翼を失くした少年   作:ラグーン

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遅くなりましたぁー!今回は間違いなく過去一量が多いよ……ここまで長くなるのは我ながら驚きました……私のいつもの前書きはここまでにしてそれではどうぞー!


第37話 ドキドキデート!!

 

 

(えへへっ。私、キラとデートしているんだ)

 

 週末の休日の日。校外特別実習──臨海学校への準備のため僕らは街中へと出ていた。

 隣には上機嫌で嬉しそうに笑うシャル。今日の彼女は制服では無く私服で半袖の白いブラウスで、スカートと同じライトグレーのタンクトップ。

 とどのつまり、世間一般で言えば僕らは今日デートをしているということ。

 

「今日は駅前のショッピングモールに行くんだっけ?」

 

「うん。一夏や他の友達にも聞いたけど駅前のショッピングモール『レゾナンス』がオススメなんだって。他の人もそこで今日はお買い物してるんじゃないかなー?」

 

「もしかして友達に聞いてまわったりしたの?」

 

「もちろん! 誘ったのは私だもん。だから、今日のエスコートは任せてね!」

 

「それじゃあ、お願いしようかな」

 

 自信満々に意気込む彼女を見て頬を緩める。

 情けない話だが駅前の道のりは全く知らない。覚えているの遊びに行った五反田食堂ぐらいだ。

 これからも自主的に出かけるかと言われたらそれはないんだけどさ。それでも、最低限の道のりはいい加減覚えるべきかもなぁ。

 

「そういえば出かける前にラウラから貰ったこれってなんだろう……?」

 

「詳しくは知らないけどお守りらしいよ?」

 

 シャルは右腕につけている水色のブレスレットを眺める。

 2人で出かける前にラウラがシャルに水色のブレスレット、そして僕には同じ色のリストバンドを手渡してきた、

 ラウラ曰く『──お守りだ。肌身離さずつけておけ』と念を押しながら一方的に押し付けられた。

 いや、リストバンドはストライクを隠すのにうってつけだから助かるんだけど水色ってなんか更識会長を思い出すんだよね……。

 

(リストバンド後で帰ったらラウラに返すとして……問題はどうやってお金を返すか)

 

 シャルに気づかれないように頭を悩ませている問題。織斑さんと山田さんにどうやって今日使用することになる資金をどう返すか。

 シャルにデートに誘われたのを風の噂で聞いたのか、織斑さんはニヤニヤとからかいながら、山田さんは喜びながら嬉々として渡してきた。

 その際に無理に返さなくて良いと口を揃えて言われたけど気が引けるんだよなぁ。

 

(……これ以上考えたって名案が浮かぶわけでもないからやめよう。今はシャルとのデートに意識を向けないと)

 

 内心で重苦しく息を吐きながら思考を切り替える。

 今日を楽しみにしていた隣の彼女を蔑ろにするのは失礼だ。誘われて、それに頷いたのは自分なのだから彼女の記憶の中で良い思い出として残れるように努めないと。

 隣で嬉しそうにしているシャルを横目で見ていれば、その視線に気づいた彼女が不思議そうに首を傾げる。

 なんでもないよと彼女に穏やかに笑い返し、僕らは雑談をしながら目的地へと向かう──

 

 ◇◇◇

 

「わー! やっぱり休日だから人が多いね」

 

「そうだね。こんなに人がいる場所に来たのは久々だよ」

 

 僕らは目的地のショッピングモール『レゾナンス』の一階に居た。

 ショッピングモールと聞いていたから人が多いだろうと予測はしてたけど休日でもあって大勢の人で賑わっていた。

 ここに来るまでの途中にシャルにレゾナンスについて話を聞いたが、食事も国内だけではなく国外の料理も豊富らしく、衣服もブランド品や量産品も網羅しているらしい。そして各レジャー施設もありお年寄りから子供まで幅広く堪能できる万能モールと、一夏と鈴が言っていたらしい。

 多くの人の賑わいに既視感を抱き、思い出すのは生活物資と弾薬補充を補給のために寄ったバナディーヤの街。

 あの時はカガリと一緒に街中を回ったんだっけ。途中でバルトフェルドさんと出逢い、襲撃に巻き込まれたりと途中から街中を平和に回るどころではなくなった。

 

「……こんなに人が多いからはぐれたら大変だよね」

 

「えっ? あっ、そうだね。こんなに人が多いと、はぐれたらシャルと合流できる自信はない、かな」

 

「そ、それなら手を繋がない? 私もはぐれたらキラを探し出せる自信ないから」

 

「そうだね。うん、手を繋ごうか」

 

 シャルの提案に頷けば顔をうん! と嬉しそうに頷く。

 はぐれないように手を繋げば柔らかくて暖かく彼女の体温を感じる。

 シャルが頬を赤くしているのは僕を意識しているんだって一目で分かる。

 

「それじゃあ行こうか。えっと、2階なんだっけ?」

 

「う、うん! 2階だよ!」

 

 声をかければしどろもどろに答えるシャル。

 なんというか、こうやって同年齢の子が落ち着きもなくソワソワとしている様子は新鮮だなぁ。

 同上で2階とまでしか僕は知らないのでシャルに案内されながら2階へと行く。

 

「そういえばキラは他に買いたい物とかあったりする?」

 

「特にないかな。今日は水着以外買う予定はないよ。これといって欲しいものはないし。シャルの方こそどうなの? 買いたい物があるなら付き合うよ」

 

「こうも選り取り見取りだと悩んじゃうかなぁ。水着を買った後にお店を数軒はちょっと回りたいかも」

 

「それなら先に水着を買うのすませよっか。待ち合わせ場所はここにして別々に買いに行く?」

 

「……その、一緒に見て回りたいかな。デートだから極力キラと一緒に居たいんだ。駄目、かな?」

 

