翼を失くした少年   作:ラグーン

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前回で鈴ちゃん気張り民が大勢いたの小生びっくりしたんだな!!やっぱ貧乳は最高だよ…!!そしてガンブレ4の復活があるなんて…楽しみで仕方ないでござるー!

あっ、林間学校ではあるけど今回水着は出ないです()林間学校開始とは言ったけど水着あるとは言ってないからセーフ!!!!


第44話 林間学校!

 

「もう少しで着くらしいよー!」

 

「楽しみだよねー!」

 

(……僕は……)

 

 クラスメイトの和気藹々と楽しそうに弾んでいる会話をバスの中で景色を眺めながら聞き流す。

 林間学校、本当ならこのイベントに参加するつもりはなかった。周りの空気に当てられて楽しむような気力もなく、自分が参加していい資格はないとIS学園へ居残りをするつもりだったのに。

 

(……ここに居ていい? だけど、僕は撃とうとした、人を……)

 

 思い出すのは部屋に引き篭もっていると、更識さんが諭すように語りかけてくれたこと。

 

『──君はここに居ていいの。貴方を受け入れてくれる人はきっといる、私のように。だから心配しているみんなに顔を出してきなさいな』

 

 無抵抗の相手を殺そうとしたこの手を、更識さんは臆することもなく当たり前のように微笑みながら優しく握りながら。

 

(……わからない。なにが正しいのか……)

 

 ある人たちは言った、僕は表側にいる方が苦しいと裏側へと来ればその苦しみから解放されると。

 だけど僕がIS学園に居ていいと、人を殺そうとしたのに拒絶しないと言った人たちもいる。

 

『──知りながらも突き進んだ道だろう!』

 

 自分の選ぶべき道に悩めば、またあの人の言葉が心を蝕んでくる。

 過去を捨てたつもりはなかった。僕は自分がこの学園に居るべきじゃないと分かっていながら、この平穏な環境に身を置いてきた。この手は血で染まっているのに、みんなを守るためと体のいい言い訳を並べながら。

 

「──キラ君?」

 

 どんどんと思考の沼へとハマっていると誰かに肩を触れられたことで我に返る。

 僕の異変に気付いたのか隣に座っている山田先生が心配そうに顔色を窺ってくる。

 

「顔色が悪いけど……大丈夫?」

 

「……大丈夫です。ちょっと、考え事をしていただけです」

 

「目的地に着くまで仮眠をとっていいんだよ? その、更識さんから満足に寝れてないってお話は聞いてるから」

 

 やっぱりというべきか、どれぐらいの範囲かは知らないけど更識さんは山田先生にここ暫くの僕の様子を伝えていたようだ。なら、織斑先生も把握済みだろう。

 

「……起きている方が、楽なんです」

 

 山田先生の気遣いは嬉しかったけど、睡眠をとるぐらいなら起きて永遠と自問自答を繰り返すのがまだ楽なんだ。

 瞼を閉じれば必ず夢をみる。多くの儚い命が無条理に散っていく。守るために撃ち、守りたかった人たちが手から溢れ落ちていく。

 

(……僕がやってきたことだから。だけど、最近の夢は……っ)

 

『──私が貴方を守るわ。私が側にいるから、だから大丈夫よ、キラ』

 

 あの日以降、決まって彼女の夢を見るようになった。

 優しく微笑み艶めかしい声で囁き唇を塞いでくる、そんな願望に塗れた浅ましい夢。

 前に夢の中でも願望夢があると聞いたことがある。願望夢は当人の欲求を示す夢と。

 

(……そんなにも、フレイを求めているのか僕は……)

 

 言い訳もしようも出来ないぐらいに心の底から彼女、フレイを求めている証拠。

 なぜ彼女を欲するのか……またあの頃のように彼女の肉体に溺れて一時的にでも哀しみを忘れるために? それともただ側にいてほしい? 

