翼を失くした少年   作:ラグーン

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みなさんお久しぶりです!!リアルが忙しくてひーこら悲鳴を上げている作者です!!

今年も折り返しを過ぎたことに僕は恐怖で震えたよ…(震え声)今年まだこれを含めて6話しか進んでないのデジマ!?と心底驚いてます。浅遅いぞ!!この馬鹿野郎!!!!!

それはそうとイマジナリーアスランが好評でとてもにっこりしちゃったんだなぁ!!これが!!!


第46話 女子会!!

 

「ご飯も美味しかったし、温泉も気持ちよくて最高だったね〜!」

 

「明日からが本番なんだからね?本音、気を抜きすぎたら駄目だよ?」

 

「わかってるよ〜」

 

「……む、むぅ」

 

 宴会場で夕食も食べ終え浴場で一日の疲れを癒した更識簪、布仏本音、ラウラ・ボーデヴィッヒは脱衣所から浴衣姿で出てくる。

 簪と本音が楽しそうに談笑してる中でラウラはその話に混ざらず自身の胸元で押さえながら小さく唸る。

 

「アタシだって、アタシだって……ちっ……」

 

 すると廊下には先に上がっていた浴衣姿の凰鈴音が不機嫌オーラ全開で壁に手を置いて敗北感に打ちひしがれていた。

 簪と本音はそんな鈴音を顔を見合わせて不思議そうに首を傾げるが、負のオーラを撒き散らす鈴音にラウラは放っておけずつい声をかける。

 

「……鈴音、お前は……」

 

「……なによ、ラウラ……ああ、そっかアンタも……」

 

「……言うな、なにも言わなくていい」

 

 2人は言葉も要らず通じ合い、お互い微笑んで無言で固い握手を交える。

 簪は2人が謎の共感を感じているのは確かだと困惑し、本音はわからないがなにやら感動的な友情が深まった瞬間を目撃し、自分のことかのように嬉しそうにはしゃいだ。

  

  ーーそう、熱い貧乳同盟が目の前で爆誕したのであった。

 

◇◇◇

 

「へぇー、アンタってあの生徒会長の妹なんだ」

 

「う、うん。鈴音さんもお姉ちゃんのこと知ってるんだ」

 

 伝説の貧乳同盟が結成すれば方角も一緒なので鈴音もそのまま3人と一緒に行動していた。

 鈴音と簪はお互いに顔は知っているがほぼ初対面に等しかったが、鈴音の持ち前の明るい性格や年齢が同じなのもあって仲良くなるのはそう時間はかからなかった。

 

「あんなんでも生徒会長だからうんざりするぐらい存在感はあるしねぇ。好んで近づきたいとは思わないけど」

 

「更識楯無とお前は性格上の相性もあるだろうがな」

 

「まあねー。目の前でお姉さんの悪口みたいになって悪いけど、あの生徒会長は腹の中で常に企んでそうだからいけ好かないのよ」

 

「リンリンはたっちゃんのこと苦手なんだねー」

 

「苦手の範疇なのかこれは……?」

 

「待ちなさいよ。そのリンリンってアタシのこと指してんの?」

 

「うん。そうだよー!鈴音だからリンリン!」

 

「……そっか。お姉ちゃんを嫌いっていう人もいるんだ」

 

 鈴音が本音から付けられたあだ名の件を問いただしている中で、誰にも聞き取れない声で簪は意外そうに呟いた。

 更識簪から見て姉である更識楯無は小さな頃から内気な自分とは違って社交的で誰とでもすぐ仲良くなっていたのを知っているからこそ、鈴音の楯無がいけ好かないという発言は軽い衝撃を受ける。

 

「癪だけど生徒会長が優秀で凄い奴ってのは認めてはいるわよ。自分から学園最強だって名乗るに相応しいぐらいにISの使い方上手いしさ」

 

「更識楯無の実力は本物だ。ISの対一による純粋な模擬戦ならば教員を含めても彼女に勝てる人間は少ないだろう」

 

