みんな!!ついに劇場版SEEDの上映日時も決まったね!!来年が楽しみで、モチベも爆上がりですわ!!!!!!
それはそうとみんな感想でオータムさん終了が多くて笑った。みんなオータムさんを信じろ!!みんなが信じるオータムさんを!!
「──けてっ……!! 助けて……っ! 助けて……キラ……っ!」
朦朧とした意識の中で誰かが涙を流しながら助けを求める声だけがはっきりと聞こえた。
ボヤけた視界の先には呼び掛けてくれた彼女の命を奪おうとしているIS──敵の姿。
『えっ……!?』
『キラ……っ!』
イージスの投擲したシールドを回避できず直撃し、胴体と首が離れて爆発に呑まれたトール。脱出艇を撃ち抜かれ爆炎へ包まれるフレイの記憶が鮮明に蘇る。
守れなかった大切な友達。守らないといけなかった大切な人。
(……だれ、も……もうっ、誰も失いたくないんだ……っ!!)
感情に呑み込まれ、ボヤけていた意識の覚醒──すなわちSEEDが発動する。
近くに手放して落としてしまっていたアーマーシュナイダーを拾い、そのまま感情に身を任せスラスターを吹く。
「──こいつ!?」
スラスター音が耳に届いたオータムが振り向き、彼女に突きつけていた銃口を向けてくるが遅い。
アーマーシュナイダーからビームサーベルに切り替え、ガラ空きの胴体にビームサーベルを叩き込もうとするが、想像していたよりも体は動かず距離もズレていたのか先端がISの装甲を掠める。
一撃で仕留められる絶好のチャンスを逃してしまった。
身の危険を感じたのか、それともこの状況を冷静に分析したいのかオータムから反撃されることはなく大きく距離を取られてしまう。
「……ぐっ」
意識がハッキリとしたからか全身が痺れていることに今気がつく。
立っているのもつらく片膝をついてしまう。
さっき振るう距離感を上手く掴まず、体も思うように動かせなかったのはこの痺れが原因だったんだ。特にエネルギー・ワイヤーを巻き付けられた片腕の痺れは酷く指一つも動かすことができない。
「……キラ……っ」
「……ごめん、怖かった、よね……だけど、もう、大丈夫、だから……」
恐怖で身も心も震えているシャルの不安を少しでも取り除く為に、なんとか笑いながら声を掛けた。
いつまでも片膝を地面につけていれば心配しちゃうよね。痛みを我慢するように歯を食いしばりながら立ち上がり体をオータムへと向ける。
「ありえねぇ!! どうしてテメェは立ってやがる!? 丸一日は少なくとも目を覚まさねえんだぞっ!?」
「あれ、ぐらいで……倒れるわけには、いかないから……っ!」
「ちっ! そのISに電流に対する対策でもつけてやがったのかっ!」
ストライクに電流に対抗できるように処置していたと勘違いされちゃうけどPS装甲以外便利機能は搭載されてるもんか。
立ち上がれたのは単純に他人よりも体を丈夫に設計されているから。人類の理想として在るのを拒絶しているのに、その体だから立ち上がることができてシャルを守れたのは皮肉だよね……。
「テメェがソイツに命を懸ける理由がどこにある!! そこにいる餓鬼はテメェのISのデータが目的で近づいた、騙してたんだぞっ! 自己保身ためならいつだって裏切るかも知れない奴なんざ見捨てるべきだろ!」
「……わ、わたしは……っ」
「そらみろ!! みっともなく言い訳を並べようとしやがる!! こんな餓鬼を──」
「──シャルは、シャルは泣いていたんだっ!!」
ぷつりと自分の中にあるなにかがハッキリと切れた。捲し立てようとする耳障りのその口を閉じるために直進する。
ビームサーベルを上段から振り下ろすがそれは上空に飛ばれたことで躱され、オータムに背後を取られた
2本の脚から放たれる実弾は左腕が動かせないこともあり防ぐ手段がなく被弾してしまう。
「自分を騙した女をそんなくだらねえ理由で命を張るなんて頭狂ってんのか、ええっ!?」
「そうするように仕向けた貴女がなにをっ!」
「実行したのはあの餓鬼だ!! 他人を利用して自分の欲求を満たすのを選んだのはアイツ自身さ!」
「そんな身勝手な理屈を!!」