 ……どちらにしろまたフレイに縋りつこうと、過ちを繰り返そうとしている自分が嫌になる。

 

「……キラ君」

 

 山田先生は何て声をかければいいのか悩んでいるのか言葉を詰まらせていた。

 山田先生を困らせるつもりはなかった……ああ、やっぱり周りが楽しみにしている行事は僕なんかが来ない方がよかったのかな……。

 

「わー!! 海が見えたよ!!!!」

 

 クラスメイトの誰かが発した言葉に釣られて窓を見れば、そこにはみんなが待ち望んでいた広大な海がそこにあった。

 天気は崩れることもなく、潮風に揺られ大きくやるかやに波は上下に揺れている。

 

「そういえば、キラ君は海は初めて?」

 

「いえ、見かけたことは何度か。痺れが残ってるので泳ぐのはまだ無理ですけど……」

 

 まだ片腕には微かに痺れが残っていて、海に入って泳ぐような運動は出来そうにない。やっ、その気になれば出来るかも知れないけど、そうまでして泳ぎたいとは思ってないし。

 当初予定通り自由時間が終わるまで、1人旅館で静かに景色でも眺めていようかなぁ。

 

「そろそろ目的地に着くぞ。旅館に着いたらきちんと挨拶をするように」

 

 織斑先生の言葉にクラスメイトは元気のいい返事を返す。

 しばらくしてバスは目的地である旅館前に到着し、僕は山田先生に連れられるようにバスから降りる。

 他のバスからも一年生が降りてきて全員整列するけど、中々お目にかかれないぐらいの速さで並んだからちょっと驚いたや。

 

「ここがこれから三日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員のみなさんに迷惑をかけないように注意しろ。返事は!」

 

「「「はーい!!!!! よろしくお願いしますー!!!」」」

 

 全員で着物姿を着た女将さんへと挨拶をする。

 こちらこそよろしくお願いします、っと穏やかに微笑みながら女将さんが丁寧なお辞儀をする。

 

「ふふっ、今年の一年生も元気があってよいですね」

 

「景子さん、今年もよろしくお願いします。今年は浴場分けを難しくしてしまって申し訳ございません」

 

「あの、山田先生、もしかして臨海学校は毎年この旅館にお世話になっているんですか?」

 

「うん、そうなの。花月荘には毎年お世話になっているんだよぉ」

 

 織斑先生と女将さんの会話、他の先生らも頭を下げるのを見ながら山田先生にこっそり聞けば頷く。

 話を聞けばISが毎年行っている臨海学校では花月荘にお世話になっているそうで。……うーん、これは丸一日旅館で過ごすのは厳しそうかなぁ。

 

「それではみなさま、お部屋の方へ案内しますので着いてきてくださいね」

 

 そうして女将さんに各部屋の説明をされながら旅館の中へと入っていく。

 海に行く際は別館の方で着替えられるようなっているらしく、話を聞いてるだけで広い旅館であることが分かる。……うーん、道に迷いそうだなぁ。

 

「織斑とヤマトの2名は私に着いてこい!」

 

「は、はい!」

 

「えっ、は、はい!」

 

 織斑先生に名前を呼ばれたので、山田先生に見送られながら織斑先生の元へと向かう。

 共に名前を呼ばれた一夏も不思議そうな顔をしていて、どうやらなんで呼ばれたのかわかっていないようだ。

 

「お前たちを部屋まで案内する。特にヤマトは物珍しさで目移りしてはぐれるなよ」

 

 まるで迷子になる子供のような注意だなぁ……いや、最近誘拐されたというか、連れて行かれたのもあるだろうけど……。

 旅館の中は凄く広いわけだし、この世界の歴史ある内装とかに見渡すのは立ち止まって見渡しそうになっちゃうけど。

 

「その、さ、キラは大丈夫なのか?」

 

「……えっ? なにが?」

 

「やっ、前日まで姿見せなかったからさ、なんかあったんじゃないかって心配でよ……」

 

「ああ、うん、僕は大丈夫だよ。一夏が心配するようなことは何も起きてないから」

 

 コソコソと一夏が心配そうに耳打ちをしてきたから、いつものように笑って誤魔化した。

 上手に笑えたか不安だったけど、一夏は一瞬表情が強張るけど、そのあとは何事もなかったかのように安堵を浮かべる。

 