「その、お姉ちゃんに勝てそうな人って誰が居るの?」

 

「教官は当然は除外するとして山田副担任と……いや、他には居ないな。タッグならば心当たりがあるが対一なら山田副担任ぐらいだろう。我々一年は実力差があり過ぎて話にならん」

 

「アタシたちならハンデ入れて3人とかでやっとって感じじゃない?」

 

「わ〜!やっぱりたっちゃんはとっても強いんだね〜」

 

(兄さんならばストライクが完成すればあるいは……まぁ、あの2人が模擬戦をすることもなさそうだからな)

 

 更識楯無に勝てる可能性がある人物をラウラは知ってはいるものの本人はその気が微塵もないので語るつもりもない。

 更識楯無がキラを気に入っていて、気持ちも尊重しているのをラウラはつい最近見せつけられたのであの2人が模擬戦を行うのはまずないと考えている。

 

「キラキラ、今日宴会場で見かけなかったけど大丈夫なのかな〜」

 

「そうなの?クラスが違うから中々見かけないのはしょうがないかって思ってたけど。またキラ君食べてないのかな……」

 

「夕食は問題ない筈だ。山田副担任が軽食を届けに行ってるのを見かけたからな」

 

「海で遊んだ後に様子見に行ったけど明らかに顔色も悪かったしね。元から無理して来てんのよ、アイツ」

 

「キラキラはこれを機会にゆっくり休むべきだよ〜。前から疲れてそうだったし、景色も空気も美味しい此処でリフレッシュした方がいいよぉ!」

 

「へー、本音って案外人のこと見てんのね」

 

「そうでもないよ〜?ただ溜め込んじゃう親友がいるから、なんとなくわかっちゃうだけなのです、ぶい!」

 

「……ううっ」

 

「これが幼馴染というものか。どこかの2人とは対照的だな」

 

「なに?喧嘩売ってる?」

 

 誰のことかと名指しをしたわけではないのに喧嘩っ早い鈴音をかつての自分とさほど変わらないのではとラウラは訝しんでしまう。

 そうやって仲良さげに歩みを進める4人だが歩みを止める光景がそこにあった。

 

「い、いけませんわ。あの2人は家族ですのよ!?」

 

「だ、だがな一夏のシスコンっぷりを考えれば……」

 

「わっ、わっ、もしかして禁断の……」

 

「あっ、モッピーにセッシーにデュッチーだぁ!」

 

「えっ、えっとあそこって織斑先生のお部屋だよね?」

 

「……あの3人は何をしているんだ?」

 

「盗み聞きでしょ。てか、シャルロットまでなにしてるのよ……」

 

 織斑千冬の部屋の前に篠ノ之箒、セシリア・オルコット、シャルロット・デュノアの3人が襖の前に張り付いて聞き耳を立てていた。

 

「触らぬ神に祟りなしってね。ほら、3人とも行くわよ。関わったら絶対に碌なことにならないから」

 

「……あのシャルロットまで扉に張り付く内容は興味があるな」

 

「鈴音の言う通り止めた方がいいよ。なんとなく嫌な予感が私もするから」

 

「わー!わたしも3人と混ざるの〜!」

 

「本音も止めようね?」

 

 徐々に箒とセシリアが無言で顔が沈んでいき、シャルロットが声を抑えて黄色い悲鳴を上げる。

 興味深そうにしているラウラ、混ざりたそうにしている本音を鈴音と簪が手を引いて関わらないように無視を決めて通り過ぎようとしたらダンっと勢いよく襖が開く。

 

「人の部屋の前で何をしているこの馬鹿者共め」

 

 襖が突然と開いたことで盗み聞きをしていた3人はバランスを崩して倒れ込みその3人を部屋の主である織斑千冬が見下ろしていた。

 最悪なタイミングで襖が開き鈴音は引き攣った顔を浮かべ、簪はなにやら死地を悟ってしまう。

 

「えっと、私はキラに用事あるから失礼します〜」

 

「こ、こんばんはですの、織斑先生……」

 