そうするように脅していて、それを実行したのは本人の意思なのだと主張しながら嘲笑うオータムに沸々と怒りが溜まっていく。
シャルの居場所を欲しいという想いを、その感情につけ込み脅迫しなければ彼女が誰かを騙して、悩んで、苦しんで、傷つくことはなかったに。
「安心しろよ!! もう一度テメェを黙らせた後にあの餓鬼を殺してやるからよっ!!」
「……ならっ! 僕が、僕が貴女を討つ!!」
エネルギー・ワイヤーを射出されるがそんな見え透いた攻撃は2度も通用しない。
射出されたエネルギー・ワイヤーを全てビームサーベルで焼き切ることはできたけど、体の反応が鈍いのを考えるに長く戦闘するのは無理だ。
「ハハッ! 動きにキレがねえようだなぁ!! 散々コケにしてくれた落とし前つけてやるよ!!」
さっきので体にダメージが入っているのをバレたけど遅かれ早かれ気づかれただろうし問題はないよ。
勝機があると見做して、散々脚を奪われた鬱憤を晴らすためか突貫してくる。
確かに電撃を食らう前のように激しく動き回ることは無理だけど接近戦が出来ないわけじゃない!
「このままお陀仏ってなぁ!!」
「その程度の腕でっ!」
「この……っ!?」
空中から滑空しながら仕掛けてきたオータムへすれ違いざまに装甲脚を一本斬り刻み上空を取る。
上を取られたことに慌てて振り向く彼女にイーゲルシュテルンを直撃させ誘うように挑発する。
「ちょこまかと鬱陶しいんだよ!!」
「もらった……っ!」
頭に血が昇っているのかシールドエネルギーが減るのを気にも留めず弾幕の中突っ込んでくる。
残っている装甲脚で頭部を狙うかのように正面から殴ろうとするがそれは一度バルトフェルドさんで経験済みだ。
後退せず、前へと前進して懐に入り込みビームサーベルを叩き込む。
絶対防御が作動した手応え。微かに呻き声を上げ、彼女のISは飛行するのを維持できないのか地上へと墜落していく。
「……うっ」
墜落したオータムを追いかけるように着地すればよろけて膝から崩れて両手を地面に着いてしまう。
どうやら体が限界らしい。気を抜いちゃったら再度意識を手放してしいそうになるけど体に鞭を打つ。
崩れそうな体を奮い立たせて、墜落したオータムへ一歩、また一歩へとゆっくりと歩みを進める。
「この……この、オータム様が未完成のIS如きに……っ」
墜落したオータムは手足に力を込めて立ち上がろうとしており、このまままた立ち上がられたら戦闘できる余裕はない。
立ち上がろうと足掻くその無防備な背を踏みつけ、抵抗されないように残りの邪魔な装甲脚を全てビームサーベルで破壊する。
「……て、てめぇ! な、なにをするつもりだっ!」
装甲脚を全て破壊されて狼狽えた声が聞こえるが無視をする。
装甲脚も失い、他にも虚をつくような武装が隠されてないかと数秒警戒するけどその気配もなく杞憂ですんだ。
そのままオータムに跨り、その背にスイッチを入れたアーマーシュナイダーを振り下ろす。
「お、おい、てめぇ……っ!」
オータムのISのシールドエネルギーがなくなるまで何度も何度もアーマーシュナイダーを振り下ろし続けた。
搭乗者の命を守るための絶対防御がこんなにも邪魔だと感じたのは今日が初めてだ。……アグニがあれば一撃で終わっただろうけど。
やがてシールドエネルギーが尽き、維持できなくなったISは解除されオータムは生身の体を曝け出す。
「ま、待てよ……本気で私を撃つつもりか? 私を殺したところで気が晴れるもんじゃねえだろ?」
「……命乞いを……っ? 貴女が……っ!」
「お、落ち着けよ。テメェはなんであれ表の世界で生きてるんだろ? ここで私を殺しちまったら、また裏に逆戻りするわけなんだぜ……?」
「命乞いをしてきた人を嘲笑って、撃ってきたはずの貴女が……貴女が……っ!!」
目の前で縋るように命乞いをするオータムに怒りが湧き上がる。
この人はきっと大勢の人を殺してきた。命乞いをして、生きたいと訴えた人を絶望の淵に叩き落として殺してきたはずだ。
なのにいざ自分が死ぬと察すれば意地汚く生きようと命を惜しさに見逃すように頼み込むなんて……っ!
