誰か僕にサブタイルのネーミングセンスをください(切実)
コメントで総裁が早速揚げ物作りそうと見かけた時は大変笑いました作者です!!それはそうといきなりネタバレしますがキラ君ロマンティクスします()
※今回は非常にキャラ崩壊しておりますので某猫型ロボットのような暖かい目でご覧くださると嬉しいです。
「……最悪、だよね」
誰もいない男子更衣室で1人頭を抱えて座り込んでいた。
いつもなら笑って大丈夫だよっと自然に誤魔化せたはずなのに……どうも感情のセーブが上手に出来ない。
彼女に謝るべきだろうけど……頭を下げるのはなんか違うような気がする、その理由は説明できないけど。ありがとうって伝えるのがいいかな?
「……柱に頭ぶつけたら忘れるかな」
シャルのことが嫌いとか苦手とかじゃないんだ!
単に僕が自分の中の気持ちの整理が終わってなくて、誰とも付き合うような気はこれっぽちもないのに、自分から抱きしめたのを許せないだけで!!
『──キラ!!!! お前が欲しかったのは本当にそんなシャルロットなのかっ!? この馬鹿野郎っ!!!』
柱がどれぐらい硬いのか触ってたら、突如と脳内に溢れ出てきたイマジナリーアスランが拳を容赦なく振り上げてくる。しかも人に聞かれたら勘違いするような事を口走りながら。
「……やっぱアスランって頼りになるや」
イマジナリー
「とりあえず水着に着替えよっと」
水着に着替えるために別館の男子更衣室まで足を運んだわけだし。
シャルとのデートの際に買った水色のパーカ付きの上着と、紺色のハープパンツへと着替える。意識してなかったけど色合いパイロットスーツに近いね、これ。
海で泳ぐつもりない。それなのに水着に着替えるのは、私服だと明らかに周りと浮くのでそれを避けるためと、一緒に外に行こうとシャルに誘われたからだ。
『その、キラは海に行ったりする? よ、よかったら、一緒に行かない?』
あの後に顔を赤くしたシャルから誘われ、抱きしめた彼女からお誘いを断るような図太さは持ってないよ……まだ腕が完治してないのも伝えて浜辺少し一緒に過ごすことになったんだ。
それとデートの際には事件が起きて、あの日の出来事は楽しい思い出ではなく、怖かった出来事として記憶に強く残るだろう。それが個人的には嫌なんだ。
こんな僕を大好きだと言ってくれた彼女にはそんな怖い記憶よりも、楽しい記憶や思い出とかを多く残してあげたいんだ。
「──キラ、そっちは準備終わったかな?」
丁寧に扉を3回ノックして訪ねてきたのはもちろんシャルだ。
彼女の方は準備にちょっと時間がかかるかと思ってたけど。そういえば待機状態のストライクはどうしよう? うーん、置いていくのも面倒いし、このままでいいか。
一声をかけて開けると、目の前には制服から水着へと着替えているシャルの姿。その手にサンオイルと砂浜に引く用のシートだ。
「やっぱりその水着はシャルに似合ってるね」
「そ、そうかな……?」
「うん。とても似合ってる」
「急にずるいよ、もう……」
赤くなった顔を隠すようにシャルは俯いて、小声で何かを呟いてたけど上手く聞き取れなかった。
彼女の水着姿を見て改めて思うけどとても似合っているよ。シャルは可愛いから色んな水着も似合いそう。……うん、体のどこかに怪我とか傷跡とかはなさそうだ。
「そ、それじゃあ行こっか!! ずっとここにいるの不自然だし!」
「そうだね。一緒に行こうか。一夏も先に行ってるみたいだから。あっ、そのマットは僕が持っていくよ。両手塞がってるの不便でしょ?」
「いいの? なら、お言葉に甘えるね」
あわあわとしている時のシャルは微笑ましいよね。慌てたシャルや山田先生、ポワポワしているのほほんさんは不思議と心が落ち着くよ。
女子更衣室から感じる多くの視線からは気づかないふりをしつつ、彼女のシートを受け取り一緒に浜辺へと向かう。
「わー! やっぱり夏って感じだねー!」
外へと出れば暑い日差し、その暑さを和らぐように吹いている潮風は心地いい。
まさか地球の海でゆっくりと過ごせる日がくるなんて。アークエンジェルで海を渡っていた時は当然旅行気分になれるわけもなく、ザフトからの襲撃もあったわけで……不思議といい思い出が全くないよ。
「……やっぱりあの2人って、できてるのかな?」
「……でも噂では2人はそんな関係じゃないらしいよ?」
(シャルロットはヤマト君誘ったんだね。グイグイいくねぇ)
シャルと一緒に外に出てきたものだから、それを見かけた別クラスの生徒がヒソヒソと話している気がする。その中で見守るかのような生暖かい視線を感じるけど、それも気にしない方針で。
「あっ、シャルロットは泳ぐとしたら軽くでもいいから準備運動はするんだよ? 溺れたりしたら大変だから」
「それはもちろん。でも、キラが泳ぐ前に準備運動を進めるのはちょっと意外かも」
「少しお節介というか、口煩い幼馴染がいたからさ」
「キラも幼馴染がいるんだね。……えっ? おさ、ななじみ?」
プールとかで泳ぐ前は絶対に準備運動をやれって、アスランからくどくど言われたのがちょっと懐かしいや。
イマジナリーアスランではなく、本当のアスランとの思い出を懐かしんでいたらシャルはエラーが起きたロボットのような片言を繰り返していた。
「幼馴染といっても男の子だよ? 一夏みたいに女の子じゃないから安心してよ」
「そ、そっか!! 男の子なんだね!! ……よかったぁ」
こうも素直な所を目撃したらシャルは本気で僕のこと好きなんだって身にしみて思うよ。
この瞬間を弾が見たらきっと鬼のような形相で追いかけてきそう。弾もかっこいいから彼女がいても不思議ではないんだけど、どうしてだろう?