「……し、失礼しました織斑先生」

 

「貴様らは大人しくしていろ」

 

「ち、千冬姉っ!?なにしてんのさ!?」

 

「一夏!そこの馬鹿3人が逃げないように少しばかり見張っていろ!」

 

 盗み聞きをした3人は身の危険を感じて逃亡を開始するが、それを目の前にいる世界最強が見逃すわけはなく3人を簡単に捕縛し部屋へと放り込んだ。

 どうやら部屋には織斑一夏も居たようで突然と3人が部屋に放り込まれて驚いていたが、それを気にも留めず監視するように命令する。

 

「ほう、珍しい顔ぶれだな」

 

「ひっ……っ!?」

 

「あ、あわわ……」

 

「う、ううぅ……」

 

「わ、我々はただの通りすがりです!!先の3人のような盗み聞きなど行っておりません!!」

 

 眼光を鋭く光らせる千冬に鈴音は小さく悲鳴を上げ、簪と本音はお互いに体を抱き寄せ、ラウラは背筋を伸ばし敬礼をして身の潔白を必死に訴える。

 

「なにをそう怯える?私はただ鈴音が更識簪と布仏本音と共に行動しているのに素直に驚いただけだ」

 

「そ、そうなのですか?」

 

「2人がラウラの仲の良い友人となっていたのは知っていたし。学園生活を平穏に満喫しているようだな」

 

「え、えっと、ちふーーんんっ、織斑先生はあたしたちはこれで失礼しても大丈夫ですか?」

 

「いや鈴音、そしてラウラには用がある。そこの三馬鹿を使うつもりだったが手間が省けた」

 

(アタシは呼び出さられる問題行為をした覚えないんだけどっ!?)

 

(兄さんの救出の件のことなのかっ!?あそこで私は話が終わってなかったのか!?)

 

 盗み聞きをして折檻をされる3人はともかく鈴音は問題行為をした覚えはない。ラウラに至っては既にキラとシャルロットの救出の話はてっきり終えたと思っていた分困惑を隠せなかった。

 

「更識と布仏の2人は仲良く話していただろうにすまないな。ラウラとはまた今度一緒に過ごしてほしい」

 

「も、もちろんです。ラウラは私の大切なと、友達ですから」

 

「はーい!ラウラウとはいつでも一緒に遊びます〜!」

 

「ほらほら大切な友達だってよぉ?」

 

「う、うるさいぞ鈴音!」

 

 簪と本音の口から大切な友達と聞き照れているラウラを鈴音は茶化すように肘で軽く突く。

 お世辞にも他人と仲良くできる姿が想像も付かない、冷徹で傲慢の頃のラウラを知っているのだから鈴音も揶揄いたくなるだろう。

 そのままラウラと鈴音は簪と本音の2人を見送って千冬の部屋へとおずおずと足を踏み入れる。

 

「とりあえず千冬姉はこの状況説明してくれよ」

 

「そこで倒れている三馬鹿が盗み聞きをしていた。まぁ、くだらない勘違いをしたところだろう」

 

「くだらない勘違い?それってなんなのさ」

 

「……いやいい。説明するのも億劫だ。お前は温泉にでも行ってこい」

 

「へっ?そりゃちょっと汗はかいてるけどそんな温泉に行くほどじゃ……」

 

「いいから行ってこい。それともお前はこれから始まる女子会に出席するつもりか?悪いがお前が居ても気を遣ってやるつもりはないぞ」

 

「うっ、わかったよ……」

 

 一夏がガールトークのような恋バナや噂話には苦手意識があるのを千冬は知っているのでそれを匂わせれば一夏は渋々とだが頷く。

 

「あっ、それならキラも一緒に誘っていいか?1人で入るのもなんか寂しいしさ」

 

「それも諦めろ。キラは山田先生と一緒に外で涼んでいる。気分転換をしたいとアイツ自身からの申し出でな」

 

「そっか。体調も悪そうにしてたし仕方ないかぁ……」

 