(……この人は、ここで殺さないといけない人だ……っ!!)
この人は紛うことなき悪だ。それこそ戦争も関係なく人を殺すことを楽しみ、それを生き甲斐だと考えてるだろう。
ここでこの人を殺さなければ同じことをきっと繰り返す。次はシャルの家族さえも。このオータムという人間は絶対にやるだろう。
命乞いをした相手を殺す、それが悪人だろうと心を痛まないわけじゃない。
だけど、シャルに再度危害を、彼女の家族に危険が及ぶ。そんな悲劇が生まれるぐらいなら僕は……っ!
『──ストライクっ!!』
「……キラ君っ!」
2人の切羽詰まったような鋭い声が聞こえた。
我に返りその声が聞こえた方へと振り返れば目の前に接近ブレードを下から切り上げるスコールの姿を捉える。
呆然としていたこともあり、回避や防御が当然間に合うことはなく軽く吹き飛ばされてしまう。
「ちょっと悪戯がすぎたわね?」
(……体が……っ)
倒れた体を起こそうとするがまったく動かないことに気がつく。さっきの一撃で体が限界を迎えたんだ……っ!
顔を動かせば更織さんは疲弊しておりISの損傷も酷い。VTシステムも学年個別トーナメント時に比べれば小型になっていて、その状態を維持出来る時間は長くなさそうだ。
「怪我はないかしら?」
「わ、悪い……助かったぜ」
オータムはスコールの手を取り立ち上がる。
この状況はマズイ。みんな疲弊していて次に狙われればISが解除されるまで攻撃されその後殺されるだろう。
「……僕が……っ! 僕が貴女たちを……っ!」
「限界を迎えた体で立ち上がろうと足掻くのは素晴らしい精神力ね。だけどここでチェックメイトよ。まだ次に目覚めた時にたくさんお話をしましょ?」
(……みんなが、逃げれる時間稼ぎぐらいは……っ)
オータムはどうであれ、スコールの目的は初めから僕だ。
だったら初めから標的である僕がこのまま時間を稼げばいい。更識さんのプライベートチャンネルへ通信を入れる。
『このまま僕が囮になります……っ! 更識さんは、シャルとラウラを連れて撤退してください……』
『その役目は私が引き受ける……っ! だから君こそシャルロットちゃんとラウラちゃんを連れて逃げなさい!』
『……お願い、します……っ! シャルとラウラを連れて逃げることを頼めるのは更識さんしかいないんだ……っ! ここでみんなが無事に戻れる方法はこれしかない……っ!』
ここでみんなが無事に逃げられる手段は僕を囮にすること。
更識さんはこの状況でシャルを守りながら離脱する方法がそれしかないのを理解している。
生身のシャルを守りながら動けない僕を連れ出すとなると、ISを纏っているスコールを振り切るのはまず不可能だ。それに更識さんもラウラも限界でいつISが解除されてもおかしくない。
『……わかったわ。2人は無事に学園に連れ戻すことを約束する』
『……ありがとうございます』
『その言葉はできれば今聞きたくはなかったかな。……ごめんなさい、私は君を守ると約束したのに……っ』
『僕は更識さんに充分守ってもらえましたから。……それにまだ死ぬと決まったわけではないので』
『……絶対に助けに行くから』
更識さんがごめんなさいと悔しそうに声を震わせながら謝罪をしてプライベートチャンネルは終える。
更識さんに酷なことを押しつけちゃったな。
……だけど、更識さんが犠牲になるのだけは絶対に避けたかった。更識さんには家族がいるし、待っている人もいるから。
妹の彼女とまだ仲直りしてないのに仲違いのまま永遠にお別れなんてしてほしくないんだ。
あはは……ことあるごとにこれを言っている気がするなぁ。
(……立つだけでいい……っ! みんなが逃げられるように気を引くだけでいいんだ……っ!)