「……お前たち私語は慎め」

 

「は、はい!!」

 

 会話が聞こえていたのか織斑先生から注意を受けてしまう。

 いつもよりも声のトーンが下がっており、不機嫌な織斑先生に、弟の一夏が反射的に思わず敬礼をするってことはマズイかなぁ……? だって明らかに視線が僕へと向けられてたし……。

 

「ここがまず織斑の部屋だ」

 

「ここが俺の部屋ってことは……まさか個室!?」

 

「そうだ。個室だからと言って羽目を外しすぎるなよ。就寝時間を過ぎ、女子が押しかけてこようとも部屋に招き入れるなよ。その場合は同罪と見なす、特に織斑」

 

「そんなのしないってっ!? ていうか、なんで特に俺なんだよ!?」

 

「お前は特になあなあで押し切られるからだ、馬鹿者」

 

 一夏が言葉を詰まらせたのを見ると、どうやらそれに近い経験があるってことかなぁ。

 まぁ、僕と一夏がどっちが部屋に押しかけられそうと聞かれたら僕も一夏じゃないかって答えるよ。僕と違って、クラスメイトとも仲良くて友達も多いだろうし。

 

「大浴場も使えるが時間交代だ。男女別にはなっているが、一学年全員だからな。お前ら男子2人を特別扱いしていれば時間が幾らあっても足りなくなる。窮屈な思いはさせるが一部の時間だけ利用可能だ」

 

「なら早朝に入りたい時はどうしたらいいんだ?」

 

「織斑、敬語を使え、全く……早朝に入りたいなら部屋の方を使え。それは深夜もだ。他に質問は?」

 

「俺からはもうないです!」

 

「……僕からも特にありません」

 

「そうか。なら織斑は自由時間を満喫してくるといい。海に行くなりな。私も後で顔を出しに行く」

 

 織斑先生が海に来ると知れば一夏は満面な笑顔を浮かべる。

 いつも感情が豊かではあるんだけど、織斑さんが後で海に来ると知ったらこんなに嬉しそうな顔をしている一夏は滅多に見ないや。……うーん、鈴たちは頑張ってね。

 

「次はお前の部屋だ、キラ」

 

「はっ、はい……」

 

 一夏が個室となると僕もそうだろうし……これって個室で色々と怒られるやつかなぁ。

 ここで逃げようとしても首根っこを掴まれ、まるで猫のように連れて行かれる未来が容易に見えたので大人しく千冬さんの後をついて行く。

 

「ここがお前の部屋だ」

 

 千冬さんに案内された個室は一夏のところと内装は同じようで、窓から見える景色は見晴らしが良くて夜になると星を満足するまで眺められそうだなぁ。

 

「いい加減その目線を窓ではなく、私に向けたらどうだ?」

 

「……気のせいだと思いますよ」

 

「この私の目を欺けるとでも小僧」

 

 最大限できる限り言い逃れようとしたけど、それがどうも火に油を注いだようで千冬さんの眼光が鋭くなっていく。

 指ではなく顎で畳に座れると指されれば大人しく座るしかない。次誤魔化したら拳で対話、所謂、最後通牒だ。

 

「……その、千冬さんは教師としてお仕事もあるんですよね?」

 

「一年の全クラスが集まっているんだぞ? 1人の教師が私情で遅れたところで統率をする者は大勢いる。私が優先すべきなのは、お前だ」

 

「そ、そんな堂々と言わないでください……」

 

「この期に及んで誤魔化そうとしたのは誰だ? ……やはり顔色が悪いな。眠りが浅いとは更識から報告は受けている。最近のこともあって、また夢見が悪いのか?」

 

「……はい。だけど、最近の夢は……誰にも言いたくないんです……」

 

「……そうか」

 

 僕が話したくないの気持ちを千冬さんは汲み取ってくれて、それ以上は踏み込んではこなかった。

 フレイを求めることを拒もうとしてるのに、それを悩みとして人に打ち明けるのを躊躇っているの、我ながら矛盾してるよね……。

 