 シャルから上目遣いで懇願される。

 どうしようかと悩むが、名目上はデートなのだから一緒に見て回るのは不自然ではない。それに休日もあるからかチラホラと恋人関係と見受けられる2人連れもいるから深く気にすることもないか。

 

「そうだね。一緒に回ろうか。どうする? 先にシャルの水着を見に行く?」

 

「ふえっ!? え、えっと……!! ……そ、それならお願いしようかな! キラにも一緒に見て欲しいから……っ!!」

 

 どうやら彼女は駄目元で頼んできていたらしく聞き入れられたと認識するのに数秒ほど時間がかかり、大きく慌てふためく。

 顔を真っ赤にして勢いで言っちゃったと小さな声で呟いたのが聞こえてしまい無理しなくていいよ? と言おうか悩むが、それを口にすれと逆効果になりもっと大変な事になりそうな天啓が舞い降りたので黙っていよう。

 

(シャルの近くにいれば大丈夫だよね……?)

 

 女性水着売り場へと実際に足を踏み入れると、自分がどれだけこの空間で異物なのかを自覚してしまう。

 男がこの空間に足を踏み入れたと他の女性客に視線を向けられるが隣にシャルがいるので恋人なのだと認識されれば興味なさそうに目をそらす。

 

「今日初めてキラの緊張した顔を見たかも」

 

「……女性の水着売り場は初めてだからね。なんだろう、自分が本来此処に居たらいけないんだってありありと感じとれたよ」

 

「それなら私のそばから離れないでね? もしかしたら追い出されちゃうかも」

 

 シャルはクスクスと笑いながら冗談を言う。

 握られていた手をさらに強く握られて女性水着売り場を共に歩く。

 シャルはうーんと悩みながら自身に似合いそうな水着を次々と手に取る。

 

「そ、そのね。どっちが似合うかな?」

 

 シャルが手に取った水着は白のワンピースタイプと、黄色のセパレートとワンピースの中間のような水着の2種類。

 どちらが似合うかと聞かれるものの、シャルは両方とも似合っているのが正直なところ。

 ただどちらかを選べと言われると、悩むが黄色のセパレートとワンピースの中間の水着の方かな。シャルのパーソナルカラーに引っ張られているのは否定できないけど。難点を上げれば胸元を強調しているところかな……。

 

「僕は両方ともシャルに似合ってると思うよ? シャルが気に入った方を選んでいいんじゃないかな」

 

「うー、悩んじゃうなぁ。ちょっとだけ試着してくるね。ここ試着しても大丈夫そうだから。ふらふらと動いたりしたら駄目だよ?」

 

 暫く悩んだ結果、シャルは近くの試着室へと姿を消す。

 シャルが試着室から戻ってくるまで僕は1人でこの場に残らなければならない。手持ち無沙汰だったのがこんなに恨めしいと思う日がくるなんて……。

 

「──見知った姿だと思えばやはりお前だったか」

 

「あっ、箒さん」

 

 聞き慣れた声から声を掛けられたので、声をした方を振り返れば私服姿の箒さんの姿が。

 半袖の黒のジャケットと赤色のミニスカートといったお洒落した格好。彼女が此処にいるということは恐らく水着を買いに来たのだろう。

 

「女性の水着売り場に呑気に立っているのを見るに、シャルロットとデートの最中のようだな。彼女はどうしたんだ?」

 

「シャルロットなら水着の試着に行ったよ。ここ試着大丈夫そうだから」

 

「ああ、納得した。そうでもなければシャルロットから離れるなどはしないか。ここだと尚更な」

 

「……ここを1人で入る勇気なんて流石にないよ」

 

 水着だと言っても近寄り難い場所、というか絶対に寄りつかない。

 少しいえど1人でこの空間に居続けるのは大いに居心地が悪いので、友達である箒さんと出会えたのは正直助かったよ。

 

「箒さんもやっぱり買いに来たの?」

 

「セシリアと一緒にな。探せばその辺にいるんじゃないか? クラスメイトもチラホラと見かけたぞ。……よかったな。クラス内で当分はまたお前らの話題で持ちきりだろうよ」

 

「……だよね」

 

「まぁ、我らがクラスはその辺は弁えている。少なくともお前が目の前にいる時は目に見えてその話題を話す人はいないだろうよ。女子とは恋バナには弱いんだ、大目に見てくれ」

 

「……つまり箒さんもその1人だってこと?」

 

「……ま、まあな」

 

 箒さんが両腕を組み目を逸らしてどもりながら答えるとなると、どうやら味方になりそうな人はいないらしい。

 こればかりはどうしようもない。熱り冷めるまで気づかないふりを押し通すだけである。

 

「キラ、どっちが似合うか──あれ、箒?」

 

 試着室のカーテンからシャルはひょっこりと顔を出せば箒さんが居ることに驚く。

 シャルの行動から箒さんは何をしようとしているのか察したのか感嘆の声が漏れる。

 

「キラのことになると、驚くぐらいに大胆になるんだな」

 

「だ、だって……ほ、箒だって一夏にならやるでしょ!?」

 

「そ、そんな恥ずかしいこと出来るか!?」

 

「わ、私だって恥ずかしいんだよっ!? ……い、一度は……その、見せたけどぉ……」

 

「ま、まあまあ。ふたりとも落ち着いて、ね? お店の中だからさ」

 

 徐々にヒートアップしている2人を宥める、というか止めないと主にシャルがテンパって何を口走るかわからない。

 一度彼女の下着姿を見たどころか、一線を超える寸前までいったなんて口が裂けても言えない。

 冷静になればお互い気まずそうに目を逸らすが落ち着いてくれて何よりだよ。

 

「……んんっ、お邪魔虫は大人しく退散しよう。馬に蹴られて地獄に落ちるのは御免だからな。キラ、言葉を濁さないで正直に褒めろよ」

 