ここで立たなければみんなが死ぬんだ、と自分を奮い立たせながら手足に力を込める。
柄にもなく声を張り上げれば僅かに体が動き、ゆっくりとだが立ち上がる。
「まだ元気のようね。限界を迎えているものだと思っていたけど見通しが甘かったかしら?」
「……はぁ……はぁ……っ! 僕が、貴女を止める……っ!」
「その体で出来るのかしら? ふふっ、私はオータムほど優しくないのよ」
アサルトライフルの照準を向けながらニッコリと微笑むスコールにただ睨み返すことしか出来ない。
最後の抵抗にイーゲルシュテルンでアサルトライフルだけは破壊しないと。
お互いに動こうとすると──僕らの視覚外から高速で何かが飛来し、アサルトライフルに突き刺さった。
「それは……?」
「鉄、パイプ……っ?」
高速で飛んできてアサルトライフルに突き刺さっているのは鋭利に尖った鉄パイプだった。
似つかわしくない物がアサルトライフルを壊しているのに僕らはお互いに困惑してしまう。
「──スコール!!」
「……っ!」
「──遅い」
なんとも気まずい空気が流れてる中で先に乱入者が現れたとオータムがスコールの名前を呼ぶ。
その声で我に返ったスコールは使えなくなったアサルトライフルを捨て、接近ブレードを払おうとするが乱入者はいとも簡単に接近ブレードを払い上げれば喉元に尖ったものを突きつける。
「……あっ」
忽然と現れた来訪者の姿に情けなく声を漏らしてしまった。
だってこの人がこの場に来るなんて全く予想していなかったから。こんな絶望的で最悪な状況を覆せる、そんな安心感を不思議と与えてくれて信頼できる人はこの人しかいない。
「──遅くなった。全員無事か?」
「織斑先生……っ!」
「……千冬、さん……っ」
「……ほんっと最高のタイミングですよ」
『……アレがオリジナルである織斑千冬ですか』
「……そこの何人かには口煩く説教をしてやりたいがそれは後だ。よくも私の大事な生徒たちに手を出したな、
場が一瞬で凍りつくような殺気に全員が息を詰まらせる。
僕が知っている中で過去最高に千冬さんはキレてる。それこそ人を睨み殺してもおかしくないんじゃないかってぐらいに。
「……ISも無しに私を倒せる自信があるのかしら、ブリュンヒルデさん?」
「貴様ら程度の小兵にISなど不要だ。なんならこの場で試してみるか? 貴様らには借りがあるからな」
「現役を退いたと噂された織斑千冬の実力が衰えていないのか気にもなるし、一度は貴女と戦ってみたかったのよ」
一触即発でいつ2人の戦闘が始まってもおかしくない。
生身でISと渡り合うつもりなんて正気なのかと千冬さんの正気を疑っちゃうけど、どうやら本気のようで微動だにしない。
「私もこの手で貴様らを断罪してやりたいが先にこの人と話をつけるんだな」
「あら? これは……通信機?」
『──久しぶりだな。スコール・ミューゼル。このオレを忘れたとは言わせねえぞ?』
千冬さんが取り出した通信機をスコールに投げつけ、それを受け取った彼女が訝しんでいれば通信機が男性の声が聞こえる。
その声の主に心当たりがあるのかスコールはあら、っと意外そうに驚く。
「てっきり貴方はとっくに引退していたと思っていたのだけど。もしかしてまだ現役なのかしら?」
『馬鹿言え。誰かさんのせいでとっくに引退したんだよ』
「引退できてよかったじゃない。現当主の子猫ちゃんに任せて、自分は優雅に隠居生活だなんて羨ましいわ」
「……まさか、お父さん……?」
『ちっ、余計な一言を言いやがって』
(……お父さん……? スコールと喋っているのは更識さんの父親……?)
