文さんのもとにたどり着いた時、思わずカメラのシャッターを切ってしまった。
妹紅さんが…本を読んで涙を流しているなんて…。
「愛っていいよな…。まさかこんな結末になるなんて。」
妹紅さんは先ほどの本を最後まで読み切ったようで、表紙を見て何度も頷いている。
「とうとう見つけましたか?」
すかさず文さんがインタビューに入る。
インタビューに入るタイミングと不自然さを感じさせない腕前はさすがとしか言いようがない。
「ああ、決めた。戦争の中でも、こんなにも素晴らしい愛情があったなんて。」
そして妹紅さんはこの本を読んだ感想や愛について話してくれた。
文さんはその話に相槌を入れながら手帳にすらすらとペンを走らせている。
「ありがとうな、小鈴。私のために本を用意してくれて。」
「どういたしまして!」
妹紅さんのお礼に、小鈴ちゃんは笑顔で答える。
その後、妹紅さんは小鈴ちゃんと一緒に戦争の物語を探し始めた。
人と人とが殺し合いを行う戦争の中で、翻弄されながらもお互いを愛する心や男たちの生きざまに感動したらしく、もっとそのような本を読みたいそうだ。
無事に本も見つかり、鈴奈庵を後にする時間がやってきた。
店の前で、小鈴ちゃんと向き合う俺達。
「今日は本当にありがとうございました。」
「ああ、ありがとう!小鈴のおかげで本の楽しさに気づくことができたよ。」
沢山の本を抱え、妹紅さんも笑顔でお礼を言った。
「いえ、こちらこそありがとうございました。妹紅さん、また来てくださいね。」
「ああ!」
妹紅さんとうれしそうに笑いあう小鈴ちゃんの笑顔はきれいに輝いている。
どうやら、あの時話していた病気はもう大丈夫らしい。
顔も赤くないし、体調が悪い様子もない。
一体どんな病気だったのだろうか。
「それと…文さんにお願いが。」
「なんでしょうか?」
「文さんの新聞を読んでみたいです。できれば、今年発刊した新聞をください。」
「はい、わかりました。」
小鈴ちゃんと握手を交わし、俺たちは鈴奈庵を後にした。
まさか自分が小さい頃に読んでいた本に出会うことができたなんて。
今日鈴奈庵を取材できたことは、本当にいい思い出になった。
それに、俺達に向かって楽しそうに本の内容を話してくれる妹紅さんの意外な一面を見ることができた。
妹紅さんの話に耳を傾けながら、肩から下げている鞄の肩紐を握りしめる。
今日は、いつも以上に重い。
この中には8冊の本が入っている。
今日のお礼にと、小鈴ちゃんが譲ってくれたものだ。
小鈴ちゃんとも仲良くなれたし、また行きたいな。
~鈴奈庵~
椅子に座り、文さんが持ってきてくれた文々。新聞に目を通す。
この気持ちをもっと理解するためにも、もっと欧我さんのことについて知るためにも、欧我さんに関する情報を集めたかった。
そのためには、文さんが発行している新聞はいちばん効率的だ。
案の定、欧我さんの記事は3刊目から始まっている。
その時の見出しは『記憶を失った少年!写真屋としてデビュー!』。
記事の内容は、この少年がいつ、どこで、どのような状態で発見されたのかが詳しく書かれている。その他にも、この少年の名前が「葉月欧我」ということや記憶を失っていることなども詳細に記載されていた。
次の新聞には、欧我の持つ不思議な能力について書かれていた。
文さんと話していた「真似」ってこういう意味だったのね。
その後に発刊された新聞には、「多々良小傘」という助手ができたことや、その助手と一緒に守矢神社での宴会を取材したときの様子なども書かれていた。
「…え?」
その次の新聞を見た時、私は目を見開いた。
まさか、欧我に恋人がいたなんて…。
その新聞には大きくこう書かれている。
『話題の写真屋 欧我と小傘のデートシーンを独占取材』
そこには、助手である小傘さんと一緒に笑いあい、向日葵畑の中を楽しそうに歩く写真や空を並んで飛んでいる写真。その他にも、一目見ただけで2人が親密な関係にあることが分かるような写真が何枚も載っていた。
「そんな…。」
欧我さんに、好きな人がいたなんて…。
慌てて記事の内容に目を通す。
まだデートって書かれていただけで、欧我さんが小傘さんの事を好きだと決まったわけじゃない。
「ふぅ…。」
記事の内容を読んで、思わず安堵の息を漏らす。
欧我さんと小傘さんがお互いを愛し合っているという記述が無く、ものすごく安心した自分に驚いてしまった。
気を取り直して、次の新聞を手に取った。
次の新聞は、あの永嵐異変が終結した次の日に発刊されたものだ。
「・・・え?」
思わず、その新聞を取り落してしまった。
一面に大きく掲載されている写真を見て、私はショックを受けてしまった。
大きく掲載された、欧我さんと文さんのキスの写真。
そして見出しの『彼氏ができました』
「そんな…欧我さんには…」
欧我さんには、好きな人がいたなんて。
それも、あの文さんだったなんて。
はらはらと零れ落ちる涙。
私にとってこの写真を見てしまったことは、欧我さんにフラれたことと同じ意味だった。
私が抱いた好きという感情や恋は、1枚の写真によって脆くも崩れ落ちてしまった。
初めて感じた失恋というショックに、私はどうすることもできず、ただ声を上げて泣くことしかできなかった。
いくら泣いても、心にできた傷は治らなかった。
「小鈴!どうしたのじゃ!?」
そんな私の前に現れてくれた人。
長い茶色の髪に、葉っぱの髪留めをして眼鏡をかけた女性。
私が、初めて憧れを抱いた人物だ。
「ぐすっ…マミゾウさん。」
マミゾウさんは私の状態と床に落ちている新聞を見て、状況を理解したようだ。
私の肩に手を回し、引き寄せた。
「そうか…。お主もつらかったのう。じゃが安心せい、儂がずっとそばにいてあげるからの。だから、今は思いっきり泣いたらええ。」
「うん…。」
そして、私はマミゾウさんの腕の中で泣き続けた。
マミゾウさんの言ってくれた一言は、心にできた傷を癒してくれた。
私にはマミゾウさんがいる。
そう思うと、失恋のショックは薄れていった。