「えっ? あっ、うん……」

 

「それとシャルロットは頑張れよ。どうやら一夏とは別の理由で難攻不落そうだからな」

 

「う、うん!」

 

 シャルロットを鼓舞して箒さんは自分の水着探しへと戻っていた。

 箒さんが去ればこの場には僕とシャルの2人きりになるわけで。暫く恥ずかしそうにシャルは俯いていたが、よしっと小声で気合を入れるとカーテンを開ける。

 

「ど、どうかな……」

 

 カーテンを開けたシャルが試着していた水着は白のワンピースタイプではなく、胸元を強調している黄色のセパレートとワンピースの中間のような水着だった。

 両腕を後ろで組み恥ずかしそうにしながら次の言葉をシャルは待つけど、てっきり白のワンピースタイプの水着だと思っていたので意表を突かれて上手く舌が回らない。

 

「あ、えっと……似合ってるよ」

 

「……ほんと?」

 

「その、上手に言えないけど……とても似合ってる、よ」

 

 不安そうに聞かれると狼狽えながらも必死に言葉を絞り出す。

 自分のことながら咄嗟に思い浮かぶ褒め言葉が安直すぎないか? と思わなくはないけど、それ以上の言葉は思いつかないんだ。

 シャルの水着姿をずっとマジマジと見続けるわけにもいかず目を逸らしてしまうが、シャルはそんな僕を見て満足そうな笑みを浮かべる。

 

「うん! それなら私の水着はこれにしよっかな」

 

「ほ、他のを試さなくていいの?」

 

「ううん。これでいいの」

 

 すぐに着替えるからと言いながらシャルはカーテンを閉める。

 満足そうにしていたからシャルの中で得るものがあったの間違いなさそうだけど……どうなんだろう? 

 その後着替えて試着室から出てきた上機嫌なシャルと共に彼女の水着を購入して女性水着売り場から出る。店員さんが生暖かい目で僕らを見てきたけど、恋人じゃなくて友達なんですと否定する勇気は出なかったよ……。

 

「そ、それじゃあ次はキラの水着を選びに行こっか」

 

「無理はしなくていいんだよ? 入り口で待ってればすぐに僕も戻って来るからさ」

 

「う、ううん!! 行くよ!! わ、私もついて行くから!」

 

 シャルはぐいと顔を近づけてくる。

 これは意固地になってるなぁと苦笑いを浮かべながらも男性の水着売り場へと歩みを進める。

 ちょっぴり僕の手を握る力が強くなるのはシャルは緊張しているのだろう。先ほどの様子を見る限り初めてのようだし。

 

「すぐに終わるからちょっと我慢しててね」

 

「き、気にしなくていいよ! キラもゆっくり選んでいいんだよ?」

 

「ほら、僕はもとから水着は買う予定なかったからさ」

 

 どれが良いかと悩んだいると、ちょっと高いが上着とズボンの水着セットがセールで売られているのに目が留まる。

 ズボンは無難にハーフパンツの紺色。そして上着は水色の半袖のパーカー付き。なんとなく地肌を晒すのに抵抗があるので丁度いいかな。

 

「気を遣わせちゃってごめんね……」

 

「そんなことないよ? 気にしなくて大丈夫だよ」

 

「ま、まぁ、一夏にしてはセンス良かったし? 今日のことは許してあげる」

 

「そんな俺がセンスが致命的みたいに言わなくてもいいじゃんか」

 

「「「あっ」」」

 

 若干落ち込んでいるシャルを励ましながら男性の水着売り場から出れば、女性売り場の方から聞き慣れたとある二人の声が聞こえてくる。

 まさかと思い声のした方へと視線を向ければそれは相手も同じだったようで同じようにデートの最中だったのか一夏と鈴とバッチリ目が合う。

 

「──やっと出てきたか。お前たちを待つ俺たち2人の身も考えろよなぁ」

 

「──まったくだ。時間が掛かるのは目に見えていたが、こうも時間が掛かるのならば俺は聖地であるアニメショップへと向かいたかったんだがな」

 

 水着売り場から出てきた一夏と鈴に近づく2人の声と姿には当然僕は見覚えがあるわけで。

 近づくと2人が固まっていることに弾はその視線の先に怪訝な表情を向ければ僕とバッチリと目が合う。

 

「──は?」

 

「あ、あはははは……」

 

「どうしたお前まで固まって。……うん? キラじゃないか。隣にいるのは……ああ、弾が固まったのはそういうことか」

 

 まるで石化されたように固まった弾に数馬は最初は不思議そうにするが、僕の隣にいるシャルの存在に気がつくと納得する。

 そして再度数秒の沈黙が流れる。その静寂を破ったのは数十秒程フリーズしていた弾だった。

 

「ようー! 久しぶりじゃないか、キラ!!」

 

「ひ、久しぶりだね」

 

「えっと、キラ、この人は……?」

 

「ああ、悪い! 俺は五反田弾だ。一夏と鈴とは中学の頃からの友達でな! それでキラとは最近友達になったんだよ。よろしくな!」

 

 弾は僕の肩へと腕を回して、爽やかな笑顔を浮かべながら困惑していたシャルロットへと自己紹介を始める。

 掴んでいる肩にこっそり力込めるのやめてほしいかな。その、地味に痛いんだよね……。

 

「あっ、君がたまに一夏や鈴が言っていた弾君なんだね。私はシャルロット・デュノア、よろしくね!」

 

「お、おおう……こ、これがIS学園の女子……」

 

「ちょっとそこのバンダナ!! まるで初めてIS学園の女子生徒と触れ合ったみたいな反応するんじゃないわよ!!」

 

「鈴はノーカンだ!! ノーカン!!」

 

