その机の前に立つと、パチュリーさんが俺を品定めするかのようにじっと見つめる。
その視線を受けて何も話せないでいると、パチュリーさんは小さく頷いてから口を開けた。
「あなたが欧我ね。」
「はい、そうです。」
その女性は長い紫色の髪の先をリボンでまとめ、紫と薄紫の縦縞が入った、ゆったりとした服を着ており、さらにその上から薄紫の服を着用している。
また、服の各所に青と赤のリボンがある。
「そう。私はパチュリー・ノーレッジ。あなたが来ることは咲夜から聞いたわ。」
「咲夜さんからですか?」
仕事があるはずなのに、わざわざ連絡してくれていたなんて。
流石メイド長。
「確か、この幻想郷について調べるのだったわよね?こあ、手伝ってあげなさい。」
「はーい!」
この子、こあっていうんだ。
…そういえば名前を聞いていなかったな。後で聞いておこう。
「よろしくね!じゃあ行きましょうか。」
そう言ってこあさんが腕を引っ張る。
「あ、ちょっと待ってください。」
「なにかしら?」
「できれば、紙と書くものを貸していただきたいのですが。」
「あそこのテーブルの上にあるわ。好きに使いなさい。」
そう言って指差した方には、丸いテーブルが置かれていた。
テーブルの上には小さいながらも豪華なランプが置かれている。
「ありがとうございます!では、行きましょうか。」
「うん!」
パチュリーさんにお辞儀をするとテーブルの方へ向かった。
テーブルの上には万年筆と大量の紙が置かれていた。
これだけあれば、十分足りるだろう。
「よし、さっそく取り掛かりましょう!こあさん、よろしくお願いします!」
立ち並ぶ本棚の中から、目当ての本を何冊も運び出す。
あっという間に、テーブルの上に本の山が出来上がった。
これだけの本を探し出せたのも、すべてこあさんのおかげだ。
あの後名前を聞くと、小悪魔だと教えてくれた。
パチュリーさんからは「こあ」と呼ばれているので、俺もこあと呼ぶことにした。
「えへへ、どーいたしまして!」
俺のお礼の言葉に、こあさんは笑顔で応えた。
さて、と。
一冊の分厚い本を手にとって、表紙を眺める。
「異変…ねぇ。」
この本には、過去にこの幻想郷で起こったさまざまな異変について書かれている。
「異変…。昔この紅魔館でも起こったことがあるのよ。」
そうなんだ。
その異変とは一体…。
紙と万年筆を用意して、本のページをめくった。
幻想郷には、時に不可思議な出来事が訪れる。
何者かによってもたらされた怪事件、怪現象。
幻想郷の住人は、それらを総じて「異変」と呼ぶ。
幻想郷が紅い霧に覆われた『紅霧異変』
5月になっても冬が終わらなかった『春雪異変』
宴会が3日おきに終わりなく開催されると同時に、謎の霧が幻想郷を覆った『三日置きの百鬼夜行』
夜が明けず満月が同じ位置に留まり続けた『永夜異変』
全ての花が通常の開花の季節とは関係なく突然咲き始め、妖精たちが騒ぎ出し、さらに幽霊が大量出現した『六十年周期の大結界異変』
この他にも、
博麗神社のすぐ近くから間欠泉が湧き、同時に地霊が発生した異変や、空飛ぶ宝船が目撃されるようになった異変など様々な異変がこの幻想郷を襲った。
そして驚いたことに、これらの異変が起きるたびに行動を起こし、見事解決に導いたのはあの博麗の巫女である博麗霊夢であった。