翼を失くした少年   作:ラグーン

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映画観てきました!!!最高でした!!!もうね!私は文句はないよ!!!みんなもみよう!!劇場版ガンダムSEED!!

しばらくはコメントの方もネタバレ自粛してくれると助かりまする…ネタバレは悪しき文明!!!!

…それはそうと実はやりたかったこと劇場版がちゃっかりやったのでどうすっかなぁと思ってます()


第43話 解けない関係

 

 

 食堂へと行く前にいつもの日課であるアイツの部屋の前にアタシは居た。

 

「……期待はしてないけど」

 

 普段よりも控えめに扉をノックするけど返事は返ってこない。

 初めからこの部屋の住人が中に居ないのはいつもの直感でなんとなくわかってた。……てか、昨日の夜も寄ったけど返事は返ってこなかったし。

 

「……学園には絶対にいるはずなのよねぇ」

 

 思い出すのは気を失っているアイツと、それを背負っている千冬さんの姿。

 学園外の病院へと運び出されたのなら多少なりとも噂は立つだろうし。生徒たちが寝静まった後にこっそりと連れ出していたら話は変わってくるけどそれも多分ないんじゃないかって思うのよね。

 

「はぁ……」

 

 我ながららしくないと自然とため息を零す。

 昨日から胸のモヤモヤが晴れないでどうにも落ち着かないのよ。

 ほんっと小さな可能性だけど、この部屋の住人が狸寝入りしてるかも知れないからISを部分展開して確かめようかしら……? 

 

「……アホくさ。絶対千冬さんに頭叩かれるじゃん」

 

 あの馬鹿が居ないと分かりきってるのに、ISで扉をぶち破った挙句に千冬さんに説教とか割に合わなさすぎるっての。

 

「食堂行って、事情を知ってそうなのに吐かせればいっか」

 

 お腹も空いてきたし、朝食でも摂りながら昨日のあの後を知っている自称妹を名乗っているのと胡散臭い生徒会長を問い詰めようっと。 ……千冬さんは最終手段よね!! 

 

 ◇◇◇◇

 

「……ちっ、こんな時に限って当てが外れるのよね」

 

 朝食を食べるために食堂に来たけど、そこにお目当ての2人の姿は見当たらない。

 あの胡散臭い生徒会長は学年が違うから仕方ないけど、まさかラウラがまだ食堂に来てないなんて……。

 軍に所属してるのもあるのか、あの世話のかかる兄貴とは違って普段は朝早く居るってのに。

 

「──朝からやけに不機嫌だな。なんだ、喧嘩でもしたのか?」

 

 剣道部の朝練が終わった様子の箒が呆れた声で話しかけてくる。

 機嫌が悪いのはちょっと自覚してるけど、今日朝から喧嘩するほど元気じゃないっての。

 

「なに? 八つ当たりに付き合ってくれんの?」

 

「断る、巻き添えを好むものがいる者か。席、空いてるんだろう?」

 

「好きにすれば。どうせ誰も近くに座りはしないわよ」

 

 律儀に失礼するっと礼儀正しく断りを入れてアタシの近くの席に座る。

 

「それはそうとなんで朝からアタシが喧嘩したとか言ったのよ」

 

「鈴音が不機嫌になるのは一夏、それかキラ関連だろう」

 

「一夏関連についてはアンタも同じでしょ」

 

「……まあな」

 

 ああ、そこは言葉を濁さないで頷くんだ。同じ幼馴染というカテゴリー、そして好きな相手も一緒だから隠すつもりはないってことかしら? 

 

「だが昨日少しばかりお前たちの様子がおかしかったからな。……キラになにかあったのか?」

 

「……さあ、今回はアタシ部外者だったから詳しくは知らないわ。こちとら消えたそれを探している最中よ」

 

「……昨日の夜からキラの姿を見かけないのはそれが理由か。少なくとも学園内には居るだろう?」

 

「多分だけどね。ちなみに根拠は?」

 

「勘だな。……それらしい理由を話せば私を庇ったのに病院に行かなかった男だぞ?」

 

 箒は気まずそうに顔を顰め、それを誤魔化すように味噌汁を啜る。

 クラス対抗戦で無人機が襲撃してきた時に箒を庇って、軽傷では片付けられない怪我の中で実は戦闘していましたとか今でも頭が痛くなってくるわね……。

 