 若干テンションがおかしくなっている弾の発言に鈴は頭にきたようで2人の口喧嘩が始まる。

 またかと呟きながら一夏は止めに入り、数馬の方は止める気はなく、むしろ2人の喧嘩を冷や冷やとしながら見るシャルへと自己紹介を始める。

 

「俺は御手洗数馬だ。弾と同様に中学から一夏と鈴と連んでいる」

 

「えっと、シャルロット・デュノアです……その、2人は止めなくて大丈夫なの?」

 

「なにあの2人の喧嘩など日常茶飯事だ、気にするほどじゃない。一夏が関わっていない分まだマシだ」

 

「……ああ、うん……」

 

 流石中学の頃から友達である数馬だよ。これぐらいなら多少放置したところで問題ないと見極めが上手である。

 現にヒートアップする前に一夏が2人の喧嘩を止める。喧嘩するほど仲がいいとは聞くし弾と鈴はその象徴をしている関係だよねぇ。

 2人の喧嘩も収まったことから大丈夫かなーと淡い期待を抱いていたけど、次の弾の標的は僕のようでゆっくりと視線を向けてくる。

 

「……それで? キラ君は何をしていたんだ?」

 

「……買い物だね」

 

「なぁ……お前はさっき2人で何処から出てきた?」

 

「……弾は勘が鋭いんだね」

 

「こ、この!! 裏切もんがぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 弾は逃げられないように両肩をがっしりと掴んできて血走った目で詰めてくる。

 シャルと2人でいる場面をバッチリと見られている以上は誤魔化せるわけないから素直に自白するしかないじゃないか。

 

「前に鈴が言っていたシャルロットはこの子だったんだなぁ!! こんなめちゃくちゃ可愛い子といい関係だなんて羨ましすぎるぞコンチクショウ!!」

 

「いや、その、僕とシャルロットは友達だよ……?」

 

「うそつけぇ!! ただのお友達が野郎の水着売り場に一緒にいるわけねえだろうが!!」

 

「キラは嘘は言ってないわよ。キラとシャルロットは関係は友達よ」

 

「うん。私とキラは友達だよ?」

 

「それなら今度、俺と2人きりでお茶とかどうですか!?」

 

「あはは、お誘いは嬉しいけどごめんね。その、2人きりで出かけるのは好きな人とだけだから」

 

「やっぱりそうじゃねえか!! 友達は友達でも、向けられてるのはLikeじゃなくてLOVEじゃねえかちくしょうが!!」

 

 頬を染めてチラリと僕の方へと視線を向けたシャルを見て弾はガクガクと揺さぶってくる。

 僕とシャルの関係は友達であるのは間違いないんだ。ただ、詳しく説明するとなると複雑というか説明しようにもどう言えばいいのか……。

 

「やれやれ……そもそも一目見れば分かるだろ?」

 

「……だけど、だけどよぉ……小さな希望があるかもしれないだろっ!?」

 

「いいや。ないな」

 

「ないわね」

 

「……多分、ないんじゃないか?」

 

「ぐはっ……」

 

 3人──特に恋愛方面で鈍いあの一夏まで同じ言葉を投げられたことにダメージが大きかったのか弾は膝から崩れ落ちた。

 ここで下手に声をかけても状況が悪化するのは目に見えてるので苦笑いを浮かべるほかなかった。

 

「この馬鹿は放っておくとしてもう昼だ。腹も減ったことだし、そろそろ昼飯にしないか?」

 

「それもそうだな。俺もお腹空いて仕方なかったんだよ」

 

「それなら僕たちも行こうか」

 

「そうだね。これ以上はお邪魔するわけにもいかないしね」

 

「気を遣わなくていいわよ。どうせ、そこのニ馬鹿も一緒なんだから2人増えても変わらないし。その様子だと、2人もまだ食べてないんでしょ?」

 

「それはそうだけど……だけど今日は鈴の帰国会でもあるんでしょ?」

 

「主役であるアタシがいいと言ってるんだから。それにそこの馬鹿2号は逆に喜ぶわよ」

 

「当たり前だろ!! むしろ、俺としては今からシャルロットさんと親交を深めたいぐらいだぜ!!」

 

 いつの間にか復活したのか鈴の後ろで弾は清々しい笑顔でサムズアップをしてるのを見ると大歓迎らしい。一夏と数馬も主役の鈴に一任するようで特に口を挟む気もなさそうだ。

 どうしようか? とシャルが目配せしてくるけど、僕としてはここで断る理由は特に見当たらない。

 デートの最中ではあるからシャルの心情を配慮すればここは断るべきなのかな……? 

 

「うん。それならお言葉に甘えて一緒に鈴たちと食べようかな! それに一夏がきちんと鈴をエスコート出来てるのか気になるしねー」

 

「エスコート? いや、俺だけじゃなくて弾と数馬いるから必要ないだろ。鈴には振り回されてばっかだけど……」

 

「……えっと、その、元気出して鈴」

 

「……なんかキラに同情されるの腹立つわね」

 

 一夏の発言に若干落ち込んでいる様子の鈴を励ませば理不尽に睨まれれば苦笑するしかない。

 弾と数馬も小さなため息を吐いてるのを見るとこっそりと2人になれるように気を遣ったんだろうね。

 

「ちょっとキラ借りるわね」

 

「えっ、うん、いいけど……?」

 

「……そうか。キラは犠牲になるのか……」

 

「……運がない奴め、南無」

 

「鈴とキラはどこ行くんだ?」

 

「近くの自動販売機まで!!」

 

 一夏以外は察した様子で哀れみの視線を向けられながら鈴から右腕を掴まれて僕は連行されていく。

 自動販売機に用事があるのは嘘なので角を曲がれば掴まれていた右腕が解放される。

 

