一方そのころ、時は少しさかのぼる…
欧我
「暇だ…。」
布団の上に寝転がって、何もせずにただ安静にしているのも正直つまらない。
カメラは部屋の隅に置かれているし、アルバムは幽々子さんが見ているから今まで撮った写真を眺めることはできない。
何もすることができないのはものすごく暇だな。
料理が完成するのを待つしかないか。
「あら、ずいぶん退屈そうね。」
目をつむってひと眠りしようとしていたら、不意に紫さんの声が聞こえた。
一体どこから呼びかけたのだろう。
欧我
「わあああ!?」
びっくりした!!
何だよ、一体どうなっているの!?
目を開けた途端、目の前に紫さんの頭だけが浮かんでいた!
え!?この人もろくろ首みたいなことができるの!?
紫
「驚いた?でも安心して。ほら。」
そう言って何もない場所から姿を現す紫さん。
よく見ると、空間に不思議な裂け目が現れ、そこから紫さんが顔を出しているだけだった。
これが、紫さんの能力?
欧我
「はぁ、寿命が縮まりましたよ…。」
紫
「あらあら、ごめんなさいね。」
紫さんはそう言うと、くすくすと面白そうに笑う。
いや、笑いごとじゃないからね?
小傘ちゃんと言い、蛮奇さんと言い、何で妖怪はこんなにも驚かすのが上手いのだろうか。
紫
「さあ、話を変えましょう。」
途端に紫さんは真面目な表情に変わった。
俺も自然と気持ちを引き締める。
一体、何の話だろうか…。
紫
「あなた…記憶はどこまで戻ったの?」
欧我
「記憶…ですか?外の世界の事までです。自分の事はまだ思い出せません。」
紫
「そう…。」
紫さんは口元に手を当て、何かを考えているようだった。
紫
「つまり…順調に記憶を取り戻しているということね。ねぇ、私が藍を通じて貴方に伝えたことは覚えている?」
紫さんから言われたこと…?
・・・あっ!!
思い出した!
守矢神社の宴会の時に、藍さんから伝えられた紫さんの伝言!
その伝言が、頭の中を駆け巡った。
「貴方の記憶をすべて取り戻せば、この幻想郷中を巻き込む異変が起こる。その時貴方は重大な決断を下すことになる。それを覚悟しておいてください。」…
この幻想郷中を巻き込む異変…?
重大な決断を下す…?
紫
「貴方は言ったわよね?覚悟ならすでにできているって。…でも、その異変が貴方のイメージとかけ離れていたらどうする?」
欧我
「イメージと…かけ離れていたら?」
紫
「貴方のイメージする力は私たちを圧倒しているわ。これほど強力な人を私は今まで見たことが無かった。それほどまでに強力なの。貴方の持つ能力も、この強力なイメージする力を基にしているわ。」
俺のイマジネーションが、そんなに…?
今まで、そんなこと考えたこともなかった。
紫
「この際はっきり言うわ。貴方は、普通の人間じゃないのかもしれない。」
欧我
「…え?」
紫さんの口から聞かされた、衝撃の事実。
俺が、人間じゃないってどういうこと!?
思わず両手で頭を抱える。
紫
「あくまで仮説よ。その真偽を確かめるために、私は貴方が行ってきた戦いをすべて見てきたの。紅魔館での弾幕ごっこや、文と戦った守矢神社でのこと。そして永嵐異変での戦い。今回妖夢と戦わせたのも、貴方の本当の姿を掴むためのものだったの。」
俺はただ、茫然と聞いていることしかできなかった。
紫さんの言葉が、俺の中でぐるぐると渦を巻く。
紫
「でも、戦いの中で掴むことはできなかったわ。一瞬たりともそのような様子は見られなかった。」
幽々子
「私もよ。紫に頼まれて、貴方がここに来てからずっとそばにいたけど、変わった様子は見られなかった。」
静かに話を聞いていた幽々子さんが言った。
じゃあ…
欧我
「じゃあ俺はいったい何者なんだ…?」
紫
「そればかりは私たちも分からないわよ。記憶が戻ってみないと。」
欧我
「でもそうすると異変が起こるんだろ?」
紫
「ええ。でも、その異変を切り抜けるにしても重要な事が一つ。」
欧我
「重要な…事?」
紫
「そう。重要な事というより、重要な人ね。貴方の最もそばにいる人よ。」
最もそばにいる…?
まさかその人って!!
欧我
「文さん!?」
紫
「そう、文よ。彼女が重要なカギを握っているわ。だから、貴方が文の事を好きになったと聞いた時はあまり驚きを感じなかったの。そう言う予感がしていたからね。」
文さんが、重要なカギを…?
それってどういう意味だろうか。
紫さんから聞かされた衝撃の事実。
俺に秘められた能力と、俺の正体。
そして重要なカギを握ると言われた文さんとの関係。
紫
「まあ、これは記憶の片隅に留めてもらえばそれでいいわ。始めたばかりの占いで出た結果だから。」
幽々子
「そうね。そろそろ時間だし夕食にしましょう。何かあったら、私達はあなたの味方になるからね。」
幽々子さんは笑顔でそう言ってくれた。
俺はただ、頷くことしかできなかった。
幽々子さんと紫さんには気づかれていないが、俺はその異変についてイメージをしてみた。
俺のイメージが弾き出したのは、目を覆いたくなるような惨状だった。
それに、文さんが…。
この日ほど、自分のイマジネーションを呪うのは初めてだった。