「更識から大まかに話は聞いている……キラにはまた負担をかけてしまった。すまない」

 

「僕には出来る力があります。……それに覚悟を決めたのは僕だから」

 

「お前の心の底からの願いは平穏じゃないか。持っているその力に縛られすぎるな。……お前はもう銃を下ろしたっていいんだ」

 

「……でも、また誰かを失うようなことだけは嫌なんです」

 

「お前は優しすぎるよ」

 

 千冬さんに強く、それで優しく抱きしめられる。その抱擁がちょっとだけ苦しく感じるけど、その分千冬さんが僕のことを弟のように大切に想ってくれているんだって穴が開いている心が温まってくる。

 ……でも、その温かさで胸が締め付けられるて苦しく感じるのはどうしてなんだろうね。

 

「それはそうとしてだ。キラ、私や山田先生に黙っていたことが一つあるんじゃないか? うん?」

 

「……黙っていたこと? えっと、特にないはずですけど……」

 

「……そうかそうか。なら言い方を変えよう。貴様、味覚がないことをずっと私たちに隠していたな?」

 

「いっ……!?」

 

 ずっと隠していたはずの味覚の問題について千冬さんの口から語られた衝撃に、蛙が押し潰されたような奇妙な声が出る。

 味覚がないのを知ってるのは鈴とラウラだけだったよねっ!? ラウラにはきちんと誰にも言わないように頼み込んだし、鈴だって秘密にしてくれていたはずだし!? 

 

「言っただろ? 更識から大まかに話は聞いていると」

 

「ま、待ってください!? いや、だって、更識さんは僕が味覚がないのは知らないはずで……!?」

 

「だろうな。更識からはとある匿名者から聞いて初めて知ったと言ったからな。……なんにしろ、先ほど自白した時点で逃がさないがな」

 

「いや、その……っ!?」

 

 慌てて言い訳をしようと口を開くよりも前に片腕でがっしりと頭を掴まれ、そのまま指の力で締め上げられる。

 いたいいたいいたい……っ!? 本当に片指だけの握力なのかなぁこれっ!? アスランでもこんな風に頭を絞めてくることはなかったよ!? 

 

「あ、頭が、壊れそうなので、離してくれませんか……!?」

 

「安心しろ。過去にこれをされて頭が壊れた者はおらん」

 

「め、めちゃくちゃ、だっ!?」

 

 千冬さんの腕を何度もタップすれば、やっとのことで指の握力から解放された。頭が解放されたので横になって痛さに悶えてしまう。

 数十秒ぐらいだけど体感は何時間も頭を掴まれてた……えっ、味覚がないと隠してた罰にしてはちょっと重すぎませんか? 

 

「それで? いつから味覚がないんだ。その様子だと最近ではあるまい」

 

「……その、この世界に来てから気づいたので……」

 

「つまり初めからと。……お前という奴は」

 

 こめかみを抑えて心底呆れたように千冬さんは大きなため息を零す。

 やっ、その途中からは今頃話してもって気持ちはありましたけど! この世界に来た当初はそんなことすらどうでも良かったというか……考える余裕もなかったというか……。

 

「これで懲りたら1人で抱え込む悪癖は止めろ。些細なことでもいい、今後は私たちや周囲に大人しく相談しろ」

 

「……努力は、してみます」

 

「今日はその言葉を信じよう。……それと、なにか思い詰めているようだがお前の居場所はここだ。くだらん奴らの戯言に惑わされるな」

 

「……だけど、僕は……」

 

「もう忘れたか? お前は私のものだと」

 

「そ、それは冗談じゃないですか……!?」

 

「ああ、冗談だったさ。だが奴らにキラを渡すつもりは毛頭ない。あの外道らと志を共にするぐらいなら私の隣に居ろ。それとも、私では不満か?」

 

「……千冬さんが、不満とかはないですけど……」

 

「永遠に隣に居ろと言っているわけじゃない。心の底からキラのやりたいことを見つけるまでは、離れるなと言っているだけだ」

 

「……僕が、やりたいこと?」

 

「今のお前には難題な課題になるだろうが……見つかるさ、きっとな」

 

 千冬さんは穏やかに微笑みながらぐしゃぐしゃと乱暴に頭を撫でてくる。

 僕がやるべきことではなく、やりたいこと……それを探して見つけるまで自立は許されないってことかな。戦場へと飛び出るより簡単そうで、もっと難題な課題だよ……。

 

「──キ、キラ、ここにいるの?」

 

 どことなく緊張した声が襖の先から聞こえてくる。……この声はシャル? 