「ちなみに聞くけどラウラが何処にいるか知らない?」

 

「すまないが私は知らないな。なんだ、ラウラはキラがどこにいるのか知ってるのか?」

 

「さぁ? だけど知っている可能性が高い1人なのは間違いないでしょ。お兄ちゃんっ子だし」

 

「……確かにな。ちなみに他の心当たりは誰だ?」

 

「知っているのは確定してるのは千冬さん。それで副担任の山田先生ぐらい? 他の候補者はあの生徒会長、それでシャルロットぐらい? けどシャルロットは多分知らないんじゃないかなーって思ってる」

 

「ふむ、逆になぜシャルロットは知らないとそう思うんだ?」

 

「女の勘」

 

「……アバウトだな」

 

 アンタも似たような発言したの忘れるんじゃないっての。

 シャルロットはキラの居場所を知ってたら、今日サボってでもキラのもとへ間違いなく一目散に向かうでしょ。

 

「はぁ……アイツ昨日の夜と今日の朝食べてるんでしょうねぇ」

 

「心配性だな」

 

 ……呆れられるけど仕方ないじゃない。

 キラは食べることの楽しさを味わうのに必要な味覚を失っている。味をしない物を毎日食べるのは私が想像するよりもずっと辛いことなはず。

 

(……はぁ、頑固っていうか達観してるというか……)

 

 アイツが味覚のことを周りに打ち明けていない理由は大体は予想がつく。自分のことだからとか、打ち明けるタイミングを失ったとか、自分の問題だから無闇に心配をかけたくないとかそんなところでしょ。

 他人に悟られないようにすることだけはほんっと無駄に上手いのよね、あの馬鹿。

 

「……やれやれ。キラもだが、鈴音も重症ではあるな」

 

「はぁ? ……なんか喧嘩売ってるなら買うわよ?」

 

「血気盛んにも程がないか……? またふらっと戻ってくるだろう。その時にまたキラと話せばいいではないか」

 

「……それはそうなんだけどねぇ」

 

 箒の言ってることは正しいのよね。

 数日後にはなに食わぬ顔で戻ってるくるでしょって楽観的に考えてもいいけど……どうにも今回はそれだけじゃ駄目なような気がする。

 

「まぁ、鈴音の好きにすればいいさ。悩んだのならば話ぐらいはいつでも聞こう」

 

「へー、珍しいわね。アタシたちって恋敵(ライバル)じゃなかったっけ?」

 

「一夏を取り合うという意味ではな。だがキラはお互いの友人だろう? 友人の心配をするのは当然のことだ」

 

「そっ、見つけたら箒も心配してたって伝えておくわ。てか、ついでに軽くお説教してもいいんじゃないー?」

 

「追い打ちをかけるのは流石に不憫だから遠慮しておこう……」

 

「人が長々と説教するみたいに言わないでよ」

 

「無自覚とは恐ろしいな……」

 

 何度も言うけどアイツにはこれぐらいがちょうどいいのよ。箒も日頃のアイツを見たら絶対に小言の一つや二つ言いたくなるわよ。ああ見えても根っこが面倒くさがりなのよキラのやつ。

 

「とりあえずキラのことは鈴音に任せた。私は他の者の様子を伺っておく」

 

「そう? アタシとしてもそれは凄く助かるけど」

 

「適材適所だ。私たちの仲で一番心を開いてると言う点では鈴音だろうからな」

 

「うげっ、こんな人がいる中で聞かれたら勘違いされそうなのを不用意に言うなっての」

 

「事実じゃないか。構っているのは私たちが知らないそれを知っているからだろう?」

 

「今日はズケズケと踏み込んでくるわねぇ……」

 

「許せ。……どうも1人、キラの力に疑問を抱いているようだからな」

 

「……ああ、セシリア? なんだ。気づいてたんだ、アンタ」

 

「些細な変化ではあったがな。だが、疑惑を向けるのは仕方がないだろう。我々にはその理由を説明していないのだからな」

 

「……まあねぇ」

 

 アタシとセシリアが手足も出ずに、一矢報いることも出来ないでラウラに完膚なきまでに負けてキラに助けられた日以降セシリアはその強さに疑問を抱いてる。

 

「……アンタはさ、どう思う?」

 

