幻想郷中を巻き込んでの戦いが今、始まる。
侵略の始まり
ぶるぶるっ…
あー、寒い。
ゆっくりと目を開ける。
「っ!?」
目の前に、幸せそうに寝息をたてる文さんの顔があった。
…あれ?あの後どうしたっけ?
たしか、小傘ちゃんも含めて3人で酒を飲みまくって…。
で、思いっきり酔っぱらって…。
それからが思い出せない。
ゆっくりと上体を起こす。
「なっ!?」
何も着ていなかった。
部屋の隅には脱ぎ捨てられた服が散乱している。
俺のだけではなく、文さんのも…。
って!?
慌てて文さんの状態を確認する。
身体には何も身に着けておらず、滑らかな肌があらわになっていた。
男女が裸の状態で一つの布団で寝ているということは…。
「思い出した…。」
あの夜は酔った勢いに任せて文さんを布団に押し倒したんだ。
初めてこちらから仕掛けたけど、結局は文さんに主導権を握られて…。
「ん~師匠~。」
「小傘ちゃん!?」
え!?なんで小傘ちゃんもいるの?
布団を並べ、幸せそうに眠っている。
あの時小傘ちゃんは自分の部屋に戻ったはずなのに…。
まさか、俺は小傘ちゃんにまで…?
そっと掛布団をめくってみる。
…良かった。ちゃんと寝巻を着ている。
小傘ちゃん(助手)にまで手を出してしまったら、俺は一体どれくらいの人から非難されるのだろうか…。
…はぁ、もう起きよう。
っていうか寒い!
冬にやるのは良くないな。
布団から出て、掛布団をそっと文さんにかけてあげた。
そして2人を起こさないように、脱ぎ捨てられた服を着て台所に向かった。
朝食の準備はほぼ毎回俺がやっている。
今日のメニューはスクランブルエッグにしようかな?
卵をボウルに割り、箸でかき混ぜる。
「欧我。」
「紫さん!?」
不意に、紫さんの声が聞こえた。
後ろを振り返ると、空間にできたスキマから紫さんが顔を出していた。
一体どうしたというのだろう。
「気づいていないの?手下が現れたわよ。」
「なんだって!?」
そんな!
こんな時間に!?
確かにあの時影鬼は俺には現れた場所がわかるって言ってたよな。
でも、なぜ今気づかなかったのだろうか。
「場所はどこですか?」
「里の近くよ。」
「分かった、行こう!」
紫さんの能力を投影させ、スキマを作って飛び込んだ。
「欧我~?」
あれ?いない。
テーブルの上にはボウルに割られた玉子が置いてあった。
そうですか…もう、戦いに出かけたのですね。
ご武運をお祈りしています。
「あやややや!?わ、私なんで裸に!?」
「よっと。」
スキマから飛び出し、地面に着地する。
不思議な空間を通っているときに分かったが、不思議な空間に入ると手下の存在を強く感じることができた。
もしかしたら、この空間にいればすぐ感知できるのかもしれない。
そして、手下はどこに?
「あっ!?」
人間の里のすぐ近くに黒い人影がたくさん集まっている。
その数約十数人。里の農民が襲われている。
すぐに助けないと!
妹紅さんの能力を投影させ、体から炎を放出させる。
「行くぜ行くぜ行くぜぇ!!」
そう叫びながら、その人影目指して飛び出した。
両腕に炎を集め、人影とすれ違いざまに拳を叩きこんでいく。
攻撃を食らった人影はもだえ苦しみながら霧となって消滅した。
…よし、これなら倒せる!
「皆さん、早く逃げて!」
「す、すまねぇ!!」
農民と人影の間に割って入り、農民の逃げ道を確保する。
人影は手に刃物のような武器を持っており、それを振りかぶって襲ってきた。
数はあと6体。
この距離じゃあソードを出している暇はない…。
「…ん?」
ふと足元を見ると、そこには自分の身長と同じくらいの長さの鉄の棒が転がっていた。
なんでこんなものがここに?
…まあいい、とにかく使おう。
鉄の棒を拾い上げ、人影の攻撃を防ぐ。
ガキィン!と鉄同士がぶつかりあったような音が響き渡ったが、どうやら鉄の棒は無傷のようだ。意外と頑丈だな。
「よし、決めるか。今のうちに自分たちの罪を数えておけ。」
後ろへ下がって距離をとると、鉄の棒に意識を集中させる。
すると棒の両端が真っ赤に発光し、炎が立ち上がった。
棒を構え、走り出した。
「仮双『メタルブランディング』!!」
すれ違いざまに燃え上がる棒の両端を次々と叩き込んでいく。
人影は霧となって消滅した。
初戦は、俺の勝利だ!
何だ、手下と言っても随分とあっけないものだったな。
「なんだ、もう終わっちゃったのか。」
「あれ、屠自古さん?それに布都さんも。」
棒を地面に置き、息を整えていると俺の前に2人が姿を現した。
「お主、かっこよかったのお!見ていて惚れてしまいそうじゃ。いや、惚れたぞ!」
「え?布都さんったら…。もう。」
…いや、そうじゃなくって。
「どうしてここに?」
「ああ、太子様から言われたのだ。不思議な気を感じるから様子を見てきてくれとな。」
「そうですか。」
太子様…って初めて聞く名前だ。
誰だろう。
「それよりも、あの黒い人影が悪の手下というやつか。白蓮から言われたことは本当だったのか。」
「はい。」
「で、雷を操れる私はその手下と戦うことができるのか。欧我よ、こうなってしまった以上私はお前に協力する。絶対にこの地を護ろう!」
「ありがとうございます!!」
屠自古さんと固い握手を交わす。
そうだ、戦う人は俺一人じゃない。
俺には力強い仲間たちがいる。
みんなと協力すれば、絶対に打ち勝つことができる。
「ちょ、ちょっと!我を仲間外れにしないでくれぬか!?」
「するわけないじゃないか。布都さんもよろしくね。」
「うむ!それっ!」
「わわっ!?」
いきなり布都さんに抱き着かれた。
状況がつかめなかったが、俺も布都さんを抱きしめた。
「お主には強い運が味方に付いておる。だから大丈夫じゃ。そしてこれはお守り、受け取るがいい。」
布都さんは俺をぎゅっと抱きしめる。
すると、なぜか体中に力が湧きあがってきた。
「ありがとうございます。」
…あれ?屠自古さん、顔を真っ赤にしちゃって。
「屠自古さんもやりますか?ぎゅって。」
「わ、私は大丈夫だ。」
「おやぁ?屠自古、もしかして妬いておるのか?」
「なっ!?そ、そんなわけないだろ!」
初戦を勝利で飾った欧我。
しかし、この戦いは熾烈を極めていくのでした…。