翼を失くした少年   作:ラグーン

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本当はキラ君の誕生日祭にあげたかったけど間に合いませんでした!!ええい!!

そしてコメント欄に一部コマンドー見たな?って人がいて大変笑いました。面白い奴らだ、気に入った()

とりあえずキラ君の誕生日祭に上がれなかった悲しみと、戦国無双4、崩スタで忙しいので暫く探さないでください()


第38話 取り残された者たち

 

 

「……遅い」

 

(お、おい! 鈴が不機嫌になってんぞ!! どうにかしろよ、一夏!!)

 

(いやなんで俺なんだよ!? こればっかりは俺が何言っても意味ないだろ!?)

 

 キラがシャルロットを探しに離席して数十分。探しに行った彼も戻ってくる気配が一向にないことにファミレスに残っている内の1人──鈴は目に見えて不機嫌になっていた。

 苛立った様子で注文が届いた料理に手をつける彼女の姿に、弾は一夏へとご機嫌斜めの鈴を宥めろと小声で言うが自分には無理だと一夏は首を横に振る。

 

「冗談で言ったつもりが、まさかミイラ取りがミイラになるとはな。迷子センターで放送するのも一つの手段だぞ?」

 

「それは最後の手段よ。……あー、もうっ、弾と数馬も一緒について行かせればよかったっ!!」

 

「なぁ、そんなキラって抜けてんのか? 俺と数馬はIS学園に居ないからよく知らねえんだけどよ。しょっちゅう遅刻とかしてんの?」

 

「遅刻は実際どうなのよ? アタシはクラスも違うし、なんなら途中から学園に来たわけだし。本人曰く遅刻は一回もしてないって胸を張ってたけど」

 

「不思議なことに遅刻は一回もしてないんだよなぁ。一度だけ授業に遅れてきたことあるけど、それも千冬姉に職員室に呼ばれたからだし」

 

 弾と鈴の疑問に入学当初からの付き合いである一夏は彼が遅刻してないと答えれば、そこは律儀かよと弾のツッコミに一夏もだよなぁと不思議そうにしながら同意する。

 

「お前らはキラとシャルロットの連絡先は持っているのだろ? それなら携帯を使えばいいんじゃないか?」

 

「……そ、そろそろそうするつもりだったのよ!!」

 

「えっ、まさか携帯のこと忘れてたの?」

 

「うっ、うっさいわね!! 仕方ないでしょ、キラは持ってないんだから!!」

 

 静かに食事を摂取していた数馬の初歩的に居場所が分かる手段を提案すれば鈴は気の抜けた声を漏らす。

 まさかのうっかりを晒した鈴に弾は激しく驚く。彼女は仕方がないと必死に弁明するがそれは恥ずかしさを誤魔化してるようにしか見えない。

 

「それならシャルロットは解決するじゃない。あとはキラよ!! どうやってアイツを見つけ出すか!」

 

「シャルロットが見つからなかったら一度は戻ってくるんじゃないか?」

 

「流石にこのファミレス場所ぐらいは覚えてるだろう。シャルロットに連絡を入れて、後はキラの帰りを待つだけだ。なんだ? お前はアイツの保護者か?」

 

「う、うっさいわね……」

 

「そんじゃ、シャルロットに連絡するか」

 

 鈴のキラの対する世話焼きっぷりに呆れながら数馬が口を挟めば珍しく彼女は口籠る。

 いつものように強気に反発しない鈴を珍しく思いながらも一夏はシャルロットの携帯へとかけるものの彼女が携帯を取ることはない。

 

「あれ、おっかしいな?」

 

「なんだよ。シャルロットちゃんと繋がらないのか? もしかしたら一夏からのコールは取らないようにしてたりな」

 

「シャルロットに限ってそれはないだろ? 嫌われるようなことはしてないと思うし……」

 

「たった一回出なかっただけでしょ。何回か連絡入れたら?」

 

 弾の軽口を交えた冗談に一夏はムッと返しながら鈴の言う通りに何回も連絡を入れるものの、結果は同じで彼女が電話に出る気配はなく聞き慣れたアナウンスが何度も返ってくるだけだった。

 

「……えっ? まじで一夏ってシャルロットちゃんから嫌われてんじゃね?」

 