 海辺で遊んだ後に鈴音と一緒にキラの様子を見に行き顔色を悪くしていたのを一夏は思い出して残念そうに呟く。

 

「そう気落ちするんじゃないわよ。タイミング合った時にまた誘えばいいんじゃない?」

 

「織斑一夏からの誘いならば余程のことでもない限りは了承するだろう」

 

「そうしようかな。そうじゃあ俺は温泉に行ってくるよ。また明日な」

 

 ぶらぶらと手を振りながら一夏は早足で退出していくの見て相変わらずだと内心で呆れながら鈴音は見送る。

 一夏同様にラウラと鈴音もこの部屋から遠ざかりたいが背後にいる世界最強がそれを見逃すわけないのを知っているので諦めるしかない。

 

「……さて。そこの三馬鹿はいつまで気絶したフリをしているんだ?」

 

(ば、バレていましたわ!!)

 

(当たり前だろ!?気絶したフリをしてやり過ごそうだなんて馬鹿な提案通じるわけないだろ!?)

 

(も、もう諦めるしかないよ……あ、謝ったらきっと許してくれるはずだよ!)

 

「……なんでこのアホたちにアタシたち巻き込まれてんのよ」

 

「……私が知るわけなかろう」

 

 千冬にはあっさり見抜かれていた3人は引き攣った笑顔で起きる。それを巻き込まれた2人はもはや怒る気力もなくただ呆れて何度目かによるため息を零す。

 もはや誤魔化しも聞かなかったので、この中で一番付き合いの長い箒がおずおずと千冬へと一夏と何をしていたのかと尋ねる。

 

「と、ところでちーーんんっ、織斑先生は一夏となにをしていたのですか?」

 

「こりにこった体にマッサージを頼んだだけだ。教師という仕事は全身が凝るものでな。久々に体のメンテナンスを織斑に頼んだというわけだ」

 

「な、なるほど……」

 

「お前たちも機会があれば頼むといい。我が弟ながら素人にしては中々の腕前だぞ?もっとも私の目が届く範囲でだがな」

 

(それは実質諦めろと言っているようなものではありませんの!?)

 

「不満があるならば受け付けるぞオルコット」

 

「い、いえ!!滅相もありませんわ!!」

 

「これで盗み聞きしていた三馬鹿は満足したな?また同じことをすれば次は反省文だと思え。納得したならば返事は?」

 

「「「は、はい!!」」」

 

「話も終わったのならアタシ帰っていいですか?」

 

「本題はまだ始まってもいない。言っただろ?女子会をするとな」

 

「あれは織斑一夏を追い出すための冗談ではなかったのですか……?」

 

「なんだ?私は本気だぞ。だから通りがかりのお前らを見つけて手間が省けたと言っただろう」

 

 全員が千冬が一夏を追い出すための冗談だと思っていたこともあり顔を見合わせる。

 なんたってあの織斑千冬だ。彼女らの中では千冬は厳格で鉄拳制裁も平然と行うクールビューティー。こんな女子トークに参加する姿すら想像もできず、なんならそんなものは無駄だと淡白に冷たい声で切り捨てるようなイメージしかない。

 そんなイメージを持っていた相手からの直々に女子会に誘われたことに全員顔を見合わせる反応をするのは当然である。

 

「お前たちが私に対しての印象に多少文句はあるがまあいい。そこの冷蔵庫から好きな飲み物を取れ。遠慮はいらん、口止め料だからな」

 

「ああなるほど……」

 

 口止め料の意味が分からずラウラは疑問を感じる。千冬の手元にある銀色の缶を見つめればクリ○アサヒという名前に目が止まり1人納得すると同時にこれから何を話すのかを察する。

 

「なんだが遠い目をしてるけどどうしたの?」

 

「いや気にするな。それと、シャルロットはこの女子会はまったくの無傷で終わるはずだぞ」

 

 ラウラの言葉の意味にシャルロットは小さく首を傾げる。

 何か裏があるのではないかとラウラ以外の各々は警戒しながら冷蔵庫から好きな飲み物を手に取りいつの間にか用意されていた座布団へと座る。

 

