……兄さん」

 

「大丈夫。大丈夫だから。僕は行かないよ……約束したから、(フレイ)と」

 

 落ち着かせるようにラウラの手を触れる。

 都合のいい夢の世界だけど、フレイ・アルスターと約束をした事実は変わらない。

 だったらその約束を僕は守らないといけない。答えが何も見えなくともその先で彼女が待っていると、また逢えると都合の良い奇跡を胸に抱きながら。

 

「……いなくなったら泣くからな。私は妹なんだから」

 

「うん。僕も妹を泣かせたくはないかな」

 

「……その言葉を今は信じよう」

 

 名残惜しそうにゆっくりとラウラは離れる。ありがとうと言いながら頭をつい撫でてしまうけど、恥ずかしそうにちょっとだけ顔を赤くするけど嬉しそうに上目遣いで見てくる。

 

「……私はそろそろ行く。兄さん、また明日だ」

 

「うん。また明日ね、ラウラ」

 

 ラウラの背が見えなくなるまで僕は見送りながら思うのだ──恋愛相談はやっぱり向いてないかなって。

 





 次回は多分シャルとキラ君のデート回だよ、やったね!!やっと青春らしいことをできているのでは?というか初めてでは……?

 はい。前書きでも言いましたがお気に入りが1400突破しました!!ありがとうございます!!だらだらと更新してますが気長にこれからもお付き合いください(土下座)評価バーも赤なので継続して頑張りましゅ……また失踪した時は許して…許して……SEED劇場版放送されたら戻ってくるから()

誤字&脱字報告いつもありがとうございますっ!!感想も毎度してもらえてとても励みになっておりますっ!!次の更新は未定ですが気長にお待ちくださいー!!
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