「……どうとは?」

 

「偶然じゃ片付けられないぐらいキラって強いじゃん。……多分、アタシたちよりさ」

 

 初めは偶然だと思っていた。日本の諺にある火事場の馬鹿力で切迫した状況だったから偶然動かせて勝つことが出来たって。

 でも2回目からおかしかった。そう、文字通りおかしかったの。

 機体性能は劣っているのにラウラと互角に戦い、その最中にシャルの得意技で高度な技術が必要な高速切替(ラピッド・スイッチ)をさも自分の技かのように使いこなしてた。

 そしてそれ以上に異質だったのは──

 

『あなたはっ……! あなただけは……っ!!』

 

 普段のアイツからはとても想像できないような怒りを通り越して、憎しみのこもった声でまるで相手をその手にかけようとする姿。

 初めは怖かった。次にその矛先を自分に向けられるんじゃないかって想像するだけで今でも息が詰まりそうになるぐらいに。

 

(けど、あの時のアイツの憎しみの裏にはきっと……)

 

 ──泣いていた。アイツは子供のようにただ泣き叫んでた。

 

 あの溢れた憎しみはきっと悲しみで蹲らないようにする動力源。

 その原因はなんだろうと考えるけど、それを知れば引き返せなくなると本能がそう訴えてくる。

 

「──人に聞いておいて本人は考えごとか? キラの悪癖がうつったんじゃないか?」

 

「冗談でも止めなさいよ、それ……」

 

 注意してるのにそれがキラにバレたらなんて言われるか。やっ、疲れてるんとかそっち方面に心配してきそうだけど。

 ジト目で睨んできた箒に悪かったわよっと口を尖らして目を逸らす。

 

「んんっ、キラの力についてだろ? それについては私たちが疑いを向けてもさして意味がない」

 

「それで納得できるもんなの?」

 

「私たちが着目すべきなのはそれをキラがどう扱うかだ。そう言った意味では平常時のキラならば問題ない。アイツの信条は友と大切な人を守るため、それは剣を交えた私が保証しよう」

 

「……アイツらしいけど」

 

「だからキラがなぜ強いのか、それは大して意味のない問いだ。危険性はあるが、それも本人がそれをどう乗り越えるかだ。……私が出来ることは思い詰めた時に共にそれを探すことぐらいだろう」

 

 これ以上は話すことはないのか箒は箸を動かすのを再開する。

 キラと直接剣を交えた箒だから感じ取れたものがあるんでしょうね。……はぁ、アイツもさっさっと観念して色々と話せばいいってのに。

 

「色々とありがと。それじゃあ、アタシはもう行くから」

 

「ふっ、行ってこい」

 

 恋敵(ライバル)に背中を押されるってのは不思議な感覚ね。今日は午前中までだからその後に徹底的に探してやるんだから!! 

 

 

 ◇◇◇

 

 

「──珍しい。こんなところに居るなんて」

 

 アタシが探していた1人のラウラはアリーナの観客席に居た。

 声をかけてきたのをアタシだとわかると興味が失くしたかのように視線をアリーナへと向けられる。

 ラウラが遠目から眺めているのは一夏と生徒会長の模擬戦だった。

 

「アンタ、今日休んでたのね。シャルロットから聞いたわよ?」

 

 今日の授業は明日に備えて午前中で終わった。

 終わってすぐにクラスへと突撃すればシャルロットからラウラは欠席だと教えてもらって、その後にラウラがよく居座ってると聞いた整備室に行ってラウラの友達に此処に居ると聞いてやっと見つけたってわけ。

 

「ちょっと顔色悪いんじゃない? まさか午前中ずっとISの整備してたわけ?」

 

「……明日の林間学校に間に合わさなければならなかったからな。簪と本音に流石に休めとお説教を受けてな」

 

「うわっ、ワーカーホリック体質まで真似しないでよね。いやよ、兄妹そろって面倒みるとか……ISはそんな整備するぐらいにダメージ残ってんの?」

 

「整備の理由は主に過ぎた力の代償でだ。戦闘はそれなりに激しかったが」

 

 過ぎた力の代償ってなによ? 