「あ、あのね、キラに一つお願いしたいこと、ううん、キラにだけお願いしたいことがあって……」
「僕だけに?」
「こ、これを背中に塗ってほしいなって。背中には手が届かないから」
彼女がサンオイルとシートを持ってきていた理由がわかった。日差しも強いわけだし、日焼け防止でこれを体に塗るのはとても納得できる。
背中まで塗るとなると誰かが代わりにやらないと無理だろうし……その誰かを彼女は僕にやってほしいってこと、だね。
「えっと、背中だけでもシャルロットの体に……その、触れることになるよ?」
「キラならいいよ。ううん、キラがいい……!」
「それは、その、シャルロットが嬉しいことなのかな?」
「……うん」
顔を赤くしながらも頷かれてしまえば断る理由がなくなってしまった。
ちょっとでも彼女には楽しい思い出を残してほしいし、背中だけならサンオイルを塗ろうかな。それぐらいなら許されるよね?
「……それじゃあ、移動しよ? こ、ここだと目立っちゃうから」
シャルに手を引かれながらシートを引くのに丁度よさそうな場所を散策する。
これって塗るのは背中だけだよね? 夏の日差しにあてられてシャルが実は暴走してるとかじゃないよね?
「ここでいいかな。キラ、持ってくれてありがとう」
「あっ、うん」
シャルは軽く周りを見渡し人が少ないのを確認すると僕が持っていたシートを受け取る。そしてシートを引き、彼女はその上に寝そべる。
「い、いつでも大丈夫だから」
彼女の微かに緊張した声色にあてられてか妙に緊張してきた……ついさっきまで気にしていなかったのに無防備に晒している背中から目を逸らしてしまう。
そして重要な問題に気づいたけど、このサンオイルって塗る前になにかした方がいいのかな!? 日焼け止めと同じ要領でいいんだよね!?
「キラ? 大丈夫、そう?」
「……その、よくよく考えればサンオイル初めてでよくわからなくて」
「そ、そっか! それなら教えるね! 手を出してくれるかな?」
「う、うん」
「手のひらで軽く温めるんだよ。こうやって」
どこか嬉しそうなシャルに両手を握られて手取り足取り教えられる。日焼け止めと似たようなものだと思ってたけど結構違うんだね、これ。
「それじゃあ、背中にお願いしていいかな?」
「わかったよ。その、塗るからね」
「うん……んっ」
意識しないようにと事前に心がけようが、直接触れればすべすべとした触り心地の良い柔肌に自制しようが意識は向いてしまう。
暑さに頭をやられているのはどうやら僕らしい。軽く深呼吸をして、極限まで集中して無心でサンオイルを塗ることだけに意識を割くんだ。
「────ボールを相手の頭に狙ってッ!!!」
「……っ!? これは殺気!?」
無心で背中にサンオイルを塗ってると左側から突然の殺気を感じる。慌てて殺気を感じた左へと体を向けると、顔見知りの彼女が見惚れるぐらいな完璧なフォームで足を大きく振りかぶっていた。
「────シュゥゥゥーット!!」
「直撃コース……やられる!? なら、ストライクを──い”つ”ぁ”!?」
「キラっ!?」
慌ててストライクを装着しようとしたらなぜか"反応"がなくて、殺意が込められて蹴ったビーチボールは顔へと吸い込まれるように直撃した。
ああ……人って本気で蹴られたボールが顔に当たったら少し宙を浮かぶんだね……初めて知ったよ……。
「とっっっても元気そうでなによりよ」
仰向けで倒れで頭を押さえている僕を両腕を組み不機嫌丸出しの水着姿の鈴が見下ろす。
うっ、これはご立腹の様子。ちょっとのことでは機嫌を直してはくれなさそう。……でも、彼女が怒る理由には心当たりがないんだよね。最近怒らせるようなことをしたとは思えないし……一夏関連かな?