 

「どうやら山田先生に居場所を聞き出したか。邪魔者はそろそろお暇するとしよう」

 

「……どうして、彼女が?」

 

「シャルロットが最後に見たお前は意識を失くしていたんだぞ? 元気ではなくとも姿ぐらいは見せてやれ。……ずっと心配していたようだからな」

 

 また後で来ると、千冬さんはまた乱暴に頭を撫でて呆然としていた僕の代わりに襖を開ける。

 シャルは千冬さんがこの部屋に居ると思ってなかったのか千冬さんの姿を見て驚いたように大きく目を開けるけど、僕を視界に捉えると彼女は飛び込むように駆け寄ってくる。

 

「──キラっ!!」

 

「……シャル」

 

「よかった……キラが、生きてて……っ」

 

 胸元に縋り付いて、体を震わせてシャルはポロポロと涙を流していた。

 どうして彼女は泣いているんだろう……? だってシャルは聞いていたはずだ。僕が人を殺してきたということを。

 

「……どうして、君は泣いてるの?」

 

「そんなの、キラが、私の大切な人だからだよ……っ!」

 

「……君は聞いたはずだよ。僕がなにをしてきたのかを……」

 

「こんな私を命懸けで戦って、怒ってくれた人を拒絶するなんて、キラから突き放されたとしても出来ないよ……っ! だって、キラは大好きな人だから!」

 

 彼女の眩しすぎる真っ直ぐな想いに、喉元まで出ようとした言葉は口を閉ざして呑み込む。

 シャルの想いは偽りじゃなくて本心から言ってくれている。彼女が穏やかで優しい人なのも知っている。

 詳しい事情も聞かないで、人を殺したと知っても僕が無事なことに泣いて大好きだと想いを伝えてくれてるのはシャルが優しいから。

 だけど彼女のこの優しさや好意も、僕という出来るように造られた存在と知られてしまったら……っ? 

 

「……体震えてるよ?」

 

「……ご、めん……」

 

「もうっ、謝らなくていいのに……何かにキラが怖がってるのはわかるから。そのね、いいんだよ?」

 

「……え?」

 

「キラからも私を抱きしめて……私が泣いていたからって、理由にして体の震えがなくなるまで」

 

「……だけど……」

 

「私は、気にしないよ?」

 

 彼女の優しい心を傷つけるだけだと理性ではわかっているのに、シャルのその甘い言葉に従うように彼女を強く抱きしめる。

 耳元でシャルが甘い吐息を零すと、まるで離さないように背中に手を回してくる。

 

「……きらぁ」

 

 嬉しそうに甘い声でシャルは僕の名前を口にする。

 シャルの体をふれて、その温かさと匂いで震えていた体はゆっくりと収まっていく。シャルの優しさや好意を利用して、体と心を落ち着かせようとしている自分に嫌気が差す。

 

「……もうちょっと、だけこのままでいいかな?」

 

「……え?」

 

「キラから抱きしめられたの初めてだから、もうちょっとだけ抱き合ってたい。キラを感じてたいから……ダメ、かな?」

 

 懇願するように上目遣いで見られたら断れなかった。小さく頷けば、ありがとうとシャルは幸せそうに笑う。

 シャルは何かを堪えるように小さく吐息を零す。シャルが満足するまで、そして僕も思考を閉ざすように彼女を強く抱きしめ続けた──

 

 ◇◇

 

「ふっ、どうやら欲をかいて失敗したとみえる」

 

「……なんの話だ?」

 

「なに、我らの組織の幹部であるスコール殿が珍しく任務ミッションをミスしたようだ」

 

