幻想郷文写帳   作:戌眞呂☆

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最後の季節、冬が始まります。

しかし、冬らしいことはせず、ほとんどが戦いになる予定です。

「結の冬」、最後までお楽しみください。


第16章 欧我の決意
親密な関係


 

「はぁ…。」

 

 

吐き出された息は真っ白になった。

冷たい風が吹き、体を縮こまらせる。

 

俺の正体を知ってから1か月が経過した。

この1か月、俺はできる限りほかの人と交流する時間を作った。

他の妖怪と協力すること。これが、影鬼との戦いを勝利に導くためのカギだと知ってから、俺はとにかくみんなと交流し、より親密な関係を築こうと行動を起こしてきた。

 

 

この行動の効果が出たのかは分からない。

本当に、妖怪のみんなは俺の事を好きになってくれたのだろうか…。

 

 

 

それにしても…寒い。

 

俺は今、滝の真上にある岩に腰を下ろし、雪に包まれて白く輝く幻想郷を見下ろしている。

この滝は「九天の滝」と言うらしく、豪快に川の水が流れ落ちている。

 

何か考え事があるとき、一人でじっとしたいとき、俺はよくここにやってくる。

ここに座って、ここから見える景色を眺めていると、なぜか心が落ち着くからだ。

 

 

「えいっ。」ぴとっ

 

 

「ひゃああ!?」

 

 

突然俺の頬に冷たいものが押し当てられ、驚いて飛び上がった。

 

後ろを振り向くと、そこには満面の笑みを浮かべている小傘ちゃんの姿があった。

 

 

「やったー!欧我が驚いてくれたー!!」

 

 

そう言ってうれしそうに飛び跳ねる小傘ちゃん。

ふふっ、相変わらずだな。

 

こうなったら…。

 

 

「ひゃん!?」

 

 

お返しだ。

手袋を忘れてしまい、丁度俺の手も冷え切っていたから、冷たいだろう。

 

小傘ちゃんの頬に両手を押し当てた。

 

 

慌てて俺の両手を振り払った。

 

 

「もー。私を驚かせないでよー!」

 

 

「えへへ、たまには驚かないとだめだよ。」

 

 

「むぅー。」

 

 

小傘ちゃんはむっと頬を膨らませると、その場にしゃがんで両腕を動かした。

しばらく動かした後、立ち上がってにっと笑顔になる。

 

その手には複数の雪玉が。

 

まさか…。

 

 

「えいっ!」

 

 

「うわっ!?」

 

 

その一つを掴み、俺に向かって投げ飛ばした。

攻撃は何とか避けることができたが、避けたすきを突かれて投げられた雪玉は避けることができず、顔面に命中してしまった。

 

なんだろう、この小傘ちゃんの笑顔。

そして大量の雪玉…。

 

よし、付き合ってやる。

 

 

「ほら、当ててみろー!」

 

 

文さんのスピードを自分に投影させ、小傘ちゃんの周りを高速で飛び回った。

 

 

「あー!天狗のスピードは禁止!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小傘ちゃんとの雪合戦を終え、岩に腰を下ろして風景を眺める。

あれから投げられた雪玉をかわし続け、気が付けば1時間が経過していた。

そして涙目の小傘ちゃん…。

ちょっとやりすぎたかな。

 

小傘ちゃんは俺の膝の上に座り、一緒に風景を眺めていた。

 

体を密着させると小傘ちゃんの温もりが感じられ、髪の甘い香りが鼻孔をくすぐった。

 

 

「どう、すっきりした?」

 

 

「…え?」

 

 

「欧我って、ずっと影鬼の事について悩んでいるんでしょ?」

 

 

「え、あ、うん…。」

 

 

俺が影鬼の部下であることは、文さんと小傘ちゃんにはすでに明かしていた。

 

この世界を滅ぼすためにやってくる魔法使いであること。

5つの能力の内の4つを手に入れたら幻想郷に攻め込んでくること。

俺はその能力を集めるためにここに来たこと…。

嫌われるのを覚悟で、2人にはすべてを話した。

 

…でも、2人は追い出すどころかそんな俺を受け止めてくれた。

大切な家族だと言ってくれた。大好きだと言ってくれた。

あの日ほど、うれし泣きした夜はなかった。

 

 

「そうだよ。俺はこれからどうしていけばいいのか、どう接していけばいいのか、それをずっと考えている。」

 

 

「ふーん。」

 

 

俺の言葉を聞き、小傘ちゃんは膝から降りて立ち上がる。

そして向き合い、俺の手を取って言った。

 

 

「いつも通りにすればいいよ。私知っているんだからね。命蓮寺のみんなが言っていたの。欧我はとてもいい子だって。親しみやすいって。ううん、命蓮寺だけじゃない。私が会う人すべてが欧我の事を好きだって言ってた。欧我の助手になった私を羨ましいって言ってた。」

 

 

そこまで言うと、小傘ちゃんはにっと笑顔になった。

 

 

「大丈夫、欧我はしっかりと親密な関係を築いているわ。だから絶対に影鬼を倒すことができる。そして…」

 

 

小傘ちゃんは顔を近づけ、そっと俺のほっぺにキスをした。

 

 

「そして、これはお守りよ。」

 

 

「小傘ちゃん…。」

 

 

小傘ちゃんの言ってくれた言葉は、俺の心に渦巻く不安を消し去ってくれた。

俺は、みんなと親しい関係を築くことができたんだ…。

好きでいてくれたんだ…。

 

本当に、よかった…。

これまで幻想郷で過ごしてきた数か月が報われたような気がして、ほっとした。

 

 

「小傘ちゃん…。」

 

 

「何?」

 

 

立ち上がると、小傘ちゃんを抱きしめた。

 

 

「ありがとう。」

 

 

「うん。」

 

 

小傘ちゃんも、俺の背中に手を伸ばしてしっかりと抱きしめてくれた。

 

2人はしばらくの間、滝の上で抱きしめあっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ家に帰ろうかとした時、小傘ちゃんが何かを見つけた。

 

指をさす方を見ると、湖のそばで雪が渦を巻いていた。

あれは一体何だ…?

 

 

「あっ!?」

 

 

その渦の中で、真っ赤に燃える炎が上がる。

しかし、その炎は渦にかき消された。

 

あの炎って、もしかして…。

 

 

「行ってみよう!」

 

 

「うん!」

 

 

滝の上から飛び降り、その渦を目指した。

 

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