「それでアンタの方は順調なの? いや、シャルロットの顔を見ればそうなんだろうけど……」

 

「順調ではあるんじゃないかな」

 

「そっか。まぁ、アンタは多少鈍そうだけどなんだかんだで気が回りそうだし心配するのは杞憂だったか。……それで、シャルロットは知ってるの?」

 

「えっと、知ってるってなにが……?」

 

「なにがってアンタが味覚ないってこと!! てか、それ以外に今重要な話はないでしょうが!!」

 

「……そう、だね?」

 

「……まさかくだらないことを考えてたんじゃないんでしょうね?」

 

「……一夏への対する愚痴かなって」

 

「ふんっ!!」

 

「いづ!?」

 

 一夏の愚痴じゃないかと口が滑れば容赦なく足を踏まれてしまう。

 あの流れだと誰だって一夏に対しての愚痴を吐くために連れて行くって勘違いするのは仕方ないじゃないか!? 

 あまりの痛みに足を押さえていれば鈴は見下ろしながら不機嫌そうに鼻を鳴らし話を続ける。

 

「そりゃ、アンタに愚痴をしょっちゅう吐いたりはするけどタイミングぐらいは弁えるわよこの馬鹿!!」

 

「ご、ごめん……」

 

「せめてシャルロットぐらいには味覚のことは言えっての! そりゃ、これまで味覚をしてないのを話すのを躊躇うのは分からなくはないけど最低限言っときなさいよ!」

 

「……変に気を遣わせるわけにはいかないかなって。これは僕の抱えてる問題だからさ」

 

「ほんっと自分のことになると極端になるわよねぇ!! 不器用にも程があるっての!!」

 

 鈴は小言をつらつらと並べるがその節々に彼女は僕のことを心配してくれているのが伝わる。

 やっぱり鈴は優しいなとつい笑みをこぼしてしまうと、彼女はそれを反省してないと捉えたようで目くじらを立ててお説教へと変わっていく。

 

「きちんと人の話を聞きなさいよ!」

 

「うん、聞いてるよ。鈴の話はきちんと聞いてるから……いつも心配してくれてありがとうね」

 

「き、急になによ……」

 

「鈴はいつも怒ってくれるからさ。だから僕は大丈夫なんだよ」

 

「ふんっ、アンタにだけよ。誰にだって口煩く言ってるわけじゃないっての。……なんでそんな穏やかに笑ってんのよ、この馬鹿」

 

 そっぽを向いてボソリと小さく呟いたようだけどうまく聞き取れなかった。

 これは怒らせちゃったかな? と不安に駆られるが何かを吐き出すように小さなため息を吐き、振り向くと鈴はいつものように仕方のないやつと呆れた顔をしていた。

 

「ほら戻るわよ。いつまでも待たせて勘繰られるのはたまったもんじゃないし」

 

「それは大丈夫じゃないかな。みんな愚痴を吐くために連れて行ったんだって思ってるだろうし」

 

「……アイツら後でシメてやる」

 

 弾と数馬は後で鈴に鉄拳制裁されるだろう。去り際に犠牲など、南無だなんて言ってたけど2人にはら合掌を返しておこうかな。

 行くわよと鈴から催促されたので立ち上がりみんなの元へと戻ることにする。

 

「やっと戻ってきたか。相変わらず人使いが荒い奴め」

 

「……とりあえず数馬は一番最初ね」

 

「なんか不穏なカウント始まってないか?」

 

「えっと、2人ともご愁傷様かな」

 

「……まさかキラが俺たちを売ったのか?」

 

「大丈夫よ。キラはとっくに終わってるから。だから次はアンタらの番ってこと」

 

「……ねえ、一夏。鈴ってこんな感じだっけ?」

 

「ん? ああ、中学の頃はこれが日常茶飯事だったからなぁ。ほら、鈴もその辺にしてそろそろ行こうぜ? みんなもお腹空いてるしさ」

 

「……ちっ、そこの馬鹿2人命拾いしたわね」

 

「……俺、今から帰りたくなってきた」

 

「やれやれ……中学の頃から変わらない事に哀れむべきか、嘆くべきか」

 

「そこの眼鏡はここでかち割ってやるわよ!!」

 

「ま、まあまあ、鈴も落ち着こうよ。ほら、数馬も鈴を刺激しないで」

 

 悪役のように高笑いをする数馬に今すぐ突っかかろうとする鈴を必死に宥める。

 前回鈴を止めたこともあるのか弾と一夏は僕に任せて止めるのを手伝ってくれる気配が全くないよね! シャルは仕方ないけど、せめて2人はちょっとぐらい手伝ってくれると助かるんだけど!! 

 

「ほら、お昼を済ませた後にしよ。鈴もお腹空いてるんだよね? 僕もその、お腹空いてるからさ」

 

「……わかったわよ」

 

「珍しいじゃないか。矛を収めるなんてな」

 

「やり方を変えるだけよ。今日はアンタらの奢りだってのを忘れるんじゃないわよ? ほら、シャルロット一緒に行きましょ」

 

「うん、行こっか」

 

 鈴とシャルが楽しそうに雑談しながら先に歩きその後ろ姿を僕以外の3人が嫌な予感を感じ取ったのか顔を見合わせる。

 奢りをわざわざ強調したのはつまりそういうことだろう。あの様子だと手加減なんてしなさそうだから3人の懐事情が響かないといいけど……。

 

 

「へー、懐かしいじゃない。ここをアタシの帰国会に選んだのは褒めてあげる」

 

「懐かしいよな。鈴が戻ってきてから一回も来てなかったろ? だからここにしようぜって俺たちで話し合ったんだぜ」

 

「それにここは懐にも優しいからな。特にオレは出費が激しいためとても大助かりだ」

 

 僕らが向かった先はどうやら一夏たちには馴染み深い場所のファミレス店だった。

 店員さんに全員が座れる場所に案内され、僕とシャルは物珍しそうにメニューを見る。

 

「わっ、本当だ。こんなに値段が安いのは見たことないかも」

 

「へへっ、ここぐらいなんだぜ? ファミレスで安いのは。もちろん味も美味いんだなこれが!」

 

「得意げにアンタが自慢するんじゃないっての」

 

「ねぇ、キラは何にするか決めた?」

 

「……うーん、お手軽に食べられるやつかなぁ」

 

 隣に座っているシャルと一緒にメニューを見てるけど、お互いの肩が触れ合ってもおかしくないのは距離感が近い気がするなぁ! 

