「え?」
紅魔館の門の前。
その門扉にもたれかかるようにして、一人の女性が寝息を立てていた。
この女性、門番だよな?
眠っていていいのか?
その女性は中国を思わせる緑色の服を着ており、髪は赤く腰まで伸ばしたストレートヘアー。側頭部を編み上げてリボンを付けて垂らしている。
そして帽子についている星形の中心には『龍』の一文字が。
っていうか、この人を起こさないと門を開けることができないじゃないか。
塀を飛び越えていくのはちょっと抵抗があるし。
「あのー!起きてください!」
大声で叫んだが、起きる気配は全くない。
近づいて頬を突っついてみたが、結果は全く同じだった。
どうすれば起きてくれるのだろうか。
もっと強い衝撃…例えば頭上から石を落とすとかすれば起きるのかな?
「おーい、起きろー!!」
叫んでみたが効果なし。
こうなったら、一撃を与えるしかない。
暴力は好きじゃないけど、仕方ないよね?
「よし!」
距離を取ってこぶしを握り締める。
そしてパンチを叩きこもうと駈け出そうとした次瞬間、
「おや、あなたは誰ですか?」
背後から女性の声が聞こえた。
振り返ると、その女性と目があった。
銀髪のボブに両方のもみあげ辺りから、先端に緑色のリボンをつけた三つ編みを結っているその女性は、青と白を基調としたメイド服を着ており、頭にもカチューシャを身に着けている。
そして、手には買い物の帰りなのか、食材がたくさん詰め込まれたバッグが下げられている。
見た感じ、この館のメイドかな?
「あ、はじめまして。俺は葉月欧我といいます。紅魔館の地下にあるという大図書館に調べ物をしに来たのですが、門番の方がずっと眠っていて、入ることができずに困っていました。」
俺は自己紹介とここに来た理由を話す。
「そうでしたか。私は十六夜咲夜(いざよい さくや)。この屋敷のメイド長をしております。美鈴(メイリン)にはあとできつく言っておきますので、塀を飛び越えて中にお入りください。」
やっぱり飛び越えて入るしかないのか。
美鈴っていうのは、おそらく門番の名前だろう。
あとで写真に収めておこう。
「それでは参りましょうか。」
「はい。おじゃまします。」
紅魔館の大きな扉を開け、中に入った。
ロビーも外と同じように紅色で統一され、きれいに掃除されていた。
「すげぇ…。」
思わずカメラのシャッターを切る欧我。
「あら、そういえばあなた文の新聞に載っていた人よね。確か写真屋の。」
「あ、そうです!文々。新聞購読ありがとうございます!」
「別に購読はしてないわ。ただ、文から言われたのよ。記憶を無くしているから仲良くしてあげてねって。」
ありゃ、購読はしていないのか…。残念。
でも…
「えっ、文さんが?」
文さん、俺のためにそんなことを。
なんか、うれしいような恥ずかしいような。
「まあ、いずれ何かしら依頼をするかもしれないから、その時はよろしくね。じゃあ私はこれから仕事があるのでこれで失礼します。」
咲夜さんは一礼をすると、次の瞬間目の前から姿が消えた。
咲夜さんっていったい何の能力を持っているのだろうか。
あ…
写真を撮るのを忘れていた。
…じゃなくて、図書館までの道を聞いておくべきだった。
ま、どこかへ行けば見つかるだろう。
まずは正面の扉からだな。