 それがなんとなく危ないものって気配は感じるけど……ラウラも口固くて話す気配は感じないし様子見るしかないか。本当にヤバかったら危険察知が早いキラが止めるだろうし……。

 

「やはり気概は一人前だな」

 

「……一夏のこと?」

 

「それ以外誰がいる。更識楯無と模擬戦はアレで3回目だ」

 

「あー……一夏は負けず嫌いだから自分が納得するまで諦めなくて結構頑固よ」

 

「だがアレは目に見えて焦っている行動だ。強者と撃ち合うのは実力は身につくが些かオーバーワークすぎる。アレでは逆に疲れが溜まるだけだ」

 

 確かにここからでも一夏の動きはキレがないように見える。

 格上の生徒会長に3回も模擬戦を挑めば疲労困憊になるのは普段の一夏ならわかるでしょうに。

 

「更識楯無も荒い治療をする。織斑一夏の焦りを見透かした上で今の実力を突きつけるつもりか」

 

「……一夏の心を折ろうってわけ?」

 

「さてな。焦りも後悔もわかる。だが自身の身の丈にあった成長でなければその後に待っているのは破滅だけだ」

 

 てっきり自分のことを指していると思ったけど、哀しそうに目を伏せるのを見るときっと別の誰かのこと。

 ラウラにこんな顔をさせるのはきっと1人だけ。アイツとラウラの間に何があったのかまでは知らないけど……その繋がりが少しだけつまらないと思う。

 

「……一夏なら大丈夫でしょ。周りには沢山の人がいるから、きっと止めてくれるわよ」

 

「それは違いない。織斑一夏は環境に恵まれている。あの男は必ず強くなるだろうよ」

 

「ほんっと最初の頃と比べたら嘘みたいに変わったわね」

 

「それは褒め言葉と受け取っておく。それで? 私になんのようだ、鈴音」

 

「アンタ、キラがどこにいるか知ってるでしょ?」

 

「それがなんだ? まさか兄さんの居場所を知りたいという話か?」

 

「話が早くて助かるわね。その通りキラが今どこにいるか教えてくれない?」

 

「……やめておけ。今の兄さんに会うのは」

 

「それを決めるのはアタシよ」

 

「強情だな。どうしても兄さんの居場所を聞き出したければ更識楯無から口を割らせろ。私は話す気はない」

 

 こうなったラウラから聞き出すのは至難の業ね。

 きっとラウラなりに考え抜いた末で出した結論なんだろうし。兄妹そろって頑固なところは似てるのは呆れればいいのかしら。

 

「そっ、ありがと。頃合いをみてあの生徒会長に直談判してくるわ」

 

「……忠告しておくぞ。中途半端な感情のままにキラ・ヤマトの内側に入ろうとするな。それは結果としてお互いを傷つけ合うだけだ」

 

「……まっ、頭の片隅に覚えておくわ」

 

 それ以上は話すことはないと整備室に戻るのかラウラはこの場を後にする。

 

「……逆を言ったら、アンタはその覚悟があってキラの内側に踏み込んでるんでしょ」

 

 冷酷無情だったラウラが変わるきっかけを与えたのはキラだ。

 ラウラはきっとキラの何かを覗いて、触れて、知ったから妹を名乗りあげて支えようとしている。

 それは親愛、友愛、それとも────

 

「はぁー、やめやめ。考えるのは性分じゃないからさっさっとあの人たらしに聞きに行こ」

 

 余計なことを考えるのはアタシの性に合わないっての。

 とりあえず一夏の試合が終わり次第、あの生徒会長に突撃しに行きましょ。

 

 ◇◇◇

 

 

「──あら? 意外なお客様ね。てっきり鈴音さんから嫌われてると思ってたのに」

 

「うっさいわね。アタシだって用事がなかったら話しかける気なんてないっての」

 

 一夏との模擬戦も終わって更衣室から出てきた生徒会長の軽口につい反射的に睨み返してしまうけど、いいでしょこれぐらい。

 ぶちゃけ一夏と模擬戦も何か裏があるんじゃないかって警戒してる。そのことも聞き出したいけど優先順位は間違えないようにしないと。

 

「それで私にどんなお話があるのかしら?」

 

「気づいているくせにわざとらしく知らないフリをするんじゃないっての! キラは何処にいるのよ!」

 

「無理ね。鈴音さんには教えないわ」

 