 場所はイギリスのロンドンのとあるオープンカフェ。そこには20歳にも満たない黒髪の少女と、その保護者なのかサングラスをかけた金髪の男が優雅にティータイムを嗜んでいた。

 眼前に広がるケーキを頬張りながら首を傾げる少女に男は嘲笑を浮かべながら答える。

 

「いいザマだな。他人を都合のいい駒のように扱う女にはお似合いだ」

 

「ふむ、どうやら君はスコール殿を気に入らないのかな?」

 

「あの女はいけ好かん。まだキャンキャンと煩いオータムの方がマシだ。……それよりもオータムが欲をかいたというのは、かつて貴様が言っていた男のことか?」

 

「そうだとも。彼女は借りがあったので厚意で忠告はしたがね。どうやら無駄骨に終わったようだ」

 

「……俄かに信じられないな。その男が貴様を討ったとは」

 

 目の前にいる男の強さは少女は身に染みて知っている。

 少女はこれまでISによる戦闘にて誰にも敗北することはなかった。鍛えればありとあらゆることが出来るように造られ、その能力はISにも遺憾なく発揮され、だから私を止められるのは世界で1人しかいないと思っていたのだが、その常識は覆される事が起きた。

 男の実力を測るために一度模擬戦を行うことがあり、亡国機業ファントム・タスク内でISで純粋な戦闘能力で最強と噂されている少女が相手を務めた。

 例え相手がIS初心者だろうとも侮らず、むしろ殺す勢いで挑んだがその結果は手も足も出ずに完敗した苦い記憶がある。

 

「……まあいい。私たちは呑気にお茶を嗜んでいいのか? イギリスに来たのは新たに開発されている第三世代の専用機を強奪するためだ。情報を手に入れたのだから直ぐに仕掛けるべきではないのか?」

 

「焦る気持ちはわかるが、物事には順序があるのだよ。イギリスの新たなる第三世代のIS、サイレント・ゼフィルスの強奪は銀の福音シルバリオ・ゴスペルを扱い行われるデモンストレーションの後で構わないよ」

 

「……何を企んでいる、貴様は」

 

「私はただこの世界の選択を見届けたいだけだとも。ISを侵略兵器として申し分ないと見做すのか、かの”天才"が望んでいた人類の進歩へと戻るべきかをね」

 

「……私は世界がどうなろうと興味もない」

 

「それで構わんよ、今はね」

 

 意味深に深い笑みを浮かぶ男に、少女は不快そうに眉を寄せるが意識を目の前のスイーツへと向ける。

 いつも仏頂面の少女の頬が僅かに緩んでいるのを眺めながら男は口角を上げる。

 

(どうにしろ"君たち"は望まなくとも世界の命運に巻き込まれるとも。それは何も知らなかったはずの彼が立証したのだから。くくくっ、君らが巡り合うその時が実に楽しみだ)

 

 かの少年が、残りの"2人"とは運命の悪戯で巡り合っているのを男は知っている。彼の正体を知れば目の前の少女は決して無視できなくなるだろう。それはかの世界最強、そしてその弟も。

 全てを知りながらも男はただ静かに笑うのだった。愚かで、過ちを止めることも出来ない"2人"によって造られた者がいずれ出逢うその時を待ち望むように──





 どうしてシャルが卑しくなるのか私にもわからない…!なんか湿度が高くなってない??やっ、フレイとの関係なかったら間違いなくシャルとは肉体関係は結んでたと思うよ!肉体関係持ってたら林間学校編なんてシャルの独壇場だよ()
それはそうとキラ君のメンタルどん底なので、抱きしめるぐらいなら拒否することはないです()
 
次回こそ水着回なのだよ!!ギャグにふるからね!!シリアスとか次回は吹っ飛ぶから!!きちんとキラ君も着替えるさ!!ほんと!!

それはそうとなんかお気に入りとか、評価増えてたのどうして…???心当たりないんですが!?

それでは次回の更新は未定ですが気長にお待ち下さい!誤字&脱字の報告をお待ちしておりますっ!

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