「それで?お前らはいつになったら一夏に告白するんだ?」

 

「「「ごほっ!!ごほっ!!」」」

 

「ラウラの言葉の意味がわかっちゃった」

 

 飲み物に口をつけていれば千冬からの予想外の言葉に箒、鈴音、セシリアの3人は同時に咽せた。

 ラウラの言葉の意味を理解したシャルロットは神妙な顔で納得し、千冬は酒のつまみにする気なのだと勘付けば、同じく野次馬根性丸出しで聞き耳を立てる。ラウラに至っては完全に部外者面をして適当に話を聞き流すつもりのようだ。

 

「お前ら3人がアイツのどこがいいのかさっぱり分からんがいい加減告白の1つや、2つしたらどうだ?」

 

「そ、そんな簡単に言わないでくださいっ!?こ、ここここ告白なんてそんないきなり……!」

 

「そ、そうですわ!告白は、その、特別なタイミングでよい思い出として……」

 

「ロマンチストなのは結構だが、その前に他の女に盗られれば元の子もない。シャルロットを見ろ。結果はともかくシャルロットはキラに告白をしたそうじゃないか」

 

 シャルロットがキラに告白をした件を持ち出されれば顔を赤くして狼狽えていた箒とセシリアはうっと声を詰まらせる。

 いつも集まる女子メンバーの中で一番落ち着いているのもあって、告白に尻込みしそうなイメージをシャルロットに箒とセシリア勝手に抱いていたが、実際はシャルロットはキラに告白をして一歩先に進んでいた。

 話を聞いてシャルロットはキラにフラれたと聞いた時は大いに驚いたがシャルロット当人は彼を諦めておらずアタックしている姿には2人は尊敬の念を抱いているぐらいだ。

 

「アタシたちもですけど、千冬さんだってお相手いないんじゃないんですか?」

 

 2人が千冬に手玉に取られてる中で鈴は拗ねた口調で反撃へと出た。自分らと一夏の今の関係性について実の姉とは言え口出しをされるのは彼女としていい気分ではない。

 昔から自分に苦手意識を持つ鈴が反抗心を見せたのを千冬は何故か楽しそうに口元を緩める。

 

「いないさ。しかし、一夏の相手が見つかるまではおちおち恋愛をしている時間はない。これでもお前たちなら安心して一夏を任せられると考えてはいるんだぞ?」

 

「それだとまるで箒たちでもないと一夏を渡さないと言っているような……」

 

「そのままの意味だシャルロット。今のところ害はないが私の弟、そして男性操縦者という肩書きに邪な心で近づく馬鹿がいつ現れてもおかしくない。織斑一夏が持つステータスも気にせず、織斑一夏として見て、接しているお前らの方が安心できるだろう?」

 

「えっと、要するに……」

 

「わたくし達は織斑先生公認、ということでよろしいのですか……?」

 

「織斑一夏に異性として意識を持たせなければ、教官の公認の意味はなさないがな」

 

「そこの妹は水を差すような発言するんじゃないわよ」

 

「事実だろ?悔しければ兄さんに言われたようにさっさと告白をしてくるんだな」

 

 3人はラウラの言葉に反論しようともこの場では正論で、尚且つ実行に移したたシャルロットもいるので唸り声を上げ黙るしかなかった。

 

(……告白ねぇ)

 

 ラウラの正論に黙った鈴音であるが一夏に告白するということに奇妙な違和感を感じていた。

 鈴音は一夏に会うためにIS学園に入学したと断言できる。性格上素直になれないものの一夏を好きという想いはここにいる2人に負けないと胸を張れるだろう。

 

(仮に一夏に告白して、それで成功したら……キラとの関係は多分変わるわよね。ううん……間違いなく変わる)

 

 最近口では言わないが自分ではなく一夏の面倒を見るべきでは?と稀に視線で訴えてくる奴だ。自身と一夏が付き合い始めれば、キラは以前のように唐突に関係を崩してただの友人として接する姿が容易に想像がつく。

