命蓮寺での肝試しを切り抜け、俺たちは人里の中心にある広場に戻っていた。
夏祭りももう終わりが近づいている。
楽しい時間というものは本当に早く終わってしまうな。
文
「どうでしたか?夏祭りは。」
俺の隣に座った文さんが話しかけてきた。
欧我
「楽しかったです。一瞬死ぬかとも思いましたが。」
もう二度と肝試しには参加しないぞ!
あの時何度死にかけたか…。
文
「そうですか。欧我の悲鳴はこちらまで響いてきましたからね。」
文さんはおもしろそうに話す。
笑い事じゃねぇよ?
でも、
欧我
「とても楽しかったです。いろんな人に会えて。それに…文さんと一緒にいられたから。」
途端に恥ずかしくなり、最後の方は小声になってしまった。
文
「私と…なんですか?」
欧我
「あ、いえ、なんでもないです。」
でも、やっぱり文さんと一緒に過ごすこの時間はとても幸せに感じる。
記憶を失ってこの世界に迷い込み、そして初めて会った文さんに恋をした。
もう、記憶が戻らなくてもいいからこの幸せな時間が永遠に続いてほしい。
そんなことを思う自分がいた。
記憶を失ったからこそ、妖怪のみんなとも仲良くなれたし、大好きな人ができたし、大切な助手ができた。
幻想郷に来てまだ3、4ヶ月しか経っていないのに、たくさんの妖怪に出会えたし、いろんなところを見て回れた。
この思い出は、俺の一生の宝物だ。
文
「欧我、そろそろですよ。」
欧我
「はい!」
とうとうこの時間がやってきた。
夏祭りを、そして夏を締めくくる大輪の花が夜空に打ちあがる。
すると、広場を明るく照らしていた提灯の明かりが消され、辺りは暗闇に包まれる。
ヒュルル…
ドーン!!
明かりが消えたのを合図に、夜空に大きな花火が打ちあがった。
夜空に咲いた紅い大輪の花は、まぶしい光を放つと輝きを失い、そして消えた。
その花火に広場から歓声が上がる。
1発目の花火が消えた後、色とりどりの花火が次々に打ちあがり、夜空のキャンパスに光の花畑を描き出す。
それはもう、言葉にできないほど美しかった。
花火を見上げながら、文さんの手を握りしめる。
文さんも、俺の手を握り返してくれた。
そのまま体を傾け、文さんの肩に寄り掛かった。
文
「どうしました?」
欧我
「何でもない。ただ、このままでいさせて。」
文
「ええ、いいですよ。」
まるで祝福するかのように、幻想郷中を照らすように、次々に花火が打ちあがっては散っていく…。
その花火を見上げていると、なぜか自然と涙が溢れ出してきた。
欧我
「文さん。」
文
「なんですか?」
欧我
「いつも、本当に…」
今、俺の中に溢れだしている感情。
この感情を一体どんな言葉で伝えればいいのか分からない。
でも、やっぱりこの一言しかないと思った。
欧我
「ありがとう。」
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こんにちは、作者の戌眞呂★です。
この度は、『幻想郷文写帳』を読んでいただきありがとうございました。
実は…。
この話を最後に第一部が完結しました!
まさか100ページも続くとは思ってもいませんでした。
ここまで続けられたのも、この物語を読んでくれる皆様のおかげだと思います。
本当に、ありがとうございました!!
さて、次からは第二部が始まります。
季節は秋に移り、欧我を取り巻く環境が徐々に変わっていきます。
…でも、ハーメルンでは何話まで出せるのでしょうか。
単純に数えたら完結まで200ページもかかりそうなのですが…。
まあ、今はそんなこと考えずに行きましょう。
できれば誰かとコラボしてみたいな~なんて思ってたり。
これからもよろしくお願いいたします!!
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