「……もう一発いっとく? その能天気そうな頭にね!!」
「どうしてさ!? 鈴に怒られるようなことをした覚えはないよっ!?」
「一発どころか、その倍は叩き込んでやるわ!!」
「めちゃくちゃだ!?」
慌てて飛び起きようとすればそれを馬乗りで妨害をしてくる。
やっ、意外に力強いなっ!? 片腕がちょっと痺れは残ってはいるけどその小さい体にどこから力が出てくるのさ……っ!?
「わわっ! 鈴は落ち着きなよっ!?」
「最高にクールよアタシは!! ただ目の前にいる馬鹿に折檻したいだけで!」
「クールからかけ離れてるよ! それは!」
「アンタは口答えするんじゃないっての!! てか、さっき絶対に失礼なこと考えてたでしょ!!!!」
「……え、その……」
「ふんっ!!」
「……い”た”ッ!?」
図星なので両手の力が弱めてしまうと、鈴はその隙を見逃さず容赦なく頭に目掛けて頭突きを叩き込んできた。
き、今日は頭を集中的に狙われてるのはどうしてかな!? そんな頭を執着に狙われるような悪いことをした身に覚えはないんだけど……!?
「……心配させんじゃないわよ、馬鹿」
いったいどうしたんだっていい加減問いただそうするけど、次に鈴の表情を見れば開こうとした口は止まってしまう。
体を僅かに震わせて涙を堪えていた。ああ、彼女はずっと心配していたのだ。ずっと気にしてたんだ、あの日に僕1人に向かわせたのをきっと。
「……ごめん。心配をかけて」
「ほんっと心配しかかけないんだから……」
「どうしたら許してくれるかな?」
「ならもうちょっとアンタの顔見せなさいよ……んっ、顔色ちょっと悪いし満足に寝れてないの? さっきので取っ組み合いで気づいたけど、腕が怪我してんでしょ?」
「……うん。腕の方はまだちょっと痺れが残ってる程度だから」
「無人機の時の怪我と比べるんじゃないっての! 怪我は怪我でしょ、このアホ!! ……寝つき悪いのは、なんか理由あんの?」
「……うん」
「……そっ。話せないならいい」
「ごめん……」
「いちいち謝るんじゃないっての」
口を尖らせて不貞腐れてるのは納得はしてないけど、無理強いをして聞くつもりはないってことかな……?
「……いつまで2人はその態勢でいるのかなぁ?」
「っ!? 驚かせないでよ!?」
「驚かすもなにも私はずっと居たよ! 隙あれば、すぐ2人きりの空間を作るんだから!」
「……シャルロットの勘違いでしょ」
「勘違いにしてはキラに熱い視線向けてたような気するけどなぁ」
「そ、それはコイツが顔色悪いからよ! ほ、ほら、寝つきも悪いって自分から白状したし!」
シャルからの問い詰めに鈴は必死に弁明を始めたけど、長くなりそうだからそろそろ降りてほしい。鈴が重いとかじゃなくて人に見られたらこれを弁明するのが目に見えてるし、そうなったら面倒くさいし……だからといって下手に口出しをしたら2人の矛先は僕にきそうだしなぁ。
(そういえばラウラは今日楽しんでるかなぁ。友達と一緒に遊んでたらいいんだけど)
2人の口論を聞き流しながらラウラのことを考える。色々と合ったけどクラスにも馴染んでいるし、友達も増えているようだから今日という日をみんなと楽しく過ごしているのか気になってるんだ。
遠目からでもいいからラウラが友達と遊んでるのを眺めたいから後で探しに行こう。のほほんさんか、更識さんなら居場所知ってるかな?