 

(……それはやっぱ嫌、なのよね)

 

 一度関係を崩された上で悩み抜いた末の答えに面倒を見ると決めた相手だ。一夏と付き合ったと知って距離をとられるのはつまらないどころかふつふつと苛立ちが湧き上がってくる。

 

(ああ、うん、ないわー……今更あの馬鹿に距離置こうとか言われたら蹴り上げる自信しかないわ)

 

 自分と一夏が付き合う姿は空想はもはや明後日の彼方に飛んでいき、急に関係を変えようとした場合のキラへとチェンジしていった。

 自分が一番面倒を見てるのに、自身に関係することを話さない彼に対する私怨も混ざっていたりするのだが当人は全く無自覚である。

 

「その、それはキラさんも当てはまるのでは?彼も男性操縦者の1人。よからぬ企みを企てている者が近づいてもおかしくないはずですわ」

 

「キラに近づく前に更識が牽制するだろうさ。IS学園内で最強と呼ばれている女を掻い潜ってキラを堕とすのは至難の業だぞ?」

 

「そこでなぜ生徒会長の名前が出てくるのが不思議なのですが……」

 

「お前たちはまだ更識とは面識が少ないから知らなかったか。その学園最強の生徒会長がアイツを気に入っているのさ」

 

「でしょうね。やけに肩を持つ態度とか、あの馬鹿に対する距離感とか明らかにおかしいですし。それ織斑先生の方で注意してくださいよ」

 

「距離感が近いだけなら私が口を挟む理由にはならん。なんだ鈴音は更識とキラの仲の良さに嫉妬か?」

 

「あ、アタシには関係ないです!!」

 

「ご覧の通りだ。不用意にキラに近づこうとすれば鈴音も黙っていないだろう。そこにラウラとシャルロットも含まれる。用心はするが一夏ほど気を使う必要はないのさ」

 

 千冬の言い分に箒とセシリアは確かにと納得してしまう。キラを目当てで近づこうとすれば、まず異性としてキラが好きだと公言しているシャルロットが牽制をして、そこに違和感を感じれば自称妹の現役軍人であるラウラが裏で行動を始める。そこにダメ押しで世話係を自称してる鈴音が沈黙を貫くほど我慢強いわけではない。

 仮に上記を上げた彼女たちを掻い潜ったところで生徒会長、そして山田副担任と最後にはラスボスの織斑千冬が降臨すると考えればもはやキラにちょっかいをかけるなど自殺行為である。

 

「兄さんを利用しようとして近づく奴らはこの私が1人も残らず徹底的に排除する」

 

「だめだよ?まずは話し合いで解決しないと!キラは暴力で解決するのは嫌ってるはずだから……武力は最後の手段だよ!」

 

「そこの2人はなに物騒な話をしてんのよ……」

 

「……キラはいつの間に要塞よりも安全な環境を手に入れていたのか」

 

「これはその当人も知らないと思いますわよ?」

 

 緊張も和らいだのかわーわーと騒ぎ始めた生徒たちを眺めながら千冬は飲み物へと口を付ける。

 女がキラに媚びたところで彼はそれを拒むと千冬は確信を得ている。キラはまだ語ってはないが、フレイという大切な女を守れなかったことを深い絶望と後悔に押し潰され泣き叫ぶ姿を見た。

 

(その彼女がいれば、あるいは他の誰かが同じようにこの世界に漂流していれば今頃は精神の負担は減っていただろうに……)

 

 キラの苦悩に千冬は支えてあげることは出来ても共有をしてあげることはできない。彼女はその手で人を殺したことは一度もない。その苦悩に最も共感をでき寄り添えるのは更織楯無だけ。

 元世界最強が1人の少年の負担を取り除くどころか、さらに負担を強いている現状にこの場にいる誰にも気づかれないよう自嘲してしまう。

 

「お前たちにもう一つ頼みたいことがあってな」

 

「頼みたいことですか?」

 