スコールと今やりとりをしている相手はまさかの更識さんのお父さんらしい。
話を内容を察するにどうやら更識さんのお父さんとオータムには因縁があるようだ。組織という点では千冬さんも借りがあると言っていたから同じように因縁がありそうだけど……。
「織斑千冬が颯爽と姿を現したのは貴方の差金ってことかしら?」
『偶然だとも。織斑千冬とはプライベートで今日会う予定だったが生徒が誘拐されたと相談を受けてな。連れ去られた場所が割れていると聞いたから足を出せば……お前らの仕業だったってことさ』
「なるほど。貴方が関与していないのは間違いないようね。していたらもっと陰湿で過激だもの」
『はははっ、当たり前だろ』
「それでお話はなにかしら。世間話をする為にわざわざ彼女に通信機を手渡したんじゃないんでしょ?」
『単純な提案だ。今回は手打ちにしねえか?』
「手打ち? この局面で私たちが和解をするメリットはないんじゃないかしら?」
『言い方を変えよう。今回は見逃してやるから引けと言ってるんだ、スコール・ミューゼル』
「……引けねぇ?」
『こっちはISを強制解除された女を狙撃でいつでも仕留められる。貴重な戦力で従順な駒をここで失いたくはないだろ。それに本気で世界最強の称号を持つ女と戦いたいなど本心から言ったつもりか?』
「……ふふっ、相変わらずの手口ね。あの時その息の根を止められなかったのが残念で仕方がないわ」
スコールは薄く笑っているが青筋を立てているのは心の底から苛立っているのだろう。
スコールはオータムへと僅かに視線を向け、そして次に目の前で自身の喉元にバールを突きつけて殺気を溢れ出している千冬さんを一瞥すると諦念するかのように小さく息を吐く。
「……ええ。その提案を呑み込むわ。ここで世界最強と殺し合いをしたところで得るものより失うものが多いもの」
『利口で助かる。こちらも背中から撃たないことを今回は約束するさ』
「今回は、ねぇ? まあいいわ。ブリュンヒルデさんもこれで納得したかしら?」
「次に私の生徒に手を出してみろ、地獄の果てでも追いかけて私の手で貴様らを処す」
「肝に銘じておくわ。……ただ、そこの彼はそっちよりも、こっちで居る方が幸せだと思えるけど」
「ほざけ。キラと貴様らをさも同類のように語るな。2度目はないぞ」
「怖いわ。これもお返しするわね。この専用機はこのまま持ち帰るほど価値がないもの」
ISを解除したスコールは千冬さんに通信機と奪っていたシャルのISを投げつける。
帰るわよっとオータムに一声かければ不服そうにしながら従って、2人は何事もなかったかのように倉庫から去っていく。
「……ひいた、のか……」
彼女たちが大人しく退いたのを見届けたら糸が切れたかのように体に力が入らなくなる。
ストライクも自動に解除され、そのまま床へと倒れそうになれば誰かに優しく受け止められる感触。
「随分と無茶をしたようだな」
「……すみ、ません……」
「喋らなくていい。この様子だと喋るのも苦しいんだろう? 大人しく寝ていろ。ここにはみんなを脅かす敵は1人もいない。あとは私に任せておけ」
「……は、い……」
優しく背中をポンポンと叩かれながら千冬さんの言葉に甘えるようにゆっくりと意識を手放した──
◇◇◇
「……ゆっくり休め」
まるで事切れたかのように意識を失くしたキラの姿に千冬は最初に出会ったことを思い出しつい懐かしんでしまう。