「鈴、一旦降りてくれない? この態勢ちょっと疲れてきたし」
「うっ、わかったわよ。降りればいいんでしょ、降りれば……」
現実逃避をしては2人の話が終わる気配がないし、砂浜の暑さにちょっと疲れてきたのでそれを伝えれば鈴は名残惜しそうに渋々降りてくれる。というかそろそろ言わないとシャルの笑顔から黒い何かを感じ取って怖いんだ……。
「んっ、手を貸すわよ」
「……これぐらい1人でも起きれるよ」
先に立ち上がった鈴が手を差し伸ばしてくれるけどその手を掴むのを躊躇いが生じる。その些細な変化が顔に出たのか鈴が訝しむけど、砂を払いながら立ち上がってなんとか誤魔化す。
「兄さんはこんな所に居たのか。そこの2人に連れ回されたところか」
「あっ、ラウラ」
「えへへ、そんなところかな」
「……アタシも含まれてるの納得いかないんだけど」
「ラウラは僕のこと探してたのかな?」
「久々に顔を見たかっただけだ。……それと、その、似合っているだろうか?」
そんなラウラの黒の水着のビキニタイプ。個人的にはちょっと布の面積が少ないんじゃないかな? とつい小言を漏らしそうになるが彼女が求めている言葉ではないのはわかる。
「うん。似合ってるよ、ラウラにぴったりだ」
「そ、そうか! 似合っているか!!」
指をもじもじと動かすぐらいに緊張していたのに、さっきまでが嘘だったかのようにラウラは晴れやかな笑顔を浮かべる。
ラウラの嬉しそうな笑顔に僅かに荒んだ心が浄化されるのがわかるよ……。
「うー! やっぱりラウラは可愛いよ!」
「な、なにをするシャルロット!?」
ラウラの可愛さに感情が爆発したのかシャルロットはラウラへと抱きついていく。
どうやら今日のシャルは色々と積極的らしい。ラウラも照れているだけで、満更ではなさそうだから大丈夫そうかな。
2人の戯れ合いについ頬を緩めていたら上着の袖を軽く引っ張られる感覚。振り返れば鈴は不満そうな顔をしていた。
「……アタシにはないわけ?」
「えっ? なにが?」
「だ、だからアタシの水着姿を見たんだから一言ぐらい感想言いなさいよ」
感想を早く言えと目で催促される。ラウラの水着を褒めたことに感化されたってわけじゃなさそう……?
鈴が着ているのは動きやすそうなオレンジと白のストライプでヘソを出しているタンキニタイプだった。
「その水着、よく似合ってるよ」
「なんか雑。やり直し」
「ちゃんと言ったつもりだけど……鈴は可愛いから、とてもその水着が似合ってる」
「……もう一回言いなさいよ」
「だから可愛いから、似合ってるって……どうしたのさ?」
「な、なんでもない。んんっ、それで満足しといてあげる」
軽く咳払いをしているけど満足したのか解放してくれた。それって一夏に聞くべきじゃないか? って疑問が浮かぶけど藪蛇をつつきたくないから言わないようにしよう。また頭を狙われて頭突きやら、ビーチボールを投げられたら堪ったもんじゃない。
「ああ、そうだ。兄さんはきちんと日焼け止めは塗ったか?」
「日焼け止め? 特に塗ってないけど……」
「えっ、キラ塗ってないの? 日焼け止めはきちんと塗った方がいいよ。肌が焼けてお湯に浸かる時大変だよ」
「あのねぇ。バックの中に山田先生がきちんと入れてたんだから使いなさいよ馬鹿」
「あー、なんかそれっぽいのあったような……てか、なんで鈴は知ってるのさ?」
「……うっ」
「りーん?」
「山田先生がアンタの部屋に入って今日の準備してたようだからそれを手伝っただけ! 偶然よ! 偶然!」
今日何度目か分からないシャルからの追及に鈴は必死に弁明する。
山田先生はバスの中で隣に居た時もそんなことは一言も言ってこなかった。誰かが僕の分の準備をしてくれていたのは、荷物が入ったバックを渡されたから知ってたけど後できちんとお礼を言わなきゃ。
「鈴も準備手伝ってくれてありがとうね」
「礼なんて要らないわよ。単に暇潰しに手伝っただけ。ほら、ラウラも要件あるからさっさと言えば?」
「言われなくともそのつもりだ。兄さん、脱げ」
「……なんて?」
「だから脱げと言ってるんだ」
「す、ストーップ!! その発言に異議を申し立てるよ!」
「そこの妹はなに馬鹿なこと口走ってんのよ!?」
「なにを勘違いしている? 上着を脱がないと日焼け止め塗らないだろ?」
すました顔で言ってるけど言葉足らずにも限度がある。言葉の足りない時のあるアスランでもそこまでトンチキな発言はしたことなかったよ?