 特に弾がさっきから羨ましそうな眼差しを向けて、それを鈴がうんざりとした様子で見ている。

 

「それならキラはこのミラノ風グラタンとかいいんじゃないか?」

 

「そうだね。それならそれにしようかな、ありがとうね一夏」

 

「最近は俺もキラが簡単に食べれるのが好きだってのも分かってきたからな!」

 

 嬉しそうに自慢する一夏にちょっとだけ心が痛くなるけど強ち間違ってはいないか。味覚があっても多分手軽に食べられるものをずっと食べていただろうしね。

 

「シャルロットは何にするか決めたかな?」

 

「私はカルボナーラかなぁ。みんなはもう決めたの?」

 

「アタシも決めたわよ。あとで追加する予定だしねぇ」

 

「俺も決めたぞ。弾と数馬はどうなんだ?」

 

「俺も問題ないぜ。今日はガッツリと食べるのを初めから決めてたからな」

 

「ああ、オレは来た時点で決めていた。なんせこのファミレスのメニューは全て頭の中に入っているからな」

 

「相変わらずお前は無駄なことに記憶力割いてるなぁ……」

 

 自慢げに眼鏡を上げる数馬を弾は呆れながらも感嘆な声を上げる。一夏が呼び出しボタンを押して慣れた様子で全員の注文を読み上げていく。

 

「ほれ、お前ら全員何飲むんだ?」

 

「俺は烏龍茶で」

 

「オレはメロンソーダでよろしく頼む」

 

「あっ、それなら私はお水でいいかな」

 

「僕もシャルロットと同じで水で大丈夫だよ」

 

「ちっ、仲が良くて妬ましいぜ」

 

「嫉妬しないっての。ほら、アタシも手伝うからサッサっと行くわよ」

 

 露骨な舌を鳴らした弾を鈴は急かすように足蹴しながら引き連れていく。

 2人の会話を待ちながらみんなで話していると流石家が定食屋を経営している弾は手慣れた様子で、そして鈴も同様に慣れた様子で全員分の飲み物を持ち運んでくる。

 

「ほら、そこの仲良し2人組の水ね。一緒で座ってるのも近いんだからコップ間違えるんじゃないわよ。特にキラ」

 

「ありがとね。前から思ってたけど鈴って結構手慣れてるよね」

 

「手慣れてるって、なにがよ?」

 

「こうやってお水持ってきたりとか、僕が怪我してる時とか夕食持ってくるのが慣れてるっていうか、様になってるというか」

 

「あれ? 鈴ってキラには言ってなかったの?」

 

「あー、アンタはあの時いなかったしねぇ」

 

「みんなで屋上で昼飯食べた時か。あの時はキラ確かにいなかったもんなぁ」

 

 幼馴染の一夏はともかくシャルが知ってるとなるとその屋上で食べた時に話したのかな? それなら僕が知らないのは当たり前か。

 

「アタシも弾同様に実家が中華料理店だったのよ。手伝いなんて普通だったしね。だから手慣れてるのよ」

 

「それなら色々と納得するよ。この前の料理作ってたのも凄く手際とか良かったからさ」

 

「へー、最近鈴はキラに料理作ったんだ」

 

 納得したのでこの前料理を作ってくれたのをつい話してしまうが、それはこのタイミングでは最悪の話題だとすぐに気がつくが時すでに遅しでシャルは何かを怪しむように聞いてくる。

 

「ま、まあ、あれよ!! 味見役!! 中華料理以外も得意になりたいからその毒味役よ! 毒味役!!」

 

「ふーん、一夏じゃなくてキラに?」

 

「そ、そうよ。それにコイツ偶に面倒見るって約束したわけだし? このアタシの貴重な時間を割いてあげてるんだから、ちょっとぐらいキラもアタシに協力してくれてもいいじゃない? ほ、ほら、シャルロットは知ってるでしょ? 多少はマシになったけど、まだまだ改善しなくちゃいけないの!」

 

「……まぁ、それはそうだけど」

 

「そう!! だから他意はないのよ! 他意は!!」

 

「僕と鈴の間には実際なにもないから。ね?」

 

「……そうね! なにもないわよ、なにも!」

 

 鈴を援護するつもりで言ったのにそれがどうやら気に食わなかったのか不機嫌そうに頷いた。

 不機嫌な鈴を訝しみながらもそっかと一応シャルは納得したようだった。

 

「一夏以外にも修羅場ってのを目撃するとは思ってなかったぜ……」

 

「……珍しいものだ。あの鈴が必死に弁明するとはな」

 

「そうか? いつもこんな感じだぞ鈴は」

 

「……ソウダナー」

 

「……やれやれ」

 

 一夏が不思議そうにしているのを弾と数馬は疲弊した顔で頷き、呆れたようにため息を吐いていた。

 それにしても鈴と何もないは言いすぎたかな……? 僕らの間にはそういった恋愛感情はないんだよとニュアンスで言ったつもりだったけど鈴には違う意味で捉えたのだろう。

 

「私ちょっとお手洗い行ってくるね」

 

「それなら俺が案内しようか!? シャルロットちゃんはここ初めてだろうし!!」

 