外見が負傷してはいないが呼吸が弱いのでまた無茶をしたのだろうと千冬は眉を顰める。
「……まったく、成長期なのを疑いたくなるぐらい軽いな」
「兄さん……っ!」
「キラ君っ!」
「……キラっ」
「気絶しただけだ。時期に目を覚ますだろう」
抱き止めていたキラを背負い直していれば、動かなくなったキラを心配して近づいてきた3人に千冬は彼の容態を説明して落ち着かせる。
負傷はしているが全員が無事であったことに千冬は安堵していると、全員が一ヶ所に固まったのを遠くから見ていたのか通信が入る。
『全員が無事のようだな。それなら後処理の報告はオレが全部引き受けるからみんなは学園に戻るといい』
「……それは助かるけどお父さんはいつ帰ってきてたのよ」
『昨日からさ、愛娘よ。やー! 大事な娘がピンチと聞いたらお父さんが駆けつけるに決まってるだろー?』
「はいはい、お父さんが駆けつけてくれて嬉しいわー」
オータムとの駆け引きをしていた冷淡な声から一変して娘の声を聞いて甘々な声を出す父親に楯無は鬱陶しそうにしながら聞き流す。
2人のやり取りをシャルは苦笑いを浮かべ、ラウラはなんとも言えないような顔を浮かべてたら、その空気を止めるように千冬は咳払いをする。
「んんっ、家族団欒はまた後日でお願いします。今日は本当にありがとうございます。更識さんのおかげで全員無事に生き残ることができました」
『なに、千冬ちゃんのお願いだからな。オレも大事な娘がこんなつまらん場所で命を落とさないで済んだからお互い様さ。……厄介な女にそこの少年は目をつけられたようだけどな』
「織斑先生……その、キラは……何者なんですか……っ?」
「……どうした、シャルロット?」
「……えっと、その……」
「……オータムとスコールと名乗った女が兄さんを人殺しだと看破したからです」
なんと伝えればいいか言葉を選んでいたシャルロットの代わりにラウラがはっきりと千冬に事実を打ち明ける。
その話を聞いてシャルロットが迷っているぞぶりに、彼女たちが残していった置き土産に忌々しげに舌を鳴らす。
『ほーん。その話が真実ならば
「お父さんは黙って」
『……娘が反抗期でお父さん辛い』
「そのことについてだが事実だ。……キラはきっと沢山の命を奪ってきただろうな」
「……ほんとう、なんですね……っ」
あの戦いの中で指摘されたのにキラが否定しなかった時点で出鱈目ではないと感じていたシャルロットだったが、彼のことを知っているであろう千冬があっさりと肯定するのに戸惑いを隠さなかった。
「……ラウラと更識さんも知ってたんですか……?」
「ええ、知っていたわ」
「ああ。知っていた」
「……そっか」
千冬の言葉に動揺する気配を微塵も感じなかった2人にシャルロットが聞けば2人とも隠すことなく頷いた。
それにシャルロットはキラが何処となくここにいる3人には遠慮することも少なく素直に甘えているのに納得する。
「シャルロット、お前は──」
「──大丈夫です。織斑先生が何を言おうとしてるのか分かります。だけど、安心してください。私はキラを拒絶することなんてしません。だってキラは私を命懸けで守ってくれたから」
シャルロットは嘘偽りのなく微笑んだ。
初めは当然驚いた。そんな過去があったのだと衝撃を受けたが、それも一度倒れたはずの彼が自分を守るために再度立ち上がる姿を見て全て吹き飛んでいった。