「言葉を伝える時は短縮しないようにしようね? 妙な誤解が生まれちゃうから。さっきみたいに」
「むっ、理解した。今度からは気をつけよう。ほら、背中に日焼け止めからその上着を脱いでくれ。」
「塗るのは確定なんだね……」
「それなら上着は私が預かるよ。あっ、シートも好きに使って大丈夫だからね」
上着を預かるだけじゃなくて、シートも貸してくれるなんてシャルには頭が上がらないや。今日はその言葉に甘えようかな。
「よし、塗るからな」
「うん、お願いするよ」
「……やけに素直に引き下がるじゃん。本当はシャルロットもやりたいんじゃないの?」
「家族水入らずって言うじゃない? それに、ラウラもキラとの大切な思い出を作りたいんだよ。大切なお兄ちゃんとの2人だけの、その気持ちわかるから」
「まあ、それはわかるけど……」
「そんな鈴だってキラと思い出作りたいんじゃないの?」
「だ、だからそんなんじゃないって……アタシただ心配で顔を見にきただけよ」
「ああ、もう、そう動くな。塗りにくいじゃないか」
「つ、冷たいから仕方ないじゃないか」
日焼け止めの冷たさで身じろぎをすれば、仕方なさそうな声でラウラから怒られる。ぎこちない手つきで背中へ塗られるのは少しくすぐったいかしょうがないじゃないか。
「んっ、背中は塗り終わったぞ。腕や前は自分でやってくれよ?」
「それぐらいはやるよ。むしろ、前も自分がやるって言い出さないか不安だったぐらい」
「なんだ? やって欲しいのならやるぞ?」
「い、いや、いいよ! そ、それよりもラウラはきちんと日焼け止め塗ったの?」
「私は簪と本音に塗ってもらったから問題ない。兄さんは今日一日浜辺で過ごすのか?」
「時間が経ったら部屋に戻るつもりだよ。体調はまだ万全ってわけじゃないし」
「体調はか……その減らず口までは更識楯無でも治せなかったか。たかが数日一緒に居たぐらいで戻ったら別の意味で頭を悩ませるが……」
「……ちょっとそれどう言うことよ」
「……その話はちょっと聞きたいかなぁ」
いつの間にか近づいていた鈴とシャルがニコニコと笑いながら両肩に手を置いてくる。2人の笑顔がもの凄く怖いし、両肩が痛いんだけど……っ!
「あの生徒会長がアンタの世話をしてるってのはわかってたけど……数日一緒に居たってどういうこよ!?」
「キラが大変な状態だったのはわかるけど、更識さんと数日一緒だった話はどういうことなの!?」
「そ、そんなやましいことはないって!? ただ更識さんが世話を焼いてくれたというか、一緒に居てくれたっていうか……」
「その一緒に居たってどれぐらいの範囲なの!?」
「えっと、ご飯持ってきたり、話しかけてくれたりしてくれたぐらいだよ……」
「アタシたちは怒らないから正直に吐きなさい。ね?」
「……数日一緒の部屋で過ごしてたよ」
「ギルティ」
「怒らないって言ったじゃないか!?」
「裁かないとは言ってないっての!! そうでしょ、シャルロット!」
「……そう、だね」
「……なによ急に歯切れが悪くなって。実はコイツと一晩過ごしたとか言わないわよね?」
「シャルロットは兄さんの部屋で一晩過ごしたらしいぞ。そうなった経緯は知らんがな」
「……シャルロット?」
「う、うぅ!!」
「ふーん……で? それの審議はどうなのよ、キラ・ヤマト君?」
「……ノーコメント、かな」
「はい、ギルティ」
口が裂けてもその日になにがあったのかを言えるわけないので全力で目を背けるしかなかった。
鈴から残酷に告げられたのは有罪。表情が消えた無表情の彼女はそれはもう怖い。鈴ってそんな顔もできるんだって現実逃避してないと逃げ出したくなるぐらいに。
「キラ、砂浜で仰向けになりなさい」
「えっ……?」
「いいから寝ろって言ってんの」
「あっ、はい……」
鈴から感じるそのプレッシャーに逆らうことは出来ず大人しく言う通りに砂浜の上で仰向けになる。すると、鈴は体の上へと砂をかけてくる。
「り、鈴っ!?」
「動くんじゃないわよ。次動いたらわかるわよね?」
もはや隠す気もない脅しだった。無言で何度も頷けば何事もなかったかのように作業を再開する。
ラウラは助け舟を出す気はないどころかせっせっと鈴の手伝いを始め、シャルロットは必死に鈴を説得するけど無言で微笑むだけで聞く耳は持たないらしい。
「しばらくは砂に埋まって反省することね。目を離したらすぐに周りの女子に世話焼かれて、押しかけられて、それをなあなあですませようとして、ある意味一夏よりタチ悪いっての」