 その一言で目のあの生徒会長の雰囲気は一変する。

 目を細め相手を射抜くような、そんな冷たい瞳を向けられて一瞬気圧されるけどすぐに捲し立てた。

 

「まるでアタシだから教えられない言ってくれるわね……っ! それともこれが別の誰かだったら素直に教えたってこと!?」

 

「ごめんなさい。言い方が悪かったわね。今のキラ君には貴女は会わない方がいいわ。それはもちろん彼の友達全員に言えることよ」

 

「ラウラと似たようなことを言うわねぇ! アイツと会うか、会わないかはアタシが決めることっ! アンタに指図される筋合いはないわ!」

 

「──それが彼を傷つけることになったとしても?」

 

 その言葉に口元まで出ようとしていた言葉がピタリと止まってしまう。

 

「現在のキラ君は1人でそっとさせておきなさいな。純粋な人の優しさが逆に彼の心を蝕むわ」

 

「そんなに追い込まれてるアイツを放っておくことなんて出来るわけないでしょ!!!」

 

「……貴女も気づいてるでしょ? あの子、人に対して異常なぐらいに一定の壁を作ってるの」

 

「……っ」

 

 そう、キラは無意識かどうか知らないけど誰に対しても一定の心の距離を作ってる。

 自分の話題は人一番敏感なのはそれを極力触れられられないように振る舞ってる節がある。クラスが違うのも詳しくは知らないけど自らクラスメイトに話しかけるのは滅多にないとも聞くし。

 ふらりと姿を消して、現す神出鬼没な毎日を送るのは人に押しかけられないようにしてるんじゃないかって。

 だから、実はアイツの好きな食べ物とか、嫌いな食べ物とか、そんな単純な好みも誰も知らない。……それはいつも一緒にいるアタシたちも。

 

「貴女たちには知られたくないのよ。追い込まれているその原因を。だって知られたらこれまでのような関係ではいられないから」

 

「……まるでアンタは知ってるみたいな口振りじゃない」

 

「ご明察の通り、彼の抱えている問題の一部を私は知っているわ。その上で私は言ってるのよ。彼の平穏を願うならこの先へ踏み込むのは止めなさい」

 

「……平穏って……」

 

「それに鈴音さんが好きなのは織斑一夏君でしょ? なおさら、キラ君にうつつを抜かしている暇はないじゃない」

 

 それを持ってこられたら反論もできず俯くしか出来なかった。

 アタシとキラの奇妙な関係にアタシは明確な答えをまだ持ち合わせていない。

 

「……ねぇ、アイツは……きちんと食べてる?」

 

「……微妙なところね。少し手はつけてくれるんだけど」

 

「……それなら汁物とかメインの方がいいわ。どうせ食欲ないからとか突っぱねてるんでしょ。スープだけ出したら勝手に食べてるだろうから」

 

「……そうね。そうしておくわ。それにしてもキラ君が汁物が好きだったりするのかしら?」

 

「……違うわよ。アイツ、理由は不明だけど味覚ないらしいから」

 

 生徒会長が大きく目を見開くのを見るにその事は知らなかったようね。

 散々言われたんだからこっちだって意趣返しをしたっていいでしょ。

 これ以上は要件がないからアタシはサッサッとこの場から離れる。背中から呼び止められるが知ったことじゃない。

 

(……止めとけっ! 止めとけっ! 止めとけって!!)

 

 無性に苛立ってしょうがないっ!! 何もかも説明をしないで、傷つけるとか、傷つくとか、そんな一方的な善意ばっかり! 

 わかってるわよ!! 誰だって秘密の1つ、2つ抱えて生きてるのは! 特にキラはそれが生半可なものじゃないってのも……っ! 

 

「……アタシは……っ」

 

 この自問自答に答えなんて返ってくるわけがない。だって自分自身がその問いの回答を持ち合わせてないから。

 無我夢中で足を運んだのは誰も居ないアイツの部屋の前。

 

「あれ? 鈴音さん?」

 

「……やまだ、先生?」

 

 どうしてまたここに来たんだって呆然としてたらキラのクラスの副担任である山田先生が声を掛けてくる。

 我ながらちょっと間抜けた返事だったと思う。それがいけなかったのか、目の前の人は心配そうに顔を覗き込んでくる。

 

「どうしたの? なにか嫌なことでもあったのかな?」

 

