苦手な方はご注意ください。
「はぁ…はぁ…。」
やっぱり、弾幕ごっこ以上に厳しいものなんだな。
実際に自分が動くことと、ゲームで操作することとは全く違う。
天子さんからの攻撃をかわし、そしてこちらから攻撃を行う。
あの注連縄が巻かれた岩って一体何なんだ?
あれを自由自在に活用するなんて、どんな能力を持っているんだ?
「それ!」
天子さんは再びドリル状の岩を放つ。
さっきのよりも回転するスピードは速い。
これは…立方体の光弾では貫かれるだろう。
その岩に向かって両手から糸を放ち、岩に巻きつける。
そして自分の方に向かって引き寄せた。
「そぉぉぉりゃあぁぁぁぁぁっ!!」
体を回転させる力と岩自身の力、そして遠心力を活用し、地球の周りを回る月のように自分の周りを廻らせ、天子さんに向かって投げ返した。
「うそっ!?」
高速で天子さんに向かって飛ぶドリル状の岩。
天子さんは巨大な岩を自分の前に持ってきてガードをする。
「きゃあ!?」
次の瞬間、その岩が粉々に砕け散った。
天子さんの頬をかすめて飛んで行く岩。
なんと、投げ返した岩はガード用の巨大な岩を貫いたのだ。
「すげぇ威力だな…。」
自分でも、この予想外の威力には驚きを隠せなかった。
「もう、こうなったらアレ使うしかないわね!」
天子さんの目つきが変わった。
「じゃあ、俺もアレを使います。」
天子さんは目をつむり、深く大きな呼吸を開始する。
今がチャンス。
棒状の光弾の先端に、糸を繋いだ。
「必殺、俺の必殺技…殴打バージョン。」
そして光弾と繋いだ右手を垂直に払った。
その動きにつられ、棒状の光弾はものすごいスピードで上空から天子さんに迫る。
そして、見事に命中した。
さらに今度は左から水平に振るい、光弾を真横からぶつける。
右腕を天高く掲げると、
「くらえ、仮電『エクストリームスラッシュ』!!」
思いっきり、真下に振り下ろす。
上空から迫る強烈な一撃は、見事天子さんの脳天に直撃した。
ドゴッというものすごい音が響き渡る。
こんな強い相手に手を抜くのは失礼な気がしたから、本気で行かせてもらった。
これほどの攻撃を受ければ、さすがに…
「えっ!?」
そんな…。まったく、効いていない!?
いや、ダメージは受けているが、全くひるんだ様子は見られない。
それよりも、何だ?あの表情…。
もしかして、受けた痛みや苦痛を快感として捉えることで無効化しているのか?
そんな馬鹿な。そんな人、聞いたことない。
「ふっ、これだけなの?さあ、もっと痛めつけなさい!気符『無念無想の境地』。」
「なんだ、ただのドMか…。」
思わず口を突いて出た言葉、「ドM」。
でも、ドMだとしても、あれだけの攻撃を受けておいてものともしないなんて。
今天子さんが発動しているスペルカードはとてつもないものだ。
だったら、これで行こう。
いくら打たれ強くなったとしても、高速での連続攻撃には耐えられないだろう。
文さんの最高速を頭の中でイメージし、自分と重ね合わせる。
大気を蹴り、猛スピードで飛び出した。
「え!?どこ行ったの!?」
そのスピードは、天子さんでもとらえることはできない。
(ごめんなさい、天子さん。今から蹴ります。)
罪悪感を抱いたけど、これは格闘戦だから仕方ない。
許してくれるよね?
「仮速『マシンガンスパイク』!!」
天子さんとすれ違いざまに身体に蹴りを叩きこむ。
文さんのスピードのまま足を高速で動かし、連続蹴りをまるでマシンガンのように何発も打ち込んだ。
「はぁ…どうだ…。」
短時間のうちに高速で動いたため、かなり疲労が蓄積された。
でも、これで、今度こそ…。
天子さんも倒れ…て!?
「そん…な。」
倒れて…無い!?
ボロボロになり、かなりダメージも喰らっているはず。
なのに、倒れる気配もない。
出血しているが、顔に浮かぶ表情は苦痛にゆがんではいなかった。
それよりも、あのうっとりとしたような表情…。
まさか、本当に苦痛を快感としてとらえているのか?
スーッと血の気が引いて行くのを感じる。
両足には、天子さんを蹴りまくった感触が嫌というほどはっきりと残っている。
いくら格闘戦といえども、俺はなんてことを…。
せきを切ったように溢れ出す涙。
俺はもう…攻撃ができない。
「思いっきりやってくれたわね。じゃあ今度はこっちの番。」
そう言うと、天子さんは刀身がゆらゆらと揺らめく不思議な剣を取り出した。
その直後、ぐるぐると渦を巻く大気や風。
一体、何が起こるというのか。
俺には、ただそれを涙目で見ることしかできなかった。
「たっぷりとお返しをしてあげる。 天地『世界を見下ろす遥かなる大地よ』。」
そして剣を両手で持ち、天高く構える。
その上空で発生する雷。
俺は思わず、その場でしゃがんで両手で頭を押さえた。
今心の中にあるのは、天子さんを蹴りまくった後悔と、これから起こる攻撃に対する恐怖だけだった。
ゴロゴロ!
ドッカーン!!
次の瞬間、天から雷が降ってきた。
帽子を掴む両手に力が入る。
しかし、俺に落ちてきたわけではないようだ。
恐る恐る顔を上げる。
「そんな!?」
雷が狙った相手。
それは、なんと天子さんだった。
天子さんは雷に打たれ、黒焦げの状態で地面にうつぶせで横たわっている。
「…え?」
一体何があったのだろうか。
どうして雷が天子さんを襲うのだろう。
「えっ!?」
空を見上げた時、そこには1人の女性の姿があった。
まさか、この人が雷を落としたのか?
触角のような長いリボン(?)がついた帽子に、フリルがついた長い羽衣に身を包んだ女性。
紫に近い短めの髪で、ロングスカートを身に着けている。
そして、右手をまっすぐ伸ばして天を指さし、左手を腰に当てたポーズをとっている。
その女性の視線は、まっすぐ自分に注がれていた。