「……はい」
「なんだ? これは兄さんへの罰だったのか?」
「話の流れ的に罰以外あり得ないでしょ!? なんだと思ってたのよ!?」
「てっきり兄さんを労るためかと……砂風呂ではなかったのか」
「アンタってたまにボケてるのか天然なのかわからなくなるわ……」
ラウラは単に勘違いをしていたのか。ラウラに本気で見放されたその時は過去の欠点について容赦なく責めてきそうで怖いんだ。そうなったらしばらく自室に閉じ籠る自信しかないよ。
「砂風呂はどんな感じなんだ?」
「砂が重いし、ちょっと暑いけど……悪くはないかな」
「気になるならお兄ちゃんの隣に埋めてあげよっか?」
「あっ、なら私も手伝うよ。鈴とラウラがキラに砂をかけてるの楽しそうだなーって思ってたし」
「……それ嫉妬が原因じゃない?」
「ち、違うよ!?」
「な、なんだアレは! あ、あんな不埒な誘い方はあるか!!」
「あら? なら箒さんも一夏さんにお願いすればよろしかったのでは? わたくしはお邪魔などしませんわよ?」
「だ、だ、誰が一夏に頼むか!」
「2人とも喧嘩するなよ。落ち着けって」
「誰のせいでこうなってると思っている!!」
「これは喧嘩ではないのでお気になさらないでくださいな。ただの一方的な負け惜しみですもの」
「ぐぬぬぬぬぬっ!!」
ラウラも砂風呂を体験したいと談笑していればなにやら賑やかな会話が遠くから聞こえてくる。
僕とラウラは同時に声が聞こえる方へと首を向け、それに釣られて鈴とシャルも視線を向ければ案の定いつもの3人がこっちへと向かって来ていた。
「うげっ、あんなに一目でわかる言い争いの原因は滅多にないわね……」
「えっ、それを鈴が言っちゃうの?」
「それを鈴音が言うか?」
「ちょ、なんで2人してツッコミが入るわけ!? ちょっとキラもなに顔を逸らしてんの! こっちを見なさいよ!!」
「あ、頭掴んで無理矢理向けないでよっ!?」
助けを求めるように鈴は僕へと視線を向けてくるのを察知して事前に顔を逸らしてたのが仇となるなんて……っ!
だってシャルとラウラの言い分が正しいから仕方ないだろう!? 最初の頃なんて僕にどれだけ一夏の愚痴を吐いてたと思ってるのさ!?
「おー、いたいた。みんなこんな所に来てたんだな」
「なんだ、織斑一夏。私たちに用事でもあるのか?」
「こんな素晴らしい日なのですから、仲の良いみなさまと親睦を更に深めるために探すのは至極当然ですわ」
「……それはそうとあそこの2人は何をしているんだ?」
「目を逸らすな!! アンタ!! その目を逸らした理由を!! 吐きなさいよ!!」
「だ、だから気のせいだって!! 日差しが眩しくて顔を横に向けてただけだよ!!」
「えーと、キラと鈴はちょっとした喧嘩中……?」
「砂に埋まってる人間に対して容赦なさ過ぎではないか?」
「そうか? 鈴のアレはだいぶ優しい方だろ。弾や数馬、特に数馬には当たり強いからなぁ」
「えっ、そうなの? 数馬君はマイペースそうだなぁとは思ってたけど……」
「待ってくださいまし。おそらくは一夏さんのご友人方だと思いますが、それを何故シャルロットが知っていまして?」
「この前キラと一緒にショッピングしに行った時丁度バッタリ会っちゃって。あっ、箒とも会ったんだよ?」
「それは初耳ですわよ?」
「特に話す必要性を感じなかったからな。誰も好んで馬に蹴られたくはないだろ?」
みんなが楽しそうな話をしているのは間違いなさそうだけど、鈴との謎の戦いでまったく耳に入ってこない……っ!
というか鈴はちょっと楽しんでいる節がある! 舌舐めずりまでして意地悪な顔になってきてるし!
「……抵抗できないアンタを一方的に弄るのハマるかも」
「やめてよね!?」
「そこまでにしておけ。キラも困っているようだからな」
「ちょっとぐらいいいでしょ。なんなら箒も混ざる?」
「丁重に断らせてもらう。いや、鈴の気持ちもわからなくはないがな。キラがこうも……ふふっ」
「どうして箒さんも笑ってるのさ」
「キラとは付き合いもそこそこ長いが、こうやって一緒に羽目を外すのは滅多にないだろう? それでついな。許してくれ」
「要するに一緒に遊べるのが楽しいんでしょ? 回りくどいっての」
「そこまで大雑把に言葉を噛み砕くな!」
「事実でしょ。それに誰かさんは気持ちを真っ直ぐ伝えるのがいいって言ってたしねー?」
それは一夏には遠回しなアプローチよりも言葉で伝えた方が手っ取り早いって意味で言っただけだよ!! そんな都合よく解釈されるのは聞いてない!