こんな自分を守るのが当たり前なのだと、泣いていたんだと啖呵を切りながら戦い続けたその背中にシャルロットは救われた。
「それにキラが理由もなく人を殺すなんてすると思えないんです」
「そこまで冷静にいられるのならば私から言うことは何もない。……いつか本人が打ち明けるまで待ってあげてくれ」
「はい、いつまでも待ち続けます」
『おーおー、若いってのはいいなぁ……オレも昔は──』
「はいはい、お父さんは黙ってて」
「……ふんっ」
「あら? もしかしてラウラちゃん嫉妬してるのかしら?」
両腕を組みそっぽを向くラウラに楯無が揶揄えば違う! と食い気味に否定して、ラウラが突っ掛かりそれを楯無がのらりくらりと躱していつもの賑やかな雰囲気へと変わっていく。
「喧嘩する元気があるのならサッサっと戻るぞ。それと貴様ら2人は後で話がある。……逃げるなよ?」
「あー、お姉さんはちょっと怪我が……」
「……私も体が少々……」
「……現金なやつらめ」
体を痛むふりをする楯無とラウラに千冬は大きなため息を吐く。
あの規律やルールに素直に従っていたラウラが話を避けようと抵抗するのは嬉しい反面、慕っている兄の似なくていいところまで真似するのを嘆くべきなのかと千冬は思い悩む。
『全員学園まで送っていこう。久々に愛娘の顔も見たいからな!!』
「……いい加減頭が痛くなってきたわ」
「と、とても家族思いのお父さんなんですね!」
どうやってあの父親の口を封じようかと額を抑えながら考える楯無に不穏な気配を感じたシャルロットが必死にフォローする。
そんな中でふっと一つの疑問を抱いたラウラは千冬にあることを直接尋ねた。
「そういえば教官はどうやってこの場まで?」
「教官ではなく、織斑先生だと言ってるだろう。それについてはここまで更識さんに連れてきてもらったんだ」
『そうそう。千冬ちゃん血相を変えて連絡入れてきた時はびっくりしたぜ』
「世間話はほどほどにしてお父さん車を入り口まで持ってきて。みんな疲れてるんだから」
『はいはい。わかったよ、お姫様』
(……教官は更識楯無の父親と交流があったのか。なら織斑一夏はそのことを知ってたりするのか?)
千冬と更識家と繋がりがあるのを知り、彼女の弟である一夏が知っているかと考えるが彼が初めて更識楯無と出会った時のリアクションを思い出せばそれはないと否定する。
(……教官は更識楯無の父親と何を話す予定だったんだ? なにか引っ掛かるものを感じる……なんだ?)
「ラウラ、どうしたの? ぼーっとしてさ。……まさか、どこか体が痛かったりするの?」
「……いや、なんでもない。少し考え事をしてただけだ」
心配そうに顔を覗いてきたシャルロットになんでもないとラウラは答えながらその違和感に蓋を閉じた。
今はただ目の前のシャルロット、そして兄であるキラを無事に取り戻せたことに喜ぼうとラウラはそう思ったのだった──
次で後日談的なやつを書いて林間学校編だー!長かった……ここまで長かったよ!!
林間学校で日常回できるといいなぁ……いいなぁ!!!主に一夏君たちの!!
そしてガンダムSEEDの劇場版きちゃよ……きちゃ……頭がアグニカになっちゃうぐらいに嬉しいぃ!!
タイトル的にもこれがワンチャンキラ君の最後の物語になるのだろうか…?幸せになってくれキラ君……!!
はい!次回の更新は未定ですが気長にお待ちください!誤字&脱字報告お待ちしております!!感想も毎度ありがとうございますっ!!