「は、はぁ!? そんなわけないだろっ!? むしろ、仲の良い友達だって!!」

 

「まぁ、一夏のスケコマシに惑わされないよう気づかないふりをしている可能性も捨てられないな」

 

「なんで俺だけ!? それにスケコマシってなんだよ!?」

 

「……ちょっとアタシの方もかけてみる」

 

 いつものように野郎3人がギャーギャーと騒ぎ始めたのをよそに鈴からもシャルロットへと連絡をかけるが、一夏同様に彼女が携帯を取ることはない。

 同じように何度も連絡を入れるが最後まで連絡先の本人と繋がることは一度もなかった。

 

「……なぁ、流石におかしくないか? 一夏と鈴から何度も連絡してるのに取らないってなさ」

 

「こんなに連絡を入れてるのに気づかないはあり得ないもんな。取れない状況でも流石にメッセージとか、メールとかで返信はできるだろうしよ……」

 

「……そう、よね。だってシャルロットよ? 連絡だってマメに返すだろうし……」

 

 どれだけ連絡をかけようとも一度もシャルロットが電話に出ることがないことに3人の間に不安が募る。

 これが仮にキラであったならば笑い話へと昇華出来たかもしれないが、折り返しに連絡を返すであろうシャルロットから何も返答が返ってこない現状に3人は戸惑いを隠さないでいた。

 

「……シャルロットは連絡を返さないのではなく、連絡をとることができない事態に巻き込まれた可能性があるんじゃないか?」

 

「それってどういうことだよ……? 連絡をとることができないって……携帯を落としたとか?」

 

 3人が動揺している中で静かに黙っていた数馬が口を開く。

 連絡をとることができない事態に巻き込まれたのでは、と冷静な口調で述べた数馬に戸惑いながらも弾は聞き返した。

 

「いや、その可能性は低いだろう。今日が初対面ではあるが、先ほどの一夏と鈴の言葉から察するにシャルロットは優等生タイプで几帳面らしいからな。仮に携帯を落としていたのが原因なら、なぜ一度戻って来ない?」

 

「……そうだな。もし携帯とか、貴重品落としてたらシャルロットなら一度は俺らに事情を話に戻ってきてもおかしくないな。探すのに時間がかかってるのなら尚更にさ」

 

「消去法で携帯を落とした線はこれで消えるというわけだ。連絡を返してこないなると、やはり何かに巻き込まれている可能性が高いんじゃないか?」

 

「……その何かってなによ?」

 

「さてな。情報が少ないのだからこれ以上は推理のしようがない」

 

 冷静に分析をしていた数馬がお手上げだと両肩を竦めれば3人はそうかと心なしか落胆するかのようにため息をする。

 中学の頃から冷静に物事を分析して、改善策を導き出したりと、日頃から頭脳担当であった数馬でも事態を好転させることが出来なかったのだから気落ちするのも無理もない話である。

 

「それならもう1人の迷子になっている、あんぽんたんはどうなのよ?」

 

「……あれはシャルロットより簡単だ」

 

「それはキラが抜けてるとか、そんなオチじゃないよな?」

 

「……それなら笑い話ですむんだがな」

 

 一夏が冗談混じりに言うがそれに冷静に話していた数馬の表情が苦々しそうに大きく歪む。

 これはあくまで可能性の話だぞ? と前置きしながら重々しく数馬はゆっくりと話を続ける。

 

「……キラがいまだに戻って来ないのは、アイツの身になにかがあったからだ」

 

「……いちいちオブラートに言葉を選んでるんじゃないっての。サッサっとそのなにかを言いなさいよ」

 

「はぁ、言わずともわかるだろ? ……アイツの場合は、まぁ、誘拐の可能性が高い」

 

「おいおいっ! 誘拐って……ここ日本だぜ!? そ、それにショッピングモールの中で客も多いんだぜ!? そんな中でできんのかよ!? てか、なんでキラが誘拐されんだよ!?」

 

「オレたちはアイツが友人の1人、身近な存在だから認識が鈍くなっているが世界で2番目の男性操縦者だぞ? 各国が喉から手が出るほど欲しい存在が、このショッピングモールで1人でふらふらしていればその手の考えを抱いてる奴らが誘拐してもおかしくはない」