「なによ? その不満そうな顔。言いたいことがあるなら言いなさいよ」
「……ないよ。言ったところで身動きがとれないから、何されるかわからないし」
「ふふんっ、賢明な判断ね」
「お前たちは本当に仲良しだな」
仲良しというより脅迫されてるだけじゃないの、これ? 鈴が楽しんでるならそれでいいけど……それに理不尽な一方的な肉体言語は遠慮したいし。
「ほら、3人ともこっち向いてくれ」
「うん?」
「なんだ?」
一夏が何やら用事があるかのように呼びかけられたので僕らは視線を向ければ、小型のデジタルカメラを構えていてシャッターを切る。
まさか写真を撮られるとは思ってなくて驚いてしまうけど、上手く写真が撮れたのか一夏はご満悦の様子。
「一夏はデジタルカメラを持ってきていたのか?」
「まあな。このカメラ自体は俺の物じゃないんだけどさ」
「ならそれ誰のもんよ? 千冬さんのを借りたってわけじゃないんでしょ?」
「弾と数馬に借りたんだよ。借りたっていうより渡されたってのが正しいのか?」
弾と数馬の名前が一夏の口から出た時に鈴は大きなため息を吐いた。渡されたと聞き一夏へカメラを託した2人の思惑を見抜いたようだ。弾と数馬の2人が後々鈴に粛清される未来は確定したので心の中で合掌しとこっと。
「一夏、それ貸して」
「おう」
鈴からの要求を一夏はあっさりと呑み込んでデジタルカメラを渡す。鈴の態度に気になったであろう他のみんなもデジタルカメラを覗き込む。
「そのデジタルカメラに何か問題でもありまして?」
「これ自体にはないわよ。ただコレを貸した馬鹿2人の野望を打ち砕くだけよ」
「その2人の友人とは長い付き合いなのだろう? 一夏にそのカメラを貸しているのは邪な気配は感じるが……」
「箒の想像してる通りよ。馬鹿2号と変態の企みは神様が見逃してもこのアタシが見逃すわけないっての」
「弾と数馬は他の理由があったかも知れないし……」
「シャルロットは純粋ねー。中身は馬鹿2号と変態なのよ」
「友にしてはやけに辛辣な評価だな。ちなみに織斑一夏と兄さんは一言で表すならどうなるんだ?」
「朴念仁と自堕落」
鈴による一言評価は大体合ってるから文句の言いようがないんだよなぁ……それにしても数馬はどうしたら変態という評価になるのさ? 実はそれについてちょっと気になってたりするんだよね。
「んっ、デジカメ返すわ。これで適当に景色の写真でも撮れば? 手元に戻ってきてその写真を見た時アイツら泣いて喜ぶわよ」
「そうか? 数馬はともかく弾とか全く興味なさそうだけど」
「弾はきっと咽び泣くぐらいに喜ぶわよ」
男の夢が!! っと咽び泣き崩れる弾が脳裏にチラついて密かに同情しちゃうけどこればかりはどうしようもない。僕は彼の力にはなれない……協力するつもりはないけど。
「そのデジタルカメラの処置は終わったようだな。私は軽く泳いでくるつもりだが他はどうする?」
「あっ、俺もそれ付き合うぜ。久々の海だから泳ぎたくでうずうずしててさ」
「私も久々に遠水をやりたいから付き合おう。たまには体を動かさなければ鈍ってしまいそうでな。兄さん行ってきても大丈夫か?」
「全然大丈夫だよ。元から泳ぐつもりなかったからさ。一夏もカメラ置いて行きなよ。濡れて壊したら返す時怒られるかもだし」
「いいのか? このカメラ盗られるようなことはないと思うけど……」
「キラの厚意に甘えときなさいよ。アタシもここに残るつもりだし」
「あら鈴さんは残りますの? てっきり誰が一番早く泳げるかと競走を提案するかと思っていましたが」
「そんな気分じゃないのよ」
「なら私もちょっと泳いでこようかな。鈴、キラのことお願いね」
「んっ、シャルロットが戻ってくるまで見張っとくから大丈夫よ」
みんなは軽く準備運動を終えたら海へと向かって行く。砂に埋まったままそれを見送れば気分じゃないと残った鈴と2人きりになる。
「シャルロットに気を遣わせちゃったか」
「鈴は行かなくてよかったの?」
「いいのよ、あとで満足するまで泳ぐつもりだし。それともアタシと2人でいるの嫌なわけ?」
「そうじゃないけどさ……」
「それにみんなが戻ってきたら旅館に戻るんでしょ? 適当な理由をつけて」
みんなが海から戻ってきたら旅館戻るのは彼女にはバレバレだったらしい。
海辺に足を運んだのはシャルにお願いされたからが大半の理由を占めている。それがなくともラウラがみんなと遊んでいるのかを遠巻きから眺めるぐらいはしただろうけどみんなと長く話すつもりなんてなかった。
「……アタシにはないわけ?」
「えっと、なんのこと……?」
「だから! あ、アタシとの思い出作り!」
「僕を砂に埋めたので充分じゃない?」
「あれはただ反省させるためにやっただけ! シャルロットやラウラにはあってアタシにはないっていうの?」
鈴が不満そうに口を尖らせるけど急に思い出が欲しいと言われても特に思い浮かばないんだよなぁ。どうしたものかと考えていたらついさっき一夏が預けていった物を思い出す。
「なら一夏のカメラで写真でも撮る? それなら形としても残るし丁度いいんじゃないかな」
「女の子の水着を撮らせる予定だったコレを使うのは癪だけど。まっ、アタシの水着姿ぐらいは撮ってあげてないとアイツらも可哀想だし、仕方ないか」
「それじゃあやろうか」
「待ちなさいよ。まさか砂に埋められた状態で撮ろうとしてないわよね?」
「えっ、そうだけど?」
「せっかくカメラで撮るのにツーショットの相方が砂浜に埋まってる状態とか嫌よ! ほらさっさと出る!」
理不尽に怒鳴られたから砂浜に埋めたのは君じゃないかって言葉を溢してしまうものの僕を掘り起こしている鈴にはどうやら聞こえなかったらしい。やっ、目を逸らしてるから聞こえてないフリをしてるね?
