幻想郷文写帳   作:戌眞呂☆

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第15章 真実を語る動画
明かされる、欧我の正体


 

今、文さんの家には誰もいない。

小傘ちゃんは命蓮寺に泊まりに行っており、明後日にならないと帰ってこない。

文さんは新聞の配達で幻想郷中を飛び回っている。

 

でも、俺にとっては好都合だった。

誰にも邪魔されず、動画を見ることができる。

 

 

 

あの時解放された文字列。

すぐに、動画のパスワードだということが分かった。

 

秋の初めに見つけたノートパソコン。

その中にあった2つの動画ファイル。

このどちらかのパスワードこそが、今回解放された記憶だ。

 

 

スイッチを押す指に力が入る。

 

 

パスワードを入力し、デスクトップを表示させた。

 

デスクトップには、2つの動画ファイルがある。

その内の1つをダブルクリックし、解放されたパスワードを入力した。

 

 

「あっ!?」

 

 

砂時計が現れ、ファイルが開かれた。

やっぱり、この動画のパスワードだったのだ。

 

再生ボタンのところにカーソルを持っていく。

この動画には、いったい何が記録されているのか…。

 

覚悟を決め、動画を再生させた。

 

 

 

 

 

「え!?」

 

 

嘘だろ…。

動画には、こちらに向かって手を振る「俺」の姿が映っていた。

 

いつの間に、こんなものが。

俺の記憶にはこんな動画を撮ったことなんてまったく無いぞ。

 

着ている物は違うけど、髪の色や瞳の輝き、そして声まで俺と全く一緒だ。

 

 

『よう、俺!びっくりした?』

 

 

動画の中の俺はそう言って笑顔になった。

俺は状況が理解できず、ただ画面をじっと見つめることしかできなかった。

 

 

『そちらの世界では葉月欧我って呼ばれているだろ?まあ、俺の事はオーガとでも呼んでくれ。』

 

 

なぜ、俺の名前を知っている!?

…ああ、俺だからか。

 

頭が混乱してきた。

 

 

動画の中の俺、オーガは途端に厳しい目つきに変わる。

 

 

『とにかく、今からする話をしっかりと聞いてくれ。まずはお前の正体について説明してやる。お前にはすべてを知ってほしいからな。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まずお前の正体からだ。お前は「影鬼」という名前を知っているだろう。外の世界で暴れている魔法使いさ。…ってか知ってて当たり前か。影鬼という文字を見て、この動画のパスワードを思い出すようにプログラムしておいたから。』

 

 

「プログラム…?」

 

 

『お前の正体は…。』

 

 

ごくりとつばを飲み込む。

 

 

『黒那影鬼の部下だ。』

 

 

「っ!?」

 

 

オーガの口から放たれた、衝撃の事実。

俺が…あの魔法使いの部下だって!?

 

 

『まあ信じられないだろうな。影鬼様に関する記憶を封じ込められたのだから。影鬼様はとある都市を滅ぼした後、唯一生き残った少年に目を付けた。この人間の持つ底知れない想像力は他を圧倒していたからな。影鬼様の野望を成し遂げるためには、強大な想像力を持つ人物が必要だった。そしてその少年を捕らえ、全ての記憶を消去した後に部下として育て上げた。』

 

 

そこまで話して、少しの間を開ける。

 

 

『もう分かっただろ。その少年こそ、俺の事だ。すなわちお前だよ。』

 

 

「俺が…そんな…。」

 

 

じゃあ、守矢神社で気を失った時に見た街は…。

その様子がはっきりと浮かび上がった。

 

街を行き交う大勢の人間。活気にあふれていた街に、突然黒い雲が現れ、大量の隕石を降らせた。

この攻撃で生き残ったのが…俺一人。

 

 

『このほかにも、弾幕という攻撃方法についても特訓したさ。幻想郷で最も使われる戦闘方法らしい。まあ、それはそれとして…だ。なぜ俺が今この動画を撮っているか…分かるか?』

 

 

「なぜ…?」

 

 

動画内のオーガの問いかけに、俺はそう答えることしかできなかった。

心臓の鼓動が早くなる。

 

部屋は寒いのに、頬を汗が伝う。

 

 

『それはな、消された記憶を取り戻したからだよ。ある日俺は、影鬼様の部屋で俺自身に関する資料を見つけてしまった。その資料を見た途端、俺は全ての記憶を取り戻した。愛するものを失った恐怖、絶望、そして怒り…。俺は必ず影鬼様に復讐してやる。野望を打ち砕いてやる。そう思った。だから、今までずっと部下のふりをして、打ち砕くための情報を集めていたというわけさ。この動画も、その手段の一つさ。』

 

 

オーガの話を聞き、ものすごいショックを受けて何も考えることができない。

まさか俺の正体が…。

 

でも、じゃあ俺は何故幻想郷に来たのだろう。

その理由がはっきりしなかった。

 

 

『お前がなぜ幻想郷という地に送られたのか、次はお前の持つ能力も含めて説明をする。』

 

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