 

「それなら俺もそうだろ? 俺は千冬姉の弟だぞ? するんだったら俺の方が価値とかあるんじゃないのか?」

 

「価値としてはな。だが世界最強の弟を誘拐すればデメリットの方が勝る。それはお前が一番わかってるだろ? 千冬さんはまた起きれば、その時はお前を見つけるまで、それこそどんな手段を使っても見つけ出すだろうよ。……それにこれはあくまで可能性の話だ、真に受け取りすぎるな」

 

 一度話を区切り、長々と話していて喉が渇いたのか数馬はメロンソーダへと口をつける。

 あくまで可能性だと念を押して言っていたものの、誰もが胸底ではもしかしたらと危機感を抱いていた。

 特に一夏はキッカケさえあれば今すぐにでも飛び出しかねないほど焦燥感に駆られており、それを感じ取ったので数馬は一度話を止めたのだ。

 

「一度情報を纏めようぜ……えっと、シャルロットちゃんが連絡に取らないのは不明で、えっと、キラはそのシャルロットちゃんを探すのに手間取ってる、でいいんだよな……?」

 

「ああ。シャルロットがなぜ連絡を取らないのか、この一点が不明だ。これが分かればいいんだがな……2人ともシャルロットはどんな奴なんだ?」

 

「どんなって……えっと、クラス内でもみんなと中良くて、優等生で、そんでIS専用機持ちで、それからキラのことが好きとか?」

 

「最後は絶対にいらない情報だろ!! 俺は認めねえからなぁ!!」

 

「嫉妬心で一々騒ぐな!! ……そうか、専用機持ちか。鈴、IS学園で専用機持ちに関する情報を教えてくれる」

 

「専用機持ちの? 色々あるけど、一番関係してるのはやっぱ各国の代表候補生じゃない? 一夏とキラは特例中の特例だから決まってないんでしょうけど、アタシら専用機持ちは各国の代表候補としてIS学園に入学してるわけ」

 

「シャルロットはその1人、というわけか?」

 

「頭の回転の速さだけは流石ねぇ。そういこと。シャルロットも専用機持ちでフランス代表候補生よ。……これがなんか情報として役に立つわけ?」

 

 怪訝そうに鈴は数馬に聞き返すが、その前に思考の海へと潜った数馬の耳には入っておらず、長年の付き合いで話しかけても無駄だと知っているので鈴は放置することにした。

 かといって彼らが話をすることはなく、こんな雰囲気でいつものように和気藹々と会話が弾むことはない。

 

「そういえば鈴はどうやって代表候補生になったんだ?」

 

「あっ、それ俺も気になる」

 

「大したことじゃないわよ。真面目に猛勉強して、猛特訓してそれで選ばれただけよ」

 

「会った時から鈴は負けず嫌いだったからなぁ。なんか、普通に納得したわ」

 

「代表候補生に選ばれるにはこれぐらいは普通なんじゃない? 代表候補生に選抜されているのはめちゃくちゃ努力してんのよ。まぁ、IS学園に入学することには特に興味はなかったけど……」

 

「へ? それならなんでIS入学したんだよ?」

 

「……べっつにぃ? 気が変わっただけ!!」

 

「……まったく、こいつは……これにわからないとか……」

 

 純粋に疑問を抱いたかのように聞いてくる一夏へ不機嫌になりながら答える鈴を見ながら弾は額を抑えて深くため息を吐く。

 これで気がつかない友人の鈍感っぷりにそろそろ懸念を抱き始めた弾であるが、改善してしまうと彼の妹である蘭が想いを寄せているとバレれば友人として複雑な心境であるので傍観するしかなかった。

 

「鈴。代表候補生になるのは純粋な実力ということでいいのか?」

 

「んー、他の国は知らないけど中国ではそうだったわよ? 代表候補生であってもその国の看板とか色々背負ってるのは同じなんだから他の国も大して変わらないんじゃない? あー、でも、シャルロットは忘れがちだけど令嬢なんだったけ?」

 

「あー、なんか、そんな話ちょっと聞いたような……」

 

「えっ!? シャルロットちゃんってお嬢様なの!?」

 

「なんでお嬢様ってことに食いついてんのよ……大手のISの会社の一つであるデュノア社の娘だったはずよ」

 