「あははは、ありがとうね。気持ちは受け取っておくよ」

 

 身を乗り上げた弾に苦笑いをしながらシャルは買った荷物は置いて席を立ち上がりお手洗いへと行く。

 弾の発言に流石に数馬と一夏が若干引いているのか距離を取り始めてそれを必死に弾が言い訳を始める。弾を手助けしてあげたいが、やらなくていけないのはまずは鈴の勘違いを訂正することだろう。

 

「……えっと、怒ってるよね?」

 

「……怒ってないけど? アタシとアンタの間には"なに"もないんでしょ」

 

「あっ、いや、あれはそう言った意味で言ったんじゃなくて……」

 

「……はぁ?」

 

「さっきは僕と鈴には恋愛感情はないんだよって意味で言ったのであって、君と僕の間に合ったことを否定したわけじゃないから」

 

「い、いちいち言葉にしなくてもわかってるわよ。シャルロットが変に勘違いしないようにでしょ? ……紛らわしい言い方するなっての」

 

「ほう? 2人の間に何が合ったのかはぜひ知りたいがな」

 

「キラと鈴に間に実は2人だけの秘密とかあったりしてなー」

 

「あ、あるわけないでしょ!? 2人だけの秘密とか、そんなのあるとしたらシャルロットに決まってるじゃない!!」

 

 弾と数馬は冗談で言っただろうが、その言葉に慌てながら過剰に否定するとそんな鈴の姿を見て2人はお互いに何度も顔を見合わせる。

 いつもなら軽くあしらえただろうけど聞かれたらタイミングが悪くて感情的に返したから付き合いが長い2人にはバレバレだよね。

 

「えー、その秘密俺にも教えてくれよ」

 

「秘密だとしても、大したことじゃないよ? 鈴とまだ一緒に部屋を共有してた時にだらしない姿を僕が見せたぐらいだよ」

 

「あー、千冬姉とは違うタイプの自堕落だからなキラは……」

 

「あははは。……ところで前々から気になってたんだけど、織斑さんってそんなに自堕落なの?」

 

「それなりに。だって休日とか──ー待って、急に寒気が襲ってきたんだが……」

 

 前々から一夏が織斑さんも自堕落だと言っていたので話題を変えるために聞き、いざ彼が話そうとすると何かを感じ取ったのかぶるりとを震わせる。

 

「……この話題はなかったことにしよっか。なんかちょっと怖くなってきたかな……」

 

「……そうだな。なんか後が怖くなりそうだし……」

 

 どうやら同じことを考えていたようで僕らは先ほどの話題を無かったことにすることにした。この場にいないはずなのに何故かこの話を最後までしたら、学園に戻ると眼光を鋭く光らせた織斑さんに制裁を下される僕らの未来が見えたんだ。

 

「お待たせしました。こちらご注文のデミグラスソースのハンバーグ、若鶏のディアボラ風でございます」

 

「おっ、俺の頼んだのがきたな!!」

 

 弾が注文した料理を機に店員さんが次々とみんなが注文した料理を持ってくる。どうやら料理が運ばれるぐらいにすっかりと僕らは話し込んでいたらしい。

 

「それにしてもシャルロット遅いわねー。道にでも迷ったのかしら?」

 

「そうだな。遅いよなぁ……大体20分は経ってるよな? だけどシャルロットが道に迷うってのは想像できないんだけど……」

 

「シャルロットちゃんは初対面な俺でもしっかりしてそうだと感じたし、道に迷ったとしても人に聞くなりして戻ってきてもおかしくはなさそうだけどな」

 

「それなら僕がちょっと近くを探してくるよ」

 

「それがいいかもしれないな。キラが行くのはオレとしては心許ないが」

 

「やっ、数馬は僕をどんな風に見てるのさ?」

 

「なんだ知りたいか? そうだな、ミイラ取りがミイラになると答えておこうか」

 

「……尋ねる前にそれ答えてるよね」

 

「……まぁ、アンタに任せると実際そうなりそうで怖いのよね」

 

「……悪い。ちょっと俺も同感だな」

 

「……なんつーか、IS学園で一緒の一夏と鈴が口を揃えてるのが答えなんだな」

 

 全員から心配そうに見られるけど、流石に迷子にはならないからね? 初めてのデパートだけどこのお店に戻る道のりぐらいは覚えてるよ。

 

「流石に迷子にはならないよ……それじゃあ、ちょっと近くを探してくるね」

 

「5分経ったら、とりあえず一度は戻ってきなさいよー!」

 

 まるで世話のかかる息子を見送るように鈴に言われると僅かに悲しみが心に広がるがこればかりは日頃の行いが原因だと甘んじて受け入れよう。

 

「あっ、買い物を中に置いてきてしまった」

 

 お店を出た後に今日買った水着を店内に置いてきたのに気がつくが、近くのお手洗い場を軽く探す程度なので大丈夫か。

 別に戻ったらみんなから生暖かい目で迎えられそうなのが不服だとか、そんなちょっとした意地があるわけじゃないよ? ほんとだよ? 

 

「……それに、ちょっとね」

 

 お手洗いなんだから同性である鈴が様子を見てもらうのを頼むべきなのだろうけど、シャルがなかなか戻ってこないことに不安が募って仕方がないんだ。

 更識さんが問題を解決する計画を考えている最中であってシャルの問題を解決しているわけじゃない。亡国機業(ファントム・タスク)がどれだけ危険な組織なのかを詳しく知ってるわけじゃないけど、もしかしたらという可能性も捨てきれないんだ。

 

(……大丈夫だよね。うん、大丈夫なはずだよ)

 

 近くの手洗い場まで駆け足で向かう。

 目的地の手洗い場前に辿り着き辺りを見渡すがシャルの姿は見当たらない。

 

(……まだ女子トイレにいるのかな?)