 千冬からのもう一つの頼み事に他愛のない話をしながらも恩師である千冬へ意識を向けていたラウラが真っ先に反応する。

 その反応の速さに流石だなと内心でラウラを褒めながらごく自然に言葉を続けた。

 

「どんなことがあってもキラを友人として支えてあげてほしい」

 

「……教官」

 

「お前たち親しいから薄々とは気づいているのだろう?全員様子がおかしくなる場面を目撃もしているだろうからな」

 

「……織斑先生、彼は何者なのですか?ISを操縦することに天才と片付けるには代表候補生の1人として納得ができない点が多くありすぎますわ」

 

「ちょっとセシリア!!」

 

「鈴さん保健室で2度目はないと言ったはずですわよ。それに学年個別トーナメントでの件は奇跡で片付けられませんの。それは代表候補生の1人である貴女も充分に理解していますわよね?」

 

 キラの正体を知ってるであろうと睨んでいたのを確信に変わったセシリアは抱いていた疑問を千冬へと問いかける。

 その無遠慮さに鈴音は口を出すが保健室で2度目はないと鍵を刺されたこと、そして鈴音自身も1人の代表候補生としての意見は一致しているので口を閉ざす。

 

「それに山田先生が同行していても、夜に外出する許可を出したと聞いて織斑先生がキラさんのことを特別扱いしている……わたくしはそう感じましたわ」

 

「否定はしない。1人の生徒に必要以上に肩入れしているのを我ながら教師としてつくづく失格だよ」

 

「すんなりと認めてくれるのですね……」

 

「誤魔化す理由がないからな。甘やかしているつもりは……いや多少甘やかしているな。私ができる範囲ならキラの要望を叶えてあげたいのさ」

 

「……姉さんが聞いたら抗議しそうだな」

 

「あの大馬鹿は甘やかす理由はない。鬱陶しくなるから私から願い下げだ」

 

 心底嫌そうな顔を千冬がするものだから、手が焼けるあの姉の妹である箒もつい頷いてしまう。基本的に絡み方から煩いのだあの天災。

 セシリアとしてはかの天才の話を聞きたいが、今はキラ・ヤマトが何者かについてだ。知りたい衝動をぐっと堪え話を更に詰めようとするがそれを見透かしていた千冬から話を進めていく。

 

「それでキラが何者かについてだったか?悪いが私はセシリアの納得のする答えは持っていない。厳密に言えば私もアイツの素性を全て知っているわけじゃない」

 

「えっ……!?」

 

「はぁ……っ!?」

 

「なぜシャルロットさんと鈴さんが先に反応しますの!?いえシャルロットさんは想像がつきますけれど……!?」

 

「あ、あはは……そ、その織斑先生はキラのこと色々と知ってると思ってたから」

 

「……それで鈴さんまでなぜ驚きまして?」

 

「やっ、だって千冬さんには全部話してるって普通思うでしょ!?」

 

 シャルロットは誘拐された後の問いかけでてっきり千冬は彼のありとあらゆる事情を知っているという先入観を抱いていて、鈴音も似たような理由で流石のキラも千冬には洗いざらい話していると思っていたからだ。

 

「というか箒とラウラはなんで驚かないのよ!?」

 

「キラと切り結んだ時覚悟の裏に苦悩や不安、そして恐れを隠しているのを感じたからな。誰にも打ち明けていない秘密があってもおかしくはない」

 

「なんなんですの、その肉体言語による対話……」

 

「私が兄さんのことでいちいち驚くわけなかろう」

 

 箒の謎の特技にセシリアは頭を抱え、ラウラのキラを理解してるという態度に鈴音は全く納得がしておらず、一言ぐらい文句を言いたいが話が明後日の方向に飛んでいくのとシャルロットの前もありぐっと堪えた。

 そもそもこの場でキラの過去を一番知っているのはラウラだ。それを踏まえれば彼のことで大袈裟にリアクションする必要はない。

 