「……お嬢様だと?」

 

「そうそう。お嬢様……そう、お嬢様……あれ、もし、かして……」

 

 数馬が半信半疑で聞くと何気なく頷いていた鈴は一つの疑問が思い浮かぶ。数馬と鈴はとある可能性を思い浮かび、まさか? とお互いに顔を見合わせる。

 

「……な、なぁ、もしかしてさ、シャルロットちゃんが連絡が、つかないのって……」

 

「……その可能性はゼロではない。シャルロットがそのデュノア社の令嬢なら大いにある」

 

「ちょっと俺そこら辺を──」

 

「無駄だ。もしシャルロットが誘拐されてるんだったら時間が経ちすぎている……今更探しに行ったところで見つかるわけないだろ」

 

 今すぐ飛び出そうと席を立ち上がろうとした一夏を数馬は見透かしてたかのように静止する。

 止められた一夏はだけどよ! っと反論しようとするが、お前なら分かるだろ? と冷静に諭されるように聞かれれば言葉を詰まらせるしかできなかった。

 

「アタシと数馬の考えが正しかったら……あの馬鹿……っ!! 絶対にやるわよ!! ええっ!! 絶対にやるでしょうね!! アイツなら!!」

 

「お、おい? 急にキレてどうしたんだよ……?」

 

 突然と烈火の如く怒り出した鈴に弾は困惑する。

 シャルロットが誘拐された可能性の話をしていたはずなのに、急に怒り出す友人を見れば流石に困惑するのも無理もないだろう。

 弾はなんのことかと説明を求めようとするが、それよりも先に不満をぶちまけるように鈴は口を開いた。

 

「目撃したのか、それとも巻き込まれたのか、連れて行かれたのか知らないけど、目撃したんだったら絶対に自分から首を突っ込んだんでしょうね!!」

 

「お、おう……?」

 

「普段は自堕落で、頼りないくせに、危ない時だけはいっつも割り込んでいって!! いい加減一発ぐらいは殴らないと気がすまなくなってきた!!」

 

「え、えっと……これ、キラにキレてるんだよな? どうなんだ?」

 

「……キラにだろうなぁ。いや、鈴が怒るのもなんとなく分かるっていうか……」

 

 鈴がうがーと! 怒りを露わにしているのに弾は戸惑いながらも不思議そうにしているが、IS学園で一緒に過ごしている一夏は鈴が怒っている気持ちに共感する。

 

「えっ、キラってそんな危ないことしてんの?」

 

「……危ないってか、結構色々あったんだけどその問題に毎回キラも巻き込まれてたり、自分から首を突っ込んだりとか……なんか、それが自分にとって当たり前みたいに平然としてんだよ」

 

「なんつーか、意外だな……どっちかていうと問題とか無縁なタイプだと思ってたわ……」

 

「……つまり、仮にシャルロットが誘拐されているところを目撃したらキラは自ら行くということか?」

 

「……やるだろうな」

 

「絶対にやるわよ!! あの馬鹿は!」

 

(うわー、鈴めちゃくちゃキレてるんじゃねえか。これ、あとでマジでキラ絞められるんじゃね? ……しかし、あの鈴が本気でキレてるなんてなぁ)

 

 数馬の質問に鈴と一夏は即答する。

 弾は本気で怒っている鈴を観察しながら、内心で本気であとで一発殴られるだろうキラに同情しながらも、本気で心配している鈴を見て感慨深くなる。

 

「なに? さっきから弾はずっとアタシのこと見てるけど。言いたいことでもあるわけ?」

 

「やっ、なんか……お前にとってキラって結構大きい存在になってんだなって思ってさ」

 

「はぁ……? いや、急に意味の分からないこと言ってんじゃないわよ」

 

「えぇ……」

 

 正直に言っただけなのに、その当の本人からなにを言ってるんだコイツ? と怒るどころか抑揚のない声で言われたことに不思議と理不尽な気持ちに弾は襲われたのだった。

 

「とりあえず警察に連絡する方針でいいだろう。誘拐かどうなのか真偽がどうであれど俺たちの手には状況なのは間違いない。それと一夏、千冬さんに連絡を入れておけ。たしか担任なんだろ?」

 