 

 せめて鈴と一緒に来るべきだったと後悔をするが仕方がない。ここで連絡手段があれば楽だったんだけど……ないものねだりをするのは時間の無駄だから諦めよう。

 

「──ーあら、なにか困ってるのかしら?」

 

「えっ?」

 

 どうしたものかと頭を悩ませていたら見知らぬ女性に声をかけられる。声をかけてきた女性は不思議とこの場に似つかわしくなく感じて、怖がらせないように薄らと微笑んでるけどその笑みにはどこか違和感を感じた。

 奇妙な引っかかりを覚えて声をかけたてきた女性を僅かに警戒心を抱きながらも話すことにする。

 

「その、友達を探してて。お手洗いに行ってから時間が経つのになかなか戻ってこなくて、ちょっと心配になって探してるんです」

 

「そうなの。君は随分と友達思いなのね。お友達が戻ってこなくてどれぐらい時間が経ったのかしら?」

 

「だいたい20分ぐらいですかね……」

 

「ちなみにそのお友達は男の子だったりするのかしら?」

 

「あっ、いえ、女の子です」

 

「そう……女の子、ね」

 

 何故だろう。聞かれているのはありふれた質問なのに、一つ一つ何かを確認されているみたいで居心地が悪い。

 この奇妙な引っかかりはなんだろう? このモヤモヤの正体を知るよりも前にこの人との会話は切り上げた方がいいと本能が訴えてくる。

 

「すみません。僕は友達を探すのでこれで失礼します。もしかしたら入れ違いになってるかも知れないので」

 

「そう? それは残念ね。私はもっと"君"と話したかったのに。……あっ、そういえばもしかしたら探している友達をもしかしたら私は見かけたかも知れないわ」

 

「……見かけた、ですか?」

 

 去ろうとすればわざとらしく女性は引き止めてくる。

 見かけたかもと目の前の人は言うが僕はシャルの特徴を伝えていない。そこに再度また妙な引っかかりを覚えながらも足を止める。

 足を止めた僕の姿を見て女性はなにやら満足そうに笑みを浮かべ、肩に下げているシンプルそうなミニショルダーバッグからおもむろに携帯を取り出す。

 

「あの……?」

 

「──貴方の探しているお友達はこの子でしょ?」

 

「っ……!?」

 

 呼び止めたのに携帯を触り始めたので声をかけて去ろうかと思い呼びかけると、それを待ち望んでいたこのように携帯のディスプレイを見せられて写されている一枚の写真に動揺が走る。

 

「賢明な貴方はこの写真の意味がわかるでしょ? 2人目の男性操縦者であるキラ・ヤマト君」

 

 表情は相変わらずにこやかに微笑んでいるけど初めて声をかけた相手に不信感を感じさせないためではなく、仕掛けた罠に獲物が入り込んだことを喜んでいたんだ。それこそ声をかけた時から。

 僕が見せられた写真は身柄を拘束されて誰かに拳銃を突きつけられたシャルの写真。目の前のこの人がその写真をなぜ持っているか答えはそれで言わずとも理解した。

 

「……この写真を見せたんだから僕に用があるんですよね」

 

「あら、頭の切り替えが早いのね? 事態を飲み込むのにちょっと時間がかかると思っていたのに。過去に似たような経験があったりしたのかしら」

 

「そんなことを今はどうでもいいじゃないですか……っ! シャルをどうするつもりですか……っ!?」

 

「君と彼女の関係性がどうであれ、シャルロット・デュノアが誰を選んだのか知るのには必死なその姿で充分ね。ああ、次に騒ぎ立てるような真似しちゃうと彼女の命は保証できないからそのつもりで、ね?」

 

 隠すことのない脅しにただ睨み続けるしか出来なかった。

 シャルを人質にされている以上は迂闊な真似はできない。この目の前にいる人の目的、そして思考が読めない。可能性としてはやっぱり利用したいシャルを口封じをやることなのか……? 

 

「ここでは人目も多いことだし場所を移動しましょ。ゆっくりと話すこともできないから」

 

「……ついて行けばシャルの安全を保証してくれるんですよね」

 

「ええ、なんたらすぐに再会させてあげるわ。もちろんあの世とかではなく、ね」

 

 亡国機業(ファントム・タスク)のメンバーの言葉を今は信じるしかない。相手の要望を聴いている内はシャルの命は保証されると信じながら。

 

(シャルをどうにかして助けた後は、ストライクを使うしかない……)

 

 IS学園外でISを扱うのは禁じられているけどこれはストライクを使うしかない。

 逃走手段を考えれば走るよりもストライクで飛行して逃げる方がずっと速いのだから。

 だけど、もし彼女に対してこれ以上の危害を加えられるのなら、失うことになるのならその前に──

 

(──僕は撃つ。……シャルとみんなに誰からも非難されたとしても……覚悟は、ある……っ)





ここまで長くなるとは思ってませんでした…やっ、久しぶりに弾と数馬を出したら……うん。
はい!!ドキドキデート回でした!!いやー、このまま2人が急接近すると嬉しいよね!!うん!!それはそうとやっぱみんなキラ君がデートしたら襲撃されそうって……私も同じ意見なんですけど()

やっぱヒロインは攫われるのが一つのイベントだと思うんだ。だからキラ君……頑張ろ??……大丈夫!!うん!!

あっ、グリッドマンユニバースはキメてきました。ネタバレを避けるため感想は控えますが最後は普通(???)でした。なので近いうちにヨンバース決めてきます。

ちなみにドラコーはサブ垢でリセマラして出しました。俺…ビーストと人理修復するんだ……

はい!次回の更新は未定ですが気長にお待ちください!誤字&脱字報告お待ちしております!!感想も毎度ありがとうございますっ!!
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