「……そんなんじゃ、ないです。ちょっとキラに用があったとか……1人で考え事がしたかったというか……」

 

「……そっか。うん、鈴音さん、ちょっとお願いしたいことがあるけどいいかな?」

 

「……いえ、もうアタシはこれで失礼します」

 

「わわっ、待って! そのね! 合宿の、キラ君の明日の準備を手伝ってほしくて!!」

 

「……それは、アタシじゃなくてもいいじゃないですか」

 

「ううん、これは鈴音さんがいいかなって。いいかな?」

 

 立ち去ろうとしたら両手を掴まれて無理矢理この部屋の合鍵を手渡される。

 お願いっと再度微笑みながら頼まれたら断れなくて、つい頷いてしまう。

 

「ありがとう!! それじゃあ、私はちょっと荷物を入れられそうな物を取ってくるね! それまで鈴音さんは部屋の中で待っていてね! ……ゆっくりしてて大丈夫だからね」

 

 そして嬉しそうに慌ただしく山田先生は走り去っていく。

 ……そっかあの人、気を遣ってくれたんだ。前にキラがあの人のことを先生としてきちんと尊敬しているのを何となくわかったかも。

 

『──鈴』

 

 鍵を開けて扉を開ければいつも困って、申し訳なさそうに笑うキラの姿が見えた気がするけど、中へと一歩足を運べば誰も居ないもぬけの殻。

 

「……ちょっとぐらい部屋に物置きなさいよ」

 

 相変わらず学校から支給されている家具以外所有物は置かれていない。居間にある机の上にいつの間にか持っていたパソコンがあるぐらい。

 合宿の準備とか持っていくものが少ないなら1人で簡単に終わるじゃない。

 

「……疲れた」

 

 とりあえず横になりたかったから近くにあったベットへと倒れ込む。

 どうせ使われてない方でしょと考えなしに倒れ込んだら、倒れ込んだベットからこの部屋の主の匂い。

 

「……キラの、匂いがする」

 

 普段からアイツが使っているベット。飛び起きるべきなのにそんな気力は湧かないし、何かを間際らせるようにもっとここに居たい、そんな欲望が胸の中を支配していく。

 

「……何も、言い返せなかった……っ」

 

 あの生徒会長の言葉にアタシは最後なにも言い返せなかった。

 アタシは幼馴染の織斑一夏が好き、この気持ちは嘘じゃない。だけどこのIS学園で知り合ったキラ・ヤマトのことは……っ? 

 

「……アタシだって……わからないのよ……っ」

 

 キラの面倒を見ようとする人は増えた。アイツを好きなシャルロットや、気に入っている生徒会長に、妹を名乗っているラウラと。

 喜ばしいことのはずなのに、面倒を見てくれる人が現れるまでの延長なだけだったのに、いざ現れると胸の内でモヤモヤとして釈然としない。

 

「……なんで……アタシには教えてくれないのよ……」

 

 ラウラも生徒会長もアイツの過去を知っている。千冬さんや、山田先生を除いたらアタシが2番目に面倒を見てきた。なのにキラの事を何も知らない、聞けない、見れないなんて不公平じゃない……っ! 

 

「……ばかぁ……キラのばかぁ……」

 

 ポロポロと涙を流してるのを気づいたのはシーツが濡れてるのを見てからだった。

 

「……いてよ……っ! なら、せめて、せめて……そばにいなさいよ……っ!」

 

 アイツの過去が心を砕こうとしてるのぐらい見てたらわかる。だって目を離せば、いつか1人遠い場所へと行きそうな気配を感じるから……っ!

 話さなくていい、明かさなくても、言えなくても、黙っていてもいいから、ただいつものように隣にいなさいよ……っ! 毎日気の抜けた顔で、困った顔で、笑った顔で……っ! 

 

「……ばかぁ……ばかぁ……っ」

 

 この感情がなんなのかは分からない。だけど、この気持ちが落ち着くまでただ無我夢中にアタシは泣き続けた──





というわけでね!!次回はやっと林間学校だよ!!遅いね!!すまないね!!!だけど林間学校はとりあえず5話ぐらいで終わるでしょ!!!!(ガバ)


……こっちもキラ君幸せなろうね……ほんとうに!!!!それはそうと劇場版要素はこのssはぶち込まないよ!!!!多分!!!(悲痛)
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