「わかった。今から連絡を入れる」

 

 数馬に指示をされた通り一夏は担任であり、彼の姉である織斑千冬へと連絡を入れれば僅か1コールで彼女と繋がる。

 

『なんだ、一夏?』

 

「千冬姉!! えっと、とりあえず大変なことが起きた!!」

 

『なんだ藪から棒に……落ち着いて要点を話せ』

 

「シャルロット、そしてキラが席を外してから戻ってこないんだよ!」

 

『……なに?』

 

 初めはあくまで何かあった程度だろうと若干呆れたような口調だった千冬だったが、一夏のシャルロット、キラが戻ってこないと聞くと通話している一夏が緊張を抱くぐらいには低い声が彼女から発せられた。

 

『いつからだ? 2人が戻ってこないのにどれぐらいの時間が経った?』

 

「2人が大体どれぐらい経ってるんだ? 俺たちが話してたの考えると……」

 

「シャルロットは約50分、そしてキラも20分ぐらいは時間が経っているはずだ」

 

「サンキュー、数馬。えっと、シャルロットがもう50分ぐらい経って、そんでキラは20分ぐらい経ってんだ!! シャルロットが中々戻ってこなくて、それでキラが探しに行ったんだけどその後キラも戻ってこなくてよ……っ!』

 

『……そうか。それから察するにお前はいなくなるまではその2人と一緒にいたか。さっき、他に誰かに話しかけてたようだがその場に一夏以外には誰がいる?』

 

「弾、数馬、それと鈴の3人がいる。今日千冬姉と会った後に2人に会ってさ。一緒に昼飯食べてたんだけど……』

 

『おおよその経緯は把握した。……提案した私が原因か……』

 

「……千冬姉?」

 

 何かを悔いるように小さく呟いたのを一夏は不思議そうに名前を呼べば気にするなと何事もなかったかのように彼女は取り繕う。

 

『お前たちはその場から誰1人として移動するなよ。いいな? それといる場所はどこだ? そこに今から山田先生を向かわせる』

 

「わかった。俺らがいるのはサイゼリヤ、ほら俺が中学の頃によく弾、数馬、鈴でよく駄弁ってたファミレス!」

 

『ああ、あそこか。キラとシャルロットの方は私がどうにかする。誰もそこから絶対に動くなよ』

 

 再度念を押して千冬は一夏との連絡を切る。

 やけに切羽詰まった様子な千冬を僅かに心配するが、千冬だったらきっとどうにかするのだろうと安心感が一夏にはあった。

 なんたって自分の時も同じように来てくれた最高の姉なのだから。

 

「うし、千冬姉には連絡終わったぞ。俺らは動くなってさ。山田先生がここに来てくれるらしい」

 

「山田先生って誰だ?」

 

「一夏のクラスの副担任。頼りないけど……まぁ、常識はきちんと持ち合わせてるわよ」

 

「了解した。それなら警察にはオレが──」

 

「──少しよろしいでしょうか?」

 

 数馬が警察にへと連絡を入れようとすると、それを遮るように1人の女性が彼らに声をかける。

 

「……なによ? こっちはちょっと取り込んでて構ってる余裕なんてないんだけど」

 

「馬鹿! 初対面の人に威嚇してんじゃねえって!! やっ、すんません。ちょっと色々忙しくて……なんか、俺らに用があるのなら後ででいいですかね?」

 

 

 声をかけたきた少女に苛立ちを隠すことなく睨む鈴を宥めながら弾はその突然と声をかけてきた少女に申し訳なさそうに愛想笑いを作る。

 眼鏡をかけ、ヘアバンドに髪を束ねてい落ち着いていた雰囲気を醸し出す少女を見て、弾は綺麗な人だなーと内心で思っていれば、ああ、すみませんと一言謝罪を述べながら彼女は話を続ける。

 

「こちら、ラウラ・ボーデヴィッヒさんからみなさまにご連絡があるそうなので。少し失礼しますね」

 

「はぁ? なんでラウラから連絡があるわけよ……」

 

 目の前の少女はキラが座っていた場所に腰掛けて、携帯をテーブルの上に置き、全員に聞こえるようにスピーカーに切り替える。

 

