幽々子さんたちの後について、白玉楼の食堂へと向かう。
記憶が戻った時に起こる異変のイメージが脳裏に焼き付いて離れない。
本当に、俺の記憶が戻った時にこんな異変が起こるのだろうか…。
…だったら、いっそこのまま記憶を失ったままでいたい。
もう記憶が戻らなくてもいい。
そう思っている自分がいることに驚いている。
まぁ、まずは夕食にしよう。
未来の心配よりも、目の前の仕事を片付けないと。
未来は変えられるからね。
食堂には、部屋の7割を占める巨大なテーブルが置かれ、それ以外に何もなかった。
まさに、食べるためだけの部屋と言えるかな?
ここに来るまでの廊下でとても美味しそうな匂いが漂っていたから、何が出てくるのか楽しみで仕方ない。
幽々子
「妖夢の作るご飯はとても美味しいからね、楽しみましょう!」
紫
「そうよ。今日は私おすすめのお酒も用意したから、さっきの事は忘れてぱぁっと楽しみましょう!」
欧我
「はい…。」
そうだよね…
うん、そうだよね!!
気持ちを切り替えよう。
妖夢
「おまたせいたしました!」
障子が開き、妖夢ちゃんがお盆に美味しそうな料理をたくさん乗せて入ってきた。
近くを飛んでいる半霊も、箸などが入った籠を運んでいる。器用だなぁ…。
妖夢ちゃんに続いて藍さんや文さんが次々に料理を運んで来る。
あっという間に、テーブルがたくさんの料理で埋め尽くされた。
ものすごい量だ。
すべて運び終わり、みんながそれぞれの席に着く。
幽々子
「それじゃあ、いただきまー…」
欧我
「ちょっと待った!」
幽々子さんが勢いよく料理が乗った皿に手を伸ばそうとしたので、俺は慌てて止めた。
ふぅ、危ない…。
みんなの視線が俺に集まる。
幽々子
「もう、何で止めるのよ…。」
欧我
「だって、今俺達は取材中ですよ。この料理を写真に収めさせていただきます。それまで、料理に手を付けないでください。文さん、行きますよ。」
文
「はい!」
(忘れるところだった…。)
カメラを構え、料理の写真を撮っていく。
旬のキノコの炒め物や川魚を使った刺身や煮魚、焼き魚。ジャガイモやニンジンの煮物にジューッと音を立てるステーキ、野菜をふんだんに使ったサラダや揚げ物盛り合わせなどなど、とてもおいしそうな料理が並ぶ。
主食には白く輝くご飯に具沢山な味噌汁がある。
それよりも驚いたのは、幽々子さんの前にはご飯のほかにオムライスやきつねうどんなど、主食が大量に並んでいた。
まさか、これを一人で食うのか?
欧我
「まあこんなもんかな。文さんはどうですか?」
文
「ばっちりよ!では、いただきましょう。」
皆で手を合わせ、「いただきます。」の合図で食事を開始した。
まずはサラダが乗った皿に手を伸ばし、自分の皿に取り分ける。
最初に野菜を食べると太りにくいって言うしね。
野菜はみずみずしく、噛んでいるとシャキシャキという心地よい音が聞こえてくる。
ドレッシングは青じそが混ぜられた和風のもので、酸味が食欲をそそる。
ステーキをナイフで切り、口に運ぶ。
肉は非常に柔らかく、噛むたびに肉汁があふれ出てくる。焼き加減もちょうどいい!
わぁ、もう溶けちゃったよ。
煮物は出汁の味が効いていて、優しい味だ。
ジャガイモってこんなにも美味しかったんだな。
ふと隣に座る文さんの方を見ると、口をもぐもぐさせたまま目をつむっている。
そしてメモを取り出すとペンを走らせる。
おそらく、食べた感想を書き残しているんだろうな。
さすがだ。
文
「欧我。」
欧我
「はい?」
文
「これは…宣戦布告でしょうか?」
文さんの目の前には、大量の若鶏の唐揚げが。
…ああ、共食いか。
そう言えば、鶏肉を使った料理には強い嫌悪感を示していたな。
つまり、目の前に唐揚げがあるのは文さんにとっていやがらせ以外の何物でもないということか。
欧我
「違うでしょ。じゃあ、俺がいただきます。」
唐揚げが乗った皿を自分の前に移動させ、文さんから遠ざけた。
そして一つを箸で掴み、口に入れた。
欧我
「美味っ!!」
つい声を出してしまった。
外はカリッとしているのに中は非常にジューシーで噛むたびに肉汁がじゅわぁって出てくる。それに肉に下味がしっかりとついていて濃厚。皮もパリパリとしているから噛むのが楽しくなってくる!
俺もこんな唐揚げを作りたい!
欧我
「妖夢ちゃん!この唐揚げのレシピを教えてください!!」
妖夢
「あ、はい。では、食後に台所へ来てください。」
文
「欧我、家では絶対に作らないでよね。」
欧我
「分かりました。」
となると…。
俺が作れる場所はあそこしかないじゃないか。
問題は調理器具があるかどうかだが…。
まあ、あるでしょ。
紫さんが用意したお酒によって、夕食の場はいつの間にか宴会に発展していた。
妖怪が用意したお酒なので、人間の俺には度数が強すぎて飲めたものじゃないが、妖怪である文さんや藍さんには丁度いいらしく、楽しそうに飲んでいる。
妖夢ちゃんも意外と酒に強いようだ。
もはや取材の事を忘れ、みんなと一緒に酒を飲み、笑いあう。
こうして、白玉楼の夜が更けていった。