小傘ちゃんと一緒に、渦を巻く雪を目指して猛スピードで空を飛んで行く。
その間にも、渦の中では紅蓮の炎が上がる。
…しかし、その炎はさっきよりも弱い。
渦の上空にたどり着いた。
「やっぱり!」
渦の中心には、イメージした通りの1人ともう1人ウサ耳を生やした女性の姿があった。
中心でうずくまる鈴仙さんと、右手から炎を上げる妹紅さんだ。
妹紅さんは右手の炎の火力を上げ、渦の壁に向かって炎を発射した。
しかし、それは渦にかき消される。
全く歯が立たないようだ。
「妹紅さーん!鈴仙さーん!」
2人の名前を叫び、渦の中心に着地する。
どうやら危機的状況のようだ。
「おう、欧我に小傘か!」
「はい!何かあったんですか?それに、この渦は…。」
一目見て、妹紅さんは疲労がたまっていることが分かった。
おそらく、長い間雪と氷の壁に向かって炎を放ち続けているのだろう。
それに、この寒さだ。
どんどん体力が奪われていく。
「ああ、この渦を作り出したのはレティにチルノだ。」
「チルノちゃんが!?」
チルノちゃんは冷気を操る程度の能力を持っている。
だから、この渦も能力を使って再現したのだろう。
…ところで、レティさんって誰なんだろう。
初めて聞いた名前だ。
「…で、レティさんは?」
「ああ、寒気を操る妖怪だ。いつもはのんびり屋で大人しい性格なんだけど…。」
そんな4人の前に、2人が姿を現した。
そのうちの1人はチルノちゃんだったが、もう1人は初めて見る人物だった。
薄紫のショートヘアに白いターバンのようなものを巻き、青色のゆったりとした服装をしている。そして風によってたなびく白いマフラー。
「おやおや、新たに2人が現れた。鴨が葱をしょってくるとはこのことだな。」
「よっしゃぁ!お前ら全員凍えさせてやらぁ!!」
2人が放った言葉に、俺は度肝を抜かれた。
えっ?えっ?
チルノちゃんは難しそうな言葉をしゃべったし、レティさんの性格は全然大人しくない!
これは…新たな異変!?
「こ、これは一体…。」
「ああ、実はな…。」
妹紅さんは人差し指で頬をかきながら答えた。
「鈴仙と一緒に薬の行商に出かけたが、ここでレティとチルノに出会ったんだ。弾幕ごっこを挑まれたから軽くひねりつぶしてやったけど、やりすぎたのかチルノが怪我を負っちゃって。手当てしているときに、こいつらはある薬を飴玉と間違えて食べちまったんだ。そうしたらこうなったんだよ。」
薬…ですか。
おそらく、永琳さん特製のやつだろうな。
…なんか嫌な予感がしたけど、気の精だと信じたい。
「妹紅さん、その薬ってまさか…。」
「ああ、性格をひっくり返す薬だよ。」
「わーお!」
まさかの予想通りの薬の効能に、俺は無意識のうちに変な言葉を口にした。
でも、そう考えればこの2人の性格の豹変ぶりに納得できる。
「鈴仙さん、ずっとこのままなんですか?」
薬の事なら専門家に聞くべし。
永琳さんの助手である鈴仙さんなら何か知っているかもしれない。
…しかし、鈴仙さんはうずくまったままピクリとも動かない。
ウサギって、寒いのが苦手なのかな?
「私は大丈夫だが、鈴仙が心配だ。欧我、手伝ってくれないか?」
「うん、わかった。小傘ちゃん、鈴仙さんをお願い。」
「う、うん!」
小傘ちゃんは頷くと鈴仙さんに駆け寄った。
そして鈴仙さんの上から覆いかぶさる。
なるほど、自分の体温で温めようということか。
…それよりもこっちか。
妹紅さんの隣に立ち、じっとレティさんとチルノちゃんを睨む。
「まったく、最強の私たちに喧嘩を売るとは。冬だけど、飛んで火に入る夏の虫ね。」
「腕が鳴るぜぇ!覚悟しやがれ!」
うわぁ、やる気だ…。
目を閉じ、冷気と寒気に打と勝つことのできる能力を探した。
しかし、その能力は見つからない。
俺が今まで真似た能力の中で、炎や熱を操る能力は一つも無かった。
4人に増えてもあれだし、雷は意味ないし、大地を隆起させてもね…。
水は逆効果だし、マスタースパークは…。
ん?
「私が好きなのは光と熱を使った魔法だぜ。派手じゃなければ魔法じゃない!」
これだ!!
魔理沙さんの好きな魔法は光と熱。
だったら、このマスタースパークももしかすると…。
脳内で魔理沙さんの技、マスタースパークをイメージし、自分に投影させた。
両手をチルノちゃんに向け、意識を集中させる。
十分魔力がたまったところで、一気に放出した。
「恋符『マスタースパーク』!!」
「ふっ、この程度ですか。拍子抜けしちゃいましたね。凍符『インフィニティフリーズ』!」
そう言うとチルノは両手から強力な冷凍ビームを放つ。
そのビームはマスタースパークとぶつかり、一進一退の攻防を繰り広げる。
…ってか、チルノちゃんにこんなスペルカードなんてあったか!?
「がら空きだぜ!そら、冬符『ヘイルスティンガー』!」
レティさんから鋭く尖った霰が大量に放たれ、俺目がけてまっすぐ飛んできた。
今動いたらチルノちゃんの攻撃を食らってしまう。
くそ、避けれないか…。
「危ない!」
妹紅さんが俺と霰の間に割って入り、スペルカードを発動する。
「不滅『フェニックスの尾』!」
大量の炎の光弾が発生し、次々に霰を蒸発させていく。
これはかなりの火力だ。
妹紅さんは地面に着地した後、両膝を突いた。
「うっ!くそ…。」
「妹紅さん!大丈夫ですか!?」
見ると、体中に霰が突き刺さっていた。
先ほどの攻撃で防ぎきれなかったものに襲われたのだ。
服は裂け、出血しているところもある。
「ああ、私は不死だからな。…だが、正直速く終わらせないときつい。向こうももう限界みたいだしな。」
妹紅さんが指さした先には、二人で寄り添い合って震えている小傘ちゃんと鈴仙さんの姿があった。
妹紅さんの状態と合わせて考えると、今はものすごくヤバい状況だ。
次で決めないと、俺一人じゃどうしようもない。
一体どうすれば…。
「そうだ!」
「どうしたのですか?」
「お前、確か能力を真似できるんだったよな。だったら、私の炎を操る技を真似てくれ!二人で行けばこれを打ち砕くことができるはずだ!」
妹紅さんの技を…真似る?
でも…。
俺の脳裏に浮かんだのは、動画の中でオーガから言われた一言、『もうこれ以上、絶対に能力をコピーするな!』だった。
~注意~
今回チルノちゃんとレティさんが放ったスペルカードは、自作のオリジナル(?)です。