『──あー、あー、聞こえるか。織斑一夏に鈴音。というか、なぜ私が2人に事情を説明しなければならないんだ!』

 

『だって、私は運転で両手が塞がってるからしょうがないじゃないー』

 

『ちっ! だから私は別途で追跡するのだと言ったではないか!』

 

「待ってくれ。ラウラ以外にも声が聞こえてるけどまさかその人って……」

 

「ちょっとそこの人たらしとラウラ!! どういことか説明しなさいよ!! いきなり連絡とか!!」

 

 ラウラ以外にも聞き覚えがある声に一夏はまさかと驚きながら、鈴は捲し立てるようにラウラともう1人の人物──更識楯無に説明を求める。

 相変わらず緊張感の欠片もない声で元気そうねーと楯無は返事を返す。この場にいれば扇子で口元を隠してニコニコと微笑んでいただろう。

 

「……えっと、とりあえず誰だ?」

 

「オレたちにも理解できるよに説明してくれ」

 

「連絡してきたのは俺たちの友達でラウラ・ボーデヴィッヒ、そんで生徒会長の更識楯無って人なんだ。えっと、だから、この人も──」

 

「私は布仏虚です。よろしくお願いしますね、みなさま」

 

「あっ、ご丁寧にどうも……」

 

 綺麗にお辞儀する少女──布仏虚に釣られるように弾と数馬もお辞儀する。

 

『どうやらそちらで紹介も終えたようなので話を戻すぞ。そこにいる布仏先輩を使って連絡を入れてるのは他でもなく、兄さんとシャルロットのことでだ』

 

「キラとシャルロットのことってことは、2人の場所をラウラは知ってんのか!?」

 

『知ってるもなにも現在私たちはその2人を追跡中だ』

 

「……追跡か。やはり誘拐されてたということか」

 

『あら、その場に誰か頭の回転が凄くいい子がいるようじゃない。そう、キラ君とシャルロットちゃんは誘拐されちゃったのよねぇ』

 

「だからどこに!? アタシも今すぐそっちに──」

 

「俺も──」

 

『──駄目よ。ISを多少扱える程度の君たちが来たところでただの足手纏いよ』

 

 普段のふざけた口調が鳴りを潜めて、楯無の背筋が凍るような冷たい声に一夏と鈴は言葉を詰まらせる。

 弾と数馬も雰囲気に呑まれ言葉を発することもできず、2人を励ますこともできないでいた。

 

『……私がお前ら2人の分まで兄さん、そしてシャルロットの救出に尽力を尽くす』

 

『あら? ちょっと前のラウラちゃんだと人を気遣う姿なんて想像できなかったのに』

 

『ええい、黙れ!! んんっ、2人のことは私と更識楯無でどうにかするから安心しろ。……まぁ、さっき教官からも連絡があったから大丈夫だろう』

 

『そうそう。織斑先生も後々来るらしいから、2人はそのまま馬鹿なことはしないように。山田先生と、虚ちゃんの言うことはきちんと聞くように。あっ、それとこのことは警察にはちょっと秘密にしてくれるとお姉さん嬉しいかな♪』

 

「……わかり、ました」

 

「……だけど……っ!!」

 

 一夏は苦々しく納得するが鈴は納得ないかなさそうに声を振り絞る。

 楯無の普段とは違う冷たい雰囲気に圧倒された自身が言ったところで足手纏いなのは分かっている。

 元世界最強の肩書きを背負う千冬が合流すると知っていても鈴はどうしようもない不安に襲われていた。

 

『まっ、安心しなさいな。お姉さんがどんなことをしても2人は連れ戻すから』

 

『悪いが通話を切るぞ。全て終わり次第再度連絡する』

 

 

 そしてラウラたちからの連絡は切れた。

 鈴が俯いて僅かに肩を振るわせるのを3人はどう声をかければいいのか分からずただ見ていることしかできなかった。

 

「……怪我でもして戻ってきたら、絶対に許さないんだから……」

 

 事あるごとに口癖のように『──僕は大丈夫だから』と笑うキラの姿を思い浮かべながら、鈴は声を震わせながら弱々しく呟いた。

 彼女のその一言が誰に向けて言っているのかこの場にいる全員が気付きながらも、2人が無事に戻ってくるのを彼らはただ祈ることしかできなかった──





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