「セシリア。お前の持っている疑惑は間違いではない。ただアイツが何者なのかを知らず批判することだけは決してするな」

 

「……もしわたくしが知った上でキラさんを批判したとすれば?」

 

「その時はその時だ、人には相性がある。自分が何者なのか何をしてきたのかを明かす時はそれも承知の上で話すだろう」

 

「どこぞの誰かさんみたいに事情も知らないで罵倒しなかったらいいんじゃないー?」

 

「り、鈴!?」

 

「……その話題はよしてくれ」

 

「なんだ?そんな酷い言葉を言ったのか?」

 

 鈴音の冗談が誰を指しているのかわかったシャルロットは鈴を慌てて嗜める。一緒に居たのだからシャルロットはそれはもう覚えている。それで口論にまで発展して、食堂を去る彼を後を追いかけて自爆のような告白をしてしまったのだから。

 

「しばらくキラから目を離すな。得意の処世術ができないほど思い悩んでいるようだからな。学園内ならなんとかなるが、合宿となると1人を見るわけにはいかん」

 

「は、はい!キラのことは私に任せてください!しっかりと目を離さないように一緒にいます!」

 

「安心してください教官。いざとなれば実力行使で兄さんを休ませます」

 

(……ラウラが物理的に休ませようとしているのをこっそりとキラに伝えておくか)

 

 ラウラから手段を選ばない物騒な気配を感じとった箒は後で友人に裏で伝えるのを決める。

 箒も彼が無理しているのを見抜いているが、当人がそれを認めない以上下手に刺激して爆発してしまっては目も当てられないことになる予感がするのだ。

 

(あの馬鹿……せめて千冬さんには包み隠さず白状しとけっての!)

 

 箒がキラが身を崩した危機感を抱いていれば、鈴音はキラが千冬にも全て明かしていないと聞き今すぐ彼の元へと向かい気が晴れるまで説教をしたい衝動に襲われていた。

 

(……いつまでらしくもなくカッコつけてるのよ)

 

 いつまで痩せ我慢をしているつもりだと胸ぐらを掴んで問いただしたいのを鈴音はずっと我慢している。

 付き合いが短くとも一ヶ月の同棲と日頃世話を焼いていれば普段の言動でキラ・ヤマトの本来の性格を見抜くことは鈴音でもできる。

 

(アタシたち以外にアイツがボロを出した時にフォローしろってことでしょ)

 

(千冬さんが頼んできたのだから私が想像しているよりも自体が深刻なのだろうな……しばらくは誰かと共に行動させた方が得策だろう)

 

 織斑千冬がどんな人物なのかを昔から知っている幼馴染2人は直接頼み込んできたことにどれだけ深刻なのか冷静に受け止める。

 当人が悩みを打ち明けてくれれば幾らでも取れる選択肢が増えるがそのキラが全く話す気配がないのだから結局一緒に居ることぐらいしかできないのだ。

 

「積もる話も終えたことだ。それを飲み干したら各々部屋に戻って構わん……ああ、寄り道はするなよ?見回りで見つけた時は反省文を覚悟しておくように」

 

 見つかれば反省文だけですむわけがないと全員が察して静かに頷く。

 それと同時にキラには条件があれど夜外出の許可を了承していることに千冬は彼には若干甘いのだと全員再認識したのであった。





書き上げるのに数ヶ月かかってしまって申し訳ないですぞぉ!!次の次で物語は進みます……本当です…だから次話は主人公ズ視点に使うね…()

種自由の再上映が始まったので私は明後日に観に行きます…うおおお!!!SEED熱が止まらんのじゃ!!!!!
そしてやっぱみんなアスランが大好きなんだねってほっこりしてます…本人は居ないけどイマジナリーアスランはキラ君と一緒だよ!!!!むしろアスランしか適度にネタにできないよ!!!!
この本編にアスラン出てきたら全部アスランが解決できちゃうしね…だから本人は出禁だね………()

次回も気長に!!気長にお待ちくだされ!!来月には投稿できたらなぁ!!の心構えではあります!!!!
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