身動きがとれないぐらいに砂を被せられてたが、鈴が砂を減らしてくれたおがけで軽くなったので後は自力で脱出する。
「あーもう、なんで写真撮るだけなのにこんな苦労しないといけないのよ」
「それを僕に言われても……」
「別にアンタに言ったわけじゃないわよ。砂だらけなんだから軽く払いなさいよまったく」
「埋めたのは君とラウラじゃないか」
「あー、あー、聞こえないー」
そうも露骨に聞こえてないフリをされたら苦笑いを浮かべるしかない。背中までは流石に手が回らないので鈴が砂払いをしてくれる。ある程度砂を落とせればそれでいいや、どうせシャワーを浴びるし。
「ほら砂も落としたから写真撮るわよ。ほらアンタはもうちょっと近くに寄りなさいよ」
「えっ、そんな近づかなくても……」
「いいから!! 撮るなら綺麗に撮りたいのよ!!」
すると鈴は痺れてない方の腕へと身を寄せてくる。それに驚いて反射的に身を引こうとしたらまるで逃がさないように腕を組む。
「り、鈴っ!?」
「じっとしなさいよ。思い出作りならこれぐらい安いもんでしょ?」
「そう、じゃなくて……っ! その、当たってるって!」
「うっさい! 撮るわよ!!」
指摘されて顔を赤くしヤケクソ気味の鈴はそのままシャッターボタンを押してしまった。止めることも叶わずカメラはしっかりと腕を組んでいる僕らを綺麗に撮っていた。
「これは思い出作りでもやりすぎじゃないかな……?」
「は、はぁ!? やりすぎなわけないでしょ! シャルロットにサンオイル塗ってたのより健全でしょ! 全然マシじゃない!」
「そ、そうかな……」
「そ・う・よ!! どんな事情があってもあの生徒会長とも数日一緒に過ごしたのも大問題よ!! それに比べれば、こ、これぐらいは普通よ! 普通!」
その積極性はだから一夏にやりなよって言葉は火に油を注ぎそうなので静かに胸の内にしまっておこう。
鈴の言っているのは実際正しい。どのような事情があっても更識さんと同じ部屋でしばらく一緒に過ごしてしまったわけだし。
「……わかったよ。僕からは特に言うことはないよ」
「納得したならいいのよ。旅館の用意された部屋に戻るんでしょ? アタシからみんなには適当に理由をつけて話しとくから」
「……ごめん、助かるよ」
「謝らなくていいわよ。だいぶ無理してるってのはわかってたし。なんであれ、キラの顔きちんと見れて安心したし。あっ、小言はたっくさんあるからそれは勘違いしないでよね」
「してないよ。その小言、今度時間ある時にきちんと聞くよ」
「当たり前じゃない。逃げようとしたって絶対逃さないんだから」
鈴はにへらと頰を緩めて楽しそうに笑う。彼女からの小言はちょっとした空き時間では足りなさそうだからその時は予定を半日ぐらいは空けておいた方がよさそうだね。
「じゃあ、またね」
「んっ、後でアンタの様子見に来るから」
様子を見に来るのは出来れば遠慮してほしいけど鈴には言うだけで無駄になりそうだから諦めよう。
みんなが戻ってくるよりも前に僕は旅館へと戻ることにした──
こんなギャグをたまーに書きたくなるのです!!ゆるしてぇ!だってキラ君絡むと基本シリアスでしか物語が進まないんだもん()今回シリアスを入れないように気をつけました()
予定では次回ちーちゃんによる圧迫面接の予定ですので楽しみにしていてください!!つまりほのぼのです(一夏君関連)次キラ君出番あるかな…?
それはそうとfgoイド攻略後にジャンヌ・オルタをやっと引くことができました…ツンデレ最高だな!!!!!(クソデカボイス)
それでは次回の更新は未定ですが気長にお待ち下さい!誤字&脱字の報告をお待ちしておりますっ!